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人生の新たな幕開けのために。パリの30㎡を自分仕様にリノベ
殺風景なワンルームが、ぬくもりある都会の居場所に変身。巧みな空間設計とインテリアの仕掛けが実現させた、唯一無二のリノベーションのお話。
Agnès Carpentier
2019年12月13日
50代の経営コンサルタントである女性オーナーは、1週間のうち、数日だけ泊まるためのワンルームマンションをパリ市内の第9区に購入していました。部屋は70年代に建てられたビルの8階にあり、中庭に面しています。
オーナーは入居した当初、床を直す程度の修理しか行っていませんでした。リビングに小さなソファーを置き、床の上に直に敷いたマットレスで眠る、という生活をしていたのです。ところがその後、私生活に変化があったのをきっかけに、郊外の一軒家から、市内のこのワンルームに拠点を完全に移す決意をしました。すると、部屋のレイアウトやインテリアを根本的に見直す必要が出てきたのです。
オーナーは過去にも家のセルフリノベーションを経験していましたが、狭く限られた30平方メートルの空間で、改めて日々の生活の便を考えるというのは新たなチャレンジでした。プロの手を借りなければならない、とすぐに気づき、知り合いの建築家に連絡を取ったところ、インテリアデザイナーのオーデ・グロシェニーを紹介されたのだと言います。
オーナーは入居した当初、床を直す程度の修理しか行っていませんでした。リビングに小さなソファーを置き、床の上に直に敷いたマットレスで眠る、という生活をしていたのです。ところがその後、私生活に変化があったのをきっかけに、郊外の一軒家から、市内のこのワンルームに拠点を完全に移す決意をしました。すると、部屋のレイアウトやインテリアを根本的に見直す必要が出てきたのです。
オーナーは過去にも家のセルフリノベーションを経験していましたが、狭く限られた30平方メートルの空間で、改めて日々の生活の便を考えるというのは新たなチャレンジでした。プロの手を借りなければならない、とすぐに気づき、知り合いの建築家に連絡を取ったところ、インテリアデザイナーのオーデ・グロシェニーを紹介されたのだと言います。
写真:ティボール・プセ
どんなHouzz?
住まい手:55歳の経営コンサルタント
所在地:フランス、パリ
面積:30平方メートル
プロジェクト期間:5か月
竣工時期: 2019年7月
インテリアデザイン: デコダージュ・クレアシオンのオーデ・グロシェニー
施工:エルム・バ
木工造作:ホップファブ
予算: 35,000ユーロ(約420万円
どんなHouzz?
住まい手:55歳の経営コンサルタント
所在地:フランス、パリ
面積:30平方メートル
プロジェクト期間:5か月
竣工時期: 2019年7月
インテリアデザイン: デコダージュ・クレアシオンのオーデ・グロシェニー
施工:エルム・バ
木工造作:ホップファブ
予算: 35,000ユーロ(約420万円
工事前:室内は、すでにほどよいレイアウトでした。キッチン・バスルームの配管は玄関付近に設置され、その奥に、中庭や市街の屋根を見下ろすテラスに面した、20平方メートルのリビング空間がありました。質のよい特注の戸棚も、いくつか備え付けられていたそうです。
購入当初、オーナーはオーク突板のフローリングを張り、その上に直にマットレスを敷いていました。リビング用に購入したのは、ソファーとひじ掛椅子だけだったそうです。
インテリアデザイナーを探す
購入当初、オーナーはオーク突板のフローリングを張り、その上に直にマットレスを敷いていました。リビング用に購入したのは、ソファーとひじ掛椅子だけだったそうです。
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工事前の間取り図
工事後:「オーナーは、2万ユーロ(約240万円)の予算内で、寝室を最優先した空間設計を求めていらっしゃいました」 と、インテリアデザイナーのオーデ・グロシェニーは語ります。
