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Houzzツアー:樹木に抱かれ、月を見ながら眠る。伐採材や太陽の”自然の恵み”を活かした住まい
昼間は陽ざしのあたたかさや風を感じ、夜には横になって窓から月や星を眺められ、いつも樹木の感触や香りを楽しめる――絵画のように、静かで美しい自然と融け合う家。

Rieko Ozawa
2016年2月15日
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
Houzz contributors, Editor & Writer. I have been interested in the floor plan since I was a child. Then, I became an editor of the INTERIOR & HOUSING magazine. We bought a maisonette dwelling unit built in early 1980s and have been renovating little by little with my partner.
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
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フィンランドの建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルトの設計したメゾン・カレ(画商のルイ・カレ邸)に憧れを抱き、漠然とながらも理想の家のビジョンを思い描いていたAさん夫妻。
「メゾン・カレを映した好きな写真があって。絵画のように、静かで美しい自然と融け合うような――。こんな家に住みたいとずっと思っていました」
そんな憧憬を受け止めたatelier KUKKA architectsの大久保氏との出会い、そして、対話による深い理解によって、アアルトのデザイン要素と彼らの要望が融け合った美しい住まいが完成した。
A夫妻が幼い娘と3人で暮らすのは、東京近郊の住宅街。緑豊かな環境は、両親から譲り受けた土地の恵みによるもの。
「この一帯の原生林は、祖父や父が市街地に自然を残したいという思いで守ってきたものです。一部を切り開いて家を建てさせてもらったので、伐採した樹木は建材としてできるだけ利用したかった」とAさん。
伐採樹の欅や白樫を加工して、大黒柱、天井材、床材、キッチンやアトリエのカウンターに、あますことなく活用した。
メゾン・カレを彷彿とさせる印象的な外観の発端となったのは、ゆるやかに傾斜する土地。その高低差を活かし、平屋と2階建てを組み合わせた空間を構成することで、かみ合わせた屋根部分から効率的に光と風を取り込み、心地よい室内環境を実現。なだらかな広面積の屋根から集積した太陽熱を、室内に循環させる空調システムも採用(※注)することができた。
「けれども、何よりも素敵なのは、寝室から月が見えること」とAさんの奥さま。
かみ合わせの隙間を利用し、寝室に横になったときに月や星が望める窓を設けたのは、建築家のさりげない配慮だということは言うまでもない。
どんなHouzz?
家族構成:夫婦、子供1人
建築面積:114.26平方メートル
延床面積:136.71平方メートル
(1F94.49平方メートル+2F42.22平方メートル)
構造・工法:木造軸組み工法
設計:atelier KUKKA architects(アトリエKUKKA一級建築士事務所)
設計・施工:株式会社 榊住建
(※注):太陽熱循環型空調システムは、「株式会社 榊住建」の設計によるもの。
「メゾン・カレを映した好きな写真があって。絵画のように、静かで美しい自然と融け合うような――。こんな家に住みたいとずっと思っていました」
そんな憧憬を受け止めたatelier KUKKA architectsの大久保氏との出会い、そして、対話による深い理解によって、アアルトのデザイン要素と彼らの要望が融け合った美しい住まいが完成した。
A夫妻が幼い娘と3人で暮らすのは、東京近郊の住宅街。緑豊かな環境は、両親から譲り受けた土地の恵みによるもの。
「この一帯の原生林は、祖父や父が市街地に自然を残したいという思いで守ってきたものです。一部を切り開いて家を建てさせてもらったので、伐採した樹木は建材としてできるだけ利用したかった」とAさん。
伐採樹の欅や白樫を加工して、大黒柱、天井材、床材、キッチンやアトリエのカウンターに、あますことなく活用した。
メゾン・カレを彷彿とさせる印象的な外観の発端となったのは、ゆるやかに傾斜する土地。その高低差を活かし、平屋と2階建てを組み合わせた空間を構成することで、かみ合わせた屋根部分から効率的に光と風を取り込み、心地よい室内環境を実現。なだらかな広面積の屋根から集積した太陽熱を、室内に循環させる空調システムも採用(※注)することができた。
「けれども、何よりも素敵なのは、寝室から月が見えること」とAさんの奥さま。
かみ合わせの隙間を利用し、寝室に横になったときに月や星が望める窓を設けたのは、建築家のさりげない配慮だということは言うまでもない。
どんなHouzz?
