インダストリアルスタイル入門:収納スペース編
インダストリアルスタイルって何? 1980年代からインダストリアルスタイルに魅せられ、自分のスタイルとして実践してきた著者が、武骨でハイセンスなこの人気スタイルをインテリアに取り入れる極意を解説。シリーズ第一回は「収納スペース編」です。
ヒジュン カスヤ|Hijung Kasuya
2016年12月23日
学校や工場などで使われる業務用・工業用のアイテムを使った、武骨ながらもハイセンスなインダストリアルスタイル。今や世界中で人気のスタイルです。「インダストリアル」とは英語でまさに「工業用」「業務用」という意味の言葉。部屋の片隅に「置く・使う」ものに少しずつインダストリアルなエッセンスを取りいれると、既存のインテリアに一味加わって、新鮮な空間に生まれ変わります。
私は80年代にインダストリアルスタイルの教科書ともいうべき『HIGH-TECH: The Industrial Style and Source Book for the Home』という本と出会い、機能性とシックでエレガントな魅力を兼ね備えたこのスタイルに惹かれ、インテリアデザイナー、コーディネーターとしての仕事に取り入れてきました。特に、私が手がけるプロダクトデザインにおいては、原点になっています。
インダストリアルスタイルの極意とは、住宅でない場所で使われているアイテムを住空間に取り入れること。使うアイテム自体は高級品でも珍しいものでもありません。学校や図書館、オフィスやブティック、スーパーのディスプレイ什器など、街の中を歩きながら、視点を少し変えて眺めてみれば、家庭に取り入れられるインテリアのヒントに気づくはずです。
そこで、今回から始まるシリーズ記事では、「インダストリアルスタイルのヒント」と題して、このスタイルを暮らしに取り入れるコツをご紹介していきます。
ここでは学校や公共施設などで使われていた古いロッカー、住宅設備の建築材として使用される配管用パイプ、同様に建築素材として多用されるエキスパンドメタル(金属板)という、3つの金属素材のアイテムを収納スペースに取りいれるヒントを探ります。
私は80年代にインダストリアルスタイルの教科書ともいうべき『HIGH-TECH: The Industrial Style and Source Book for the Home』という本と出会い、機能性とシックでエレガントな魅力を兼ね備えたこのスタイルに惹かれ、インテリアデザイナー、コーディネーターとしての仕事に取り入れてきました。特に、私が手がけるプロダクトデザインにおいては、原点になっています。
インダストリアルスタイルの極意とは、住宅でない場所で使われているアイテムを住空間に取り入れること。使うアイテム自体は高級品でも珍しいものでもありません。学校や図書館、オフィスやブティック、スーパーのディスプレイ什器など、街の中を歩きながら、視点を少し変えて眺めてみれば、家庭に取り入れられるインテリアのヒントに気づくはずです。
そこで、今回から始まるシリーズ記事では、「インダストリアルスタイルのヒント」と題して、このスタイルを暮らしに取り入れるコツをご紹介していきます。
ここでは学校や公共施設などで使われていた古いロッカー、住宅設備の建築材として使用される配管用パイプ、同様に建築素材として多用されるエキスパンドメタル(金属板)という、3つの金属素材のアイテムを収納スペースに取りいれるヒントを探ります。
ヴィンテージロッカー
学校、オフィス、スポーツジムなどで使用されていた古いスチール製のロッカーがヴィンテージロッカーと称して人気家具のひとつとなっています。古びた風合いにより、鉄製でありながら経年の歴史が沁みこんだ暖かさを感じるためでしょうか。
1. ヴィンテージロッカーを塗装する
ヴィンテージロッカーを塗装してインテリアに取り入れた子供部屋。壁の白と統一することで清潔感をプラス。ヴィンテージ家具に手を加えてソフトな印象にすることで、きれいめのインダストリアルスタイルの部屋に仕上がっています。収納家具にはインテリア全体を左右する大きな存在感があります。
学校、オフィス、スポーツジムなどで使用されていた古いスチール製のロッカーがヴィンテージロッカーと称して人気家具のひとつとなっています。古びた風合いにより、鉄製でありながら経年の歴史が沁みこんだ暖かさを感じるためでしょうか。
1. ヴィンテージロッカーを塗装する
ヴィンテージロッカーを塗装してインテリアに取り入れた子供部屋。壁の白と統一することで清潔感をプラス。ヴィンテージ家具に手を加えてソフトな印象にすることで、きれいめのインダストリアルスタイルの部屋に仕上がっています。収納家具にはインテリア全体を左右する大きな存在感があります。
2. 天然木とサビの入ったロッカーを組み合わせる
経年のサビ感をそのままを活かした武骨な本格ヴィンテージロッカーは、天然木の床と相性が抜群です。共に手を加えない素のままの素材感を共鳴させる、高感度な組合わせの手法です。
経年のサビ感をそのままを活かした武骨な本格ヴィンテージロッカーは、天然木の床と相性が抜群です。共に手を加えない素のままの素材感を共鳴させる、高感度な組合わせの手法です。
3. アクセントカラーを統一する
赤をアクセントにしたキッチンカウンターの脇に同色のヴィンテージロッカーを設えて、さらに揃いの赤いシート張りのミッドセンチュリーなスツールをコーディネートしています。アクセントカラーを効果的に使った例。
