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世界のHouzzから:シェアの精神で楽しむ、都市型家庭菜園の人気が拡大中
世界各地の都市生活圏で、近所の人たちと家庭菜園や農園をシェアして楽しむ人たちが増えています。トレンドの先端をいく西海岸の事情をハウズアメリカ編集部がレポートします。
Annie Thornton
2016年7月30日
カリフォルニア州バークレーで、都市農園生活を営むワンダ・スチュワートさん(左)と、近所に住むジェイミー・モーフさん。スチュワートさんのミニ農園で採れる卵を1ダース買いに来たついでに、家の前でおしゃべり。「自分が食べるものだから、育てている人に直接お金を払いたいんです」とモーフさんは言う。
5月の朝、7時45分。ワンダ・スチュワートさんは、カリフォルニア州バークレーの自宅にあるミニ農園の世話にいそしんでいる。柵の向こうに頭をのぞかせているのは、ハヤトウリ、ケール、ピーマン、たわわに実ったレモンの木。たくさん並ぶコラードグリーンの苗が入った容器は、これから植え付けしたり、近所の人たちに配るものだ。鳥がさえずり、学校に向かう子どもたちが続々と自転車で通り過ぎていく。スチュワートさんの飼っている犬のエンジェルも、通る人みんなに、ワン!と挨拶してくれる。
出勤前に立ち寄った造園家のジェイミー・モーフさんは、スチュワートさんの鶏が生んだ卵を1ダース購入。ついでにちょっとおしゃべりしてから仕事に向かう。一方のスチュワートさんは、これから都市農園ツアーの受け入れ準備。こちらのほか、7か所の農園を巡るツアーで、毎年スチュワートさんが楽しみにしているイベントだ。「いろんな人に出会えて楽しいし、私の活動や考え方を知ってもらういい機会なんです。」
スチュワートさんは、バークレーにある400平方メートル足らずの土地で、10年近くにわたり、野菜や鶏を育てている。実は、彼女のように都市生活のなかに農業を取り戻そうとする人たちは世界各地で増えてきているのだ。東京では新しく完成した集合住宅に専用の菜園がついてきたり、ニューヨークではビルの屋上をミニ農園に改造したり。そしてロンドンでは、第二次大戦中の防空壕だった地下空間を活用してマイクログリーンや葉野菜を育てる会社も登場した。とくにアメリカ・サンフランシスコ湾の東側の町には熱心な住民たちが多く、ハーブに野菜、卵、乳製品から肉まで、自分の食べる食料を大半の庭で調達してしまおうという人が増えている。
5月の朝、7時45分。ワンダ・スチュワートさんは、カリフォルニア州バークレーの自宅にあるミニ農園の世話にいそしんでいる。柵の向こうに頭をのぞかせているのは、ハヤトウリ、ケール、ピーマン、たわわに実ったレモンの木。たくさん並ぶコラードグリーンの苗が入った容器は、これから植え付けしたり、近所の人たちに配るものだ。鳥がさえずり、学校に向かう子どもたちが続々と自転車で通り過ぎていく。スチュワートさんの飼っている犬のエンジェルも、通る人みんなに、ワン!と挨拶してくれる。
出勤前に立ち寄った造園家のジェイミー・モーフさんは、スチュワートさんの鶏が生んだ卵を1ダース購入。ついでにちょっとおしゃべりしてから仕事に向かう。一方のスチュワートさんは、これから都市農園ツアーの受け入れ準備。こちらのほか、7か所の農園を巡るツアーで、毎年スチュワートさんが楽しみにしているイベントだ。「いろんな人に出会えて楽しいし、私の活動や考え方を知ってもらういい機会なんです。」
スチュワートさんは、バークレーにある400平方メートル足らずの土地で、10年近くにわたり、野菜や鶏を育てている。実は、彼女のように都市生活のなかに農業を取り戻そうとする人たちは世界各地で増えてきているのだ。東京では新しく完成した集合住宅に専用の菜園がついてきたり、ニューヨークではビルの屋上をミニ農園に改造したり。そしてロンドンでは、第二次大戦中の防空壕だった地下空間を活用してマイクログリーンや葉野菜を育てる会社も登場した。とくにアメリカ・サンフランシスコ湾の東側の町には熱心な住民たちが多く、ハーブに野菜、卵、乳製品から肉まで、自分の食べる食料を大半の庭で調達してしまおうという人が増えている。
