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月面都市の住宅とは?映画『オデッセイ』原作小説の作者に聞く
月での生活を描く小説『アルテミス』の中で、著者のアンディ・ウィアーは、未来都市に建設されるであろう住宅について、深く掘り下げています。
Mitchell Parker
2018年12月23日
マット・デイモン主演の大ヒット映画『オデッセイ』の原作小説である『火星の人』。この中で、著者のアンディ・ウィアーは火星探索の可能性について深く掘り下げていました。一方、ウィアーが昨年発表し、日本では今年翻訳版が出版された小説『アルテミス』は、架空の月の街を中心に描かれています。
物語の主人公は、アルテミスで育ったうぬぼれの強い20代の運び屋ジャスミン・バシャラ(略してジャズ)です。ウィアーによる矢継ぎ早の語りと会話――誰もが常に歩きながら話しているような――に乗ってアクションが繰り広げられ、それがどんでん返しの強盗スリラーとして展開していきます。
『火星の人』でふんだんに科学的ディテールを披露したウィアーは、今回は月にある実際の構造物や住居を詳細に想像しています。もしもあなたが月に住むことになったら、この本に書かれているような生活になるのではないでしょうか。
ウィアーは、きっとそうなるはずだと言い「ごまかしは一切ない」と断言します。Houzz米国版では2017年、カリフォルニア州に住むウィアーに電話インタビューをしました。そして、『アルテミス』に描かれた未来都市をどのように想像したのかについて、ご本人に直接語ってもらいました。
物語の主人公は、アルテミスで育ったうぬぼれの強い20代の運び屋ジャスミン・バシャラ(略してジャズ)です。ウィアーによる矢継ぎ早の語りと会話――誰もが常に歩きながら話しているような――に乗ってアクションが繰り広げられ、それがどんでん返しの強盗スリラーとして展開していきます。
『火星の人』でふんだんに科学的ディテールを披露したウィアーは、今回は月にある実際の構造物や住居を詳細に想像しています。もしもあなたが月に住むことになったら、この本に書かれているような生活になるのではないでしょうか。
ウィアーは、きっとそうなるはずだと言い「ごまかしは一切ない」と断言します。Houzz米国版では2017年、カリフォルニア州に住むウィアーに電話インタビューをしました。そして、『アルテミス』に描かれた未来都市をどのように想像したのかについて、ご本人に直接語ってもらいました。
月面に未来都市をつくるには
アルテミスは21世紀の終わり頃を舞台にしています。その頃までに、民間の宇宙産業は月への旅費を大幅に下げているでしょう。この想像上の未来では、観光業が目玉となっています。宇宙船で1週間のクルーズ、その後、2週間かけて月の都市を探索し、アポロ11号が着陸して地球を眺めた場所を訪問、さらにその後1週間のクルーズ飛行で地球へ帰還、したくありませんか?それがたった7万ドル(約777万円)で実現可能なのです。
「人々は、自宅を第二抵当に入れてでも、喜んで1か月の宇宙旅行に出かけるでしょう」とウィアーは話します。
ソフトウェアエンジニア歴20年、相対論的物理学と軌道力学、そして有人宇宙飛行の歴史を長年の趣味とするウィアーは、2015年、月に貨物を輸送する際、1グラム当たりのコストがいくらかを調べる詳細な経済分析を行いました。その結果、6グラムごとに1ドルかかることがわかりました。この換算方法だと、建設資材を月面に輸送するのはありえないほど高くつくことになります。しかし、すでに月に存在する資源を活用できれば、それよりもずっと実現可能になるでしょう。
アルテミスは21世紀の終わり頃を舞台にしています。その頃までに、民間の宇宙産業は月への旅費を大幅に下げているでしょう。この想像上の未来では、観光業が目玉となっています。宇宙船で1週間のクルーズ、その後、2週間かけて月の都市を探索し、アポロ11号が着陸して地球を眺めた場所を訪問、さらにその後1週間のクルーズ飛行で地球へ帰還、したくありませんか?それがたった7万ドル(約777万円)で実現可能なのです。
「人々は、自宅を第二抵当に入れてでも、喜んで1か月の宇宙旅行に出かけるでしょう」とウィアーは話します。
ソフトウェアエンジニア歴20年、相対論的物理学と軌道力学、そして有人宇宙飛行の歴史を長年の趣味とするウィアーは、2015年、月に貨物を輸送する際、1グラム当たりのコストがいくらかを調べる詳細な経済分析を行いました。その結果、6グラムごとに1ドルかかることがわかりました。この換算方法だと、建設資材を月面に輸送するのはありえないほど高くつくことになります。しかし、すでに月に存在する資源を活用できれば、それよりもずっと実現可能になるでしょう。