「また、ご友人方を食事に招けるようなダイニング空間と、暗い廊下のようなキッチンに、少しでも自然光を入れたいと希望されていました。最大の難関は、収納スペースでしたね」
「また、ご友人方を食事に招けるようなダイニング空間と、暗い廊下のようなキッチンに、少しでも自然光を入れたいと希望されていました。最大の難関は、収納スペースでしたね」
工事後の間取り図
工事前:オーナーは、ソファーベッドを毎晩引き出す生活スタイルを嫌い、キッチンの壁に沿って、床の上にマットレスを敷いて寝ていました。
工事後:「リビングの中に、ちゃんとしたベッド空間を確保できることが、オーナーにとっての最優先課題でした。ご自身で考えた格子仕切りの案を私に相談しているうちに、より美しい素材を使ってみたくなったようです。当初の予算では間に合わなかったので、予算を引き上げることをお決めになりました」とデザイナーは語ります。
3Dレンダリング
玄関の近くから出入りできるバスルーム(※上記レンダリング外)は、良好な状態だったため手を付けませんでした。キッチンも最近改装されたばかりだったので、そのままの状態に残しました。グロシェニーにとって最大の課題は、幾何学模様の格子パネルを仕切に使って、リビングの中に大きさ1.5m×2mの居心地いい寝室を造ることでした。
玄関の近くから出入りできるバスルーム(※上記レンダリング外)は、良好な状態だったため手を付けませんでした。キッチンも最近改装されたばかりだったので、そのままの状態に残しました。グロシェニーにとって最大の課題は、幾何学模様の格子パネルを仕切に使って、リビングの中に大きさ1.5m×2mの居心地いい寝室を造ることでした。
工事前:以前のキッチンは自然光の入らない狭い廊下のようでしたが、グロシェニーは、寝室を囲う透かしのデザインの中に、キッチンに光を取り入れるアイデアを見出しました。
工事後:キッチンとリビングの間の壁を一部取り除く事により、寝室を囲む3面に格子パネルを活用することができました。今では、バルコニーの自然光がそのままキッチンまで透かして届くようになっています。
「オーナーにとって、キッチンは必需品ではありません。ほとんど、コーヒーを入れたり、食べ物を温めたりするためだけに使っているのです。でも、念のため、キッチン側に向いた壁面にはガラスを1枚当て、油煙や匂いが寝室に広がらないよう工夫しました」とグロシェニーは言います。
少しでも空間が広く感じられるよう、古くなった空調システムと、70年代に施工された空調を覆う天井パネルは取り除き、天井高を20cm上げました。
少しでも空間が広く感じられるよう、古くなった空調システムと、70年代に施工された空調を覆う天井パネルは取り除き、天井高を20cm上げました。
天井工事は全て施工業者のエルム・バが担当し、特注の木工造作は木工業者のホップファブに依頼しました。。
「随分前にHouzzでホップファブのモダンかつクリエイティブな作品を見て注目していたのですが、規模の大きいプロジェクトを依頼できるタイミングまで待っていたんです。彼らの仕事ぶりは期待以上でした!彼らなくして、私のデザインの実現はありえませんでした」
「随分前にHouzzでホップファブのモダンかつクリエイティブな作品を見て注目していたのですが、規模の大きいプロジェクトを依頼できるタイミングまで待っていたんです。彼らの仕事ぶりは期待以上でした!彼らなくして、私のデザインの実現はありえませんでした」
リビングの一角にある寝室は、ワンルームマンションの中心的存在です。
木製の格子パネルは、それぞれ高さ90cmの石膏ボード壁の上に取り付けられました。「リビング側は無塗装のパイン材で、キッチン側は白く塗装されたMDF材です。72mmの壁厚にパネルを合わせるために、縦桟は巨大な板から切り取られました。周期的な模様を繰り返し、牢屋の柵を連想させないよう、奥行き11mmの箱を添えて動きを出しました」とグロシェニーは語ります。