スチュワートさんの家では、表側の庭がいちばん日当たりが良く、野菜作りに適している。2つの通りに面する角の敷地は、近所の人とのふれあいの場所だ。
都市農園の利点を認める自治体も増えてきている。「米国内の多くの町で、都市農業をサポートする体制がかなり整ってきています。空いている安価な土地をリースしたり、水を供給したり、将来も土地を使い続けることができるよう土地信託システムを整えたり、といった内容ですね」とレイチェル・サントさんは説明する。サントさんは、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学住みやすい未来のための研究所のコーディネーターで、彼女自身も都市部で菜園を作っている。2016年5月には、サントさんが中心となってまとめた都市農業の有益性と限界についての報告書も発表された。
「カリフォルニアではかなり進歩的な政策が州レベルで可決されて、住宅所有者組合のメンバーや、賃貸に住む人たちが、自分たちで食料を育てる権利をサポートしてもらえるようになっています。民間の敷地内で食料を育てることを促進するような税制上の優遇措置も導入されました」とサントさんは言う。カリフォルニア州の中で、最初に民有地での食料生産を奨励するようになった市は、サンフランシスコだ。またバークレーでは、鶏・雌ヤギ・ウサギといった動物なら、囲い込み条件など市の規定を満たせば、特別な許可を得なくても飼育が認められている。オークランドでは、細かい条件はあるが、個人利用目的で公衆の迷惑にならない場合、家畜を飼育することが認められている。
当然ながら都会では隣近所との距離が近い。都市農業をするなら(動物を飼う場合はなおさら)、近くに住む人のことを考えなくてはならない。「近所の人を家に招いて、どんなことをしているのか、ひととおり見てもらいましょう。何か相手が気になっている問題があるなら、しっかり対策を取って、解決することです」と、オークランドで〈都市農家の学校〉を設立したルビー・ブルームさんは言う。それから、収穫を分かち合うこと。「はちみつでも卵でも、おすそ分けしましょう。」
「地産オーガニック」「人道的飼育」という魅力
オーガニック(有機)食品は、需要も、入手できる場所も増えてきている。米国農務省の報告によると、アメリカ国内の一般的な食料品店4軒のうち3軒で有機食品が扱われているという。しかし、アメリカの消費者向け月刊誌『コンシューマーリポーツ』が2015年に行った調査で、有機食品100点を一般的な製品と比較したところ、有機食品の価格は、平均して47%高価だという結果になった。しかもこれらの製品は、有機食品であっても地産とは限らない。さらに、肉や卵などの畜産物になると、価格やラベル表示、産地の解釈などが複雑でわかりにくくなってくる。
「高品質で、地元産の食べ物」というのがスチュワートさんにとっては重要なことだった。でも、オーガニックのフリーレンジ(放し飼い)卵を町のお店で買おうとすると、1ダースで9ドルにもなってしまう。そこで、食料の供給源について考え直す必要があると気づいた。値段が高いからといって自分が食べるものに妥協はしたくない。高くて買えないなら自分で作ろう、と考えたのだ。まずは、自分の好きな野菜のなかで、近所の庭でうまく育っているものから始めた。「近所の菜園を手伝って、いろいろ質問して、観察しながら学んだんです」とスチュワートさん。
都市農園の利点を認める自治体も増えてきている。「米国内の多くの町で、都市農業をサポートする体制がかなり整ってきています。空いている安価な土地をリースしたり、水を供給したり、将来も土地を使い続けることができるよう土地信託システムを整えたり、といった内容ですね」とレイチェル・サントさんは説明する。サントさんは、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学住みやすい未来のための研究所のコーディネーターで、彼女自身も都市部で菜園を作っている。2016年5月には、サントさんが中心となってまとめた都市農業の有益性と限界についての報告書も発表された。
