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Houzzツアー:心地よく暮らし、働きながら、新たな世界や価値観に出会える複合シェアハウス
築48年の企業の独身寮を、住居のほかオフィスや店舗もある新しいスタイルのシェア施設にフルリノベーション。インテリアデザインから、シェアハウスでの交流が住む人のライフスタイルに与えるインパクトまでレポートした、ちょっと異色のHouzzツアー。
takako kawaguchi
2015年4月23日
企業の独身寮だった築48年の建物を2012年にリノベーション。原宿という文化の発信地にふさわしい独創的でハイセンスな空間は、コミュニティが価値観を共有し、かつ個人が心地よく暮らしていける工夫が随所に施されている。ここで過ごすことで新たな考え方やライフスタイルに出会える、そんな可能性があふれた住まいがある。
原宿駅の喧噪から離れた神宮前1丁目交差点に建つTHE SHARE。クールな外観の建物にシェアスペースやアパートメント、オフィス、レストランやカフェ、アパレルなどが入った複合シェア施設である。手がけたのは数多くのリノベーションやシェアハウス事業に取り組むリビタ。今回のリノベーションにあたっては国内の傑出したクリエーターが1960~70年代に拠点としていた伝説の建物「原宿セントラルアパート」をイメージしたのだそう。「当時の原宿文化を盛り上げる基点となった建物で、クリエーター同士が顔見知りになったり、1階のカフェでは内外の人々が日夜交流をしていたと聞いています。そこで起きていたことを、このTHE SHAREが21世紀的に引き継いでいけたら、と考えました」と、リビタの空間デザインプロデューサーである小野 司氏は語る。
特徴的なのは、最上階の6階にあるロビーやダイニングなどのシェアスペースを、2階のオフィス利用者にも開放していること。2階で働くクリエーターやビジネスマンが6階で商談をしている隣で、住人がごはんを食べている、という光景もここでは日常となっている。空間にほどよい距離感をもたせてあるため、そんな状況でも違和感はゼロ。もちろん打ち合わせや雑談は1階のカフェでもいいし、天気がよければ屋上のテラスでも。建物の中で選択肢がいくつもある、ということも大きな魅力だ。
原宿駅の喧噪から離れた神宮前1丁目交差点に建つTHE SHARE。クールな外観の建物にシェアスペースやアパートメント、オフィス、レストランやカフェ、アパレルなどが入った複合シェア施設である。手がけたのは数多くのリノベーションやシェアハウス事業に取り組むリビタ。今回のリノベーションにあたっては国内の傑出したクリエーターが1960~70年代に拠点としていた伝説の建物「原宿セントラルアパート」をイメージしたのだそう。「当時の原宿文化を盛り上げる基点となった建物で、クリエーター同士が顔見知りになったり、1階のカフェでは内外の人々が日夜交流をしていたと聞いています。そこで起きていたことを、このTHE SHAREが21世紀的に引き継いでいけたら、と考えました」と、リビタの空間デザインプロデューサーである小野 司氏は語る。
特徴的なのは、最上階の6階にあるロビーやダイニングなどのシェアスペースを、2階のオフィス利用者にも開放していること。2階で働くクリエーターやビジネスマンが6階で商談をしている隣で、住人がごはんを食べている、という光景もここでは日常となっている。空間にほどよい距離感をもたせてあるため、そんな状況でも違和感はゼロ。もちろん打ち合わせや雑談は1階のカフェでもいいし、天気がよければ屋上のテラスでも。建物の中で選択肢がいくつもある、ということも大きな魅力だ。
どんなHouzz?
