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Houzzツアー:コモンスペースが入居者と地域をつなぐ、フルリノベマンションの可能性
企業の社宅を一棟まるごとリノベーション。ゆったりとした敷地に生まれた集合住宅で、コミュニティを育む工夫とは?
栗原晶子|Akiko Kurihara
2017年3月1日
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。
また、エンタメ好きとして演劇や映画に関するライティングも手がけています。
フリーの編集&ライターとしてインテリア誌やハウジング誌を中心に取材・執筆活動する傍ら、NPO法人ハウスキーピング協会認定の整理収納アドバイザーとして、コラムの連載やセミナーの企画に携わる。暮らしがラクに楽しくなる、整理収納アイデアを研究・発信中です。... もっと見る
築23年の企業の社宅を一棟まるごとリノベーションした「リノア新松戸」は、松戸市内の閑静な住宅街に建つ136戸のマンション。さまざまな機能を持つ共有スペース、理想の暮らしを描ける快適な間取り、入居者と地域をつなぐハードとソフト両面からの取り組みなど、新しい価値を付加している。リノベーションだから出来た「育てていく住まい」を紹介する。
最寄り駅から徒歩12分、地上8階、地下1階の鉄筋コンクリート造のマンションは、不思議なほど周囲の景観を圧迫していない。それは、6,255.38平方メートルの敷地面積に対し、建築面積2,155.77平方メートルという、ゆとりある設計故である。3つの棟からなる住居スペースの1階は全20戸。うち14戸に約40平方メートルの専用庭を設けている。
そのほか、エントランス、ふれあいガーデン、屋外駐車場を設け、豊かな植栽が建物を囲んでいる。一棟まるごとリノベーションというスタイルだからこそ叶えられた敷地利用は、リノア新松戸のコンセプト「Smart Relation」に生かされている。
どんなHouzz?
居住者:20代から30代のファミリー、子育てが終わったアクティブシニアなど
所在地:千葉県松戸市
総合企画・監修:(株)リビタ
改修竣工:2016年3月
どんなHouzz?
居住者:20代から30代のファミリー、子育てが終わったアクティブシニアなど
所在地:千葉県松戸市
総合企画・監修:(株)リビタ
改修竣工:2016年3月
このマンションの大きな特徴は、敷地のほぼ中央に位置するコモンスペースと呼ぶ共有スペースを持つことだ。一般的にマンションの共有スペースは、入居者のみ利用できる限られた空間だが、オープンテラスから続くコモンキッチン、コモンリビング、コモンライブラリーは、原則として開放されている。
コモンキッチンとライブラリーは、社宅時代にはトランクルームとして使用されていた70平方メートルのスペースを改修した。ダークブラウンの床と横3.618メートルの大きなキッチン台。長テーブルと椅子、ライトなどコーディネートを含むスペースデザインは、その他のコモンスペースも含め〈パシフィックファニチャー〉が手掛けている。
コモンキッチンではこれまで、居住者による手作り餃子パーティー、パン作り教室、ハロウィンやクリスマスなどのシーズンイベントの会場として使用されている。そのほかにも親類が集まった時の食事会や、草野球チームの打ち上げ、大型スーパーでの買い出し品をシェアするスペースとしてなど、用途は限りなく広がる。
作りつけのソファとサブウェイタイルの壁、ダークブラウンを基調にカフェをイメージした落ち着きある空間にまとめたコモンライブラリー。読書をしたり、持ち帰った仕事に集中できるスペースとして、Wi-Fiも完備している。
縁側をイメージした小上がりの寝ころべるプレイルームがあるコモンリビング。園児やスクールの送迎を待つスペースや、子育て世代の情報交換、入居者同士の交流の場として設けられた。今後、地域交流が活性化すれば、子育て、親育てをシェアできる頼もしいスペースになる。
コモンスペース前のオープンテラス。日中は開放されており、テラスも含めて広々としたスペースでイベントを開催することも出来る。
1階に2年間の期間限定で設けられているのがDIYルームだ。水道も完備した住居と同じ74平方メートルのスペースでは、電動工具の貸し出しもある。家具の組み立てや塗装、木工など、騒音や汚れを気にせず利用できる。
先ごろ、このDIYルームを使い、リノア新松戸のランドスケープデザインを担当した、〈エスエフジー・ランドスケープ・アーキテクツ〉の大野暁彦氏によるグリーンワークショップが開催された。
植栽されている木の名前や葉の形を記した木札を、入居者の子どもたちが楽しく作成。その後、木札を実際の木に取り付けたこのワークショップは、住まいを愛し、共に育てていく喜びを生み出した。
もう一つの共有スペースが地下1階に設けられたコモンスタジオ。ここではキッズ向けダンスレッスンの定期開催のほか、フリーマーケットが開かれたことも。
住戸に目を向けてみよう。ロフトを有した74平方メートルの3LDKは、幅約4メートルの壁付キッチンを備えた明るいリビングダイニングが人気。壁に木パネルをプラスすれば、飾り棚を設置したり、絵をかけたりなど、空間の有効利用も可能。
対面キッチンのあるLDKは、子育て世代に人気。
〈MUJI HOUSE〉と〈リビタ〉が手掛けたコンセプトルーム「MUJI INFILL 0」は、突板フローリングのフラットな約74平方メートル。家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、インテリアや収納家具で空間を仕切るなど、暮らしをデザインする豊かさを提案している。
入居者同士、また入居者と地域をつなぐハブ機能を備えた居住空間、リノア新松戸。サービスや情報をシェアすることが当たり前になった今、リノベーションを機に生まれたコモンスペースは、「暮らしやすさのシェア」という新たな価値を生み出していく。建物が持つ機能と入居者のアイデアが融合し、「育てていく住まい」はこの先、どのような可能性を見せてくれるだろうか。
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