「カリフォルニアではかなり進歩的な政策が州レベルで可決されて、住宅所有者組合のメンバーや、賃貸に住む人たちが、自分たちで食料を育てる権利をサポートしてもらえるようになっています。民間の敷地内で食料を育てることを促進するような税制上の優遇措置も導入されました」とサントさんは言う。カリフォルニア州の中で、最初に民有地での食料生産を奨励するようになった市は、サンフランシスコだ。またバークレーでは、鶏・雌ヤギ・ウサギといった動物なら、囲い込み条件など市の規定を満たせば、特別な許可を得なくても飼育が認められている。オークランドでは、細かい条件はあるが、個人利用目的で公衆の迷惑にならない場合、家畜を飼育することが認められている。
当然ながら都会では隣近所との距離が近い。都市農業をするなら(動物を飼う場合はなおさら)、近くに住む人のことを考えなくてはならない。「近所の人を家に招いて、どんなことをしているのか、ひととおり見てもらいましょう。何か相手が気になっている問題があるなら、しっかり対策を取って、解決することです」と、オークランドで〈都市農家の学校〉を設立したルビー・ブルームさんは言う。それから、収穫を分かち合うこと。「はちみつでも卵でも、おすそ分けしましょう。」
「地産オーガニック」「人道的飼育」という魅力
オーガニック(有機)食品は、需要も、入手できる場所も増えてきている。米国農務省の報告によると、アメリカ国内の一般的な食料品店4軒のうち3軒で有機食品が扱われているという。しかし、アメリカの消費者向け月刊誌『コンシューマーリポーツ』が2015年に行った調査で、有機食品100点を一般的な製品と比較したところ、有機食品の価格は、平均して47%高価だという結果になった。しかもこれらの製品は、有機食品であっても地産とは限らない。さらに、肉や卵などの畜産物になると、価格やラベル表示、産地の解釈などが複雑でわかりにくくなってくる。
「高品質で、地元産の食べ物」というのがスチュワートさんにとっては重要なことだった。でも、オーガニックのフリーレンジ(放し飼い)卵を町のお店で買おうとすると、1ダースで9ドルにもなってしまう。そこで、食料の供給源について考え直す必要があると気づいた。値段が高いからといって自分が食べるものに妥協はしたくない。高くて買えないなら自分で作ろう、と考えたのだ。まずは、自分の好きな野菜のなかで、近所の庭でうまく育っているものから始めた。「近所の菜園を手伝って、いろいろ質問して、観察しながら学んだんです」とスチュワートさん。
オークランドの自宅の裏庭で、ヤギと鶏に餌をやるキティ・シャーキーさん。
一方、数キロ離れた場所に住むキティ・シャーキーさんは、マイケル・ポーランの著書『雑食動物のジレンマ』を読んでから、いつも買っている肉に対して疑問を感じるようになったと言う。サンフランシスコのベイエリアで売られている有機食品を買うことはできたが、肉に関しては、飼育方法に満足のいく製品を買おうと思うとあまりに高くなってしまう。だからといって、肉を食べないという選択はしたくなかった。
オークランド西部の自宅で、すでにハーブや野菜を育てていたシャーキーさん。これからは、400平方メートルほどの土地の大半と労力を、家畜の飼育に集中させることにした。まず育て始めたのは、肉・ミルク・チーズのためのヤギ。最優先事項は、食べ物の質と、人道的な動物の扱いだ。「初めてヤギを冷凍庫に入れるときは、つらかったですね。でも、こうすることで自分の食べる肉には責任が持てるんです」と言う。それから数年後の今では動物の種類も増えた。卵と肉をとるための鶏とアヒル、肉用の七面鳥、糞は肥やしになる肉用のウサギ、何かあると騒ぐので警報代わりにもなるガチョウ、植え付け前の畑の土を耕してくれる豚、羊毛をとるための羊。「市の職員の人たちといい関係を保ち、農園での活動について、正直に、オープンにしておくことが上手くいく秘訣だと思います」とシャーキーさんは言う。この6年間、市から介入されることもなく、問題や苦情も全く出ていないということは、成功している証拠だろう。
