2022年のプリツカー賞。初のアフリカ出身の建築家、ディエベド・フランシス・ケレが受賞
西アフリカの国ブルキナファソ出身で、ドイツを拠点に建築家、教育者、社会活動家として活躍するケレの建築とは?
Mitchell Parker
2022年3月21日
「建築界のノーベル賞」とも称されている「プリツカー賞」。2022年の受賞者は、ディエベド・フランシス・ケレ(56)に決定しました。ドイツに拠点を置くケレは、貧困地に建設されたサステナブルな公共施設のデザインで知られる建築家です。
この栄誉あるプリツカー建築賞を手にした初のアフリカ人となったケレですが、1965年、西アフリカの一国、ブルキナファソにある小さな村に生まれました。少年時代、大工仕事を学んで、いつかもっと立派な(そして涼しい)建物を造ることを夢見ていました。
受賞のきっかけとなったプロジェクトのひとつは、2001年に故郷のガンド村に建設された学校で、過酷な熱さを和らげられるようデザインされています。この学校は、地元で採掘される粘土でできたレンガで構築されたもので、冷たい空気を室内にとどめると同時に、天井を覆うレンガから熱を逃すことで、エアコン設備なしに快適な室内環境を保てるように設計されています。この新しい校舎建設により、学校の生徒数は120人から700人まで増加し、またこれをきっかけに、教師用の住宅と図書館の計画という新たなプロジェクトが立ちあがりました。このプロジェクト以降、その土地のコミュニティーの発展に資する、地域の資源を使ったサステナブルな建築作品が、彼のキャリアを特徴づけることとなりました。
「パラダイムを変え、リスクを恐れず夢を持つように勇気づけたいと考えています」と受賞にあたり述べたケレ。「お金があるからといって資源を無駄にして良いわけではありません。貧乏だからといって高い品質の創造を目指さないのも駄目です。品質や贅沢さ、快適さといったものは、すべての人が等しく享受するべきです。私たちはお互いに繋がっています。ですから、気候変動、デモクラシー、資源不足といった課題は、すべての人に共通の課題なのです」
この栄誉あるプリツカー建築賞を手にした初のアフリカ人となったケレですが、1965年、西アフリカの一国、ブルキナファソにある小さな村に生まれました。少年時代、大工仕事を学んで、いつかもっと立派な(そして涼しい)建物を造ることを夢見ていました。
受賞のきっかけとなったプロジェクトのひとつは、2001年に故郷のガンド村に建設された学校で、過酷な熱さを和らげられるようデザインされています。この学校は、地元で採掘される粘土でできたレンガで構築されたもので、冷たい空気を室内にとどめると同時に、天井を覆うレンガから熱を逃すことで、エアコン設備なしに快適な室内環境を保てるように設計されています。この新しい校舎建設により、学校の生徒数は120人から700人まで増加し、またこれをきっかけに、教師用の住宅と図書館の計画という新たなプロジェクトが立ちあがりました。このプロジェクト以降、その土地のコミュニティーの発展に資する、地域の資源を使ったサステナブルな建築作品が、彼のキャリアを特徴づけることとなりました。
「パラダイムを変え、リスクを恐れず夢を持つように勇気づけたいと考えています」と受賞にあたり述べたケレ。「お金があるからといって資源を無駄にして良いわけではありません。貧乏だからといって高い品質の創造を目指さないのも駄目です。品質や贅沢さ、快適さといったものは、すべての人が等しく享受するべきです。私たちはお互いに繋がっています。ですから、気候変動、デモクラシー、資源不足といった課題は、すべての人に共通の課題なのです」
ディエベド・フランシス・ケレ
プリツカー賞の選考委員会がリリースしたプロフィールによると、フランシスというミドルネームで呼ばれているケレ。彼の生まれたガンド村には安全な飲み水も電気もインフラもありませんでした。
「幼稚園もないコミュニティーで育ちましたが、コミュニティーそのものが私の家族でした」と言うケレ。「みんなが私の世話してくれて、村全部が遊び場でした。1日の大半を食糧と飲み水の確保に費やしていましたが、ただ一緒に過ごし、一緒に喋り、一緒に家を建てるといった時間もありました。薄明かりの中で祖母が座って物語を語ってくれる間、肩を寄せ合っていた部屋を覚えています。部屋の中では、祖母の声が私たちを包み込み、もっと近くに来て安全な場所を作るようにと呼びかけるのでした。これが建築を意識した一番初めの経験です」
1985年、ケレは大工の職業訓練のための奨学金を得てベルリンに移住。日中は屋根と家具の作り方を学び、夜はその他のクラスを受講する生活を送りました。1995年にはベルリン工科大学の奨学金を勝ち取り、2004年に建築の上級学位を取得しました。