キッチンまわりの雑多になりがちな小物をきちんと細かく分けて収納できる家具としても頼もしい存在です。
赤をアクセントにしたキッチンカウンターの脇に同色のヴィンテージロッカーを設えて、さらに揃いの赤いシート張りのミッドセンチュリーなスツールをコーディネートしています。アクセントカラーを効果的に使った例。
キッチンまわりの雑多になりがちな小物をきちんと細かく分けて収納できる家具としても頼もしい存在です。
4. レンガ壁とコーディネートする
インダストリアルスタイルの代表的コーディネート例。経年した鉄の肌の色とレンガ壁の組み合わせこそこのスタイルのお手本。
このイメージに挑戦するのなら、DIYで壁面の一部をレンガの壁に仕上げて、ヴィンテージショップで探したロッカーを設えてみる手もありですね。
インダストリアルスタイルの代表的コーディネート例。経年した鉄の肌の色とレンガ壁の組み合わせこそこのスタイルのお手本。
このイメージに挑戦するのなら、DIYで壁面の一部をレンガの壁に仕上げて、ヴィンテージショップで探したロッカーを設えてみる手もありですね。
5. 玄関のアクセントに使う
家族の出入りでモノも散らかりがちな玄関回りに小物の収納ロッカーを利用したアイデアです。塗装したヴィンテージロッカーを片隅に置けばインテリアのカラーアクセントとしても引き立ちます。
家族の出入りでモノも散らかりがちな玄関回りに小物の収納ロッカーを利用したアイデアです。塗装したヴィンテージロッカーを片隅に置けばインテリアのカラーアクセントとしても引き立ちます。
配管用パイプ
住宅設備で使用される配管用パイプは一般的には目に触れないように壁の中に収めて設置されますが、近年の多様化した住宅設計ではデザイン性や空間を取りこむ手段としてあえて露出するデザインも珍しくありません。インダストリアルスタイルのキーアイテムとして古く錆びたものやエイジング塗装したものから新しいものまでアイコニックに使われます。
1. クローゼットに利用する
用途に合わせて縦横に自在に組むことができること、そして丈夫なことが、配管用パイプのいちばんの特質。写真のウォークインクローゼットのように、大量の衣服の収納も1本のハンガーパイプにまとめてしまえる頼もしいツールです。アパレルの店舗ではよく見かける手法なので、まずはおしゃれなお店を巡って、お洒落な使い方のリサーチからはじめては。
住宅設備で使用される配管用パイプは一般的には目に触れないように壁の中に収めて設置されますが、近年の多様化した住宅設計ではデザイン性や空間を取りこむ手段としてあえて露出するデザインも珍しくありません。インダストリアルスタイルのキーアイテムとして古く錆びたものやエイジング塗装したものから新しいものまでアイコニックに使われます。
1. クローゼットに利用する
用途に合わせて縦横に自在に組むことができること、そして丈夫なことが、配管用パイプのいちばんの特質。写真のウォークインクローゼットのように、大量の衣服の収納も1本のハンガーパイプにまとめてしまえる頼もしいツールです。アパレルの店舗ではよく見かける手法なので、まずはおしゃれなお店を巡って、お洒落な使い方のリサーチからはじめては。
2. アルミの配管用パイプできれいめに
レンガ造りの屋根裏部屋に取り入れた例です。アルミのパイプ管を使用した清潔感のあるきれいめインダストリアルスタイルに。
レンガ造りの屋根裏部屋に取り入れた例です。アルミのパイプ管を使用した清潔感のあるきれいめインダストリアルスタイルに。
3. 古材(廃材)の棚板と組合わせる
パイプ管に棚板(古材)を組合わせてデスクと一体型にしたシェルフの例。背面の木板の壁面を白く塗装することで、重い印象になりがちなシェルフ全体との対比のバランスをとっています。床がモルタルなのでガレージか倉庫のようですね。壁面や天高に合わせた自在な配管パイプ利用例です。
パイプ管に棚板(古材)を組合わせてデスクと一体型にしたシェルフの例。背面の木板の壁面を白く塗装することで、重い印象になりがちなシェルフ全体との対比のバランスをとっています。床がモルタルなのでガレージか倉庫のようですね。壁面や天高に合わせた自在な配管パイプ利用例です。
エキスパンドメタル
軽くて丈夫、換気性がある上に中が見えやすい点が重宝なエキスパンドメタル(金属板)は建物外構のフェンスや換気通風設備などによく使われている建材です。
1. エキスパンドメタルを収納扉に
洗濯機置場と収納を兼ねたスペースの扉に利用。通風性と清潔感のある扉は、部屋の一角にスッキリした心地よさを生み出します。
軽くて丈夫、換気性がある上に中が見えやすい点が重宝なエキスパンドメタル(金属板)は建物外構のフェンスや換気通風設備などによく使われている建材です。
1. エキスパンドメタルを収納扉に
洗濯機置場と収納を兼ねたスペースの扉に利用。通風性と清潔感のある扉は、部屋の一角にスッキリした心地よさを生み出します。
2. 白壁にスチールの扉
エントランススペースの収納扉にエキスパンドメタルを利用した例。前例と同様に特性を活かして収納の扉全面に使用。白い空間にスチールの重厚感を加えることで落ち着いた佇まいを印象づけています。
エントランススペースの収納扉にエキスパンドメタルを利用した例。前例と同様に特性を活かして収納の扉全面に使用。白い空間にスチールの重厚感を加えることで落ち着いた佇まいを印象づけています。
インダストリアルスタイル:収納スペースのポイントは?