1年のうち10か月間は、自分が食べる肉のうち約95%、卵と乳製品(バターを除く)は100%を自家生産している。平均して、1年のうち8か月間は、食料全体のうち60~70%を自家生産しているそうだ。夏がいちばん生産量の多い時期で、夏の間にとれた野菜や果物を瓶詰めにして保存し、1年中食べられるよう工夫している。
一方、数キロ離れた場所に住むキティ・シャーキーさんは、マイケル・ポーランの著書『雑食動物のジレンマ』を読んでから、いつも買っている肉に対して疑問を感じるようになったと言う。サンフランシスコのベイエリアで売られている有機食品を買うことはできたが、肉に関しては、飼育方法に満足のいく製品を買おうと思うとあまりに高くなってしまう。だからといって、肉を食べないという選択はしたくなかった。
オークランド西部の自宅で、すでにハーブや野菜を育てていたシャーキーさん。これからは、400平方メートルほどの土地の大半と労力を、家畜の飼育に集中させることにした。まず育て始めたのは、肉・ミルク・チーズのためのヤギ。最優先事項は、食べ物の質と、人道的な動物の扱いだ。「初めてヤギを冷凍庫に入れるときは、つらかったですね。でも、こうすることで自分の食べる肉には責任が持てるんです」と言う。それから数年後の今では動物の種類も増えた。卵と肉をとるための鶏とアヒル、肉用の七面鳥、糞は肥やしになる肉用のウサギ、何かあると騒ぐので警報代わりにもなるガチョウ、植え付け前の畑の土を耕してくれる豚、羊毛をとるための羊。「市の職員の人たちといい関係を保ち、農園での活動について、正直に、オープンにしておくことが上手くいく秘訣だと思います」とシャーキーさんは言う。この6年間、市から介入されることもなく、問題や苦情も全く出ていないということは、成功している証拠だろう。
1年のうち10か月間は、自分が食べる肉のうち約95%、卵と乳製品(バターを除く)は100%を自家生産している。平均して、1年のうち8か月間は、食料全体のうち60~70%を自家生産しているそうだ。夏がいちばん生産量の多い時期で、夏の間にとれた野菜や果物を瓶詰めにして保存し、1年中食べられるよう工夫している。
ルビー・ブルームさんは、果樹、ハーブ、花、多年生・一年生野菜をオークランドの自宅の裏庭で育てている。
1年中、栽培に適した気候
サンフランシスコ湾東岸が恵まれているのは、進歩的な条例があることだけではない。常に気候が穏やかなので、年間を通して菜園で作物が育つのだ。「1年中、ほとんど毎日、畑で採れたものを食べているんですよ」と、この地域で畑を作っているルビー・ブルームさんは言う。オークランド北部にある彼女の農園では、昨年もカボチャ180キロのほか、さまざまな野菜が収穫できた。肉用のウサギも育てており、食べ物について同じ考え方を持つ周囲の畑の人たちと物々交換している。ミルクやチーズ、卵はまったく買う必要がない。2月から10月にかけては、野菜や果物の70~90%を自給自足している。
1年中、栽培に適した気候
サンフランシスコ湾東岸が恵まれているのは、進歩的な条例があることだけではない。常に気候が穏やかなので、年間を通して菜園で作物が育つのだ。「1年中、ほとんど毎日、畑で採れたものを食べているんですよ」と、この地域で畑を作っているルビー・ブルームさんは言う。オークランド北部にある彼女の農園では、昨年もカボチャ180キロのほか、さまざまな野菜が収穫できた。肉用のウサギも育てており、食べ物について同じ考え方を持つ周囲の畑の人たちと物々交換している。ミルクやチーズ、卵はまったく買う必要がない。2月から10月にかけては、野菜や果物の70~90%を自給自足している。
裏庭でカボチャ囲いの前に立つルビー・ブルームさん。
ホップやブドウのつるが壁に沿って縦に伸びる。こうして、地面に場所をとらず育てることができる。
都市農業の難しいところ