居住者:学生から会社社長まで、友人以上家族未満の濃密なコミュニケーションに価値を見出す人々
所在地:東京都渋谷区
総合企画・監修:(株)リビタ
設計監理:ジーク(株)
施工:1期/佐藤秀(株)
2期/ジーク(株)
竣工:2012年
写真は6階のシェアスペース。約370平方メートルの明るいオープンスペースにはロビー、キッチン、ダイニング、ライブラリー、ラウンジ、シアタールームが。写真は入口から中を見た様子で、右手に広がっているのがロビーである。レザーソファや4人掛けテーブルを配置してあり、ビジネスの打ち合わせなどに重宝。天井の梁は独身寮時代のまま、天井板を撤去したあとは木毛セメント板のおもしろみあふれる素材感を活かしながら全体を白ペイントで仕上げてある。
居住者:学生から会社社長まで、友人以上家族未満の濃密なコミュニケーションに価値を見出す人々
所在地:東京都渋谷区
総合企画・監修:(株)リビタ
設計監理:ジーク(株)
施工:1期/佐藤秀(株)
2期/ジーク(株)
竣工:2012年
写真は6階のシェアスペース。約370平方メートルの明るいオープンスペースにはロビー、キッチン、ダイニング、ライブラリー、ラウンジ、シアタールームが。写真は入口から中を見た様子で、右手に広がっているのがロビーである。レザーソファや4人掛けテーブルを配置してあり、ビジネスの打ち合わせなどに重宝。天井の梁は独身寮時代のまま、天井板を撤去したあとは木毛セメント板のおもしろみあふれる素材感を活かしながら全体を白ペイントで仕上げてある。
人々が集まるロビーのアイストップとなっているのが大きな周辺地図、通称シェアマップ。ラミシートに地図を描いてあり、おいしい店の情報交換に使ったり、緊急時の避難経路を書き込んだり、自由に活用できる。ロビーは住人が口を揃えて「知人を連れてくると“おお~”って言われます」という、この建物の顔。
「見た目もコンセプトもカッコよくて楽しそう」とシェアライフを始めた住人は、次第にここでの暮らしそのものに満足感を覚えていく。リビタは物件引き渡し後の運営までを一貫して行い、単なるスペース提供にとどまらず、暮らしのあり方まできめ細かくデザインしている。逆にコミュニティが共有する価値観をまずイメージし、運営で得たノウハウを空間づくりにフィードバックすることで、快適なシェアライフの後押しをしている。「協力することの心地よさや、自分が与えてもらった分をコミュニティに還元する、そういう価値観を共有できるような空間づくりをしたいと思っています」と小野氏。
「見た目もコンセプトもカッコよくて楽しそう」とシェアライフを始めた住人は、次第にここでの暮らしそのものに満足感を覚えていく。リビタは物件引き渡し後の運営までを一貫して行い、単なるスペース提供にとどまらず、暮らしのあり方まできめ細かくデザインしている。逆にコミュニティが共有する価値観をまずイメージし、運営で得たノウハウを空間づくりにフィードバックすることで、快適なシェアライフの後押しをしている。「協力することの心地よさや、自分が与えてもらった分をコミュニティに還元する、そういう価値観を共有できるような空間づくりをしたいと思っています」と小野氏。
シェアスペース中心に位置するキッチンは、最も活気に満ちた集いの場。夜になると多くの住人が集まり、一緒にごはんを作ったり、「ただいま」と帰ってきた住人に「たくさんあるから食べない?」と温かい料理を出して迎え入れたり。キッチン脇のカウンターも料理をしている人と自然な形で会話ができ、皆で楽しみたい気分のときには最適の席。一方、人が集まるキッチンやダイニングテーブルとは少し距離をおいて小さなテーブルも置くことで、あそこに座るのなら今は一人で集中したいんだな、と皆が暗黙のうちに配慮できる工夫も。交流や協力の意識が培われる空間と、ほどよい距離感を保てる空間。ふたつのバランスが取れていることがコミュニティがスムーズに育まれる大きなポイントになっている。
ちなみにカウンター足元の壁面に張ってあるのは閉鎖された繊維工場の床材。台車跡などが入っていて風合いがある上、足で蹴ってしまっても汚れが気にならないというメリットもある。キッチン奥には私物をしまえるストックルームがあり、キッチン内はいつも整然。