月のアリスタルコス衝突クレーター(この写真の左側)はグランドキャニオンよりも大きいものです。月の表面には、人類が居住できる構造物を建設するのに使えそうな鉱物があふれています。画像提供:NASA
それこそが、ウィアーが注目した点です。月で使用する15メートルトンの原子炉2基を購入・輸送するために、(2015年の相場で)500万ドル(約55億円)を投じれば、製錬を始めるための無限のエネルギーを手に入れることができます。そうです、製錬とは、加熱および溶融を通して金属を抽出する工程のことです。
月面には、カルシウム、シリコン、アルミニウム、および酸素で構成される鉱物、灰長石に覆われたくぼみがあります。これらのくぼみが、月では何よりも役に立つのです。こうした元素を精製すると、耐久性のある構造物の建設に最適なアルミニウムが豊富に取れ、さらには抽出した酸素をその構造物に充填できます。
「地球のように掘削する必要はありません」とウィアー。「鉱石は月面にありますから、それを拾うだけでいいのです」
それこそが、ウィアーが注目した点です。月で使用する15メートルトンの原子炉2基を購入・輸送するために、(2015年の相場で)500万ドル(約55億円)を投じれば、製錬を始めるための無限のエネルギーを手に入れることができます。そうです、製錬とは、加熱および溶融を通して金属を抽出する工程のことです。
月面には、カルシウム、シリコン、アルミニウム、および酸素で構成される鉱物、灰長石に覆われたくぼみがあります。これらのくぼみが、月では何よりも役に立つのです。こうした元素を精製すると、耐久性のある構造物の建設に最適なアルミニウムが豊富に取れ、さらには抽出した酸素をその構造物に充填できます。
「地球のように掘削する必要はありません」とウィアー。「鉱石は月面にありますから、それを拾うだけでいいのです」
ウィアーの著書では、人々は月の石から抽出したアルミニウム製のジオデシックドームに住んでいます。
どんな住居で暮らす?
ウィアーの小説では、架空の街全体がアルミニウムで作られています。酸素を保持するのに最も効率のよい圧力容器が球体であるため、「バブル」と呼ばれるジオデシックドームが人口2,000人のアルテミスを構成する構造物になっています。酸素の保持と構造材料の最小化のために、それぞれの球体の半分は地下に埋められています。
バブルは有名な宇宙飛行士にちなんで名づけられています。アームストロングと呼ばれる直径100メートルのバブルは、月面に作られたバブル第一号で、街の中心地にあります。その他のバブルは直径が200メートルあります。
ウィアーの描くドームは二重船体で、外層が厚さ6 cmのアルミニウム、その内側に厚さ1メートルの粉砕した月の石、さらにその内側に厚さ6cmのアルミニウム層という構造になっています。
粉砕した石は複数の目的で使われます、とウィアーは言います。まず、アルミニウムの外層船体が壊れても、バッファーとなる石層があり、さらにもうひとつ船体があります。つまり、片方の船体が壊れたとしても、それが中にいる人々の死につながることはありません。
第二に、石の層は欠かすことのできない断熱性をもたらします。「月の外気温は日中で100℃を越えます。これは水の沸点を超える温度です」とウィアーは話します。「夜間はマイナス180℃で、冷凍庫よりも寒くなります。これはなぜかと言うと、地球と違って気温を調節するための大気が存在しないからです。ですが、厚さ1メートルの砂の層が、こうしたナンセンスをすべて帳消しにしてくれるのです」
ウィアーはさらに「計算してみたことがある」と続け、アルテミスの中の気温を1℃変えるには、絶えず日光を受けても数千年はかかるだろうと話しました。石の層はまた、地球では大気と磁場によって阻害される放射線から居住者を保護してくれます。
そして最後に、砂のバリアは物理的トラウマからアルテミスを守っています。ウィアーいわく、それは隕石でも工学的な不具合でもなく、その中に住む人々が犯す失敗によるトラウマだと言います。「偶然、誰かがリベットガンを誤った方向に向けてしまっても、それでうっかり全住民を殺すことはできません」とウィアーは言います。「1つの出来事で船体の両方を破壊することは不可能です。榴弾砲などの軍事兵器をもってしても、一発で二重船体を貫通することはできないでしょう」
どんな住居で暮らす?
