器を蘇らせ、新たな魅力を生み出す「金継ぎ」の楽しみ
愛用の器が欠けたり割れたりしてしまったら? 日本の伝統工芸技術「金継ぎ」で繕えば、新たな「景色」を楽しみながら、また使えるようになります。
渡辺安紀 |Aki Watanabe
2016年12月5日
毎日使っていた愛着や思い出のあるお皿やカップが割れてしまい、泣く泣く処分した経験はありませんか? 近年、モノやそれにまつわる思い出を大切にするという価値観が見直されるなかで、「金継ぎ」のワークショップが人気を集めています。
「金継ぎ」とは壊れた器を漆で継ぎ、金や銀で装飾する日本独自の伝統工芸技術です。日本では、漆を使った器の修復は、縄文時代から行われてきたと言われており、室町時代になり、茶の湯文化の発展とともに、金継ぎの芸術が花開きました。金継ぎで繕った跡を「景色」と呼び、壊れる前にはなかった姿を愛でることで、器そのものの価値を高めようとするのが金継ぎの特長です。
壊れたものをただ修復するだけでなく、景色を描き、新たな美を生む金継ぎ。合成の「新うるし」が登場したことで家庭でも気軽に金継ぎを楽しめるようになりました。今回は金継ぎ作家の藤田美穂さんのワークショップにお邪魔して、新うるしを使った金継ぎの方法を習ってきたのでご紹介します。
「金継ぎ」とは壊れた器を漆で継ぎ、金や銀で装飾する日本独自の伝統工芸技術です。日本では、漆を使った器の修復は、縄文時代から行われてきたと言われており、室町時代になり、茶の湯文化の発展とともに、金継ぎの芸術が花開きました。金継ぎで繕った跡を「景色」と呼び、壊れる前にはなかった姿を愛でることで、器そのものの価値を高めようとするのが金継ぎの特長です。
壊れたものをただ修復するだけでなく、景色を描き、新たな美を生む金継ぎ。合成の「新うるし」が登場したことで家庭でも気軽に金継ぎを楽しめるようになりました。今回は金継ぎ作家の藤田美穂さんのワークショップにお邪魔して、新うるしを使った金継ぎの方法を習ってきたのでご紹介します。
金継ぎは和の器だけでなく洋食器でも楽しめますので、さまざまな器でチャレンジしてみましょう。
「本漆」と「新うるし」
伝統的な金継ぎでは「本漆」をつかいますが、今回は「新うるし」を使います。このふたつの違いはなんでしょうか?
「本漆」はウルシの樹液を材料とする天然塗料で、独特な優雅さがあり、酸やアルカリにも強いという特長もあります。一方で、肌がかぶれる場合もあるため、扱うときには細心の注意が必要です。
カジュアルに修復できる素材として使われているのが「新うるし」と呼ばれる合成接着剤です。仕上がりが本漆に似ていて扱いやすいというメリットがある一方で、合成接着剤のため、修復後の器の用途には注意が必要になります。子どもが毎日使う器や、急須の注ぎ口、茶器などの研磨の可能性のあるものは「本漆」を使った修復方法を選んだほうがよいでしょう。
「本漆」と「新うるし」
伝統的な金継ぎでは「本漆」をつかいますが、今回は「新うるし」を使います。このふたつの違いはなんでしょうか?
