コメント
ツーバイフォー工法~その特徴とメリット・デメリット~
CMなどでよく耳にするツーバイフォー工法とは? そのメリットとデメリットについて解説します。
大村哲弥
2019年1月15日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo... もっと見る
日本の新築住宅のうち12.7%がツーバイフォー(2×4)工法で作られ、その戸数は年間10万戸を超えています(平成26年度建築着工統計)。1974年にオープン化されて以来40年超が過ぎたツーバイフォー工法は、すっかり日本に定着しています。今回は、ツーバイフォー工法の特徴を詳しく見てみましょう。
(Drawing showing the layout of wood in a balloon framed house / Public Domain)
ツーバイフォーは規格化されたシンプルで堅固な住宅
ツーバイフォー(2×4)工法は、北米(アメリカ・カナダ)におけるプラットフォーム工法を取り入れたもので、日本では正式には枠組壁工法と呼ばれています。ちなみにツーバイフォーという呼び名は和製英語であり、アメリカでは一般には、「フレーミング工法」や「ライトフレーム工法」と呼ばれています。
プラットフォーム工法のルーツは1830年代にシカゴで開発されたバルーン・フレーム工法にあります。軽量な部材を使って四角い箱型を組み立てるこの工法は、熟練した技術や大型の機械などがなくとも簡便に家が作れる方法として、西部開拓時代に大いに貢献しました。バルーン・フレーム工法は、規格化された製材や釘などを大量生産できるという、当時の先進的なアメリカの生産技術を背景にした工法であり、また、それまでの移民の出身地の家づくりを模した住宅(コロニアル様式)に代わるアメリカ、オリジナルの住宅でした。
このバルーン・フレーム工法が戦後に現在のプラットフォーム工法に発展し、日本のツーバイフォー工法につながっていきます。
ツーバイフォー工法は、2インチ×4インチ(38mm×89mm)の断面を主要な規格として製材された線材を使って枠を組み、その上に合板を釘打ちして床パネルや壁パネルを作り、それらを箱型の6面体に組み合わせて住宅を作る工法です。
ツーバイフォー工法のメリットやデメリットとして挙げられる下記の特徴は、すべてこの規格化された部材で四角い箱型の住宅を作るというところに由来しています。
メリット
デメリット
ツーバイフォーは規格化されたシンプルで堅固な住宅
ツーバイフォー(2×4)工法は、北米(アメリカ・カナダ)におけるプラットフォーム工法を取り入れたもので、日本では正式には枠組壁工法と呼ばれています。ちなみにツーバイフォーという呼び名は和製英語であり、アメリカでは一般には、「フレーミング工法」や「ライトフレーム工法」と呼ばれています。
プラットフォーム工法のルーツは1830年代にシカゴで開発されたバルーン・フレーム工法にあります。軽量な部材を使って四角い箱型を組み立てるこの工法は、熟練した技術や大型の機械などがなくとも簡便に家が作れる方法として、西部開拓時代に大いに貢献しました。バルーン・フレーム工法は、規格化された製材や釘などを大量生産できるという、当時の先進的なアメリカの生産技術を背景にした工法であり、また、それまでの移民の出身地の家づくりを模した住宅(コロニアル様式)に代わるアメリカ、オリジナルの住宅でした。
このバルーン・フレーム工法が戦後に現在のプラットフォーム工法に発展し、日本のツーバイフォー工法につながっていきます。
ツーバイフォー工法は、2インチ×4インチ(38mm×89mm)の断面を主要な規格として製材された線材を使って枠を組み、その上に合板を釘打ちして床パネルや壁パネルを作り、それらを箱型の6面体に組み合わせて住宅を作る工法です。
ツーバイフォー工法のメリットやデメリットとして挙げられる下記の特徴は、すべてこの規格化された部材で四角い箱型の住宅を作るというところに由来しています。
メリット
- 耐震性や耐風性に優れる
- 耐火性に優れる
- 気密性が高い
- 安定した品質や施工精度の高さ
- 工期が短い
デメリット
- 間取りや開口が制限される
- リフォームの自由度が低い
- 工事中の雨に留意が必要である
- 壁体内結露に留意する必要がある
