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里山と田園風景を眺めながら、船旅のような暮らしができる那須烏山の家
長年暮らしてきた場所。住まいを建て替えたことで、初めてみる景色がありました。

Miki Anzai
2020年12月16日
Houzzコントリビューター、英文編集者&ライター。建築をテーマにした旅の提案、伝統木造建築、「和」の要素を取り入れた住宅などを紹介しています。Houzz contributor, freelance writer and editor. After having worked as a mortgage loan officer at Citibank in New York, I earned an MS in journalism from Columbia University and became a writer. An opera buff, amateur jazz pianist, art lover, recreational cook, and true feline fanatic.
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遠景には穏やかな里山、近景には豊かな水田が一望できる、栃木県那須烏山市の高台に建つ住まいです。この地に生まれ育ち、ご両親と同じ敷地内に長年暮らしたオーナーご夫妻。相続を機に母屋を建て替え、以前は広大な石庭や生け垣で見えなかった田園風景を、今や独り占めにできる贅沢を手に入れました。
ディレクションは、奥様が「心ときめいた」という知人の家を手がけたNASU CLUBの河野一郎さん。河野さんは、長時間かけてご夫妻の意向をくみ取った後、敷地の中で一番眺めの良い場所にあった立派な石庭を、大胆にも解体する案を提案しました。てっきり家だけ建て直すとばかり思っていたご夫妻も、「家と庭が一体となって『家庭』ですから」と快諾し、外と内が融合した住まいが実現しました。
ディレクションは、奥様が「心ときめいた」という知人の家を手がけたNASU CLUBの河野一郎さん。河野さんは、長時間かけてご夫妻の意向をくみ取った後、敷地の中で一番眺めの良い場所にあった立派な石庭を、大胆にも解体する案を提案しました。てっきり家だけ建て直すとばかり思っていたご夫妻も、「家と庭が一体となって『家庭』ですから」と快諾し、外と内が融合した住まいが実現しました。
「ご夫妻に、ここで船旅をするがごとく、第二の人生を楽しんで欲しい」との思いをこめて、河野さんはこの家をデザインしたと言います。中庭には、感覚的に船を連想できるような水盤が設えてあり、水のせせらぎ音と光に揺れる水面が、穏やかな時の移ろいを告げています。
どんなHouzz?
所在地:栃木県那須烏山市
住まい手:ご夫婦と息子さん
敷地面積:1408.10㎡
延床面積:253.97㎡
構造:木造在来工法
ディレクション・設計:NASU CLUB、Mimasis Design
施工:NASU CLUB
竣工時期:2020年4月
どんなHouzz?
所在地:栃木県那須烏山市
住まい手:ご夫婦と息子さん
敷地面積:1408.10㎡
延床面積:253.97㎡
構造:木造在来工法
ディレクション・設計:NASU CLUB、Mimasis Design
施工:NASU CLUB
竣工時期:2020年4月
形や色の異なる石を、川の流れに見立てた庭園。先代が数十年かけて造った築庭に置かれていた何百もの石を一度すべて撤去し、その中から厳選した石のみで構成しています。それでもご夫妻は、一つ一つの石が、昔どこにあったかを覚えているそうです。
「以前とは全く違う庭になり、風景は更新しましたが、記憶の保存になってよかったです。庭の再構築を承諾していただけたので、全てのプランが開けました」(河野さん)
「以前とは全く違う庭になり、風景は更新しましたが、記憶の保存になってよかったです。庭の再構築を承諾していただけたので、全てのプランが開けました」(河野さん)
「ピクチャーウィンドウ」としてデザインした玄関の開口からは、水盤に映る景色や水のゆらぎ、シンボルツリーの枝垂れ桜を楽しめます。
窓の下は腰掛けになっており、茶の湯を嗜む奥様が「いわゆるお茶の世界でいう『待合』(控えの間)のような位置づけです」と語るように、建物の中には、さらなる感動の光景が、そこここに待ち受けています。
Houzzで設計施工・リノベーション会社を探す
窓の下は腰掛けになっており、茶の湯を嗜む奥様が「いわゆるお茶の世界でいう『待合』(控えの間)のような位置づけです」と語るように、建物の中には、さらなる感動の光景が、そこここに待ち受けています。
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エントランスの壁面アート。錆(さび)をアクリル板に転写することで、錆の織りなす模様を普遍的なアートに昇華させた、デザイナー狩野佑真さんの作品です。「水や時の流れをテーマにした家ですが、遊び心で時間(=腐食)が止まった作品を取り入れました」(河野さん)
建物の内部は、外との繋がりが感じられるよう、質感豊かな自然素材が採用されています。