「本漆」はウルシの樹液を材料とする天然塗料で、独特な優雅さがあり、酸やアルカリにも強いという特長もあります。一方で、肌がかぶれる場合もあるため、扱うときには細心の注意が必要です。
カジュアルに修復できる素材として使われているのが「新うるし」と呼ばれる合成接着剤です。仕上がりが本漆に似ていて扱いやすいというメリットがある一方で、合成接着剤のため、修復後の器の用途には注意が必要になります。子どもが毎日使う器や、急須の注ぎ口、茶器などの研磨の可能性のあるものは「本漆」を使った修復方法を選んだほうがよいでしょう。
写真は取っ手がとれてしまったコーヒーカップに金継ぎをした藤田さんの作品。
注意点:「本漆」、「新うるし」で金継ぎした器は、オーブン、電子レンジ、食洗機、クレンザーは使用できません。
注意点:「本漆」、「新うるし」で金継ぎした器は、オーブン、電子レンジ、食洗機、クレンザーは使用できません。
材料
- 陶器用接着剤
- 金属用エポキシパテ(硬化までの時間が短いタイプ。5分程度で固まりますが、実際の表示時間はメーカーによって異なります。時間がかかってしまいそうなときはアルコールスプレーを使うと、硬化を遅らせることができます。)
- 耐水性ヤスリ(粒度400-1000、仕上げ用は粒度1500以上)
- 新うるし
- 色粉(今回使用したのは真鍮)
- 新うるし用洗い液
- 新うるし用薄め液
- スポイト(注射器タイプは100円ショップなどでもで購入できる)
- 細筆(プラモデル用の面相筆)
- 水(適量)
- アルミホイル
1. 状態を確認する
器をきれいに洗い、傷の状態を確認する。自然光や照明にかざして「にゅう」(欠けたり割れたりしてはいないがひびが入っている状態)の位置も確認しておく。
器をきれいに洗い、傷の状態を確認する。自然光や照明にかざして「にゅう」(欠けたり割れたりしてはいないがひびが入っている状態)の位置も確認しておく。
2. 接着する
接着剤をつける順番を確認してから、陶器用接着剤で接着する。接合したところに段差や溝ができないように気をつける。
接着剤をつける順番を確認してから、陶器用接着剤で接着する。接合したところに段差や溝ができないように気をつける。
「欠片と欠片がピタッとなる瞬間の位置が正しい位置です」と藤田さん。表面が滑らかになっているか確認して乾かす。
3. 欠けを埋める
金属用エポキシパテA剤とB剤を一色になるまでしっかりと混ぜ合わせる。「混ぜが甘いとあとでポロっと取れてしまうので、よく混ぜ合わせてください」と藤田さん。
欠けている部分や、接合部分の溝をパテで埋めて成形する。同じ高さ、同じ厚みになるように注意する。
金属用エポキシパテA剤とB剤を一色になるまでしっかりと混ぜ合わせる。「混ぜが甘いとあとでポロっと取れてしまうので、よく混ぜ合わせてください」と藤田さん。
欠けている部分や、接合部分の溝をパテで埋めて成形する。同じ高さ、同じ厚みになるように注意する。
「パテは5分もしないうちに硬化しはじめますが、焦らないこと。作業がしづらくなったら、よく混ぜた新しいパテをどんどん使いましょう」と藤田さん。
欠けや、接着した部分が元の状態になるようにパテを押し込んでいく。溝は段差を確認しながら、谷から山に向かっていれるとやりやすい。「このパテの作業をいかに丁寧に行うかが重要です。次のヤスリの時間を短縮するだけでなく、美しく仕上がるポイントのひとつになります。」
4. にゅうを繕う(にゅうがある場合の工程)
「にゅう」とは内側から傷が入ってひびとなっているものです。器によってはどこに「にゅう」がはいっているかわかりづらいものもあるので、照明や自然光にかざして位置を確認し、新うるしをたっぷりと筆にのせて「にゅう」に染み込ませます。染み込ませたら15分乾かします。
乾いたら新うるし用洗い液をティッシュに染み込ませて余分な新うるしを拭き取ります。
「にゅう」とは内側から傷が入ってひびとなっているものです。器によってはどこに「にゅう」がはいっているかわかりづらいものもあるので、照明や自然光にかざして位置を確認し、新うるしをたっぷりと筆にのせて「にゅう」に染み込ませます。染み込ませたら15分乾かします。
乾いたら新うるし用洗い液をティッシュに染み込ませて余分な新うるしを拭き取ります。
5. ヤスリをかける
ペタペタしていたパテが乾いて固まったらヤスリの工程に入ります。
パテがペタペタしなくなり、爪先で押しても跡がつかないか、パテを埋めた部分とそうでない部分を軽く爪先で叩いて同じ高さの音がすれば固まった証拠です。
耐水性ヤスリに水をたっぷりつけて、表面を滑らかにします。