家族構成:夫婦、子供1人
建築面積:114.26平方メートル
延床面積:136.71平方メートル
(1F94.49平方メートル+2F42.22平方メートル)
構造・工法:木造軸組み工法
設計:atelier KUKKA architects(アトリエKUKKA一級建築士事務所)
設計・施工:株式会社 榊住建
(※注):太陽熱循環型空調システムは、「株式会社 榊住建」の設計によるもの。
市街地では貴重な、木々に囲まれたのびやかな環境。理想としていた「静かで美しい自然と融け合う家」をテーマに、敷地の高低差を活かして空間を構成。屋根のかみ合わせ部分から効率よく光と風を取り込むことで、街路に面してのプライバシーを確保している。
庭にはユーカリ、ライスフラワー、フェイジョア、銅葉のユッカ、ユーフォルビア、ローズマリー、ラベンダー、ファジーネーブルなど、さまざまな樹木やハーブを、家族で楽しみながら植栽した。
庭にはユーカリ、ライスフラワー、フェイジョア、銅葉のユッカ、ユーフォルビア、ローズマリー、ラベンダー、ファジーネーブルなど、さまざまな樹木やハーブを、家族で楽しみながら植栽した。
「夫婦共通の趣味が植物なので、温室をつくることは外せないところでした」
植物を楽しむ空間として設けたのが、たくさん保有していた多肉植物のための温室兼コンサーバトリー。一般的に南側に配置することの多いコンサーバトリーは、真夏の直射による温度上昇を考慮し、東側に配置。
「夏はゴムプールを出して子どもの遊び場に、冬は薪ストーブ用の薪置き場に、多目的に活用しています」
植物を楽しむ空間として設けたのが、たくさん保有していた多肉植物のための温室兼コンサーバトリー。一般的に南側に配置することの多いコンサーバトリーは、真夏の直射による温度上昇を考慮し、東側に配置。
「夏はゴムプールを出して子どもの遊び場に、冬は薪ストーブ用の薪置き場に、多目的に活用しています」
室内とコンサーバトリーは、連続性をもたせた一体感のある空間構成。室内と街路の間に半屋外の空間を設けることで、視界を遮りながら、光と風、屋外の心地よさを取り込んでいる。庭の緑へとつながっていくさまも豊かな雰囲気。「カーテンを引かずに生活でき、いつも植物を眺めていられます」
A邸には、このコンサーバトリーのほかに、バスコート、屋上テラスといった3つの「光の庭」が設けられ、光と風、空、緑を心地よく暮らしに取り込んでいる。
A邸には、このコンサーバトリーのほかに、バスコート、屋上テラスといった3つの「光の庭」が設けられ、光と風、空、緑を心地よく暮らしに取り込んでいる。
「軸として、何十年経っても流行に左右されず、自分達がいつまでもよいと思い続けられる家にしたかった」とAさん夫妻。「室内装飾は家具でイメージをいくらでも変えられるので、ベースはシンプルに。そしてなるべく自然素材であること。子供のためにも、自然の流れで人に優しい住まいでありたいと思いました」
そのイメージどおり、内装はシンプルに、かつ、壁は漆喰、床は天然の無垢材と、素材にこだわった仕上げに。
敷地の高低差を利用して、リビングはダイニングより60㎝下げてゆるやかにゾーニング。天井高も下げることで吹き抜けのダイニングに対し心地よい”こもり感”を強調している。
また、吹き抜け上部に位置するかみ合わせの屋根から光と風を効率的に取り込み、明るく快適な室内を実現させた。
階段脇の柱は伐採した欅(けやき)を用いた5寸の大黒柱。「工務店のすすめもあって、意匠的なアクセントとして立てていただきました。家の象徴になりましたね」とA夫妻。
そのイメージどおり、内装はシンプルに、かつ、壁は漆喰、床は天然の無垢材と、素材にこだわった仕上げに。
敷地の高低差を利用して、リビングはダイニングより60㎝下げてゆるやかにゾーニング。天井高も下げることで吹き抜けのダイニングに対し心地よい”こもり感”を強調している。
また、吹き抜け上部に位置するかみ合わせの屋根から光と風を効率的に取り込み、明るく快適な室内を実現させた。
階段脇の柱は伐採した欅(けやき)を用いた5寸の大黒柱。「工務店のすすめもあって、意匠的なアクセントとして立てていただきました。家の象徴になりましたね」とA夫妻。
宅地のために伐採した木材を内装材に活用。欅の一枚板のキッチンカウンター、欅の五寸柱の大黒柱、白樫の天井、欅材をカットしたヘリンボーンの床など室内の随所に用いられ、家族の暮らしを見守っている。「最初は伐採材を利用すれば安くあがると思ったのですが、結果コストはかさみました。それでも存分に活かせてよかったと思っています」
