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空き家をリフォーム・リノベーションする前に知っておきたいこと
所有している「空き家」や、購入予定の「空き家」。リフォームやリノベーションをする前に知っておきたいポイントと、誰に何を頼むべきか、費用の目安などについてご紹介します。
安井俊夫
2022年4月22日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
近年、空き家をリフォーム・リノベーションして、有効活用するという需要が増えています。この記事では、その際に注意したい点や、知っておきたい点、どの専門家に何をどのように依頼すると良いのか、費用の目安と合わせてご紹介します。
まずはじめに、「リフォーム」と「リノベーション」の違いをご説明しましょう。
まずはじめに、「リフォーム」と「リノベーション」の違いをご説明しましょう。
リフォームとは
リフォームとは、傷んだ仕上げ材を新しい仕上げ材に交換することを言います。床のフローリングや壁紙を張り替えたり、古くなった便器や洗面台、ユニットバスを新しい物に交換することも、リフォーム工事と呼びます。仕上げ材を新しく交換する程度ならば、建築確認申請をはじめとした許認可の取得は必要ありませんので、簡単な工事なら、DIYすることも可能です。
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リフォームとは、傷んだ仕上げ材を新しい仕上げ材に交換することを言います。床のフローリングや壁紙を張り替えたり、古くなった便器や洗面台、ユニットバスを新しい物に交換することも、リフォーム工事と呼びます。仕上げ材を新しく交換する程度ならば、建築確認申請をはじめとした許認可の取得は必要ありませんので、簡単な工事なら、DIYすることも可能です。
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リノベーションとは
一方、リノベーションとは、建物の性能や質を向上させたり、間取りや天井の形などを変えたりする工事のこと。リフォーム工事に比べて大規模な作業になります。工事に際しては事前の調査や準備、設計作業が必要となります。
例えば、今まで設けられていなかった断熱材を設置することで、家の断熱性能を高めたり、細かく区切られていた部屋の壁を取り払い、大きなひと続きの空間に変えてしまうことも、リノベーションと言います。建物を大幅にリノベーションする場合には、用途地域や防火地域によっては許認可を取得する必要があるかもしれませんので、念のために事前確認をしておく必要もあります。
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一方、リノベーションとは、建物の性能や質を向上させたり、間取りや天井の形などを変えたりする工事のこと。リフォーム工事に比べて大規模な作業になります。工事に際しては事前の調査や準備、設計作業が必要となります。
例えば、今まで設けられていなかった断熱材を設置することで、家の断熱性能を高めたり、細かく区切られていた部屋の壁を取り払い、大きなひと続きの空間に変えてしまうことも、リノベーションと言います。建物を大幅にリノベーションする場合には、用途地域や防火地域によっては許認可を取得する必要があるかもしれませんので、念のために事前確認をしておく必要もあります。
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リフォーム・リノベーション工事を行う際には、建物の現状を理解し、目的に合った工事を正しく行うために、インスペクションを行うことをおすすめします。
インスペクション(既存建物の状況調査)の重要性
「インスペクション」とは、古い建物を調査・検査・視察し、どんな状態にあるのかを専門家が査察することを言います。平成30年からは中古住宅を売買する際に、建物の状態に関して、一定の説明を行うことが義務化されました。それが以下の内容です。
インスペクションの依頼先には専門業者、不動産会社やリフォーム会社、設計事務所にも資格所有者であるホームインスペクターがいます。ひと口にインスペクションといっても、住宅の種類や工法によっても、チェックするポイントは違います。検査してもらう建物に似た建物を調査したことのある、経験豊かなインスペクターを選ぶとよいでしょう。
インスペクション(既存建物の状況調査)の重要性
「インスペクション」とは、古い建物を調査・検査・視察し、どんな状態にあるのかを専門家が査察することを言います。平成30年からは中古住宅を売買する際に、建物の状態に関して、一定の説明を行うことが義務化されました。それが以下の内容です。
- インスペクションという調査があることを説明する