インダストリアルスタイルは、パイプや金属板など、普段は壁の中や天井裏、床下などに隠されている「見えない素材」をインテリアの一部としてさりげなく、またはアイコニックに見せてコーディネートします。業務用と住空間用の素材を既存の利用法の境界線を取り払う発想です。また、インダストリアルスタイルといっても、素朴感のままの演出もあれば、シックな味わいを出すもの、きれいめな仕上がりをめざすものなど、コーディネート次第でさまざまなテイストにスタイリングできます。
失敗しないコツは素材を3種類以内に押さえること。インテリアの背景となる床、壁、天井の仕上げ材には、レンガ、漆喰、天然木、タイル、コンクリート、石などが相性の良い素材です。古材、廃材、エイジングの金属板、配管パイプ、天然木、業務用の什器、ロッカーなどを、新品のものも含めてマッチングさせることが技であり、面白さです。
こちらもあわせて
インダストリアルなアートシーンの作り方
Houzz スタイル事典:インダストリアルスタイル
教えてHouzz
コメント欄でご感想をおきかせください。
インダストリアルスタイルは、パイプや金属板など、普段は壁の中や天井裏、床下などに隠されている「見えない素材」をインテリアの一部としてさりげなく、またはアイコニックに見せてコーディネートします。業務用と住空間用の素材を既存の利用法の境界線を取り払う発想です。また、インダストリアルスタイルといっても、素朴感のままの演出もあれば、シックな味わいを出すもの、きれいめな仕上がりをめざすものなど、コーディネート次第でさまざまなテイストにスタイリングできます。
失敗しないコツは素材を3種類以内に押さえること。インテリアの背景となる床、壁、天井の仕上げ材には、レンガ、漆喰、天然木、タイル、コンクリート、石などが相性の良い素材です。古材、廃材、エイジングの金属板、配管パイプ、天然木、業務用の什器、ロッカーなどを、新品のものも含めてマッチングさせることが技であり、面白さです。
こちらもあわせて
インダストリアルなアートシーンの作り方
Houzz スタイル事典:インダストリアルスタイル
教えてHouzz
コメント欄でご感想をおきかせください。
おすすめの記事
インテリア
ブランケット、クッション、ファブリックパネルで秋冬のインテリアにチェンジ!
インテリアに季節感を取り入れるのに、最も気軽に使えるのはファブリック。なかでもすぐに試せるブランケット、クッション、ファブリックパネルで小さな模様替えをしてみませんか?
続きを読む
書斎・ホームオフィスの記事
ホームオフィスに必須な機能4選
機能的でありながら、スタイリッシュさもあきらめない、そんなコンパクトなオフィス空間を作り出すためのヒントをデザイナーがシェアします。
続きを読む
専門家とのやりとり
インテリアコーディネートをプロに依頼するには? 知っておきたい12のQ&A
文/町田瑞穂ドロテア
空間づくりを知り尽くしたプロにインテリアコーディネートを依頼すれば、快適な家ができるのは間違いありません。プロジェクトをスムーズに進めるために知っておきたいことを、Q&Aでまとめてみました。
続きを読む
インテリア
新築やリノベーションでインテリアデザイナーを雇うべき理由とは?
センスのいいインテリアデザイナーを雇えば、プロのセンスを活かした家づくりやリフォーム・リノベーションが実践できるだけでなく、結果としてクライアント側のストレスや時間の負担が減り、コストの削減にもつながります。
続きを読む
家具
床と家具の木の色を揃えずに、バランスよく見せる7つの方法
ナチュラルな木目を活かした家具をフローリングの部屋に置くとき、木の色を同じに揃えなければと思い込んでいませんか? 濃さや質感が違っても、素敵にまとめる方法はいろいろあります。
続きを読む
素敵なラインナップですね。普段、貴金属、金属に関わる仕事をしているので、個人的には「金属質」には抵抗なく、むしろ、工業製品ならではの質実剛健で無駄がなく、だからこそ必然的にスタイリッシュである、というイメージは大好きです。ただ、金属質が勝ってしまうと冷たい印象になるので、リビングなどのインテリアスタイリングは天然木や廃材とのミックスが個人的には好ましく思います。金属の「サビの質感」は実際「サビ」なので、当然進行するわけで、それでよしとするのか(それが許されるのか)、コーティングを施すのか、インテリアを提供する側が、そのメンテナンス、アフターケアはどう考えているか、ということに興味があります。