玄関床(玄昌石)、正面奥の壁面(焼杉)、床(楢)、壁(櫤)、天井(和紙)
建物の内部は、外との繋がりが感じられるよう、質感豊かな自然素材が採用されています。
玄関床(玄昌石)、正面奥の壁面(焼杉)、床(楢)、壁(櫤)、天井(和紙)
水盤のある中庭の次に目に飛び込んでくるのが、石庭とその奥に広がる里山です。玄関の腰掛けが、壁面アートの下を通って大開口まで一直線に伸びているので、視線が一気に外の景色に引きこまれます。
画面右の扉はシューズクロークへの出入口。お出かけ前に全身をチェックできる大きな姿見付きの収納スペースで、廊下と玄関の両方から出入りできます。
画面右の扉はシューズクロークへの出入口。お出かけ前に全身をチェックできる大きな姿見付きの収納スペースで、廊下と玄関の両方から出入りできます。
リビング棟に続く大回廊。ガラス窓からさし込む陽光、時には水盤の水面が、和紙張りの天井と壁に反射し、柔らかな雰囲気を醸し出しています。
窓から小石がちりばめられた中庭と、(玄関からは遠くに見えた)枝垂れ桜を、違う角度から、間近に眺められます。画面右側がプライベート空間(寝室)です。
窓から小石がちりばめられた中庭と、(玄関からは遠くに見えた)枝垂れ桜を、違う角度から、間近に眺められます。画面右側がプライベート空間(寝室)です。
前面道路の先に広がる田園風景を見下せるLDK。庇の角度から、開閉可能なガラスの引き戸の位置にいたるまで計算し尽くされた、「(電線の見えない)風景に飛び込む建築」(河野さん)です。
家具は、設計段階で配置まで計算して、建物と同じ材で造作してあります。照明のフランジもオリジナル。調和のとれた空間に仕上げるポイントは、「設計段階で家具のデザイン、寸法や配置を決めておくことです」(河野さん)
毎日、魚を焼くという奥様。室内に焼き魚の香りが充満しないように、奥の引き戸の先に、セカンドキッチンが設えてあります。
家具は、設計段階で配置まで計算して、建物と同じ材で造作してあります。照明のフランジもオリジナル。調和のとれた空間に仕上げるポイントは、「設計段階で家具のデザイン、寸法や配置を決めておくことです」(河野さん)
毎日、魚を焼くという奥様。室内に焼き魚の香りが充満しないように、奥の引き戸の先に、セカンドキッチンが設えてあります。
リビング東側のハイサイドライト。「ここから、夕食をしながら満月が見えた時は、感動して幸せな気分に満たされました」という奥様。
ガラス窓の下はAVボードになっており、金属作家によるゴールド(真鍮)のエッチングがアクセントになっています。
ガラス窓の下はAVボードになっており、金属作家によるゴールド(真鍮)のエッチングがアクセントになっています。
オーナーご一家のお気に入りのデッキエリア。眼前の水田風景を眺めながら毎日「ティファニーで朝食をよろしく、デッキで朝食を取っています」(奥様)
ウォークインクローゼット付きの奥様の寝室。オシャレ好きの奥様の衣装部屋としてデザインされています。
壁掛けラウンドミラーは、奥様から「大きな姿見が欲しい」とのリクエストを受け、NASU CLUBがデンマークから直輸入したものです。
壁掛けラウンドミラーは、奥様から「大きな姿見が欲しい」とのリクエストを受け、NASU CLUBがデンマークから直輸入したものです。
天井、壁、建具、家具を、すべて桐で製作したクローゼット。部屋全体が、さながら「大きな桐箪笥」のようです。
こちらがご主人の寝室で、窓からお庭を挟んだ向こう側が、息子さんの寝室です。収納棚や机は、もちろんオーダーメイドです。
コロナ禍で在宅勤務が増える中、ホームオフィスや書斎コーナーを設けたいというニーズが、急増していると河野さんは語ります。このように窓面にワークステーションを配置すれば、外の景色をみながら、リラックスして作業ができることでしょう。
コロナ禍で在宅勤務が増える中、ホームオフィスや書斎コーナーを設けたいというニーズが、急増していると河野さんは語ります。このように窓面にワークステーションを配置すれば、外の景色をみながら、リラックスして作業ができることでしょう。
外壁に日本古来の建築材である焼杉を用いた、農家の納屋を彷彿させる外観が、周囲の里山風景の中にしっとりと溶け込んでいます。広い敷地ながら、以前は母屋と大きな納屋が建っていたため、オーナーの悩みの種だった、車の切り返しの難しさも解消されました。
「設計を河野さんにお願いしなかったら、今ある景色は、まったく見られなかったと思います。家にいることが楽しくなって、コロナ禍に本当にありがたいです」と語るオーナー。河野さんの願い通り、独特の浮遊感のある高台に佇むこの家で、船旅を楽しむかのように、これからの人生を存分に楽しんで行かれることでしょう。
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「設計を河野さんにお願いしなかったら、今ある景色は、まったく見られなかったと思います。家にいることが楽しくなって、コロナ禍に本当にありがたいです」と語るオーナー。河野さんの願い通り、独特の浮遊感のある高台に佇むこの家で、船旅を楽しむかのように、これからの人生を存分に楽しんで行かれることでしょう。
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