プリツカー賞の選考委員会がリリースしたプロフィールによると、フランシスというミドルネームで呼ばれているケレ。彼の生まれたガンド村には安全な飲み水も電気もインフラもありませんでした。
「幼稚園もないコミュニティーで育ちましたが、コミュニティーそのものが私の家族でした」と言うケレ。「みんなが私の世話してくれて、村全部が遊び場でした。1日の大半を食糧と飲み水の確保に費やしていましたが、ただ一緒に過ごし、一緒に喋り、一緒に家を建てるといった時間もありました。薄明かりの中で祖母が座って物語を語ってくれる間、肩を寄せ合っていた部屋を覚えています。部屋の中では、祖母の声が私たちを包み込み、もっと近くに来て安全な場所を作るようにと呼びかけるのでした。これが建築を意識した一番初めの経験です」
1985年、ケレは大工の職業訓練のための奨学金を得てベルリンに移住。日中は屋根と家具の作り方を学び、夜はその他のクラスを受講する生活を送りました。1995年にはベルリン工科大学の奨学金を勝ち取り、2004年に建築の上級学位を取得しました。
ケレの出身地、西アフリカのブルキナファソのガンド村の小学校 (2001)
写真提供: Erik-Jan Ouwerkerk
在学中、ケレは自身初めての建築プロジェクトとなる故郷の村のガンド小学校(写真)を建てるために、$50,000の寄付金を集めました。ケレが設計した建物は、地元で採掘された赤粘土のレンガを大部分に使用し、地域住民の手を借りて建設されました。
このプロジェクトでケレは、2004年度のアーガー・ハーン建築賞を受賞し、翌年のベルリンを拠点にした個人事務所Kéré Architectureの設立に至ったのです。
その後、ケレはブルキナファソ、ケニア、モザンビーク共和国、ウガンダの各地で、学校や医療施設、コミュニティー空間の設計を手がけました。子どもの学校教育、医療、大人のための職業訓練などに使われている彼の作品は、コミュニティーの成長に貢献しています。
「ブルキナファソにおける良い建築とは、たとえば、座ることができ、室内に間接的に入る光が黒板全体や机の上など意図したところに当たるように設計されている教室です」とケレは話します。「どうしたら太陽光から熱だけを取り除き、有効に活用できるでしょう?温度調整により必要な快適性をもたらすことで、授業や学習に集中し、楽しんでもらうことのできる環境を作りだすことができます」
写真提供: Erik-Jan Ouwerkerk
在学中、ケレは自身初めての建築プロジェクトとなる故郷の村のガンド小学校(写真)を建てるために、$50,000の寄付金を集めました。ケレが設計した建物は、地元で採掘された赤粘土のレンガを大部分に使用し、地域住民の手を借りて建設されました。
このプロジェクトでケレは、2004年度のアーガー・ハーン建築賞を受賞し、翌年のベルリンを拠点にした個人事務所Kéré Architectureの設立に至ったのです。
その後、ケレはブルキナファソ、ケニア、モザンビーク共和国、ウガンダの各地で、学校や医療施設、コミュニティー空間の設計を手がけました。子どもの学校教育、医療、大人のための職業訓練などに使われている彼の作品は、コミュニティーの成長に貢献しています。
「ブルキナファソにおける良い建築とは、たとえば、座ることができ、室内に間接的に入る光が黒板全体や机の上など意図したところに当たるように設計されている教室です」とケレは話します。「どうしたら太陽光から熱だけを取り除き、有効に活用できるでしょう?温度調整により必要な快適性をもたらすことで、授業や学習に集中し、楽しんでもらうことのできる環境を作りだすことができます」
ガンド小学校
写真提供:Erik-Jan Ouwerkerk
ガンド小学校では、高く設けられたオーバーハング(張り出し)の屋根が、レンガでできた天井から熱を逃す作用を担っています。室内の家具は建築資材の残りを使って作られました。
「フランシス・ケレの作品全体から、その土地に根づいている素材のパワーを感じます」とプリツカー賞審査員は、受賞者発表のコメントで述べています。「彼の建築は、デザインから建設、資材、利用方法、そしてその独自性において、コミュニティーのためにコミュニティーと共に作り出されたものです。その土地とそこで暮らす地域住民に結びついています。てらいのない、気品溢れる建築です」
写真提供:Erik-Jan Ouwerkerk
ガンド小学校では、高く設けられたオーバーハング(張り出し)の屋根が、レンガでできた天井から熱を逃す作用を担っています。室内の家具は建築資材の残りを使って作られました。
「フランシス・ケレの作品全体から、その土地に根づいている素材のパワーを感じます」とプリツカー賞審査員は、受賞者発表のコメントで述べています。「彼の建築は、デザインから建設、資材、利用方法、そしてその独自性において、コミュニティーのためにコミュニティーと共に作り出されたものです。その土地とそこで暮らす地域住民に結びついています。てらいのない、気品溢れる建築です」
