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テクノロジーが可能にした、体験しながら進める家づくり
クライアントがどこにいても、デザインプロセスに没入してもらうことができるツールを活用する、建築家や設計士たちの取り組みをご紹介しましょう。
Rebecca Gross
2020年5月26日
コロナ危機を乗り切るべく業務方法の調整を進める建築家や設計士にとって、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトとVR(仮想現実)は、クライアントと遠隔で仕事をするための重要なツールとなるでしょう。これらのツールを利用すると、クライアントは新しい家が建つ前から、家の外観や雰囲気をよりよく理解できるようになります。玄関から廊下を通り抜けてリビングエリアに入り、窓の外の景色を眺め、家具の配置を確認し、実際にはまだお昼間であっても、空間が夕方にはどのように見えるか体験することができるのです。
2次元の設計図と3次元のモデルが実際にどのように見えるかを可視化するのは、難しい場合もあります。BIMとVRは、サイズ感、寸法、素材、照明、景色、そして自然光と人工光を表示して、新しい空間をより分かりやすく表現することができます。没入型VRシステムを使用すれば、建築家や設計士は、クライアントの反応とフィードバックを即座に評価して、リアルタイムで設計を改善できます。
BIMソフトやVRを活用し、設計プロセスにクライアントが没入できるようにしている、オーストラリアの3人の建築家にお話を伺いました。
2次元の設計図と3次元のモデルが実際にどのように見えるかを可視化するのは、難しい場合もあります。BIMとVRは、サイズ感、寸法、素材、照明、景色、そして自然光と人工光を表示して、新しい空間をより分かりやすく表現することができます。没入型VRシステムを使用すれば、建築家や設計士は、クライアントの反応とフィードバックを即座に評価して、リアルタイムで設計を改善できます。
BIMソフトやVRを活用し、設計プロセスにクライアントが没入できるようにしている、オーストラリアの3人の建築家にお話を伺いました。
3次元モデルでより詳しく伝える
Winter Architectureは、従来の手書きスケッチとドローイング、模型、Autodesk社の設計ソフトウェア「Revit」を組み合わせて、設計の展開・プレゼン・改善を行っています。Revitでは、建物全体、アセンブリ、またはコンポーネントを編集して、2次元図面または3次元モデルのより現実的なイメージを作成できます。
Winter Architectureでは、Revitで作成した設計図面とパースを、Googleハングアウトを介して、クライアントとオンラインで共有しています。Googleハングアウトでは画面を共有して全員が同じ画像を見ることができるのです。
こちらの写真は、ビクトリア州メルボルンのフィッツロイ地区にあるウィンター・アーキテクチャのスタジオを訪れた2人のクライアントです。同じくメルボルンのノースコート地区にある新しい家のデザインを見ています。
Winter Architectureは、従来の手書きスケッチとドローイング、模型、Autodesk社の設計ソフトウェア「Revit」を組み合わせて、設計の展開・プレゼン・改善を行っています。Revitでは、建物全体、アセンブリ、またはコンポーネントを編集して、2次元図面または3次元モデルのより現実的なイメージを作成できます。
Winter Architectureでは、Revitで作成した設計図面とパースを、Googleハングアウトを介して、クライアントとオンラインで共有しています。Googleハングアウトでは画面を共有して全員が同じ画像を見ることができるのです。
こちらの写真は、ビクトリア州メルボルンのフィッツロイ地区にあるウィンター・アーキテクチャのスタジオを訪れた2人のクライアントです。同じくメルボルンのノースコート地区にある新しい家のデザインを見ています。
同時にこのスクリーンは、Winter Architectureのリードデザイナーで西オーストラリア州パース在住のクレア・ホワイトと、メルボルン在住のジェームス・エンブリにも共有されています。
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Winter Architectureと Karen Butler Interior Designのコラボレーション 画像:テス・ケリー・フォトグラフィー
ソフトウェアを使うと、クライアントの視点を部屋の一か所に固定し、旋回させて周囲のビューを360度取り込むことができます。
「3次元モデルにより、クライアントは自分のデザインにアクセスしやすくなり、デザインのニュアンスをよりよく理解できるようになりました」と、Winter Architectureのディレクターであるジーン・グラハムは言います。
「クライアントにモデルの中を案内し、視点、太陽光、そして時間によって、家がそれぞれどのように見えるかをお見せします」。クライアントからは、好みの料理方法にあわせたキッチンキャビネットやベンチの配置といった、造作の詳細に関するフィードバックを即座に伝えてもらうことができます。
ソフトウェアを使うと、クライアントの視点を部屋の一か所に固定し、旋回させて周囲のビューを360度取り込むことができます。
「3次元モデルにより、クライアントは自分のデザインにアクセスしやすくなり、デザインのニュアンスをよりよく理解できるようになりました」と、Winter Architectureのディレクターであるジーン・グラハムは言います。
「クライアントにモデルの中を案内し、視点、太陽光、そして時間によって、家がそれぞれどのように見えるかをお見せします」。クライアントからは、好みの料理方法にあわせたキッチンキャビネットやベンチの配置といった、造作の詳細に関するフィードバックを即座に伝えてもらうことができます。
Winter ArchitectureとField Office Architectureのコラボレーション 画像:デーヴ・クレッザ・フォトグラフィー
このようにデザインを共有することで、家庭の事情や、旅行、仕事、またはそのほかの理由により、建築家とクライアントが直接会うことができない場合に柔軟な対応をすることができます。「はるかに迅速で効率的な仕事のやり方ですので、きっと新たなスタンダードとなるでしょう」とグラハム。
新型コロナウイルスで、私たちの住まいはどう変化する?