ウィアーの小説では、架空の街全体がアルミニウムで作られています。酸素を保持するのに最も効率のよい圧力容器が球体であるため、「バブル」と呼ばれるジオデシックドームが人口2,000人のアルテミスを構成する構造物になっています。酸素の保持と構造材料の最小化のために、それぞれの球体の半分は地下に埋められています。
バブルは有名な宇宙飛行士にちなんで名づけられています。アームストロングと呼ばれる直径100メートルのバブルは、月面に作られたバブル第一号で、街の中心地にあります。その他のバブルは直径が200メートルあります。
ウィアーの描くドームは二重船体で、外層が厚さ6 cmのアルミニウム、その内側に厚さ1メートルの粉砕した月の石、さらにその内側に厚さ6cmのアルミニウム層という構造になっています。
粉砕した石は複数の目的で使われます、とウィアーは言います。まず、アルミニウムの外層船体が壊れても、バッファーとなる石層があり、さらにもうひとつ船体があります。つまり、片方の船体が壊れたとしても、それが中にいる人々の死につながることはありません。
第二に、石の層は欠かすことのできない断熱性をもたらします。「月の外気温は日中で100℃を越えます。これは水の沸点を超える温度です」とウィアーは話します。「夜間はマイナス180℃で、冷凍庫よりも寒くなります。これはなぜかと言うと、地球と違って気温を調節するための大気が存在しないからです。ですが、厚さ1メートルの砂の層が、こうしたナンセンスをすべて帳消しにしてくれるのです」
ウィアーはさらに「計算してみたことがある」と続け、アルテミスの中の気温を1℃変えるには、絶えず日光を受けても数千年はかかるだろうと話しました。石の層はまた、地球では大気と磁場によって阻害される放射線から居住者を保護してくれます。
そして最後に、砂のバリアは物理的トラウマからアルテミスを守っています。ウィアーいわく、それは隕石でも工学的な不具合でもなく、その中に住む人々が犯す失敗によるトラウマだと言います。「偶然、誰かがリベットガンを誤った方向に向けてしまっても、それでうっかり全住民を殺すことはできません」とウィアーは言います。「1つの出来事で船体の両方を破壊することは不可能です。榴弾砲などの軍事兵器をもってしても、一発で二重船体を貫通することはできないでしょう」
小説の中にあるこの図は、2基の原子炉とアルミニウムの製錬施設を示しています。この本では、労働者は列車を使って架空の都市アルテミスを行き来しています。
ウィアーの想像する構造物の内部には、床と、豊富なアルミニウムで作られたその他の舗装面があります。さらにアルテミスの住民たちは、好きなだけガラスを作ることができます。製錬の工程とそれによって得られる元素を覚えていますか?「シリコンに酸素を加えるとガラスになる」とウィアーは言います。したがって、窓はもちろん食器類や容器もガラス製のものがあふれています。
シリコンチップは実用的ではないとウィアーは言います。なぜなら、そうしたチップを生産するために必要な施設は巨大(不動産が高額)である、そしてチップの重量が軽いため、輸入するのにコストがあまりかからないからです。「軽量のものは、やる価値がありません」とウィアーは言います。「iPhoneの重さが約100グラムです。つまりそれを月に輸送するには、およそ18ドルかかります。輸送費用を抑えるために生産施設を作る価値はありません」
月にも建築家やデザイナーは存在する?