米モンタナ州にあるザイレンと名づけられたコンサートスペース (2019)
写真提供: Francis Kéré
アフリカ各地の作品のほか、ケレは、米国でもプロジェクトに取り組んできました。ここに写っているのは、イエローストーン国立公園の北に位置する、モンタナ州にあるティペット・ライズ・アートセンター (Tippet Rise Art Center)内に設けられたザイレン(Xylem)という名のコンサートスペースです。ブルキナファソの小さな村にみられる、木と藁で作られた集会所にインスパイアされたデザインです。
ザイレン(Xylem)の構造は、6角形のスチール製モジュールの集合体です。地元で伐採されたサステナブルな無垢の松の丸太が束ねられて、各モジュール内に収められています。
写真提供: Francis Kéré
アフリカ各地の作品のほか、ケレは、米国でもプロジェクトに取り組んできました。ここに写っているのは、イエローストーン国立公園の北に位置する、モンタナ州にあるティペット・ライズ・アートセンター (Tippet Rise Art Center)内に設けられたザイレン(Xylem)という名のコンサートスペースです。ブルキナファソの小さな村にみられる、木と藁で作られた集会所にインスパイアされたデザインです。
ザイレン(Xylem)の構造は、6角形のスチール製モジュールの集合体です。地元で伐採されたサステナブルな無垢の松の丸太が束ねられて、各モジュール内に収められています。
米カリフォルニア州インディオで開催されたフェスティバルにおけるインスタレーション (2019)
写真提供: Iwan Baan
2019年にカリフォルニア州インディオで開催されたコーチェラフェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)では、故郷の在来種であるバオバオの木にインスパイアされた鉄塔を、テンポラリー・インスタレーションとして建造。ピンク、オレンジ、ブルーに彩られた三角形の木板は、朝日と夕日の色彩を模したものです。
写真提供: Iwan Baan
2019年にカリフォルニア州インディオで開催されたコーチェラフェスティバル(Coachella Valley Music and Arts Festival)では、故郷の在来種であるバオバオの木にインスパイアされた鉄塔を、テンポラリー・インスタレーションとして建造。ピンク、オレンジ、ブルーに彩られた三角形の木板は、朝日と夕日の色彩を模したものです。
ブルキナファソのクドゥグに建てたブルキナ工科学校 (2020)
写真提供:Francis Kéré
ブルキナ工科学校 (The Burkina Institute of Technology)は、ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校(Lycée Schorge Secondary School)のキャンパスを増築したもので、教室が入った空間モジュールの集合体です。
写真提供:Francis Kéré
ブルキナ工科学校 (The Burkina Institute of Technology)は、ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校(Lycée Schorge Secondary School)のキャンパスを増築したもので、教室が入った空間モジュールの集合体です。
ブルキナ工科学校 (2020)
写真提供:Francis Kéré
風通しの良い中庭は、生徒にとって快適なたまり場になっています。建設現場で成形された粘土が内部空間を涼しく保ちます。コルゲート鋼板の傾斜屋根は、ユーカリの木の幹で裏打ちされています。地下の貯水槽に集められた雨水は、敷地内にあるマンゴー畑の水やリに利用しています。
「文化に対する彼の感受性は、社会的・環境的公平性を実現させるだけでなく、コミュニティーにふさわしい建物を建てるために必要な指針として、建築プロセス全般において機能している」と審査員はコメント。「彼は内なる確信を持っています。建築とは、物体(オブジェクト)の追求ではなく、目的(オブジェクティブ)の追求であるということを。そして、大事なのは完成品(プロダクト)ではなく過程(プロセス)だということを 」。
写真提供:Francis Kéré
風通しの良い中庭は、生徒にとって快適なたまり場になっています。建設現場で成形された粘土が内部空間を涼しく保ちます。コルゲート鋼板の傾斜屋根は、ユーカリの木の幹で裏打ちされています。地下の貯水槽に集められた雨水は、敷地内にあるマンゴー畑の水やリに利用しています。
