Houzzツアー : 窓際に廊下を巡らせ、光あふれるギャラリーのような空間を創出
レイアウトの工夫で、ほぼすべての部屋に光を届けることが可能に。シンプルでコンパクトな“箱”を上手に生かすアイデアいっぱいのマンションリノベーション。

takako kawaguchi
2015年10月28日
すべての部屋に大きな窓があり、さわやかな風とあたたかな陽ざしが室内を満たす……。これは多くの人が思い描く理想的な家の光景にちがいない。しかしながら現実は、窓の数には限りがあり、サービスルームやクローゼット、ワークスペースなど光のまったく届かない空間ができてしまうことの方が多いのではないだろうか。
今回ご紹介するS夫妻宅は、窓の数や位置を変えられないマンションリノベーションにも関わらず、室内空間のほぼすべてに光があふれる家づくりに成功した。成功の鍵となったのは、通常なら居室にするであろう窓際のスペースに、廊下をレイアウトするという革新的なアイデアだった。
今回ご紹介するS夫妻宅は、窓の数や位置を変えられないマンションリノベーションにも関わらず、室内空間のほぼすべてに光があふれる家づくりに成功した。成功の鍵となったのは、通常なら居室にするであろう窓際のスペースに、廊下をレイアウトするという革新的なアイデアだった。
「窓際に廊下」のプランを立てたのは、建築を勉強しているという奥さま。「角部屋のメリットを最大限に引き出せるプランニングをしたい」と、通風や採光、回遊性にも富んだアイデアを練り上げたのだとか。そのオリジナリティあふれる素晴らしい原案をもとに、リノままが廊下などディテールの寸法や空間配置を微調整。こうして、白を基調としたインテリアに自然光がふんだんに差し込む、アートギャラリーのような家が誕生したのである。
どんなHouzz?
家族構成:40代のSさん夫妻
所在地:東京都世田谷区
専有面積:69.55平方メートル
間取り:4LDK → 1LDK+ウォークインクロゼット+ワークスペース+書斎+ドライエリア
設計:リノまま(東京テアトル)
竣工:2014年12月
どんなHouzz?
家族構成:40代のSさん夫妻
所在地:東京都世田谷区
専有面積:69.55平方メートル
間取り:4LDK → 1LDK+ウォークインクロゼット+ワークスペース+書斎+ドライエリア
設計:リノまま(東京テアトル)
竣工:2014年12月
廊下からリビングまで、8か所ある窓のいずれも壁で仕切らず、オープンにした設計。ライトグレーのモルタル床と真っ白な壁や天井が一体化し、69.55平方メートルという実際の面積以上の広さを感じさせる。
飾っている小物や家具でところどころに黒を取り入れ、モノトーンカラーで全体を大人っぽくまとめた、感度の高いインテリアにも注目したい。
飾っている小物や家具でところどころに黒を取り入れ、モノトーンカラーで全体を大人っぽくまとめた、感度の高いインテリアにも注目したい。
家のメインともいえる廊下に添う形で、ワークスペース、寝室、ウォークインクロゼットが並ぶ。普段は扉やカーテンを開けてあるのでどのスペースも廊下とつながっているような感覚があり、窓がなくても明るさ、開放感ともに申し分ない。
マットなモルタルなどの無機質なテイストに、ソフトなカーテンでやわらかさを添えたバランスは、冷たくなりすぎずゆったりとくつろいだ空間に見せる重要なエレメンツだ。
マットなモルタルなどの無機質なテイストに、ソフトなカーテンでやわらかさを添えたバランスは、冷たくなりすぎずゆったりとくつろいだ空間に見せる重要なエレメンツだ。
玄関からL字型に伸びた廊下の先にあるLDK。ダイニング部分までは廊下と同じモルタル仕上げ、一段上がったリビングには少しラフ感のあるウォルナットカラーのオーク床材を使い、ほんのりとあたたかみを出している。さらにワンステップ上がったキッチンは、黒のフロアタイルで大人っぽく引き締まった印象に。ダイニングからリビング、キッチンとそれぞれステップを設け、色も切り替えることで、壁がなくても明確なエリア分けがなされている。
友人を招いて料理を作り、ホームパーティを催すのが楽しみというS夫妻。住み替えを決意したのも「いつでもゲストを招くことができる、広々としたLDKが欲しい」との希望があったから。そのためLDKにはできる限りのスペースを持たせ、場所をとりがちな収納は廊下やワークスペースに集約した。結果はもちろん狙い通り、LDKに余分なものが散らかることなく、突然のゲストも慌てずに迎えられるようになったという。
ダイニングテーブルは親族の家具職人の方が新居祝いに製作してくれたオリジナル。天板はリビングの床材と合わせてあり、リビングとダイニングをさりげなくつなぐ存在になっている。