- その建物がインスペクションを行っている場合には、その結果を報告する
- 売主や買主はインスペクションの結果内容を書面にて説明を受ける
インスペクションの依頼先には専門業者、不動産会社やリフォーム会社、設計事務所にも資格所有者であるホームインスペクターがいます。ひと口にインスペクションといっても、住宅の種類や工法によっても、チェックするポイントは違います。検査してもらう建物に似た建物を調査したことのある、経験豊かなインスペクターを選ぶとよいでしょう。
空き家だから気になること
そもそも人が住んでいる建物と空き家では、建物の傷み方が違います。空き家となっていた期間にもよりますが、換気できていない状態が続くと、木材が傷みやすくなります。
また、室内にこもった湿度の影響で各所にカビが発生することもあり、見えないところにも同じように傷みが生じます。
人が住んでいる場合にはなんとなく想像が付く事象も、空き家の場合にはわかりにくくなります。したがって空き家だった期間が長ければ長いほど、大掛かりな作業が必要となることは理解しておきましょう。
そもそも人が住んでいる建物と空き家では、建物の傷み方が違います。空き家となっていた期間にもよりますが、換気できていない状態が続くと、木材が傷みやすくなります。
また、室内にこもった湿度の影響で各所にカビが発生することもあり、見えないところにも同じように傷みが生じます。
人が住んでいる場合にはなんとなく想像が付く事象も、空き家の場合にはわかりにくくなります。したがって空き家だった期間が長ければ長いほど、大掛かりな作業が必要となることは理解しておきましょう。
空き家のリフォーム工事費用の目安
リフォームする内容によって金額が変わるのは当然ですが、壁紙の張替え工事程度なら、数万円から行えます。キッチンの交換やユニットバス本体の交換なら、数十万円から100万円台にもなりますが、シャワーホースの交換なら数万円で済みます。場合によっては自分でも交換できるでしょう。
外壁の塗り直しや屋根の葺き替え工事も、リフォーム工事に該当します。建物面積や屋根形状、塗装材料のグレードによって大きく変化しますが、足場の設置費用なども必要となるので、200~400万円程度は見込んでおきましょう。
建物内外に工事範囲が渡る場合には、それぞれの工事を別々に依頼するよりも、一社で対応して貰える会社に依頼する方が、安く収まると思います。
リフォームする内容によって金額が変わるのは当然ですが、壁紙の張替え工事程度なら、数万円から行えます。キッチンの交換やユニットバス本体の交換なら、数十万円から100万円台にもなりますが、シャワーホースの交換なら数万円で済みます。場合によっては自分でも交換できるでしょう。
外壁の塗り直しや屋根の葺き替え工事も、リフォーム工事に該当します。建物面積や屋根形状、塗装材料のグレードによって大きく変化しますが、足場の設置費用なども必要となるので、200~400万円程度は見込んでおきましょう。
建物内外に工事範囲が渡る場合には、それぞれの工事を別々に依頼するよりも、一社で対応して貰える会社に依頼する方が、安く収まると思います。
リノベーション工事費用の目安
空き家を大規模に工事する場合には、そのほとんどがリノベーション工事に該当します。例えば、間取りの変更したり、天井面を撤去したりして、空間の形自体を変える場合もあるでしょう。こうした大掛かりなリノベーション工事を行う場合には、設計者を依頼し、事前の計画をしっかりと立てることが重要です。
撤去したい柱や天井、壁があるときに、行き当たりばったりで工事を行うことは大変危険です。専門家と一緒に計画を立て、その上で工事の見積もりを取ることが必要です。
空き家を大規模に工事する場合には、そのほとんどがリノベーション工事に該当します。例えば、間取りの変更したり、天井面を撤去したりして、空間の形自体を変える場合もあるでしょう。こうした大掛かりなリノベーション工事を行う場合には、設計者を依頼し、事前の計画をしっかりと立てることが重要です。
撤去したい柱や天井、壁があるときに、行き当たりばったりで工事を行うことは大変危険です。専門家と一緒に計画を立て、その上で工事の見積もりを取ることが必要です。
もう一つ大切なのが、基礎の確認です。壁や天井の工事にばかりに気を取られず、床下の状態もチェックしておきましょう。とくに築年数の深い建物が空き家となっていた場合には、白アリの被害の有無や土台の腐朽具合などを、しっかり確認する必要があります。
リノベーションの場合、リフォーム工事よりも高額となり、500万円以上かかるケースもあるので、重要な項目にポイントを絞った予算計画を立てましょう。
リノベーションの場合、リフォーム工事よりも高額となり、500万円以上かかるケースもあるので、重要な項目にポイントを絞った予算計画を立てましょう。
空き家のリフォーム・リノベーションするメリットとは?