「文化に対する彼の感受性は、社会的・環境的公平性を実現させるだけでなく、コミュニティーにふさわしい建物を建てるために必要な指針として、建築プロセス全般において機能している」と審査員はコメント。「彼は内なる確信を持っています。建築とは、物体(オブジェクト)の追求ではなく、目的(オブジェクティブ)の追求であるということを。そして、大事なのは完成品(プロダクト)ではなく過程(プロセス)だということを 」。
マリ国立博物館 (2010)
写真提供:Francis Kéré
2010年、ケレはマリ国立博物館と大統領官邸の間に位置する国立公園内の8つの既存施設の改築に取り組みました。この写真はその中のひとつ。自然が形成した岩石の上に建てられたこの建物は、地元で採掘される石でできています。独立した幅の広いオーバーハングの屋根は、パッシブクーリングを可能にしています。
「フランシス・ケレの作品は、数十億の恵まれない人々に十分な建物とインフラを提供することを目指す私たちに、持続不可能な生産・消費パターンを変える事の必要性を再認識させてくれます」と審査員。「絶え間なくテクノロジーが発展し続けている現状において、建造物の永続性と耐久性の意味するところは何か。建造物の利用と再利用とは。彼はこういった根本的な質問を投げかけているのです。同時に、彼の近代的なヒューマニズムの展開は、歴史、伝統、正確性、成文律と不文律についての深い造詣と結びついているのです」
写真提供:Francis Kéré
2010年、ケレはマリ国立博物館と大統領官邸の間に位置する国立公園内の8つの既存施設の改築に取り組みました。この写真はその中のひとつ。自然が形成した岩石の上に建てられたこの建物は、地元で採掘される石でできています。独立した幅の広いオーバーハングの屋根は、パッシブクーリングを可能にしています。
「フランシス・ケレの作品は、数十億の恵まれない人々に十分な建物とインフラを提供することを目指す私たちに、持続不可能な生産・消費パターンを変える事の必要性を再認識させてくれます」と審査員。「絶え間なくテクノロジーが発展し続けている現状において、建造物の永続性と耐久性の意味するところは何か。建造物の利用と再利用とは。彼はこういった根本的な質問を投げかけているのです。同時に、彼の近代的なヒューマニズムの展開は、歴史、伝統、正確性、成文律と不文律についての深い造詣と結びついているのです」
ロンドンのサーペンタイン・パビリオン (2017)
写真提供: Iwan Baan
ケレのサーペンタイン・パビリオンはロンドンのケンジントン・ガーデンズにて期間限定の建造物として設置されたものです。真ん中の独立した構造体は木の形にインスピレーションを受けたもの。カーブした外側の壁を構成するインディゴのモジュールは、ケレが幼い頃に着ていたブルーのブーブー(アフリカの伝統衣装)にインスパイアされています。
写真提供: Iwan Baan
ケレのサーペンタイン・パビリオンはロンドンのケンジントン・ガーデンズにて期間限定の建造物として設置されたものです。真ん中の独立した構造体は木の形にインスピレーションを受けたもの。カーブした外側の壁を構成するインディゴのモジュールは、ケレが幼い頃に着ていたブルーのブーブー(アフリカの伝統衣装)にインスパイアされています。
ブルキナファソのレオにある外科クリニック&ヘルスセンター (2014)
写真提供:Francis Kéré
ケレの作品の特徴である、土着の素材の利用とオーバーハングの屋根。この特徴を持ち合わせた10個のモジュールユニットで構成されているのは、ブルキナファソのレオにある外科クリニック&ヘルスセンター(Surgical Clinic and Health Centre)です。オペリーレン・イン・アフリカ(Operieren in Afrika)という団体が運営する、外科、産科、入院治療科を有する施設です。
写真提供:Francis Kéré
ケレの作品の特徴である、土着の素材の利用とオーバーハングの屋根。この特徴を持ち合わせた10個のモジュールユニットで構成されているのは、ブルキナファソのレオにある外科クリニック&ヘルスセンター(Surgical Clinic and Health Centre)です。オペリーレン・イン・アフリカ(Operieren in Afrika)という団体が運営する、外科、産科、入院治療科を有する施設です。
ブルキナファソのラオンゴにある健康・社会福祉センタ(2014)
写真提供:Francis Kéré
ブルキナファソのラオンゴ(Laongo)にある健康・社会福祉センター(Centre for Health and Social Welfare)は、現地で採掘された粘土とラテライトで作った壁と、ユーカリの木で作った屋根が特徴です。日除けがついた中庭は、婦人科、産科、歯科と内科分野の医療を提供する3つの連続ユニットへと繋がっています。