ソファーなど住宅にある家具は、アルミフレームに地球から輸入したクッションや布地を被せたものです。アルテミスでも建築家やインテリアデザイナーを雇うことができるのか、気になった方もいるかもしれません。「もちろん」とウィアーは言います。「アルテミスには超億万長者がたくさんいます。彼らは自分で壁紙を貼ったりはしませんよ」
ウィアーの想像する構造物の内部には、床と、豊富なアルミニウムで作られたその他の舗装面があります。さらにアルテミスの住民たちは、好きなだけガラスを作ることができます。製錬の工程とそれによって得られる元素を覚えていますか?「シリコンに酸素を加えるとガラスになる」とウィアーは言います。したがって、窓はもちろん食器類や容器もガラス製のものがあふれています。
シリコンチップは実用的ではないとウィアーは言います。なぜなら、そうしたチップを生産するために必要な施設は巨大(不動産が高額)である、そしてチップの重量が軽いため、輸入するのにコストがあまりかからないからです。「軽量のものは、やる価値がありません」とウィアーは言います。「iPhoneの重さが約100グラムです。つまりそれを月に輸送するには、およそ18ドルかかります。輸送費用を抑えるために生産施設を作る価値はありません」
月にも建築家やデザイナーは存在する?
ソファーなど住宅にある家具は、アルミフレームに地球から輸入したクッションや布地を被せたものです。アルテミスでも建築家やインテリアデザイナーを雇うことができるのか、気になった方もいるかもしれません。「もちろん」とウィアーは言います。「アルテミスには超億万長者がたくさんいます。彼らは自分で壁紙を貼ったりはしませんよ」
小説の中にあるこの図は、アルテミスとアポロ11号ビジターセンターの位置関係を示しています。ビジターセンターまでの距離は、列車で静かの海を渡って40 kmあります。
日常生活
月では不動産が高額なため、住宅は地球でよく見かけるものよりもずっと小さくなっています。「まるで、東京にある空間効率のよいマンションに住んでいるみたいですよ」とウィアーは話します。小説の中で、住民の大半は、中流または上位中流階級でない限り専用のバスルームを所有していません。どこにでもバスルームを作れるほどスペースが十分にないのです。その代わり、ホールには共同浴場があります。
そして住民のほとんどは、専用のキッチンも持っていません。これはスペースの問題ではなく、厳しい消防規則によるものです。アルテミスは潜水艦のような圧力容器でできているため、火災は命取りになりかねません。「地球では、炎上する建物の外へ逃げることができますが、アルテミスでは圧力容器の中に煙と炎とともに閉じ込められてしまうのです」とウィアーは言います。
そうした理由で、住民は可燃性のもの、あるいは着火するのに十分な熱を生じるものを所有することが許されていません。ライターはもちろん、タバコも厳禁です。「500ワットの電子レンジを使うことができますが、オーブンは禁止されています」とウィアーは言います。キッチンを所有する経済的余裕がある家庭では、別に耐火室を建設してそこにキッチンを設けなければならないため、さらに費用がかさむことになります。
そして、覚えておかなければならないのは、月の重力は地球の6分の1であるということ。よく人が飛び跳ねているのを想定しておくことが大切です。(ウィアーは時々、この事実を読者に思い出させますが、メインキャラクターのひとり、トロンドがソファーの背を飛び越えて来客に出すお茶を取りに行くシーンなど、不快感を与えかねないものもあります。)「言うほど楽しいものじゃないよ」とウィアーは書いています。「ここの重力を思い出してごらん」
日常生活
月では不動産が高額なため、住宅は地球でよく見かけるものよりもずっと小さくなっています。「まるで、東京にある空間効率のよいマンションに住んでいるみたいですよ」とウィアーは話します。小説の中で、住民の大半は、中流または上位中流階級でない限り専用のバスルームを所有していません。どこにでもバスルームを作れるほどスペースが十分にないのです。その代わり、ホールには共同浴場があります。
そして住民のほとんどは、専用のキッチンも持っていません。これはスペースの問題ではなく、厳しい消防規則によるものです。アルテミスは潜水艦のような圧力容器でできているため、火災は命取りになりかねません。「地球では、炎上する建物の外へ逃げることができますが、アルテミスでは圧力容器の中に煙と炎とともに閉じ込められてしまうのです」とウィアーは言います。
そうした理由で、住民は可燃性のもの、あるいは着火するのに十分な熱を生じるものを所有することが許されていません。ライターはもちろん、タバコも厳禁です。「500ワットの電子レンジを使うことができますが、オーブンは禁止されています」とウィアーは言います。キッチンを所有する経済的余裕がある家庭では、別に耐火室を建設してそこにキッチンを設けなければならないため、さらに費用がかさむことになります。
そして、覚えておかなければならないのは、月の重力は地球の6分の1であるということ。よく人が飛び跳ねているのを想定しておくことが大切です。(ウィアーは時々、この事実を読者に思い出させますが、メインキャラクターのひとり、トロンドがソファーの背を飛び越えて来客に出すお茶を取りに行くシーンなど、不快感を与えかねないものもあります。)「言うほど楽しいものじゃないよ」とウィアーは書いています。「ここの重力を思い出してごらん」
これも本の中で紹介されている、月の目玉となる観光スポット、かの有名なアポロ11号着陸地点を示しています。空気も風もないため、足跡やわだちが現在もそのまま残っています。
何を食べる?
