コメント
Houzzツアー: 司令塔はキッチン! 「く」の字型プランの和モダン住宅「埼玉の家/O邸」
子どもを育み、その成長を見守る「家族の住まい」。日々家事に奮闘する奥様のポジションをその中心に据えたユニークな住まいを紹介します!
Tetsu Takeba
2015年4月27日
Houzzコントリビューター。
出版社勤務を経て、編集事務所「Nect」設立。
建築・建設分野を中心に、
書籍や雑誌等の編集を手掛けております
家を新築するお施主さんには、「小さい子どもをもつご夫婦」という家族構成の方が少なくない。このような場合、家事に育児に、新しい住まいをより長い時間使うのは奥様であるケースが多い。
今回お伺いしたのは、品の良いシンプルな佇まいが印象的な埼玉県郊外のお宅。ここは若いご夫婦と小さなお子さんという、まさにそのようなケースの方のために建てられた「家族の住まい」である。
今回お伺いしたのは、品の良いシンプルな佇まいが印象的な埼玉県郊外のお宅。ここは若いご夫婦と小さなお子さんという、まさにそのようなケースの方のために建てられた「家族の住まい」である。
設計を担当したのは建築家の佐藤勤さんと相川直子さんが主宰するあいかわさとう建築設計事務所。「この家の中心はキッチンです。ここに立つとダイニング越しにリビングやその先の畳スペースが見えます。またガラス越しにホールや玄関土間にも目配せすることができるので、料理をつくっている最中もご主人やお子さんの様子が分かります。家族と繋がりながら料理ができる“コミュニケーションキッチン”なのです」。(佐藤さん)
おもしろいのは、キッチン背後に机が設けられているところ。「奥様が多くの時間を過ごす場所に書斎のようなワークスペースをつくりたいと思いました」。(相川さん)
お子さんが小学校に上がれば、晩ご飯をつくっている傍ら、ここで子どもが宿題を頑張っているシーンも見られそうだ。
お子さんが小学校に上がれば、晩ご飯をつくっている傍ら、ここで子どもが宿題を頑張っているシーンも見られそうだ。
どんなHouzz?
居住者:夫婦+子ども2人
所在地:埼玉県上尾市
設計:あいかわさとう建築設計事務所
規模:地上2階
構造:木造
敷地面積:272.49平方メートル
建築面積:75.88平方メートル
延床面積:115.21平方メートル
竣工:2012年
写真:大沢誠一
居住者:夫婦+子ども2人
所在地:埼玉県上尾市
設計:あいかわさとう建築設計事務所
規模:地上2階
構造:木造
敷地面積:272.49平方メートル
建築面積:75.88平方メートル
延床面積:115.21平方メートル
竣工:2012年
写真:大沢誠一
そもそも、この家はなぜこのようなかたちになったのか? 相川さんは言う。「この敷地はL字型なのです。南側には背中合わせでお施主さんの親族宅が隣接し、また北側にはアパートが建っています。ここに家族の住まいと車3台分のスペースを計画するというのが今回のプロジェクトでした。まず陽当たりや隣地との関係を考えて、子供部屋などの個室群をコンパクトにまとめて2階に配置しました。これでプライベートスペースを完結させたわけです」。
「1階については、お施主さんの方で『玄関土間からホールへと続く長い空間』というイメージをもっていらっしゃったので、これを実現するうえで『細く長い空間の魅力をさらに伸ばす』という観点から、敷地の中である程度長い部分を必要としました。これに加えて方位や隣接する建物との関係、使いやすい庭のあり方などを考慮して、さまざまな配置パターンを検証したうえでこのかたちを決めていきました」。(佐藤さん)
一見不思議なこの平面の形は、このように複雑な連立方程式の解として導き出されたものなのだ。
住まい手の奥様は言う。「私たちが希望したのはLDKが一体となった、広がりを感じる空間です」。このため、「く」の字型の1階は、畳スペース、リビング、ダイニング、そしてユーティリティを備えた広いキッチンが緩やかに連続するワンルームとしてつくられている。
