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緑のふわふわカーペット。苔の特徴を知ってモスガーデンを作ろう
美しくみずみずしい、さまざまな種類の苔を庭づくりに生かしてみましょう。
舩村佳織
2018年6月12日
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています。
二児の子育て中でもあり、家族みんなが楽しめる庭造りが得意です。設計者として、主婦としての目線から、暮らしやすさに寄り添います。
造園会社にて個人邸外構・庭の設計施工を行うプランナーとして勤務後、ニュージーランドにて現地の植物ナーセリー勤務及び園芸関係のボランティアを1年間経験。現在は静岡県富士市を中心に自然素材を使った庭づくりを行っています... もっと見る
日本庭園の苔の美しさに心を奪われたことはありませんか?瑞々しい柔らかな緑のカーペットは、芝生とはまた違った魅力があります。庭に苔を使う手法は日本では古くから取り入れられていましたが、海外でも苔の美しさが理解され始め、モスガーデン(moss=苔)と呼ばれる庭が造られています。モスガーデンの原点ともいえる日本ですが、美しい苔庭は個人のお宅ではあまり多くはありません。
今回は、この前編と後編に分けて、苔の魅力をみなさんにあらためてお伝えいたします。苔の美しさに憧れている方はぜひ参考にしてみてください。
今回は、この前編と後編に分けて、苔の魅力をみなさんにあらためてお伝えいたします。苔の美しさに憧れている方はぜひ参考にしてみてください。
苔とは?
苔は非常に原始的な植物の形態をしており、4憶5千万年前に陸上に現れたといわれています。苔が陸上に現れてから5千万年ほど後に、水分や養分を運ぶための器官である維管束(いかんそく)を持つ、原始的な植物であるシダが現れたと言います。
私たちが普段植物として認識しているものは、大概が維管束植物ですが、苔は維管束を持ちません。苔は葉から直接水分や養分を吸収し、毛細管内を移動させて利用しています。
維管束植物に比べて単純と言える構造のおかげで、地球の気候変動にも対応して、現代まで残りました。恐竜の絶滅も見てきたと思うと、とても神秘的ですね。
苔は非常に原始的な植物の形態をしており、4憶5千万年前に陸上に現れたといわれています。苔が陸上に現れてから5千万年ほど後に、水分や養分を運ぶための器官である維管束(いかんそく)を持つ、原始的な植物であるシダが現れたと言います。
私たちが普段植物として認識しているものは、大概が維管束植物ですが、苔は維管束を持ちません。苔は葉から直接水分や養分を吸収し、毛細管内を移動させて利用しています。
維管束植物に比べて単純と言える構造のおかげで、地球の気候変動にも対応して、現代まで残りました。恐竜の絶滅も見てきたと思うと、とても神秘的ですね。
苔は地球上に2万5千種あると言われており、日本には1800種類が自生します。水が豊かな日本は苔の生育に適した環境です。生えてほしくないところに苔が生えてしまって、困ってしまうことも。しかし改めて庭に苔を植えようと思ってもうまくいかず枯れてしまったり……。それは環境に適した苔を選べていないからかもしれません。
植える場所に適した苔は必ず見つかります。環境別のおすすめの苔をご紹介します。
庭園・ガーデニングのプロを探す
植える場所に適した苔は必ず見つかります。環境別のおすすめの苔をご紹介します。
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スナゴケ
場所:半日以上日が当たるところ
苔というとちょっと湿った暗い場所を好むというイメージがありますが、スナゴケのように日向で生育できる苔もあります。乾燥に強く、反面過湿を嫌うので、水のやりすぎには注意。
繁殖力もあり、どんな土壌でも育ちます。根があまり発達しないので、はがれやすい苔なので、水やりは柔らかい水圧であげましょう。初心者向けの育てやすい苔です。
場所:半日以上日が当たるところ
苔というとちょっと湿った暗い場所を好むというイメージがありますが、スナゴケのように日向で生育できる苔もあります。乾燥に強く、反面過湿を嫌うので、水のやりすぎには注意。
