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風を呼び込む家、風を感じられる涼しげな家のつくり方
風通しをよくすることで、なるべくエアコンに頼らなくても暮らせる家のつくり方をご紹介します。
安井俊夫
2021年8月9日
天工舎一級建築士事務所主宰。神奈川県小田原市に事務所を構え、住宅や店舗などの設計監理業務を行っています。書評やコラムなども執筆中。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし」は、吉田兼好の随筆『徒然草』の一節です。エアコンなど無い時代に夏の暑さをしのぐには、いかに風通しの良い家とするかが、とても大切なポイントでした。そんな『徒然草』が書かれてから700年近くが経った今でも、風通しが家を建てる際に大切な点は、変わりません。
1. なぜ風通しの良いことが大切なのか
そもそも風通しの悪い家は室内に湿気がこもりやすく、カビやダニが発生しやすい室内環境を作ってしまいます。またコロナ禍の感染対策の一つとして、室内の換気が推奨されていましたが、風が入ることで室内の空気が排出されるため、風通しの良さは換気の良さと同じ意味だとも言えます。
つまり、風通しが良い家は、室内の暑さ対策に適しているだけでなく、健康管理の面においても重要だと言え、エアコンを使わなくても涼しさを感じる時間が増えることで、家計にも優しい家となるのです。
そもそも風通しの悪い家は室内に湿気がこもりやすく、カビやダニが発生しやすい室内環境を作ってしまいます。またコロナ禍の感染対策の一つとして、室内の換気が推奨されていましたが、風が入ることで室内の空気が排出されるため、風通しの良さは換気の良さと同じ意味だとも言えます。
つまり、風通しが良い家は、室内の暑さ対策に適しているだけでなく、健康管理の面においても重要だと言え、エアコンを使わなくても涼しさを感じる時間が増えることで、家計にも優しい家となるのです。
2. 風の2種類の特徴を知る
①風の吹く方角を知る
風を呼び込みたい季節は、湿度と気温が高くなる春から秋までの時期だと思います。兼好のいう「夏をむねとすべし」というのは、この時期の暑さ対策を考えましょうねー、という意味ですね。
この時期は太平洋上に高気圧、大陸側に低気圧が位置することが多く、高気圧から低気圧に向かって南東方向からの風が吹くことになります。これを南東季節風と呼びます。つまり日本国内に関して言えば、風の入り口は南東方向に設ければ良いことになります。ただし風は入り口だけ設けてもダメで、必ず出口を設ける必要があります。南東側に風の入り口を設け、同時に北西側に出口となる窓を設けることを、ワンセットとして考える必要があります。
①風の吹く方角を知る
風を呼び込みたい季節は、湿度と気温が高くなる春から秋までの時期だと思います。兼好のいう「夏をむねとすべし」というのは、この時期の暑さ対策を考えましょうねー、という意味ですね。
この時期は太平洋上に高気圧、大陸側に低気圧が位置することが多く、高気圧から低気圧に向かって南東方向からの風が吹くことになります。これを南東季節風と呼びます。つまり日本国内に関して言えば、風の入り口は南東方向に設ければ良いことになります。ただし風は入り口だけ設けてもダメで、必ず出口を設ける必要があります。南東側に風の入り口を設け、同時に北西側に出口となる窓を設けることを、ワンセットとして考える必要があります。
②風にも温度があることを知る
室内で温められた空気は、部屋の高い位置へ上がっていきます。この温かい空気を屋外に出せば、外から冷たい空気が入ってくることが可能となり、これが風となるわけです。温まった空気の出口となる窓を部屋の高い位置に設け、冷たい空気の入り口となる窓を部屋の低い位置に設ければ、効率の良い風の呼び込み方が出来る、ということです。
Houzzで建築家を探す
室内で温められた空気は、部屋の高い位置へ上がっていきます。この温かい空気を屋外に出せば、外から冷たい空気が入ってくることが可能となり、これが風となるわけです。温まった空気の出口となる窓を部屋の高い位置に設け、冷たい空気の入り口となる窓を部屋の低い位置に設ければ、効率の良い風の呼び込み方が出来る、ということです。
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風の吹く「方角」と「高さ」を理解することで、間取りの考え方や窓を設ける方位、窓の形や設置高さなどにも気を配ることが可能となり、風通しの良い家を造ることが出来ます。
つまり部屋には二か所の窓を設けることが必要で、もし南北の二か所に窓を設けることが出来なかった場合でも、なるべく二か所の外壁に窓を設けることを目指しましょう。もし外壁の一面にしか窓を設けることが出来ない場合には、室内扉の上部に欄間を設けるなどの工夫をし、風の通り道を意識することが大切です。
吹き抜けのある部屋の場合には、吹き抜け上部に窓を設けることは、風通しを良くするためには理想的です。ただし、高い位置の窓の開閉方法には、十分な検討が必要ですのでお忘れなく。
つまり部屋には二か所の窓を設けることが必要で、もし南北の二か所に窓を設けることが出来なかった場合でも、なるべく二か所の外壁に窓を設けることを目指しましょう。もし外壁の一面にしか窓を設けることが出来ない場合には、室内扉の上部に欄間を設けるなどの工夫をし、風の通り道を意識することが大切です。