木製の格子パネルは、それぞれ高さ90cmの石膏ボード壁の上に取り付けられました。「リビング側は無塗装のパイン材で、キッチン側は白く塗装されたMDF材です。72mmの壁厚にパネルを合わせるために、縦桟は巨大な板から切り取られました。周期的な模様を繰り返し、牢屋の柵を連想させないよう、奥行き11mmの箱を添えて動きを出しました」とグロシェニーは語ります。
寝室は、上部でレールに固定された74cm幅の引き戸2枚を動かして出入りします。デザイナーは、「左右どちらからでも出られるので実用的です」と説明します。
高さ92cm、奥行き16cmのヘッドボードには、飾り棚や扉付きの収納が用意されており、ベッドサイドテーブルとして使うことも可能です。上部の下がり天井に組み込まれたスポットライトが、テーブルの上を照らしてくれます。
高さ60cmのベッドはすのこ状のスラットベースによって支えられています。その下には、シーツや余分なブランケットを収納できるキャスター付きの引き出しが備え付けられています。
「それぞれ長さ110cmで、引き出されたときに、廊下の反対側にあるグレーの壁付け戸棚の下に収まるよう、精密に計算されています」とグロシェニー。
「それぞれ長さ110cmで、引き出されたときに、廊下の反対側にあるグレーの壁付け戸棚の下に収まるよう、精密に計算されています」とグロシェニー。
ひとたび寝室とキッチンの照明による課題が解決されると、グロシェニーは次の課題に取りかかりました。それは、ダイニングの収納です。
「もともとあった戸棚はデザインが良かったので、玄関付近のものやリビング周りの壁付けのものなどをなるべく残しました。格子パネルのラインを窓側までL字に伸ばすように、食器を収納する奥行き16cmの浅い戸棚を設置し、視覚的に軽さを出すために合板に溝を掘って塗装し、フェイクの引き出しを作りました。仕上げには本皮の取っ手とクロスを使いました」
「もともとあった戸棚はデザインが良かったので、玄関付近のものやリビング周りの壁付けのものなどをなるべく残しました。格子パネルのラインを窓側までL字に伸ばすように、食器を収納する奥行き16cmの浅い戸棚を設置し、視覚的に軽さを出すために合板に溝を掘って塗装し、フェイクの引き出しを作りました。仕上げには本皮の取っ手とクロスを使いました」
ダイニングの間取り図を描き上げるのには時間がかかったそう。「美しく、かつ出し入れしやすく、扱いやすいとデザインでなければなりませんでしたから」とグロシェニー。
「いくつかの構造を検討した末、蝶の羽のように脚が開くテーブルのデザインにたどり着いたんです。天板の裏側にあるガイドで脚が止まるようになっており、開閉中もずっと自立しているので、上部を手で支える必要はありません」
「いくつかの構造を検討した末、蝶の羽のように脚が開くテーブルのデザインにたどり着いたんです。天板の裏側にあるガイドで脚が止まるようになっており、開閉中もずっと自立しているので、上部を手で支える必要はありません」
オーナーは学生のように予算に縛られてはいなかったので、自身へのご褒美としてロジェ・タロンの傑作TSチェアを、1977年オリジナル版の再生産で2脚、老舗インテリアショップ「セントゥ」にて240ユーロ(約29,000円)で購入しました。1つや2つ有名な家具がある方が、小さな空間には効果的なもの。後悔はしていないと語ります。
「私が専門とする仕事の中でも特に好きなタイプの、理想的な案件でした。大胆な全面改装ではなく、細部に工夫を凝らしたプチ改装。空間を最大限に生かして、美しい住まいをつくりだすことにフォーカスしたプロジェクトでした」
ヨーロッパのHouzzツアーをもっと見る
「私が専門とする仕事の中でも特に好きなタイプの、理想的な案件でした。大胆な全面改装ではなく、細部に工夫を凝らしたプチ改装。空間を最大限に生かして、美しい住まいをつくりだすことにフォーカスしたプロジェクトでした」
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