畑づくりには困難がつきものだ。ちょっとでもトマトやレタスを育てたことがある人なら、水やりや日当たり、害虫対策に土づくりと、実にさまざまな問題について考えなければならなかっただろう。たったひとつの野菜や果物を育てるのにどれだけ手が掛かっているか、実感できるはずだ。それに加え、畑が狭く、近所との距離も近く、しかも土壌が固かったり汚染されているとなれば、都市農業がどれだけ難しいかわかるだろう。
先に登場したバークレーのワンダ・スチュワートさんは、畑づくりを始めてまもなく、作物を育てるためには敷地内の適切な場所を見つけることが大切だと気づいた。「1シーズンか2シーズンの間は、裏庭でうまく作物を育てることができたんです。」でも、そのあとは急に育たなくなってしまった。調べたり、近所の人に聞いたりした結果、土壌の栄養分が庭の下にある小川に流れてしまっていることが判明。周囲の木が育ち、陰を作る枝が広がったため、野菜に必要な6~8時間の直射日光が当たらなくなってしまったのだ。「せっかく最初の2シーズンはよく育ったのに、場所を移さなければいけないのはとても残念でした」とスチュワートさんは言う。
オークランドに住むシャーキーさんは、都市での家畜飼育を始めて何年も経ってから、いちばんの困難に直面した。Houzzは5月にシャーキーさんの農場を訪問したのだが、その2週間ほど前、隣で飼っている犬がフェンスの下を掘って入り込み、七面鳥のヒナ5羽とウサギを2羽、殺してしまったのだ。「隣の人のせいじゃありません」と言うものの、それからの2週間は彼女にとっても農場にとっても、辛い日々だった。そのうえ、鶏が小屋から逃げ出して、畑のレタス、ケール、チャード、からし菜を大量に食べてしまった。(シャーキーさんはその後フェンスを直し、どちらの事件も2度と繰り返さないよう十分な対策をとっている。)
都市農業の難しいところ
畑づくりには困難がつきものだ。ちょっとでもトマトやレタスを育てたことがある人なら、水やりや日当たり、害虫対策に土づくりと、実にさまざまな問題について考えなければならなかっただろう。たったひとつの野菜や果物を育てるのにどれだけ手が掛かっているか、実感できるはずだ。それに加え、畑が狭く、近所との距離も近く、しかも土壌が固かったり汚染されているとなれば、都市農業がどれだけ難しいかわかるだろう。
先に登場したバークレーのワンダ・スチュワートさんは、畑づくりを始めてまもなく、作物を育てるためには敷地内の適切な場所を見つけることが大切だと気づいた。「1シーズンか2シーズンの間は、裏庭でうまく作物を育てることができたんです。」でも、そのあとは急に育たなくなってしまった。調べたり、近所の人に聞いたりした結果、土壌の栄養分が庭の下にある小川に流れてしまっていることが判明。周囲の木が育ち、陰を作る枝が広がったため、野菜に必要な6~8時間の直射日光が当たらなくなってしまったのだ。「せっかく最初の2シーズンはよく育ったのに、場所を移さなければいけないのはとても残念でした」とスチュワートさんは言う。
オークランドに住むシャーキーさんは、都市での家畜飼育を始めて何年も経ってから、いちばんの困難に直面した。Houzzは5月にシャーキーさんの農場を訪問したのだが、その2週間ほど前、隣で飼っている犬がフェンスの下を掘って入り込み、七面鳥のヒナ5羽とウサギを2羽、殺してしまったのだ。「隣の人のせいじゃありません」と言うものの、それからの2週間は彼女にとっても農場にとっても、辛い日々だった。そのうえ、鶏が小屋から逃げ出して、畑のレタス、ケール、チャード、からし菜を大量に食べてしまった。(シャーキーさんはその後フェンスを直し、どちらの事件も2度と繰り返さないよう十分な対策をとっている。)
スチュワートさんの裏庭にある鶏小屋では、卵用に20羽の鶏が飼われている。
シャーキーさんの垂直型アクアポニックスシステム(魚の養殖と水耕栽培を組み合わせたシステム)ではレタスが育つ。下の水槽から、水と魚が排泄する養分がレタスの鉢に供給される循環システムだ。レタスの列の間にチューブが通っており、この中を水が流れて土を潤す。その土で水が浄化され、きれいになって下の水槽に戻る。