吹き抜けのある部屋の場合には、吹き抜け上部に窓を設けることは、風通しを良くするためには理想的です。ただし、高い位置の窓の開閉方法には、十分な検討が必要ですのでお忘れなく。
3. 窓の形を理解する
窓と言えば引き違い窓を思い浮かべますが、窓の形は他にも様々なものがあります。例えば部屋のメインとなる窓は、大きくて比較的に安価な引き違い窓を設ければよいと思いますが、ではもう一か所の窓はどうしましょう? そちら側も同様に引き違い窓を設けられる場合は良いのですが、部屋の広さや家具の配置、室内扉の位置によっては、大きな窓を設けられない場合もあるでしょう。そこで参考までに、窓の形に関して少し触れておきます。
窓と言えば引き違い窓を思い浮かべますが、窓の形は他にも様々なものがあります。例えば部屋のメインとなる窓は、大きくて比較的に安価な引き違い窓を設ければよいと思いますが、ではもう一か所の窓はどうしましょう? そちら側も同様に引き違い窓を設けられる場合は良いのですが、部屋の広さや家具の配置、室内扉の位置によっては、大きな窓を設けられない場合もあるでしょう。そこで参考までに、窓の形に関して少し触れておきます。
- 縦滑り出し窓
- 横滑り出し窓
- 上げ下げ窓
住み心地を左右する窓の種類と選び方
4. 防犯も考えましょう
風通しを良くするために大きく開放できる窓を採用する際には、外部からの視線の干渉や防犯に関して、同時に検討しておく必要があります。敷地に余裕があれば道路や隣家から距離を離すことも出来ますが、そうでない場合には隣接家屋の窓や玄関などの位置を把握し、窓と窓が向かい合うことを避けるといった注意も必要でしょう。
また、シャッター式雨戸と同じ形状でありながら、風を通すことの出来る製品などもあります。高い位置に窓を設けることで外部からの侵入を防ぐ方法や、人が入ることの出来ない小さな窓を設置するといった工夫の仕方もあるので、その辺りは建築家とよくご相談されると良いでしょう。
風通しを良くするために大きく開放できる窓を採用する際には、外部からの視線の干渉や防犯に関して、同時に検討しておく必要があります。敷地に余裕があれば道路や隣家から距離を離すことも出来ますが、そうでない場合には隣接家屋の窓や玄関などの位置を把握し、窓と窓が向かい合うことを避けるといった注意も必要でしょう。
また、シャッター式雨戸と同じ形状でありながら、風を通すことの出来る製品などもあります。高い位置に窓を設けることで外部からの侵入を防ぐ方法や、人が入ることの出来ない小さな窓を設置するといった工夫の仕方もあるので、その辺りは建築家とよくご相談されると良いでしょう。
5. 「24時間換気」も活用しよう
現代の家には24時間換気が義務付けられています。これは1時間で家の空気の半分以上を換気することを目的とし、室内の化学物質やダニや埃を排出することを目的として設置が義務付けられています。
あくまでも換気が目的であり、通風を目的としたものではありませんが、室内環境を快適に保つことを目的としていることは同じです。給気口・換気扇等の掃除を定期的に行い、決して止めてしまわないようにしましょう。
現代の家には24時間換気が義務付けられています。これは1時間で家の空気の半分以上を換気することを目的とし、室内の化学物質やダニや埃を排出することを目的として設置が義務付けられています。
あくまでも換気が目的であり、通風を目的としたものではありませんが、室内環境を快適に保つことを目的としていることは同じです。給気口・換気扇等の掃除を定期的に行い、決して止めてしまわないようにしましょう。
6. 外部にも大切な役割がある
建物周辺の環境に関しても、風が通りやすい環境を作ることができます。例えば敷地境界線に高いブロック塀を設けてしまうと、風の抜けが悪くなってしまいます。その場合、格子塀や生け垣などとすると、風の通りは改善されます。防犯性やメンテナンスなども考慮しながら、どんな選択をするかを検討しましょう。
建物周辺の環境に関しても、風が通りやすい環境を作ることができます。例えば敷地境界線に高いブロック塀を設けてしまうと、風の抜けが悪くなってしまいます。その場合、格子塀や生け垣などとすると、風の通りは改善されます。防犯性やメンテナンスなども考慮しながら、どんな選択をするかを検討しましょう。
また南側に緑があるだけで、地面からの日差しの照り返しは、コンクリート舗装などに比べて柔らかくなるというもの。これは昔からの「打ち水」などでも実証されているように、水が蒸発する際の気化熱による放射冷却効果に拠るものです。同時に風が生まれ、室内への涼を誘うことにも繋がります。
窓の上部に設ける霧避けや庇が作る日陰の大切さや、断熱材がもたらす家の断熱効果なども大切ですが、窓から風を呼び込むことで、エアコンに頼る時間が少しでも短くなれば、外部との繋がりを大切にした、心地良い家になるのかもしれませんね。
窓の上部に設ける霧避けや庇が作る日陰の大切さや、断熱材がもたらす家の断熱効果なども大切ですが、窓から風を呼び込むことで、エアコンに頼る時間が少しでも短くなれば、外部との繋がりを大切にした、心地良い家になるのかもしれませんね。
夏の風の向きを南から北へ吹くと書きましたが、お住まいの地域や周囲の自然環境、近隣建物との関係や道路・線路等の有無といった条件によっても、大きく変わってきます。家を建てる前に敷地の持つ特性や特徴に関して、建築家と情報を共有しながらご計画を進めることを、おすすめいたします。
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