ちなみにカウンター足元の壁面に張ってあるのは閉鎖された繊維工場の床材。台車跡などが入っていて風合いがある上、足で蹴ってしまっても汚れが気にならないというメリットもある。キッチン奥には私物をしまえるストックルームがあり、キッチン内はいつも整然。
築48年になる建物が持つヴィンテージ感を活かしながら、この地にふさわしいスタイルを、と創り出されたのが「シンプルヴィンテージ」の世界観。内装はほとんどが白かグレーで統一されている。国内外の家具やユーズド品など、特定のテイストを持たないもの同士を融合することで、ここにしかないオリジナリティ豊かな空間を実現している点に注目したい。
この写真は、ロンドンから取り寄せたアルミのロングテーブルを並べて奥行きを感じる空間に見せたダイニング。左側のブルーグレーの壁は黒板として活用でき、テーブルや椅子の配置を変えれば住人の会議スペースとしても。小野氏曰く「スペースをいろいろな形、目的に使えたほうがいいかな、と。経験上、目的を絞りすぎたりデザインしすぎるとあまり使ってもらえなくて(笑)。住人の方が使い方を工夫できる余地を残した、シンプルなデザインを心がけています」。
この写真は、ロンドンから取り寄せたアルミのロングテーブルを並べて奥行きを感じる空間に見せたダイニング。左側のブルーグレーの壁は黒板として活用でき、テーブルや椅子の配置を変えれば住人の会議スペースとしても。小野氏曰く「スペースをいろいろな形、目的に使えたほうがいいかな、と。経験上、目的を絞りすぎたりデザインしすぎるとあまり使ってもらえなくて(笑)。住人の方が使い方を工夫できる余地を残した、シンプルなデザインを心がけています」。
ロビーとダイニング、キッチンを別角度から。4人掛けのテーブルは日本各地から集めてきた、古材とアイアンで作ったもの。床は無垢のオーク材をヘリンボーン張りにしてあり、クラシックで落ち着いた雰囲気を漂わせている。
奥はアート関係などの本が並ぶライブラリー。さまざまな色や形、年代のリユースの椅子などが置いてあり、なんとも落ち着ける一角。原宿のファッションのようにいろいろなものを組み合わせた結果、相対的におもしろみを感じるセレクションが、シンプルヴィンテージの世界観へとつながっている。
手前はラウンジ。どちらもかなり広々とした印象だが「あっちは読書、こっちは打ち合わせ、そこではパソコン仕事、と同時にいろんなことをしても自然と同居できる空間設計」にしてあるのだそう。ほどよい距離感を保てることが居心地のよさを生み出す秘訣といえる。
手前はラウンジ。どちらもかなり広々とした印象だが「あっちは読書、こっちは打ち合わせ、そこではパソコン仕事、と同時にいろんなことをしても自然と同居できる空間設計」にしてあるのだそう。ほどよい距離感を保てることが居心地のよさを生み出す秘訣といえる。
住人同士で「新作の○○を観るから△時に集合」と声をかけ合って一緒に映画を見たり、サッカー観戦などをしているというシアタールーム。楽器の練習、重要なプレゼン、ミーティングなどにも。取材時は奥の棚に、他の住人にぜひおすすめしたいとシェアされたDVDがたくさん並んでいたのが印象的だ。
3~5階はシェア住人のアパートメントフロアになっている。リノベーション時にスペースを広く確保し、広さは11.40平方メートル、18.74平方メートル、21.48平方メートルの3タイプが。
3階はレディースフロアでミラーや洗面台は大きめサイズを設置。靴やブーツを置ける集合のロッカールームがあるのも、女性に親切な設計である。
3階はレディースフロアでミラーや洗面台は大きめサイズを設置。靴やブーツを置ける集合のロッカールームがあるのも、女性に親切な設計である。
2階には12~38平方メートルの個室型スモールオフィス、固定デスクやシェアデスクのあるシェアオフィスがあり、用途や規模で選択可能。このフロアの各部屋の廊下側ドアは透明ガラスになっており、それには理由があるとか。前述の原宿セントラルアパートでは中庭を介してライバルたちの様子が見え、「あそこはまだ電気がついているな、俺もがんばらねば!」と切磋琢磨していたそうで、この2階でも廊下から室内の活動や様子がわかり活気があふれるように、と透明ガラスの扉を採用したのだという。
こちらのフロアにもオフィス入居者専用のミーティングルームがある。
こちらのフロアにもオフィス入居者専用のミーティングルームがある。