実践しながら学ぶ
困難の中からこそ、かしこい解決策が生まれるものだ。スチュワートさんは、家の表側の庭のほうが裏庭よりずっと日当たりが良く、土の質も良いことに気付き、表の庭で地面に直接栽培する方法に移行した。この家の以前のオーナーはガーデニングが好きで、粘土質の土壌を植物に適するように整えていたため、作物はすぐに育ち始めた。「いい土を譲り受けて、とてもラッキーでした」とスチュワートさん。
そして、日光の必要な作物が陰にならないよう、果物の木は敷地の北側に植えた。また、レタスは果樹の陰でよく育つことも学んだ。野菜の周りには、受粉を助けてくれる虫たちを呼び寄せるため野草の花の種をまいている。また、野菜の一部は収穫せず、毎年自然に育つように種が落ちるまでそのままにしておいた。日陰が多くあまり人目に付かない裏手の庭には鶏小屋を作り、新鮮な卵も手に入るようになった。
みんな共通して学んでいるのは、自分の庭の特徴をできる限り生かして、自走型のシステムを作ることだ。とくに鶏は、糞が肥やしとなって土壌を改善してくれるし、台所や庭から出る有機ごみを食べてくれる。さらに、シャーキーさんのアクアポニックスのようにかんがいを工夫したり、ブルームさんやスチュワートさんのように、水の少ない環境にも順応していく自生型の多年生植物を活用することで、畑のなかに持続可能なサイクルが生まれるのだ。
実践しながら学ぶ
困難の中からこそ、かしこい解決策が生まれるものだ。スチュワートさんは、家の表側の庭のほうが裏庭よりずっと日当たりが良く、土の質も良いことに気付き、表の庭で地面に直接栽培する方法に移行した。この家の以前のオーナーはガーデニングが好きで、粘土質の土壌を植物に適するように整えていたため、作物はすぐに育ち始めた。「いい土を譲り受けて、とてもラッキーでした」とスチュワートさん。
そして、日光の必要な作物が陰にならないよう、果物の木は敷地の北側に植えた。また、レタスは果樹の陰でよく育つことも学んだ。野菜の周りには、受粉を助けてくれる虫たちを呼び寄せるため野草の花の種をまいている。また、野菜の一部は収穫せず、毎年自然に育つように種が落ちるまでそのままにしておいた。日陰が多くあまり人目に付かない裏手の庭には鶏小屋を作り、新鮮な卵も手に入るようになった。
みんな共通して学んでいるのは、自分の庭の特徴をできる限り生かして、自走型のシステムを作ることだ。とくに鶏は、糞が肥やしとなって土壌を改善してくれるし、台所や庭から出る有機ごみを食べてくれる。さらに、シャーキーさんのアクアポニックスのようにかんがいを工夫したり、ブルームさんやスチュワートさんのように、水の少ない環境にも順応していく自生型の多年生植物を活用することで、畑のなかに持続可能なサイクルが生まれるのだ。
シャーキーさんの表の庭には、花粉を運ぶ虫を呼びよせるための植物が植えられている。車道と歩道の間の緑地帯には、近所の人のためにビートやプラムの木を植えた。無料で自由に本を借りられる「小さな図書館」も設置している。
近所とのつながり
新鮮で、無理のない値段の食べ物を手に入れたい、というのが、今回ご紹介した人たちが都市農業を始めたきっかけだが、ずっと続けている理由はそれだけではない。都市農園は、人と人をつなげるものでもあるのだ。‹住みやすい未来のための研究所›のサントさんは、「みんなといっしょに食べ物を育てる行為には、意識をすっかり変えてしまうような力があると、身をもって感じました」と言う。
スチュワートさんの庭では、狭さと日当たりの関係から、育てられる作物が限られている。でも、友人や近所の人から何だって手に入れることができるのだ。「物々交換ですね」とスチュワートさん。最近では、地域のある人が『コーガーデン』というアプリを立ち上げた。畑作りをする人たちのネットワークを作り、それぞれの特性に応じて、協力したり作物を分け合ったりすることができるアプリだ。「その庭によって、できる作物は決まってきます。みんなそれぞれがすべての野菜を育てることはできないし、そんな必要もないんです。」