経済や輸送費用を考えると、食品を月へ輸入しても高くつくでしょう。「人は1日におよそ500グラムを食べます」とウィアーは言います(月では、500グラムの乾燥食品を水で戻します)。「それを輸送するだけで1日に100ドルかかり、さらに食品自体の価格がそこに上乗せされます」
『火星の人』に登場するウィアーの英雄、マーク・ワトニーは、火星にある自宅リビングで自身の排泄物を利用してジャガイモを栽培していたのが印象的でした。月で同じように現地栽培の食物を生産することは、2,000人のコミュニティにとっては現実的でないでしょう。「作物の栽培には一般的に広い土地が必要ですが、月にはそれがありません」とウィアーは言います。
では何を食べるかというと、おいしい藻類――厳密に言うと、クロレラ――を食べます。そうです、それは緑色をしていて、アルテミスでは「ガンク(ベトベトするもの)と呼ばれているものです。「それでも、人間にとっては実に栄養バランスのよいものですよ」とウィアーはいいます。「必要な栄養素をすべて満たしています。大きな樽に入れて見栄えよくすることもできますし、光の照射量を調整すると、タンパク質や糖分の含有量を増やすこともできます。したがって、人間の食事バランスに合わせて細かく調整ができるのです。それに、非常に短い時間で大量に生産することもできます」
チキンスープ味やさまざまな「新たに発明したユニークな味」など、輸入した調味料を購入してガンクに加えることもできる、とウィアーは言います。人気のマートル・ゴールドスタインの#3などです。それがどのような味なのかは、読者の想像力にお任せしています。
本の中にあるこの図は、アポロ11号の月面着陸地点の近くにあるビジターセンターの配置図です。ウィアーが指摘しているように、観光業なしで街の繁栄はありえません。観光業こそがアルテミスの経済を動かしているのです。月へ行くのに、他の理由はあるでしょうか?ガンク目当てではないことは明らかです。
何を食べる?
経済や輸送費用を考えると、食品を月へ輸入しても高くつくでしょう。「人は1日におよそ500グラムを食べます」とウィアーは言います(月では、500グラムの乾燥食品を水で戻します)。「それを輸送するだけで1日に100ドルかかり、さらに食品自体の価格がそこに上乗せされます」
『火星の人』に登場するウィアーの英雄、マーク・ワトニーは、火星にある自宅リビングで自身の排泄物を利用してジャガイモを栽培していたのが印象的でした。月で同じように現地栽培の食物を生産することは、2,000人のコミュニティにとっては現実的でないでしょう。「作物の栽培には一般的に広い土地が必要ですが、月にはそれがありません」とウィアーは言います。
では何を食べるかというと、おいしい藻類――厳密に言うと、クロレラ――を食べます。そうです、それは緑色をしていて、アルテミスでは「ガンク(ベトベトするもの)と呼ばれているものです。「それでも、人間にとっては実に栄養バランスのよいものですよ」とウィアーはいいます。「必要な栄養素をすべて満たしています。大きな樽に入れて見栄えよくすることもできますし、光の照射量を調整すると、タンパク質や糖分の含有量を増やすこともできます。したがって、人間の食事バランスに合わせて細かく調整ができるのです。それに、非常に短い時間で大量に生産することもできます」
チキンスープ味やさまざまな「新たに発明したユニークな味」など、輸入した調味料を購入してガンクに加えることもできる、とウィアーは言います。人気のマートル・ゴールドスタインの#3などです。それがどのような味なのかは、読者の想像力にお任せしています。
本の中にあるこの図は、アポロ11号の月面着陸地点の近くにあるビジターセンターの配置図です。ウィアーが指摘しているように、観光業なしで街の繁栄はありえません。観光業こそがアルテミスの経済を動かしているのです。月へ行くのに、他の理由はあるでしょうか?ガンク目当てではないことは明らかです。
で、本当に可能なの?