キッチンは、リビングダイニングに向けてオープンでありながら、コンロや冷蔵庫など生活感の出るものは壁で目隠し。約1.5畳のパントリーを設け、収納力も抜群だ。
ダイニングで食事をしながらも緑を感じられるよう、林の緑を切り取るピクチャーウインドウを設置。換気用のすべり出し窓を別に設けることで、ピクチャーウインドウはFIXに。
ダイニングで食事をしながらも緑を感じられるよう、林の緑を切り取るピクチャーウインドウを設置。換気用のすべり出し窓を別に設けることで、ピクチャーウインドウはFIXに。
DK壁と廊下との間はガラスの仕切りに。アイアンに見えるフレームは、木材を黒く塗装した。「すべて見せたり、または隠したりせず、先に何かありそうと感じさせるような、ゆるやかな連続性を演出したいと思っていました。当初は上部だけをくりぬいた、カフェ風の室内窓を想定していましたが、全体をガラスにすることで、予想以上におおらかな印象の空間になりました」と大久保氏。
廊下の幅を広く取り、本棚を設けてホールのような空間に。目線の先にテラスと庭が続く、気持ちのいい場所となり、用途をあえて曖昧にしたことで、1Fのプラン全体にゆとりがもたらされた。
「この場所に限らず、優先順位としては実用性よりも視界に美しくおさまることを重要視したように思います。このホールをつくることで、LDKが狭くなるデメリットもありましたが、ゆとりある空間は日々の心にもゆとりを与えてくれると感じています」
「この場所に限らず、優先順位としては実用性よりも視界に美しくおさまることを重要視したように思います。このホールをつくることで、LDKが狭くなるデメリットもありましたが、ゆとりある空間は日々の心にもゆとりを与えてくれると感じています」
裁縫や手作業を楽しむための奥さまの趣味室。「カフェのような趣味室が欲しいという要望に対し、提案の段階で気にかけたことは、どの場所にもってくるかということでした。奥さまのワークスペースはキッチンの近くが多いのですが、今回提案したのは、一人の時間をじっくりと楽しめる異空間としての趣味室。LDKとは廊下を挟んでゆるやかにつなげながら、独立した空間を提案しました」。子供が小さいうちは同室で過ごせるよう、ゆとりをもたせた約7畳の空間だ。
「3つの光の庭」のひとつのバスコート。浴室、洗面の採光・通風を確保しながら、テラスとしても活用できる場となっている。
空を切り取る屋上テラス。寝室から続く気持ちのよい屋外スペースだ。「壁に囲まれているので、外からの視線が気にならないプライベートテラスです。南西面にあるので、冬でも温かく、ハンモックでお昼寝も楽しめます」
傾斜した庭をのぼっていく、玄関のアプローチ。階段をのぼる長いアプローチは、家に向かう期待感が醸成され、防犯面でも効果を発揮。レッドシダーのルーバーに囲まれた部分が屋上テラス。外壁のほどよいアクセントにもなっている。
「月を見ながら眠るため」の窓の設計プラン。寝室からライトコート越しに屋根のかみ合わせを抜け、月をキャッチする。
「意匠を優先させた”窓の少ない家”より、家族が帰ってきたときに家の灯りを感じられる、温かくて表情のある外観をつくりたいと思って設計をスタートさせました」と大久保氏。
夜には温室からの光が漏れ「光のボックス」のように。かみ合わせ屋根やルーバーの隙間からも光がこぼれ、昼とはまた一味違った表情を見せるA邸だ。
空の青と植物に映える昼間の表情も、灯りがともる夜の姿も愛おしく感じるとAさん夫妻は言う。
「無垢材の床や漆喰壁の自然素材と常に触れ合っている生活は温かみを感じ、木の変色や肌触りなど変わっていく様子も楽しめます。また、窓越しの植物や降り注ぐ朝日、やさしい月の光など、自然のエネルギーに心が和む瞬間が多々あることをとても贅沢に感じています」
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空の青と植物に映える昼間の表情も、灯りがともる夜の姿も愛おしく感じるとAさん夫妻は言う。
「無垢材の床や漆喰壁の自然素材と常に触れ合っている生活は温かみを感じ、木の変色や肌触りなど変わっていく様子も楽しめます。また、窓越しの植物や降り注ぐ朝日、やさしい月の光など、自然のエネルギーに心が和む瞬間が多々あることをとても贅沢に感じています」
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