シャーキーさんは、家の前の歩道脇の緑地帯を菜園にして、近所の人たちにあげる作物だけを作る畑に作り変えた。「小さな図書館」には、いつもいろいろな言語で書かれた本が用意され、自由に借りることができる。「近所のコミュニティにお返しがしたいんです。オークランドでは、自分のルーツを探ろうとする人たちが増えています。そして食べ物こそ、そのルーツの基本となるものなんです」とシャーキーさんは言う。
近所とのつながり
新鮮で、無理のない値段の食べ物を手に入れたい、というのが、今回ご紹介した人たちが都市農業を始めたきっかけだが、ずっと続けている理由はそれだけではない。都市農園は、人と人をつなげるものでもあるのだ。‹住みやすい未来のための研究所›のサントさんは、「みんなといっしょに食べ物を育てる行為には、意識をすっかり変えてしまうような力があると、身をもって感じました」と言う。
スチュワートさんの庭では、狭さと日当たりの関係から、育てられる作物が限られている。でも、友人や近所の人から何だって手に入れることができるのだ。「物々交換ですね」とスチュワートさん。最近では、地域のある人が『コーガーデン』というアプリを立ち上げた。畑作りをする人たちのネットワークを作り、それぞれの特性に応じて、協力したり作物を分け合ったりすることができるアプリだ。「その庭によって、できる作物は決まってきます。みんなそれぞれがすべての野菜を育てることはできないし、そんな必要もないんです。」
シャーキーさんは、家の前の歩道脇の緑地帯を菜園にして、近所の人たちにあげる作物だけを作る畑に作り変えた。「小さな図書館」には、いつもいろいろな言語で書かれた本が用意され、自由に借りることができる。「近所のコミュニティにお返しがしたいんです。オークランドでは、自分のルーツを探ろうとする人たちが増えています。そして食べ物こそ、そのルーツの基本となるものなんです」とシャーキーさんは言う。
草の生えた小道の両側に花壇が広がるブルームさんの庭。
ルビー・ブルームさんは、オークランドで農園を始めた当時、ベイエリアには都市農業や伝統的な農家生活に興味がある人たちが集まって学ぶための場所がないことに気付いた。そこで今から9年前に〈都市農家の学校〉を設立したのだ。
学校では年間50~75の講座を開催しており、各講座には10人程度が集まる。受講料はそれぞれが払える額を支払い、先生の指導のもと、発酵についての講座から、裏庭に果樹を植える方法まで、さまざまな内容を学ぶことができる。シャーキーさんとブルームさんはチーズ作り教室で出会い、現在シャーキーさんは講師としてヤギの飼育について教えている。スチュワートさんの庭を訪れる都市農園ツアーも、この学校が支援している活動だ。
学校では年間50~75の講座を開催しており、各講座には10人程度が集まる。受講料はそれぞれが払える額を支払い、先生の指導のもと、発酵についての講座から、裏庭に果樹を植える方法まで、さまざまな内容を学ぶことができる。シャーキーさんとブルームさんはチーズ作り教室で出会い、現在シャーキーさんは講師としてヤギの飼育について教えている。スチュワートさんの庭を訪れる都市農園ツアーも、この学校が支援している活動だ。
スチュワートさん(写真)の農作業の1つには、ボランティアとして地元の小学校で畑をつくる活動もある。子どもたちに、食べ物を自分で育てる喜びを教えるのだ。「いっしょに畑作りをした経験が、子どもたちの将来につながるといいなと思っています」とスチュワートさんは言う。
都市農園がこれからどうなっていくのかは、まだまだ未知数。だが、今回登場した人たちによると、そのメリットは明らかなようだ。「前よりスリムになったし、幸せだし、健康になりました。農園のおかげで、あらゆる面でより良い自分になれたと思います」と、スチュワートさん。さらに、個人的なこと以外にもいいところがある。「地域の人たちとふれあいながら暮らせる、最高の方法ですね。」
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