このようにデザインを共有することで、家庭の事情や、旅行、仕事、またはそのほかの理由により、建築家とクライアントが直接会うことができない場合に柔軟な対応をすることができます。「はるかに迅速で効率的な仕事のやり方ですので、きっと新たなスタンダードとなるでしょう」とグラハム。
新型コロナウイルスで、私たちの住まいはどう変化する?
ヘッドセットで仮想空間に没入
Moloney Architectsは、VRをさらに一歩先へ進め、オキュラス社のヘッドセットなどのヘッドマウントディスプレイを使用して、まるで部屋のなかに実際にいるような体験を提供しています。クライアントは外界から遮断され、仮想環境に没入することができます。Moloney Architectsは、いまホームオフィスである自社スタジオからこの体験を提供しています。その上、ヘッドセットは手頃な価格で購入できるため、クライアントは自宅にいながら体験することも可能です。Moloney Architectsは、ヘッドセットで表示できる3次元ファイルへのリンクをメールで送信しています。
Moloney Architectsは、VRをさらに一歩先へ進め、オキュラス社のヘッドセットなどのヘッドマウントディスプレイを使用して、まるで部屋のなかに実際にいるような体験を提供しています。クライアントは外界から遮断され、仮想環境に没入することができます。Moloney Architectsは、いまホームオフィスである自社スタジオからこの体験を提供しています。その上、ヘッドセットは手頃な価格で購入できるため、クライアントは自宅にいながら体験することも可能です。Moloney Architectsは、ヘッドセットで表示できる3次元ファイルへのリンクをメールで送信しています。
空間がどのように見えるかを360度把握できるように、クライアントの視点を部屋の任意ポイントに固定します。「例えばホームオフィスをお見せする場合には、クライアントには当社オフィスの机についてもらい、仮想環境内で視点を机に設定します。そうすることにより、適切な高さから空間を体験してもらうことができるのです」とマローニ・アーキテクツの共同創設者兼ディレクターである、ミック・マローニは説明します。
クライアントがヘッドセットで見る画像も、スタジオのコンピューターにストリーミングされるため、設計チームはクライアントが何を見ているか、何を指しているかを正確に把握することができます。
クライアントがヘッドセットで見る画像も、スタジオのコンピューターにストリーミングされるため、設計チームはクライアントが何を見ているか、何を指しているかを正確に把握することができます。
シミュレートされた空間内では、1日あるいは1年の異なる時間における、太陽の位置や採光の変化が体験できます。VRには、現場からの景色などのMoloney Architectsが住宅設計のために取り入れた環境データや、そのほかの関連データを組み込むこともできます。
「まずは現場を訪れて景色のパノラマ写真を撮り、それらをつなぎ合わせて3Dモデル内に“仮想ビュー”を作成しました」とマローニは言います。「そして、仮想空間内でクライアントの視点をご自分の机に設定にして、実際の眺めを再現しました」
「まずは現場を訪れて景色のパノラマ写真を撮り、それらをつなぎ合わせて3Dモデル内に“仮想ビュー”を作成しました」とマローニは言います。「そして、仮想空間内でクライアントの視点をご自分の机に設定にして、実際の眺めを再現しました」
画像:ルーカス・ミュロ・フォトグラファー
VR活用で作業効率と精度アップ
Koda DesignもRevitを使用しており、そこに仮想現実とリアルタイムレンダリング・プラグイン・ソフトウェアのレイヤーを重ねています。「一見は百聞に如かず、といいますね。VRなら、はるかに多くのことが伝えられます価値があります」と話すのは、Koda Designのディレクター、デーン・パワーです。
建築設計チームは、設計プロセスの初期段階からVRを使用して、クライアントがプロジェクトの初めから、設計とコンセプトを理解できるようにしています。「2時間のミーティングに相当するアイデアを提案したり、話し合ったりすることが可能になるのです」とパワーはいいます。
デジタルでつくる心地よさ。遊びごころが楽しい積み木のような家