繁殖力もあり、どんな土壌でも育ちます。根があまり発達しないので、はがれやすい苔なので、水やりは柔らかい水圧であげましょう。初心者向けの育てやすい苔です。
ハイゴケ
場所:一日数時間日が当たるところ
半日陰~日向を好みます。スナゴケ同様どんな土壌でも育ち、繁殖力が強く強健です。名前のとおり、這うように伸びる苔で、土を覆うように広がっていきます。
日があまり当たらない場所では深い緑色になり、日が当たるところでは明るい緑になります。こちらも初心者におすすめの苔です。
場所:一日数時間日が当たるところ
半日陰~日向を好みます。スナゴケ同様どんな土壌でも育ち、繁殖力が強く強健です。名前のとおり、這うように伸びる苔で、土を覆うように広がっていきます。
日があまり当たらない場所では深い緑色になり、日が当たるところでは明るい緑になります。こちらも初心者におすすめの苔です。
カモジゴケ
場所:明るい日陰
直射日光が入らない半日陰を好みます。フサフサとした葉で、日本髪を結うときに使う付け毛のカモジに似ているため、カモジゴケと呼ばれています。
一年中きれいな緑色を保つ苔で、冬季の美しさは一番です。直射日光を避けられれば、ある程度の乾燥にも耐えられるので、手がかからず育てやすいです。
場所:明るい日陰
直射日光が入らない半日陰を好みます。フサフサとした葉で、日本髪を結うときに使う付け毛のカモジに似ているため、カモジゴケと呼ばれています。
一年中きれいな緑色を保つ苔で、冬季の美しさは一番です。直射日光を避けられれば、ある程度の乾燥にも耐えられるので、手がかからず育てやすいです。
ハネヒツジゴケ
場所:明るい日陰
少し日が入る半日陰~日陰で育ちます。ハイゴケのように這うように伸びる苔です。庭にも使われますが、苔玉やテラリウムによく使われます。極端な乾燥は嫌いますが、管理は比較的容易。葉が褐色になってきたら、乾燥しているサインなので水やりを行いましょう。苔は多少乾燥によるダメージを受けても、水やりをすれば回復することが多いです。
場所:明るい日陰
少し日が入る半日陰~日陰で育ちます。ハイゴケのように這うように伸びる苔です。庭にも使われますが、苔玉やテラリウムによく使われます。極端な乾燥は嫌いますが、管理は比較的容易。葉が褐色になってきたら、乾燥しているサインなので水やりを行いましょう。苔は多少乾燥によるダメージを受けても、水やりをすれば回復することが多いです。
ホソバオキナゴケ
場所:暗い日陰
日陰~半日陰で生育します。直射日光は避けましょう。ホソバオキナゴケは「苔寺」として知られている西芳寺で見ることができます。「饅頭苔(まんじゅうごけ)」とも呼ばれるように、モコモコとした塊となって成長します。塊の中は蒸れやすいので、水のやりすぎは避けましょう。
他の4種類の苔よりも生育は遅く、管理は難しいですが、モコモコとしたシルエットは他の苔には無い魅力があります。
場所:暗い日陰
日陰~半日陰で生育します。直射日光は避けましょう。ホソバオキナゴケは「苔寺」として知られている西芳寺で見ることができます。「饅頭苔(まんじゅうごけ)」とも呼ばれるように、モコモコとした塊となって成長します。塊の中は蒸れやすいので、水のやりすぎは避けましょう。
他の4種類の苔よりも生育は遅く、管理は難しいですが、モコモコとしたシルエットは他の苔には無い魅力があります。
苔の植え方
苔の植え付けは「貼り苔」が一般的です。
「貼り苔」はマット状になっている苔を土の上に置き、定着させるものです。土は最初に水で湿らせておき、そこに苔のマットを置きます。上からしっかり押さえ土に密着させ、目土を入れて潅水します。
庭・ランドスケープの写真をもっと見る
苔の植え付けは「貼り苔」が一般的です。
「貼り苔」はマット状になっている苔を土の上に置き、定着させるものです。土は最初に水で湿らせておき、そこに苔のマットを置きます。上からしっかり押さえ土に密着させ、目土を入れて潅水します。
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苔の管理
水やり
適した環境を選んで植えたら後は日常のお手入れをしていきます。
苔には根がありますが、他の植物とは少し役割が違います。樹木や草花は根で水分を吸収しますが、苔の根は仮根と呼ばれるもので、体をくっつけるための機能をもつものです。苔は全身から水分を吸収しているため、水やりは土だけでなく全体を湿らせることと、湿度を適正に保つことが重要になります。