(photo by ArmchairBuilder.com – New Home being Framed / CC BY 2.0)
ツーバイフォー工法のメリット
ツーバイフォー工法のメリットを具体的に見ていきましょう。
ツーバイフォー工法が地震や台風に強い理由として、床や壁を線材と面材を組み合わせて一体化したパネル状にすることよって、線材や面材単体に比べて強度が増すこと(「ダイヤフラム理論」と呼ばれています)が挙げられます。パネル化された壁や床は、地震や風による水平力が作用した場合、その平面形状を維持しようとする抵抗力が働き大きな強度を発揮します。
そうした強度のある部材を6面体に組み合わせて、床、壁、屋根が一体となったひとつの構造(モノコック構造)を成していることも耐震性や耐風性が高い要因です。高い強度が要求される自動車や飛行機はモノコック構造で作られており、紙なのに段ボール箱が容易につぶれないのも同じ理由です。
ツーバイフォー工法が火災に強い理由もパネル化された床や壁にその理由があります。ツーバイフォー工法の壁や床は、線材で枠を組んでその両側に合板などの面材を釘打ちして、内部が中空になったパネル状のものです。火災の際、このパネル化された壁や床の内部の枠材(線材)が空気の流れを遮断し、隣の部屋や上階への火の回りを遅らせるファイヤーストップの機能を果たすのです。
気密性が高いのもやはりパネル化された床や壁に由来します。壁どうしや壁と床、壁と天井などを接合する箇所での隙間が少なくなり、空気の流れが遮断されます。これが柱を立ててその間を壁でふさいでいく在来工法(軸組工法)に比べて、気密性に優れる理由です。
ツーバイフォー工法が施工のばらつきが少なく、品質が安定していると言われるのは、基本部材である線材や面材が規格化され工場生産されること、組み立てが容易でマニュアル化されていることがその理由です。建物に合わせて柱や梁などの部材をイチから作り、組み立てに一定の熟練を要する在来工法に比べて、部材のばらつきが少なく、組み立ての精度などの面で有利です。部材が規格化されて組み立てが容易であることは、工期が短いというメリットも生んでいます。
ツーバイフォー工法のメリット
ツーバイフォー工法のメリットを具体的に見ていきましょう。
ツーバイフォー工法が地震や台風に強い理由として、床や壁を線材と面材を組み合わせて一体化したパネル状にすることよって、線材や面材単体に比べて強度が増すこと(「ダイヤフラム理論」と呼ばれています)が挙げられます。パネル化された壁や床は、地震や風による水平力が作用した場合、その平面形状を維持しようとする抵抗力が働き大きな強度を発揮します。
そうした強度のある部材を6面体に組み合わせて、床、壁、屋根が一体となったひとつの構造(モノコック構造)を成していることも耐震性や耐風性が高い要因です。高い強度が要求される自動車や飛行機はモノコック構造で作られており、紙なのに段ボール箱が容易につぶれないのも同じ理由です。
ツーバイフォー工法が火災に強い理由もパネル化された床や壁にその理由があります。ツーバイフォー工法の壁や床は、線材で枠を組んでその両側に合板などの面材を釘打ちして、内部が中空になったパネル状のものです。火災の際、このパネル化された壁や床の内部の枠材(線材)が空気の流れを遮断し、隣の部屋や上階への火の回りを遅らせるファイヤーストップの機能を果たすのです。
気密性が高いのもやはりパネル化された床や壁に由来します。壁どうしや壁と床、壁と天井などを接合する箇所での隙間が少なくなり、空気の流れが遮断されます。これが柱を立ててその間を壁でふさいでいく在来工法(軸組工法)に比べて、気密性に優れる理由です。
ツーバイフォー工法が施工のばらつきが少なく、品質が安定していると言われるのは、基本部材である線材や面材が規格化され工場生産されること、組み立てが容易でマニュアル化されていることがその理由です。建物に合わせて柱や梁などの部材をイチから作り、組み立てに一定の熟練を要する在来工法に比べて、部材のばらつきが少なく、組み立ての精度などの面で有利です。部材が規格化されて組み立てが容易であることは、工期が短いというメリットも生んでいます。
写真:久野和作
ツーバイフォー工法のデメリット
同様に、ツーバイフォー工法のデメリットと言われている点も、すべてこの規格化された部材で四角い箱型の住宅を作るというところに由来しています。