器の素材によって、ヤスリの粗さを使い分けます。傷つきやすい器ほど粒度が細かいヤスリを使用します。(数字が大きい方が粒度が細かいヤスリ)写真の器には粒度400のヤスリを使用しています。
ペタペタしていたパテが乾いて固まったらヤスリの工程に入ります。
パテがペタペタしなくなり、爪先で押しても跡がつかないか、パテを埋めた部分とそうでない部分を軽く爪先で叩いて同じ高さの音がすれば固まった証拠です。
耐水性ヤスリに水をたっぷりつけて、表面を滑らかにします。
器の素材によって、ヤスリの粗さを使い分けます。傷つきやすい器ほど粒度が細かいヤスリを使用します。(数字が大きい方が粒度が細かいヤスリ)写真の器には粒度400のヤスリを使用しています。
パテで埋めた部分が滑らかになっているか、手で触って確かめながら、やすりをかけます。
パテで埋めた部分が滑らかになったら、仕上げのやすりがけをします。仕上げには、粒度1500以上のヤスリを使います(写真は粒度2000のヤスリ)。こちらも水をつけて使います。パテで埋めた部分以外も指紋がついている可能性があるので、全体を丁寧にやすりがけしていきます。
パテで埋めた部分が滑らかになったら、仕上げのやすりがけをします。仕上げには、粒度1500以上のヤスリを使います(写真は粒度2000のヤスリ)。こちらも水をつけて使います。パテで埋めた部分以外も指紋がついている可能性があるので、全体を丁寧にやすりがけしていきます。
6. 景色をつける
アルミ箔などの上で新うるしと色粉(写真は真鍮)と薄め液を1:1:1で混ぜ合わせます。最初に新うるしと色粉を混ぜ合わせ、色が艶やかになったら、スポイトで薄め液を1滴ずつ追加します。筆で線を引いて、線がすぐに消える程度の粘度が目安。
アルミ箔などの上で新うるしと色粉(写真は真鍮)と薄め液を1:1:1で混ぜ合わせます。最初に新うるしと色粉を混ぜ合わせ、色が艶やかになったら、スポイトで薄め液を1滴ずつ追加します。筆で線を引いて、線がすぐに消える程度の粘度が目安。
色ができたら、補修箇所に塗ります。「塗るというより、色補修箇所にのせていく感覚です」と藤田さん。色をのせたところがちょっとぷっくり盛れている状態になるようにします。
はみ出してしまったところは新うるし用洗い液をティッシュに含ませて拭き取ります。
筆で溜めをわざと作ったり、ワインのコルク栓で水玉模様をつけたり、自分なりの「景色」を作りましょう。
筆で溜めをわざと作ったり、ワインのコルク栓で水玉模様をつけたり、自分なりの「景色」を作りましょう。
色を塗ったら、2日ほど置いて完全に乾かしてから洗って使用してください。
金継ぎは単なる補修ではなく、あえて表情をだしたり、あそんでみたりすることで、本来の器になかった美しさや面白さを加えて蘇らせることができます。金継ぎ作家の藤田美穂さん(写真)は「モノに手をかけると愛着がわき、さらに大切なモノになります。日常お使いの器は捨てずに育てていってください。新うるしと本漆、それぞれの特長を理解して楽しんでくださいね」と金継ぎの魅力を語ってくれました。
今回のワークショップは〈杉並 海の家〉で開催されました。プロダクトデザイナーでオーナーの海山俊亮さん(写真右手)は、築60年の日本家屋をセルフリノベーションして、シェアアトリエ兼ギャラリーに改装。2Fのアトリエスペースは自身のプロダクトを販売するショップです。そのほか、藤田さんのような作家さんのワークショップも開催しています。
教えてHouzz
「金継ぎ」にトライしてみたいと思いますか?
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渡辺安紀さま
>割ってしまったり、欠けができてしまって泣く泣く処分した経験
そうなんです。ペアで買ったのに結局1客分がダメになって両方を無駄にしたり…。
週末も開催なさっているのですね!
>アンティーク市で欠けたお茶碗を見つけて金継ぎしてみる
素敵なアイデアですね!
そうなんです、手元に修理したいものが無いと、なかなか腰が上がらず…。
金継ぎの為に、ちょっと蚤の市等に出掛けて、探してみます。
ありがとうございました。
Office Kさま>ぜひぜひ!私もアンティーク市巡り好きなのですが、目当てのものがあるのとないのとでは楽しさが違います。いいものが見つかるといいですね!
Narumi Sonodaさま>コメントありがとうございます。ガラスも金継ぎできますよ。今回のワークショップでもガラスのコップを金継ぎされている方がいらっしゃいました。ガラスは陶磁器と少しやり方が異なるようでしたので、ワークショップの先生にどうやって修復するのがいいか、相談されてみるとよろしいかと思います。金でなく、銀の色粉をつかっても素敵になりそうですね!