苔の水やりは朝に一度を基本としましょう。夏場乾燥が激しい場合は夕方にももう一度やりましょう。苔は乾燥してくると白っぽく色が変化したり、葉が縮れたりします。そのような変化を見逃さないようにしましょう。
苔は湿っている方が良いのでは? と思い込んで水やりをしすぎると、カビの原因となってしまいます。過度な水やりは厳禁。
水やり
適した環境を選んで植えたら後は日常のお手入れをしていきます。
苔には根がありますが、他の植物とは少し役割が違います。樹木や草花は根で水分を吸収しますが、苔の根は仮根と呼ばれるもので、体をくっつけるための機能をもつものです。苔は全身から水分を吸収しているため、水やりは土だけでなく全体を湿らせることと、湿度を適正に保つことが重要になります。
苔の水やりは朝に一度を基本としましょう。夏場乾燥が激しい場合は夕方にももう一度やりましょう。苔は乾燥してくると白っぽく色が変化したり、葉が縮れたりします。そのような変化を見逃さないようにしましょう。
苔は湿っている方が良いのでは? と思い込んで水やりをしすぎると、カビの原因となってしまいます。過度な水やりは厳禁。
掃除
水やりよりも根気が必要なのが掃除です。今までご説明したとおり、どんな種類もある程度の日光を必要とします。そのため落ち葉が堆積した状態だと、日光を遮り苔が傷んでしまいます。熊手やほうきを使う場合は、苔が傷つかないように表面の落ち葉のみを触るようにして落ち葉を取り除きましょう。ブロワー(送風機)があると苔を傷めずに掃除が可能です。
苔には芝生同様、雑草が生えてきます。大きくなってから雑草を引き抜こうとすると、苔ごとめくれてしまうため、小さいうちに発見して抜くようにします。
水やりよりも根気が必要なのが掃除です。今までご説明したとおり、どんな種類もある程度の日光を必要とします。そのため落ち葉が堆積した状態だと、日光を遮り苔が傷んでしまいます。熊手やほうきを使う場合は、苔が傷つかないように表面の落ち葉のみを触るようにして落ち葉を取り除きましょう。ブロワー(送風機)があると苔を傷めずに掃除が可能です。
苔には芝生同様、雑草が生えてきます。大きくなってから雑草を引き抜こうとすると、苔ごとめくれてしまうため、小さいうちに発見して抜くようにします。
風通し
苔の調子が良くない場合は、風が当たりすぎる可能性があります。風通しが良い場所だと、苔に最適な湿度が保てないため、乾燥してしまいがちです。フェンスや植栽で風を防ぐようにすると、状態も良くなっていきます。
冬場の注意点
季節ごとの管理としては、夏場は乾燥させないように注意することと、冬場は霜柱による痛みに気を付けます。霜柱は仮根しか持たない苔を持ち上げてしまいます。昼間の霜が溶けている時間に、優しく押して地面と密着させるようにしましょう。凍っているときに無理に押してしまうと、苔がバラバラになってしまうのでNG。放置しておくと仮根が傷み、風で苔が飛んでいってしまいます。
苔の調子が良くない場合は、風が当たりすぎる可能性があります。風通しが良い場所だと、苔に最適な湿度が保てないため、乾燥してしまいがちです。フェンスや植栽で風を防ぐようにすると、状態も良くなっていきます。
冬場の注意点
季節ごとの管理としては、夏場は乾燥させないように注意することと、冬場は霜柱による痛みに気を付けます。霜柱は仮根しか持たない苔を持ち上げてしまいます。昼間の霜が溶けている時間に、優しく押して地面と密着させるようにしましょう。凍っているときに無理に押してしまうと、苔がバラバラになってしまうのでNG。放置しておくと仮根が傷み、風で苔が飛んでいってしまいます。
このように、苔の管理は特段難しいことやテクニカルなことはありません。芝生に必要な芝刈りや肥料もいりません。しっかりと観察してかわいがることで、きれいな姿を見せてくれるはずです。
前編では基本的な苔の情報と管理をお伝えしました。後編では苔を利用した庭をご紹介しながら、苔庭に取り入れるアイデアをご紹介します。
前編では基本的な苔の情報と管理をお伝えしました。後編では苔を利用した庭をご紹介しながら、苔庭に取り入れるアイデアをご紹介します。
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