堅固な箱型を基本とするツーバイフォー工法の場合、柱と梁を比較的自由に組み合わせてプランニングできる在来工法に比べて、間取りや開口に制限があります。具体的には、床面積に対して一定の壁(耐力壁)の長さや面積が必要とされることなどから、部屋の大きさや形状に制限があります。また、ひとつの壁に対しても連続した壁面が必要となるため、プランによっては下がり壁が必要となったり、窓の大きさや位置、窓の高さなどが制限されます。
大きなガラスの開口、天井までの高い窓やコーナー窓などは、ツーバイフォー工法では、基本的には難しいと考えた方が良いでしょう。本物の真壁の和室など本格的な和風の意匠へのこだわりなどもツーバイフォー工法には向いていません。一方、屋根を支える柱がないため、小屋裏を収納スペースにしたり、勾配天井にするなどの場合は有利です。また、ツーバイフォー工法でも耐力壁に代わる補強材(柱梁など)を導入することで、大きな開口などを実現することは可能です。
ツーバイフォー工法はリフォームの自由度が低いと言われるのも同じ理由です。リフォームや増築をする場合は、現在の耐力壁の位置を前提にして、その制約のなかで行う必要があります。
在来工法は、基礎ができあがった後に、柱と梁を組んで屋根をかけて、その後に床や壁を作り込んでいきます。上棟までは普通、一日で済みます。一方、ツーバイフォー工法の場合の躯体工事は、1階床、1階壁、2階床、2階壁、屋根の順に組み立てていき、上棟まで普通は数日かかります。
ツーバイフォー工法の場合、屋根が出来上がるまでに時間がかかるために工事中の雨に留意する必要があります。雨に濡れた場合も自然乾燥させれば、部材の強度には問題ないのですが、躯体工事の間に雨に濡れないように養生することやプレパネル工法で工期を短縮するなどの雨対策が重要です。
気密性が高いことは、室内と外気の温度差が大きくなり、換気や防湿対策に留意しないと、結露が起きやすくなります。特にツーバイフォー工法の場合は、中空になったパネルのなかに充填される断熱材の結露(壁体内結露)に留意する必要があります。
具体的には、室内側で気密性を高める気密・防湿層、断熱材内に入り込んだ水蒸気を外に逃し、外からの雨水などをブロックする防風・防水・透湿層、対流によって壁内の水蒸気を外部に逃がす通気層などさまざまな結露対策が工夫されています。
ツーバイフォー工法のデメリット
同様に、ツーバイフォー工法のデメリットと言われている点も、すべてこの規格化された部材で四角い箱型の住宅を作るというところに由来しています。
堅固な箱型を基本とするツーバイフォー工法の場合、柱と梁を比較的自由に組み合わせてプランニングできる在来工法に比べて、間取りや開口に制限があります。具体的には、床面積に対して一定の壁(耐力壁)の長さや面積が必要とされることなどから、部屋の大きさや形状に制限があります。また、ひとつの壁に対しても連続した壁面が必要となるため、プランによっては下がり壁が必要となったり、窓の大きさや位置、窓の高さなどが制限されます。
大きなガラスの開口、天井までの高い窓やコーナー窓などは、ツーバイフォー工法では、基本的には難しいと考えた方が良いでしょう。本物の真壁の和室など本格的な和風の意匠へのこだわりなどもツーバイフォー工法には向いていません。一方、屋根を支える柱がないため、小屋裏を収納スペースにしたり、勾配天井にするなどの場合は有利です。また、ツーバイフォー工法でも耐力壁に代わる補強材(柱梁など)を導入することで、大きな開口などを実現することは可能です。
ツーバイフォー工法はリフォームの自由度が低いと言われるのも同じ理由です。リフォームや増築をする場合は、現在の耐力壁の位置を前提にして、その制約のなかで行う必要があります。
在来工法は、基礎ができあがった後に、柱と梁を組んで屋根をかけて、その後に床や壁を作り込んでいきます。上棟までは普通、一日で済みます。一方、ツーバイフォー工法の場合の躯体工事は、1階床、1階壁、2階床、2階壁、屋根の順に組み立てていき、上棟まで普通は数日かかります。
ツーバイフォー工法の場合、屋根が出来上がるまでに時間がかかるために工事中の雨に留意する必要があります。雨に濡れた場合も自然乾燥させれば、部材の強度には問題ないのですが、躯体工事の間に雨に濡れないように養生することやプレパネル工法で工期を短縮するなどの雨対策が重要です。