写真提供:Francis Kéré
ブルキナファソのラオンゴ(Laongo)にある健康・社会福祉センター(Centre for Health and Social Welfare)は、現地で採掘された粘土とラテライトで作った壁と、ユーカリの木で作った屋根が特徴です。日除けがついた中庭は、婦人科、産科、歯科と内科分野の医療を提供する3つの連続ユニットへと繋がっています。
ブルキナファソのリオにあるリオ・ドクターズ・ハウジング (2019)
写真提供:Francis Kéré
リオ・ドクターズ・ハウジング(Leo Doctors’ Housing)はブルキナファソのリオ(Leo)にある外科クリニック&ヘルスセンター(Surgical Clinic and Health Centre)で働く研修医とボランティアのための宿泊施設です。5つの住宅モジュールで構成されたこの施設は、熱気と風化を食い止める作用がある漆喰でコーティングされた圧縮アースブロックで作られています。
写真提供:Francis Kéré
リオ・ドクターズ・ハウジング(Leo Doctors’ Housing)はブルキナファソのリオ(Leo)にある外科クリニック&ヘルスセンター(Surgical Clinic and Health Centre)で働く研修医とボランティアのための宿泊施設です。5つの住宅モジュールで構成されたこの施設は、熱気と風化を食い止める作用がある漆喰でコーティングされた圧縮アースブロックで作られています。
ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校 (2016)
写真提供:Iwan Baan
ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校(Lycée Schorge Secondary School)は、パフォーマンスやセレモニー、集会に使われるコミュニティースペースを中心に9つの建物モジュールで構成されています。縦に並べられたユーカリの木で構成されるフェンスが、生徒と教員のための空間の日除けとして機能しています。
「ケレはシンプルなゴール −すなわち子供たちが快適に学校生活を送れるようにするというゴール− が建築プロジェクトの軸にあらねばならないと理解しています」と審査員はコメント。「世界の大部分において、サステナビリティは望まないエネルギーロスの阻止ではなく、望まないエネルギー獲得の阻止を意味します。発展途上国に暮らす人々の多くにとって、寒さよりも過酷な暑さの方が問題なのです」
「ケレはこの問題への対応として、臨機応変で高機能、そして表情豊かな建築的ボキャブラリーを作り出しました。ダブルルーフ、サーマルマス、ウィンドタワー(風の塔)、間接照明、通風、シェードチェンバー(従来の窓やドア、柱の代わりとなる)は、設計の軸となる手法であるだけでなく、建築を通して(コミュニティーが)尊厳を獲得する鍵になっています」
写真提供:Iwan Baan
ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校(Lycée Schorge Secondary School)は、パフォーマンスやセレモニー、集会に使われるコミュニティースペースを中心に9つの建物モジュールで構成されています。縦に並べられたユーカリの木で構成されるフェンスが、生徒と教員のための空間の日除けとして機能しています。
「ケレはシンプルなゴール −すなわち子供たちが快適に学校生活を送れるようにするというゴール− が建築プロジェクトの軸にあらねばならないと理解しています」と審査員はコメント。「世界の大部分において、サステナビリティは望まないエネルギーロスの阻止ではなく、望まないエネルギー獲得の阻止を意味します。発展途上国に暮らす人々の多くにとって、寒さよりも過酷な暑さの方が問題なのです」
「ケレはこの問題への対応として、臨機応変で高機能、そして表情豊かな建築的ボキャブラリーを作り出しました。ダブルルーフ、サーマルマス、ウィンドタワー(風の塔)、間接照明、通風、シェードチェンバー(従来の窓やドア、柱の代わりとなる)は、設計の軸となる手法であるだけでなく、建築を通して(コミュニティーが)尊厳を獲得する鍵になっています」
ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校 (2016)
写真提供:Iwan Baan
校舎の構造を担う地元で採掘されたラテライトから製造されたレンガは、内部を涼しく保ちます。
建築・デザインの記事をもっと読む
写真提供:Iwan Baan
校舎の構造を担う地元で採掘されたラテライトから製造されたレンガは、内部を涼しく保ちます。