VR活用で作業効率と精度アップ
Koda DesignもRevitを使用しており、そこに仮想現実とリアルタイムレンダリング・プラグイン・ソフトウェアのレイヤーを重ねています。「一見は百聞に如かず、といいますね。VRなら、はるかに多くのことが伝えられます価値があります」と話すのは、Koda Designのディレクター、デーン・パワーです。
建築設計チームは、設計プロセスの初期段階からVRを使用して、クライアントがプロジェクトの初めから、設計とコンセプトを理解できるようにしています。「2時間のミーティングに相当するアイデアを提案したり、話し合ったりすることが可能になるのです」とパワーはいいます。
デジタルでつくる心地よさ。遊びごころが楽しい積み木のような家
Koda DesignのVRは、2種類のフォーマットでヘッドマウントディスプレイを使用します。1つはモバイル型。クライアントは自宅または現場で仮想環境に没入し、固定ポイントから家の内装または外観を見ることができます。
2つめのフォーマットは、さらに没入型のシミュレーション体験を提供するもの。コダは、クイーンズランド州ブリスベンのスタジオにVRゾーンを設けており、クライアントはヘッドセットとハンドコントローラーを使用して、家の中を効率良く歩き回り、空間をより完全に理解することができます。クライアントから即座にフィードバックを伝えてもらい、そのリクエストに応じてリアルタイムで変更を行うことも可能です。
2つめのフォーマットは、さらに没入型のシミュレーション体験を提供するもの。コダは、クイーンズランド州ブリスベンのスタジオにVRゾーンを設けており、クライアントはヘッドセットとハンドコントローラーを使用して、家の中を効率良く歩き回り、空間をより完全に理解することができます。クライアントから即座にフィードバックを伝えてもらい、そのリクエストに応じてリアルタイムで変更を行うことも可能です。
コダ・デザインは、他のコンサルタントや共同作業者ともVRを使用してデザインを行い、関係者全員の効率と精度を向上させています。
「施工業者や照明コンサルタントとのコミュニケーションツールとして使用しています。VRリンク付きの天井伏図を照明担当者に送信して、照明担当者が空間のニュアンスを完全に感じ取れるようにしています」とパワー。「積算のために施工業者にリンクを送信することもできます。たとえば、施工業者は壁面を選択することで、長さ、高さ、面積などの特性を理解して、積算することができるのです」
VRを利用することで、より大きなスケールの複数ユーザーによるコラボレーションも可能になります。とくに、大規模な商用プロジェクトで有用です。コダも、オーストラリア首都特別地域のキャンベラに建設されたショッピングモール、ウェストフィールドのプロジェクトでVRを活用したといいます。州をまたぐ複数のコンサルタントが、仮想アバターを介してシミュレーションモデル内でミーティングを行うことで、平面図では見えなかった問題を特定し、デザインと設計図書内で解決することができたそうです。
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「施工業者や照明コンサルタントとのコミュニケーションツールとして使用しています。VRリンク付きの天井伏図を照明担当者に送信して、照明担当者が空間のニュアンスを完全に感じ取れるようにしています」とパワー。「積算のために施工業者にリンクを送信することもできます。たとえば、施工業者は壁面を選択することで、長さ、高さ、面積などの特性を理解して、積算することができるのです」
VRを利用することで、より大きなスケールの複数ユーザーによるコラボレーションも可能になります。とくに、大規模な商用プロジェクトで有用です。コダも、オーストラリア首都特別地域のキャンベラに建設されたショッピングモール、ウェストフィールドのプロジェクトでVRを活用したといいます。州をまたぐ複数のコンサルタントが、仮想アバターを介してシミュレーションモデル内でミーティングを行うことで、平面図では見えなかった問題を特定し、デザインと設計図書内で解決することができたそうです。
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