気密性が高いことは、室内と外気の温度差が大きくなり、換気や防湿対策に留意しないと、結露が起きやすくなります。特にツーバイフォー工法の場合は、中空になったパネルのなかに充填される断熱材の結露(壁体内結露)に留意する必要があります。
具体的には、室内側で気密性を高める気密・防湿層、断熱材内に入り込んだ水蒸気を外に逃し、外からの雨水などをブロックする防風・防水・透湿層、対流によって壁内の水蒸気を外部に逃がす通気層などさまざまな結露対策が工夫されています。
ハイブリッド化が進む工法
最後に補足です。ツーバイフォー工法が地震に強い工法であることは確かですが、一方で在来工法が地震に対して不安が残るということにはなりません。というのは、現在の建築基準法では、在来工法においても、金物や筋交いや耐力壁などによる耐震性が義務づけられており、工法によらず一定の耐震基準をクリアすることが求められているからです。新築で適法に建てられている限り、建築基準法上は工法による耐震性の違いはありません。
また、在来工法でも、部材をあらかじめ工場加工すること(プレカット)が進んでいることなど、工法のハイブリッド化が進んでおり、品質や施工精度のばらつきなどへの懸念も少なくなっているといえます。
アメリカの西部開拓時代に誕生した、シンプルで堅固さを特徴とするツーバイフォー工法。そのメリットもデメリットも、このアメリカンな住宅の個性のひとつといえます。
家づくりの専門家を探す
最後に補足です。ツーバイフォー工法が地震に強い工法であることは確かですが、一方で在来工法が地震に対して不安が残るということにはなりません。というのは、現在の建築基準法では、在来工法においても、金物や筋交いや耐力壁などによる耐震性が義務づけられており、工法によらず一定の耐震基準をクリアすることが求められているからです。新築で適法に建てられている限り、建築基準法上は工法による耐震性の違いはありません。
また、在来工法でも、部材をあらかじめ工場加工すること(プレカット)が進んでいることなど、工法のハイブリッド化が進んでおり、品質や施工精度のばらつきなどへの懸念も少なくなっているといえます。
アメリカの西部開拓時代に誕生した、シンプルで堅固さを特徴とするツーバイフォー工法。そのメリットもデメリットも、このアメリカンな住宅の個性のひとつといえます。
家づくりの専門家を探す
おすすめの記事
地域別特集
美しい伝統を守りながら、現代的技術で暮らしを快適に。京都に建つ14の住まい
文/藤間紗花
Houzzでみつけた、京都市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
写真特集
Houzzでみつけた日本の都市に建つ家まとめ
文/藤間紗花
国内12エリアに建つ住まいの特徴を、各地域の専門家の解説とともにご紹介してきたシリーズ。これまでご紹介した記事を、専門家から伺った各都市の住まいの特徴とともに、まとめてお届けします。
続きを読む
地域別特集
地域の自然と眺望を活かした、明るく気持ちのいい空間。仙台に建つ13の住まい
文/藤間紗花
宮城県中部に位置する仙台市。Houzzでみつけた仙台市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
少ない日照時間でも明るさを取り込む。新潟市の家11選
文/藤間紗花
新潟県北東部に位置する新潟市。Houzzでみつけた新潟市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
唯一無二の眺めと自分らしいデザインを楽しむ。広島市に建つ14の住まい
文/藤間紗花
広島県西部に位置する広島市。Houzzでみつけた広島市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
風と光を気持ちよく届けるデザインを都市部で実現。大阪に建つ12の住まい
文/藤間紗花
近畿地方の中心都市である、大阪府・大阪市。Houzzでみつけた大阪市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
建築・デザイン
日本的感性を象徴する「茶室」の伝統と革新性
茶道とともに成立し500年にわたり発展してきた茶室。茶聖・千利休が伝統建築を革新して生まれた茶室は、今も「利休の精神」により革新され続け、新しい表現を生み出し続けている建築形式です。
続きを読む