1階は建物と街を結ぶ重要な場所であり、人が集まってくるカフェやレストラン、アパレルを誘致。ローカル情報を流すラジオ局も入り、発信の場としての役割も果たしている。
外観は遠目に見ると空との対比で黒っぽく見えるが、実は光をやわらかく反射するグレー。建物がコの字型になっているため、室内から窓外を見たときに壁面が暗く見えないようにとこだわって選んだ色調である。
屋上には、ここが原宿の一等地であることを忘れてしまいそうな、広々と爽快なコミュニティガーデンが。スタイリスト熊谷隆志氏による、オーストラリアなどの植物も交えたグリーンに癒されるスペースだ。皆で流しそうめんや神宮外苑の花火見物をしたり、ダンスの練習などをする人も。
同じく屋上のスモーキングテラス。シェア施設内はすべて禁煙なので愛煙家はこちらに。一服の合間にさまざまな出会いや会話が生まれ、転職につながったケースもあるというから驚く。
転職に限らず、大きなビジネスが生まれたり、ライフスタイルを変えたりする力を、この時空が秘めていることは確かである。
たとえば、キッチンに立ったこともないという男性が料理にハマるケース。まるでレストランの厨房のような大きなステンレスキッチンに、基本的なものから簡単なお菓子作り用品までセミプロレベルの調理器具が整い、食器もシンプルで機能的なラインナップとくれば、ちょっとやってみたいと思うのは当然の流れ。そうして一度始めたらあっという間にハマり、料理が日課になったという人も何人もいるそう。シェア仲間が食べ、意見してくれるのもやる気が出る秘密かもしれない。
また、朝食抜きだった生活を抜け出し、屋上で朝ごはんを食べる習慣がついた住人も。今までは起き上がるモチベーションがなかったけれど、あの気持ちのいい屋上に行きたい!という一心が爽やかな目覚めと健康的な習慣につながったというのも納得がいく。
住人同士が互いに意気投合してユニットを組み、作品を発表するなどの活動を始めた例も。頻繁に顔を合わせるシェアスペースという空間の中では、ひとつの話が爆発的な速度で進み、思い描いたことをすぐに実現できる。ポテンシャルの高い住人同士の刺激的なつながりが、ライフスタイルやビジネスの新しい世界を開くきっかけになっていく。
住み、働き、遊ぶ中で出会い、会話をし、発信していくこと。
協力しあうコミュニティに心地のいい居場所があること。
多くのリクエストに最大級の満足のいく形で応えてくれるTHE SHAREはいつの日か、クリエーターや起業家の聖地として語り継がれる存在となるにちがいないだろう。
転職に限らず、大きなビジネスが生まれたり、ライフスタイルを変えたりする力を、この時空が秘めていることは確かである。
たとえば、キッチンに立ったこともないという男性が料理にハマるケース。まるでレストランの厨房のような大きなステンレスキッチンに、基本的なものから簡単なお菓子作り用品までセミプロレベルの調理器具が整い、食器もシンプルで機能的なラインナップとくれば、ちょっとやってみたいと思うのは当然の流れ。そうして一度始めたらあっという間にハマり、料理が日課になったという人も何人もいるそう。シェア仲間が食べ、意見してくれるのもやる気が出る秘密かもしれない。
また、朝食抜きだった生活を抜け出し、屋上で朝ごはんを食べる習慣がついた住人も。今までは起き上がるモチベーションがなかったけれど、あの気持ちのいい屋上に行きたい!という一心が爽やかな目覚めと健康的な習慣につながったというのも納得がいく。
住人同士が互いに意気投合してユニットを組み、作品を発表するなどの活動を始めた例も。頻繁に顔を合わせるシェアスペースという空間の中では、ひとつの話が爆発的な速度で進み、思い描いたことをすぐに実現できる。ポテンシャルの高い住人同士の刺激的なつながりが、ライフスタイルやビジネスの新しい世界を開くきっかけになっていく。
住み、働き、遊ぶ中で出会い、会話をし、発信していくこと。
協力しあうコミュニティに心地のいい居場所があること。
多くのリクエストに最大級の満足のいく形で応えてくれるTHE SHAREはいつの日か、クリエーターや起業家の聖地として語り継がれる存在となるにちがいないだろう。
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