一見不思議なこの平面の形は、このように複雑な連立方程式の解として導き出されたものなのだ。
住まい手の奥様は言う。「私たちが希望したのはLDKが一体となった、広がりを感じる空間です」。このため、「く」の字型の1階は、畳スペース、リビング、ダイニング、そしてユーティリティを備えた広いキッチンが緩やかに連続するワンルームとしてつくられている。
「キッチンに立ってみるとスケールや距離感、明度の違う空間が、入れ子状に一度に見えます。この中で、家族が常にお互いの存在を感じられるよう、間仕切り壁は設けていません。それぞれの空間はプロポーションの違いやレベル差、明暗差、素材の違いによって規定しています。『シンプルな中に多様性を備える』このような空間をつくるうえでは、天井と床、壁などの見切り(材の重なる部分を美しく収めるために取り付ける材)のコントロールがひとつのポイントになりますね」。(佐藤さん)
「小さな子どもたちにとっても、この家はすごくおもしろいようです。下の子は最近歩き出すようになったのですが、私がキッチンにいても1階をぐるぐると楽しそうに回遊して歩いています」。(住まい手の奥様)
「また上の子が最近描いた絵にはこの家が描かれているんですよ。ふたりの成長にもとても良い影響を与えていると思います」。(住まい手の奥様)
収納スペースの多さもこの家の大きな特徴である。リビングに近い1階の畳スペースにはご主人の本やCDを収める棚が設けられている。
「お子さんが小さなときに建てられた住まいには、10年、20年と時を重ねる中でさまざまなものを包み込める懐の深さが求められます。また将来的な家族構成の変化にも柔軟に対応できなければなりません。だから住まいの余白として余裕のある収納を備えることは非常に重要です」。(相川さん)
「お子さんが小さなときに建てられた住まいには、10年、20年と時を重ねる中でさまざまなものを包み込める懐の深さが求められます。また将来的な家族構成の変化にも柔軟に対応できなければなりません。だから住まいの余白として余裕のある収納を備えることは非常に重要です」。(相川さん)
2階の子ども部屋にも造り付けの机と棚が設けられている。2階の床はパイン材の蜜蝋ワックス仕上げ。完成後、ご主人が毎年ワックス掛けを重ねているという。木の美しさを保つには愛情が欠かせない。
2階の寝室にはロフトが設けられている。
大容量の収納を実現するこの仕掛けをご夫婦は重宝しているそうだ。
正面はベランダへと出る階段で、お子さんのお気に入りの場所のひとつ。
大容量の収納を実現するこの仕掛けをご夫婦は重宝しているそうだ。
正面はベランダへと出る階段で、お子さんのお気に入りの場所のひとつ。
1階のリビングはほぼ真南に振って配置されている。
こちらのお宅はお施主さんの希望もあり、全体が「和モダンの設え」で統一されている。
1階の壁には珪藻土が、また床には蜜蝋ワックス仕上げのスギ板が用いられている。
床には低温式床暖房が入っており、冬でも自然素材の暖かみを素足で楽しむことができる。
こちらのお宅はお施主さんの希望もあり、全体が「和モダンの設え」で統一されている。
1階の壁には珪藻土が、また床には蜜蝋ワックス仕上げのスギ板が用いられている。
床には低温式床暖房が入っており、冬でも自然素材の暖かみを素足で楽しむことができる。
玄関土間は自転車2台が置ける広さがあり、雨の日のお出かけ準備もラクラク。
最近、天気の悪い日は子どもたちがここで縄跳びを楽しんでいるそうだ。
この玄関周りも「和モダンの設え」として、木製引戸や格子窓、土佐和紙の壁紙などが用いられている。
最近、天気の悪い日は子どもたちがここで縄跳びを楽しんでいるそうだ。
この玄関周りも「和モダンの設え」として、木製引戸や格子窓、土佐和紙の壁紙などが用いられている。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む