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ブルキナファソのクドゥグにあるリセ・スコージ中等学校 (2016)
写真提供:Francis Kéré
独立したコルゲート鋼板製のオーバーハング屋根にはウィンドタワーが設けられ、建物内から熱を放出する役割を担っています。
写真提供:Francis Kéré
独立したコルゲート鋼板製のオーバーハング屋根にはウィンドタワーが設けられ、建物内から熱を放出する役割を担っています。
政治情勢で一時建設が中断しているブルキナファソ国会議事堂
完成予想図提供:Kéré Architecture
2014年の暴動の際に破壊された前の議事堂の代わりとして計画された、ケレ設計のブルキナファソ国会議事堂(Burkinabè national assembly building)は、段差と格子が特徴的なピラミッド型の建物で、127人収容可能な会議場を有しています。
完成予想図提供:Kéré Architecture
2014年の暴動の際に破壊された前の議事堂の代わりとして計画された、ケレ設計のブルキナファソ国会議事堂(Burkinabè national assembly building)は、段差と格子が特徴的なピラミッド型の建物で、127人収容可能な会議場を有しています。
現在建設中のベナン国会議事堂
完成予想図提供:Kéré Architecture
ケレはハーバード大学デザイン大学院とイエール大学建築大学院で客員教授を務め、2017年以降はミュンヘン工科大学に新しく設けられた建築デザイン・実践科目(Chair of Architectural Design and Participation)の学科長として教壇に立っています。カナダ王立建築家協会とアメリカ建築家協会の名誉研究員、そして王立英国建築家協会の支部会員でもあります。
「フランシス・ケレは、全てが不足している土地で、地球環境とその住人の持続可能性を追求する、建築界における草分け的存在です」と、この賞の発起人であるハイアット財団のトム・プリツカー会長は評価します。「彼は建築家であると同時に、世界から取り残されている地域に暮らす無数の市民の生活向上に奉仕する人間なのです。ケレは、美、慎み深さ、大胆さ、発明力が包括された建築作品を通して、この賞が掲げる理念を優雅に体現しています」と述べました。
プリツカー賞は、建築分野での重要な功績に対して、存命の建築家に毎年授与されます。 1979年にハイアット財団を通じてシカゴのプリツカー家によって設立されました。副賞は10万ドルとブロンズのメダルです。
権威あるこの賞を、これまで日本人では、丹下健三、槇文彦、安藤忠雄、妹島和世、西沢立衛、伊東豊雄、坂茂、磯崎新の8名が受賞しており、国籍別では最多となっています。また審査委員には、2010年に同賞を受賞した妹島和世が、メンバーとして名を連ねています。
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過去のプリツカー賞受賞者たち
完成予想図提供:Kéré Architecture
ケレはハーバード大学デザイン大学院とイエール大学建築大学院で客員教授を務め、2017年以降はミュンヘン工科大学に新しく設けられた建築デザイン・実践科目(Chair of Architectural Design and Participation)の学科長として教壇に立っています。カナダ王立建築家協会とアメリカ建築家協会の名誉研究員、そして王立英国建築家協会の支部会員でもあります。
「フランシス・ケレは、全てが不足している土地で、地球環境とその住人の持続可能性を追求する、建築界における草分け的存在です」と、この賞の発起人であるハイアット財団のトム・プリツカー会長は評価します。「彼は建築家であると同時に、世界から取り残されている地域に暮らす無数の市民の生活向上に奉仕する人間なのです。ケレは、美、慎み深さ、大胆さ、発明力が包括された建築作品を通して、この賞が掲げる理念を優雅に体現しています」と述べました。
プリツカー賞は、建築分野での重要な功績に対して、存命の建築家に毎年授与されます。 1979年にハイアット財団を通じてシカゴのプリツカー家によって設立されました。副賞は10万ドルとブロンズのメダルです。
権威あるこの賞を、これまで日本人では、丹下健三、槇文彦、安藤忠雄、妹島和世、西沢立衛、伊東豊雄、坂茂、磯崎新の8名が受賞しており、国籍別では最多となっています。また審査委員には、2010年に同賞を受賞した妹島和世が、メンバーとして名を連ねています。
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