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知っておきたい名作家具:柳宗理のバタフライスツール
柳宗理が手がけたミッドセンチュリーの名作スツール。美しい曲線がつくりだすオーガニックな美には、どんな空間でも優美にしてしまう力があります。
Becky Harris
2015年6月16日
バタフライスツールが初めて生産されたのは、なんと1954年のこと。チャールズ&レイ・イームズ夫妻が開発した曲木プライウッドの技術を使ってつくられたスツール。その優美なフォルムとスタイルは、時代を超越しています。世界中のどんなスタイルの部屋にも似合うこのスツールは、50年以上たった今も、当時以上に新鮮な魅力を放っています。
バタフライスツールの無駄を排したミニマルな美しさとオーガニックなフォルムは、日本的デザインの真骨頂であり、決して古びることがありません。数々の名作を生み出したデザイナーの柳宗理は、2011年に96歳で亡くなるまで制作を続けていました。泡だて器から巨大な橋まで、柳はまさにありとあらゆるものをデザインしました。1972年の札幌五輪の聖火トーチも柳の作品です。
それでは、さまざまな空間に置かれたバタフライスツールを見ていきましょう。きっと、自分の部屋にもひとつ置いてみたくなりますよ。
名作家具シリーズをもっと読む:アルヴァ・アアルト/セブンチェア/名作家具のウィッシュリスト
バタフライスツールの無駄を排したミニマルな美しさとオーガニックなフォルムは、日本的デザインの真骨頂であり、決して古びることがありません。数々の名作を生み出したデザイナーの柳宗理は、2011年に96歳で亡くなるまで制作を続けていました。泡だて器から巨大な橋まで、柳はまさにありとあらゆるものをデザインしました。1972年の札幌五輪の聖火トーチも柳の作品です。
それでは、さまざまな空間に置かれたバタフライスツールを見ていきましょう。きっと、自分の部屋にもひとつ置いてみたくなりますよ。
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バタフライスツールは、2つの同型のパーツと1本の金属製コネクターでできています。こちらはローズウッド。この作品を評して、「機能性の詩」「プライウッドで表現した俳句」と呼ぶ人もいます。
バタフライスツールを置くだけで、そっけない空間も素敵に見えてくるから不思議です。白い箱のようなシンプルな部屋ならなおさらのころ。しかし、このスツールの彫刻的な美しさだけに着目していてはいけません。機能的なものをつくる、というのが柳の哲学だったのですから。柳は、真に優れた実用性のあるものなら、流行が移り変わっていっても、決して古びることなどない、という信念を持っていました。
ナチュラルなメープルなら、軽快な印象になります。
バタフライスツールは、当初は日本国内でのみ生産されていましたが、現在は〈ヴィトラ〉(Vitra)社がライセンスを取得し、世界に向けて生産・販売を手がけています。写真の空間には、バタフライスツールと同時期に生まれたネルソンベンチの姿も見えます。
柳はインダストリアルデザイナーでしたが、職人の技、手工芸にも強い関心をもっていました。彼の父の柳宗悦はにほんにおける民藝運動の創始者であり、日本の民藝の保存に尽くしました。柳親子はいずれも、日々使われるものがもつ機能性の中に美を見出していました(用の美)。
小ぶりのサイズなので、洗面スペースのような小さな空間でも使いやすいアイテムです(幅42.0、奥行31.0、高さ38.7cm)。
写真は、フランク・ロイド・ライトの〈タリアセン・ウェスト〉で学んだダニエル・リーバーマンが1960年に設計した住宅。周囲の自然と強いつながりをもつ空間に、バタフライスツールはとてもよく似合います。
スツールの上には、オプションのクッションが載せられています。
スツールの上には、オプションのクッションが載せられています。
こちらのスイートルームでは、バタフライスツールが、空間内にあるアールデコとコンテンポラリーの要素をつなぐ役割を果たしています。
MoMAのコレクションとヴィトラのミニチュアコレクションの両方に選ばれているという事実は、柳のバタフライスツールが非常に優れたデザインてあることの証明です。
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