リフォーム・リノベーションを行うことのメリットとしてまず挙げられるのは、居住環境の向上と、生活スタイルに合った住空間を、新築するよりも安価に手に入れられることにあります。
また、手を加えることで建物の資産価値が高くなり、賃貸として貸し出すことも可能ですし、売却する際にもプラスに働きます。自己所有している家を長い期間空き家としているならば、倒壊や火災と言った事故原因になるリスクも減ります。
一方で、費用がかかることは覚悟しなくてはなりません。とくに、昭和56年6月1日以前に建てられた木造住宅は、現在の耐震性能とは違う基準で建てられているため、耐震補強工事を行う際にはかなり高額になる場合もあります。
リフォーム・リノベーションを行うことのメリットとしてまず挙げられるのは、居住環境の向上と、生活スタイルに合った住空間を、新築するよりも安価に手に入れられることにあります。
また、手を加えることで建物の資産価値が高くなり、賃貸として貸し出すことも可能ですし、売却する際にもプラスに働きます。自己所有している家を長い期間空き家としているならば、倒壊や火災と言った事故原因になるリスクも減ります。
一方で、費用がかかることは覚悟しなくてはなりません。とくに、昭和56年6月1日以前に建てられた木造住宅は、現在の耐震性能とは違う基準で建てられているため、耐震補強工事を行う際にはかなり高額になる場合もあります。
所有している「空き家」と購入する「空き家」の違い
空き家といっても、すでに所有している空き家と、これから購入する空き家では、リフォーム・リノベーションに対する考え方が違います。
例えば、自分が子ども時代に暮らしていた実家が空き家になっている場合には、思い入れがあり、すぐに住まない建物でも残しておきたいと考えるケースが多いです。
住まずに残す場合には、泥棒や不審火への対策や倒壊への配慮などが、工事すべき箇所のポイントとなるでしょう。玄関扉や老朽化した窓、敷地廻りのフェンスや倒壊の恐れのあるブロック塀、庭にうっそうと生い茂った樹木の選定などが、それにあたります。
建物内部に関しては、床板に穴や壁が朽ちているような状態ならば、専門家に見てもらったうえで、解体を考えなくてはならない時期なのかもしれません。
空き家といっても、すでに所有している空き家と、これから購入する空き家では、リフォーム・リノベーションに対する考え方が違います。
例えば、自分が子ども時代に暮らしていた実家が空き家になっている場合には、思い入れがあり、すぐに住まない建物でも残しておきたいと考えるケースが多いです。
住まずに残す場合には、泥棒や不審火への対策や倒壊への配慮などが、工事すべき箇所のポイントとなるでしょう。玄関扉や老朽化した窓、敷地廻りのフェンスや倒壊の恐れのあるブロック塀、庭にうっそうと生い茂った樹木の選定などが、それにあたります。
建物内部に関しては、床板に穴や壁が朽ちているような状態ならば、専門家に見てもらったうえで、解体を考えなくてはならない時期なのかもしれません。
これから購入する空き家の場合には、人が住むことが前提となります。仮に投資対象として購入する場合であっても、購入者自身か第三者に賃貸物件として貸し出し、誰かが住むことを前提としているはずです。この場合、気にしたいポイントはいくつかあります。
- 築年数が浅い
- 築年数が深くても、メンテナンス(リフォーム等)が行われている
- 空き家の管理者が定期的な換気や掃除などを行っている
- 流し台などの設備機器が漏水していない
- 天井や壁に雨漏りのシミがない
- 床鳴りがしない
- シャッターや窓の開閉がスムーズに動く
今後のリフォーム・リノベーション工事の見通し
総務省が5年ごとに実施している「住宅土地統計調査」(2018)によると、全国の空き家数は848万9千戸で、総住宅数のうち空き家率は13.6%と、過去最高数が記録されています。これは賃貸用住宅・売却用住宅のどちらも同じ増加傾向となっています。
今後も増加する空き家を減らすために、補助金や助成金の支援が進むと予想されます。現在でも多くの自治体が助成金を支給していますし、工事内容によっては、所得税の減税措置や固定資産税の控除なども適用されます。
空き家のリフォーム・リノベーションには費用がかかりますが、自分たちのライフスタイルにあった工事を行うことで、新しい快適な生活が手に入るはずです。自治体の制度なども上手に利用して、空き家の改築に挑戦してみてはいかがでしょうか。
ホームインスペクションも手がける住まいの専門家をHouzzで探す
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総務省が5年ごとに実施している「住宅土地統計調査」(2018)によると、全国の空き家数は848万9千戸で、総住宅数のうち空き家率は13.6%と、過去最高数が記録されています。これは賃貸用住宅・売却用住宅のどちらも同じ増加傾向となっています。
今後も増加する空き家を減らすために、補助金や助成金の支援が進むと予想されます。現在でも多くの自治体が助成金を支給していますし、工事内容によっては、所得税の減税措置や固定資産税の控除なども適用されます。
空き家のリフォーム・リノベーションには費用がかかりますが、自分たちのライフスタイルにあった工事を行うことで、新しい快適な生活が手に入るはずです。自治体の制度なども上手に利用して、空き家の改築に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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