リビングのローテーブルは既製品だが、この家に合うようにと天板だけを風合いの出る塗料で塗り直したもの。
友人を招いて料理を作り、ホームパーティを催すのが楽しみというS夫妻。住み替えを決意したのも「いつでもゲストを招くことができる、広々としたLDKが欲しい」との希望があったから。そのためLDKにはできる限りのスペースを持たせ、場所をとりがちな収納は廊下やワークスペースに集約した。結果はもちろん狙い通り、LDKに余分なものが散らかることなく、突然のゲストも慌てずに迎えられるようになったという。
ダイニングテーブルは親族の家具職人の方が新居祝いに製作してくれたオリジナル。天板はリビングの床材と合わせてあり、リビングとダイニングをさりげなくつなぐ存在になっている。
リビングのローテーブルは既製品だが、この家に合うようにと天板だけを風合いの出る塗料で塗り直したもの。
リノベーション前の室内。4LDKの間取りで空間が細かく区切られていたため、閉塞感があった。今は窓際に配した廊下から家全体にふんわりと光が回り、同じ家とは思えないほどの明るさに。
リノベーションの過程でスケルトンにしたところ。三方に窓がある上に庭つき、という都内では希少な物件である。
この段階で、天井はできる限り高くして275センチに。キッチンは元の場所から大幅に移動したため、少し床を上げて配管の勾配スペースを確保した。
この段階で、天井はできる限り高くして275センチに。キッチンは元の場所から大幅に移動したため、少し床を上げて配管の勾配スペースを確保した。
キッチンには、MUJI+KITCHENのユニットシェルフキッチンを設置。ステンレスのシャープな表情が家のスタイルとマッチしている。「友人とのホームパーティの際にも、ダイニングやリビング側から自由に気兼ねなくグラスや食器を取れるように」との思いで取り入れたオープン収納である。
海外旅行が好きというS夫妻が一番こだわったのが、バスタブ、シャワー室、洗面台とトイレを一室にまとめたバスルーム。「パリなどの海外のホテルみたいな」という基準でタイルや壁材は真っ白に、蛇口などのパーツもアンティークなデザインをチョイス。洗面シンクは実験を行う理科室などに向けて作られたものを取り入れるなど、ディテールまで選び抜いた特別なスペースになっている。
実は家の中で唯一、自然光が届かないのがこのバスルーム。しかしながら洗練されたホテルスタイルと真っ白なタイルのおかげで暗さは微塵も感じない。
実は家の中で唯一、自然光が届かないのがこのバスルーム。しかしながら洗練されたホテルスタイルと真っ白なタイルのおかげで暗さは微塵も感じない。
バスルームの隣には、日本では珍しいドライルームが。天井にはバーを設置してあり、洗濯物を干すことができる。「バスルームとこのスペースの2か所に換気扇を設け、湿気対策をしています」と、中古マンションのリノベーションを多数手がけてきたリノままらしいこまやかな配慮が光っている。
ドライルームにはドレッサーも置き、家事兼メイクルームとして空間と時間を有効に活用。
ドライルームにはドレッサーも置き、家事兼メイクルームとして空間と時間を有効に活用。
玄関部分。左手の白い棚はシューズクロゼット。トランク型のメタルボックスを積み重ねたスタイリングが海外旅行を連想させ、家の主の好みを物語っている。
廊下の窓沿いに設置した収納は奥行き35㎝。たっぷりと物が収まる上、上部は奥さまが集めたセンスのいい雑貨などのディスプレイも楽しめる。廊下の幅は80㎝だが、この窓際のディスプレイ空間が廊下全体を広々と見せ、「実際よりも廊下が長く、室内の奥行きがあるように感じさせてくれます」。
築40年以上の閉鎖的な空間をアートギャラリーのように生まれ変わらせたS夫妻のリノベーション。「シンプルで真っ白な箱だからこそ、インテリアの発想が自由に広がるんです」。デザイン的な余白があり、飾る小物やファブリック次第で自在にスタイルを変えられる家はこの先、ゲストが訪れるたびに新たな発想や進化を見せて楽しませてくれるにちがいない。
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マンションにおけるリノベーションは、どうしても解放感を出す事が難しい点ですが、このポイントを押さえて於けば比較的成功する確率が高いと思います。
但し、出来れば天井の躯体に対する表情の演出が出来れば更にオシャレなマンションライフが楽しめますね。今回の写真にあるリノベーションも天井のデザイン処理が今一つ残念だと思います。
特に天井の高さをより演出するには、嘔体の柱と梁にデザイン処理をすればもっと天井の高さを強調出来るのにと思いました。