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Houzzツアー:リゾートライクなリラックス感と機能性を内包する、三角大屋根の家
おおらかな南国風のデザインエレメントと、機能的で利便性の高さを兼ね備えた、大きなスケールのコンテンポラリーな住まい。
takako kawaguchi
2016年3月4日
陽射しやスコールを避ける知恵として、南国でよく見られる大きな三角形の屋根。今回ご紹介するお宅は、そんな南国的な大屋根や、自然を想起する素材と色づかいでリゾート風のリラックス感に包まれながら、細部に目を向けると、計算と工夫を凝らした機能的要素が随所にちりばめられている、アトラクティブな一軒だ。
ゆるやかな坂道を上ると、空に三角定規を当てたかのような大きな屋根が見えてくる。「敷地内に車を停めてから、玄関まで雨に濡れずにすむ、深い軒が欲しい」という施主の要望から、一級建築士事務所hausの山根徹也さんが描き出したのが、この水平方向に14メートルもの長さがある大屋根だった。明るくオープンなイメージを損なうことなく「車を降りてから玄関、もしくは反対側にある勝手口まで、雨や風に当たらず荷物を運び込める」形を追求した。
美しくシャープで無駄のないフォルムの三角の屋根。この屋根を見て、疑問に思う向きも多いかもしれない。「雨はどこへ流れるのか?」と。その通り、こちらの屋根は直線的なデザインにこだわった結果、樋(とい)をつけていない。降り注いだ雨はすべて屋根から地面へ流れ落ちる。すると通常は水はねや、外構の一部が変色するなど好ましくない影響が出るわけだが……。
「屋根からの滴が当たるモルタル部分に、砂利を敷いたラインを入れることで、水がスムーズに地面へ導かれる仕組みにしました」(山根さん)と、床のデザインを切り替えることで、見た目にも美しくスマートに、この排水問題を解決。ほかにも、玄関上部には内樋をつけ、玄関先へ雨が滴ることを防ぐなど、機能面でのこまかな工夫は枚挙にいとまがない。
これだけ大きな屋根となると、屋根材の量も半端ではない。「初めは鉄板も考えましたが、コスト的にカラーベストを選択しました。ただし1色だけを広い面積に貼ると、のっぺりと平坦に見えてしまうので、少し色味のちがう3色をミックスすることで豊かな表情をつくり出しています」と山根さん。ここではダークシルバー、ダークグレー、チョコレートブラウンの3色をランダムに使用。ファサードの腰壁の石ともテイストがリンクし、外観全体をうまく調和させることに成功している。
美しくシャープで無駄のないフォルムの三角の屋根。この屋根を見て、疑問に思う向きも多いかもしれない。「雨はどこへ流れるのか?」と。その通り、こちらの屋根は直線的なデザインにこだわった結果、樋(とい)をつけていない。降り注いだ雨はすべて屋根から地面へ流れ落ちる。すると通常は水はねや、外構の一部が変色するなど好ましくない影響が出るわけだが……。
「屋根からの滴が当たるモルタル部分に、砂利を敷いたラインを入れることで、水がスムーズに地面へ導かれる仕組みにしました」(山根さん)と、床のデザインを切り替えることで、見た目にも美しくスマートに、この排水問題を解決。ほかにも、玄関上部には内樋をつけ、玄関先へ雨が滴ることを防ぐなど、機能面でのこまかな工夫は枚挙にいとまがない。
これだけ大きな屋根となると、屋根材の量も半端ではない。「初めは鉄板も考えましたが、コスト的にカラーベストを選択しました。ただし1色だけを広い面積に貼ると、のっぺりと平坦に見えてしまうので、少し色味のちがう3色をミックスすることで豊かな表情をつくり出しています」と山根さん。ここではダークシルバー、ダークグレー、チョコレートブラウンの3色をランダムに使用。ファサードの腰壁の石ともテイストがリンクし、外観全体をうまく調和させることに成功している。
どんなHouzz?