ウィアー(写真)は、脳内のハードドライブスペースで、すでに存在する月について、たくさんの計算を行い、移住の詳細を検討してきたと話します。「私は宇宙バカなのでね、こういうことは得意なんです」と彼は言います。「興味のある物事については知識が豊富になるものです。車好きなら車のことに詳しくなります。私は宇宙好きですから」
ウィアーは灰長石の製錬工程について、数字を噛み砕き調査を行う必要がありました。しかし、それを保留にしていると、彼は言います。本当の科学者がすでに考えていないことを、自分が思いつくはずがないとすぐに指摘しています。ウィアーはこう話します。「NASAの技術者が私の本を読んで『これは考えたこともなかった』とは言わないでしょう」
ウィアーによれば、火星よりもずっと先に月への移住が実現するだろうと話します。「月へ行くほうが、ずっと簡単ですからね」
ウィアー(写真)は、脳内のハードドライブスペースで、すでに存在する月について、たくさんの計算を行い、移住の詳細を検討してきたと話します。「私は宇宙バカなのでね、こういうことは得意なんです」と彼は言います。「興味のある物事については知識が豊富になるものです。車好きなら車のことに詳しくなります。私は宇宙好きですから」
ウィアーは灰長石の製錬工程について、数字を噛み砕き調査を行う必要がありました。しかし、それを保留にしていると、彼は言います。本当の科学者がすでに考えていないことを、自分が思いつくはずがないとすぐに指摘しています。ウィアーはこう話します。「NASAの技術者が私の本を読んで『これは考えたこともなかった』とは言わないでしょう」
ウィアーによれば、火星よりもずっと先に月への移住が実現するだろうと話します。「月へ行くほうが、ずっと簡単ですからね」
そもそもウィアーはなぜ、それほどまでに月や火星に移住する考えを気に入っているのでしょう? おそらく、あなたには考えつかない理由があるのでしょう。「月や宇宙へ行くのに、やむを得ない理由などありません」と彼は言います。「宇宙へ行くための過程で、インスタントラーメンやペースメーカー、マジックテープ、テフロンといった商品を発明しているという議論をよく耳にします。そうしたものには、人類の役に立つ二次的効果があります。しかし、宇宙開発に投じる資金を製品の研究に使えば、さらに多くの製品を発明できるかもしれないのです。
「宇宙に関する私の持論は、宇宙技術が進歩すればするほど、それにかかる費用が安くなるというものです。航空産業が誕生したときのように、中流階級の人が宇宙へ行けるようになった時に、本格的な宇宙産業が現れるでしょう。そして、誰もが恩恵を受ける新たな数兆ドル規模の産業になり、雇用や技術の創出と、いい意味での破壊を生むはずです。ハイテクブームのように、宇宙ブームがやってくるでしょう。しかし、その技術を開発するまでは、そこにはたどり着けないのです」
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「宇宙に関する私の持論は、宇宙技術が進歩すればするほど、それにかかる費用が安くなるというものです。航空産業が誕生したときのように、中流階級の人が宇宙へ行けるようになった時に、本格的な宇宙産業が現れるでしょう。そして、誰もが恩恵を受ける新たな数兆ドル規模の産業になり、雇用や技術の創出と、いい意味での破壊を生むはずです。ハイテクブームのように、宇宙ブームがやってくるでしょう。しかし、その技術を開発するまでは、そこにはたどり着けないのです」
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