家族構成:夫婦、子供1人、犬1匹
所在地:兵庫県姫路市
敷地面積:388.98平方メートル
延床面積:140.77平方メートル
構造:木造 地上2階建て
プロデュース:株式会社ハウスインフォ
設計:一級建築士事務所haus
施工:有限会社フジモトコーポレーション
撮影:PHOTO OFFICE JOUER 森本大助
LDは三角屋根の形状を存分に活かした、開放感抜群の吹き抜けに。天井部分に使っているのは軒に貼ったものと同じ、ブラウンに塗装した杉材。間接照明の電球を灯した様子はとても雰囲気があり、まるでバリなどのリゾートホテルにいるような気分に誘ってくれる。
ウォーターヒヤシンス素材とガラスのコンビ使いが軽やかなダイニングテーブルも、この家のテイストに合わせて購入したもの。テーブルの幅と合うよう、長さ約2.7メートルの照明ボックスを設置し、空間上部のアクセントにしている。
床材はブラックウォルナットのクリアオイル塗装。
家族構成:夫婦、子供1人、犬1匹
所在地:兵庫県姫路市
敷地面積:388.98平方メートル
延床面積:140.77平方メートル
構造:木造 地上2階建て
プロデュース:株式会社ハウスインフォ
設計:一級建築士事務所haus
施工:有限会社フジモトコーポレーション
撮影:PHOTO OFFICE JOUER 森本大助
LDは三角屋根の形状を存分に活かした、開放感抜群の吹き抜けに。天井部分に使っているのは軒に貼ったものと同じ、ブラウンに塗装した杉材。間接照明の電球を灯した様子はとても雰囲気があり、まるでバリなどのリゾートホテルにいるような気分に誘ってくれる。
ウォーターヒヤシンス素材とガラスのコンビ使いが軽やかなダイニングテーブルも、この家のテイストに合わせて購入したもの。テーブルの幅と合うよう、長さ約2.7メートルの照明ボックスを設置し、空間上部のアクセントにしている。
床材はブラックウォルナットのクリアオイル塗装。
家全体のインテリアを大人っぽい方向に決定づけているのが、キッチンの黒い腰壁。落ち着きのあるブラックスレートが、ダークブラウンでまとめたインテリアを、さらに一段辛口に引き締めて見せている。自然素材を取り入れることが多い南国風インテリアとしても、石の腰壁は効果的だ。
キッチン奥にはパントリーがあり、その先に勝手口がある。「買い物してきた荷物をスムーズに運べるように」と奥様がこだわった、生活に便利な動線である。キッチンとLDの境にはゲートがついており、愛犬が入れるのは勝手口からこのキッチンまで、がお約束なのだそう。
写真左手は玄関。床には外構に使ったものと同じ石英岩(レモンクォーツ)を敷き込んだ。「石英岩はいろいろな色が混ざっているので、和洋、アジアンなどテイストを選ばず合わせやすい石材です」と山根さん。
奥の引き戸の中はウォークインクロゼット。棚やハンガーパイプもついているので、コートや帽子などの一時置きにも役立つ。
キッチン奥にはパントリーがあり、その先に勝手口がある。「買い物してきた荷物をスムーズに運べるように」と奥様がこだわった、生活に便利な動線である。キッチンとLDの境にはゲートがついており、愛犬が入れるのは勝手口からこのキッチンまで、がお約束なのだそう。
写真左手は玄関。床には外構に使ったものと同じ石英岩(レモンクォーツ)を敷き込んだ。「石英岩はいろいろな色が混ざっているので、和洋、アジアンなどテイストを選ばず合わせやすい石材です」と山根さん。
奥の引き戸の中はウォークインクロゼット。棚やハンガーパイプもついているので、コートや帽子などの一時置きにも役立つ。
琉球畳や、折り上げ天井に竹網代を取り入れるなど、和とアジアンテイストがうまく融合した空間。南に面しており、あふれる陽光の中、奥様はここでヨガ教室を開いているのだとか。来客用の客間としても活用できる。
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初めの打ち合わせ時に「家族団らんの場を」とご主人が要望したことを反映し、中庭を囲むようにLD、キッチンなどを配して、家族が集いやすいレイアウトに。
ダイニング真上には2階とつながる内窓があり、子ども部屋の気配が感じられるようにもなっている。
リビングに置かれたシックなグレーのソファは、イケアで見つけたもの。ローテーブルはもともとhausの事務所で使っていたものを、この家の雰囲気に合うということでプレゼントしたそう。
ダイニング真上には2階とつながる内窓があり、子ども部屋の気配が感じられるようにもなっている。
リビングに置かれたシックなグレーのソファは、イケアで見つけたもの。ローテーブルはもともとhausの事務所で使っていたものを、この家の雰囲気に合うということでプレゼントしたそう。
リビングからは南側に広がる庭が一望。シュロなど南国風の植栽を大きな窓越しに眺めることができる。
ご主人は野球がお好きで、この庭で子どもとキャッチボールするのが楽しみだとか。
ご主人は野球がお好きで、この庭で子どもとキャッチボールするのが楽しみだとか。
天窓がついて、サンルームのような明るさとあたたかさのある屋根つきの中庭。床はガラッパ材を、室内床のブラックウォルナットと同系色に塗装して、空間に連続性を持たせた。
8畳ほどのゆったりした広さがあり、この陽だまりの中で読書をするのが、小学生のお子さんのいちばんのお気に入りの時間。
8畳ほどのゆったりした広さがあり、この陽だまりの中で読書をするのが、小学生のお子さんのいちばんのお気に入りの時間。
2階にある子ども部屋。先ほど下から見上げた写真でご紹介した内窓が、こちらである。階下とコミュニケーションができ、通気性も高まるアイデアだ。
インテリアのテーマカラー、ダークブラウンで洗面室も統一。玄関と同じ石英岩をポイントにあしらうことで、リゾート調をここにも加味している。
石塀で囲まれた部分はパーキングスペース。当初思い描いた「車から玄関まで雨に濡れない」という希望は、秀逸な屋根デザインの中でさりげなく、完璧に叶えられた。
おおらかな南国風のエレメントを楽しめるとともに、機能的で利便性の高さも兼ね備えたコンテンポラリーな住宅の好例といえるだろう。
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