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若者たちのノマドなライフスタイルが北欧家具デザインを変えていく!
北欧では若い世代の住宅購入時期が遅くなり、賃貸派が増えたことで、より「持ち運びしやすい家具」を求めるトレンドがデザインにも影響を与えています。
Sanne Kragelund
2016年10月13日
北欧諸国では、子どもが両親の家を出てから最初の家を購入するまでの期間が長い。EU統計局によると、親元を離れる平均年齢は、デンマークでは21歳、スウェーデンでは19.6歳となっている。引っ越す先は持ち家ではなく賃貸で、その後も仕事や旅行、学業のために転居を繰り返す場合が多い。
デンマークでは、20代でホームオーナーになる人の割合はこの数十年間でかなり低下している。「デンマーク人が不動産を購入する年齢は上がってきていますね」と、ノルデア銀行の不動産金融アナリスト、リーゼ・バーグマンさんは言う。「1981年には25~29歳の58%が持ち家に住んでいましたが、現在はずっと低下して27.4%となっています。」その理由はたくさんあるが、子どもを産む年齢が上がっていること、郊外に家を買うのではなく子育て環境が整ってきた都市部にとどまる人が増えていること、などが挙げられる。
デンマークでは、20代でホームオーナーになる人の割合はこの数十年間でかなり低下している。「デンマーク人が不動産を購入する年齢は上がってきていますね」と、ノルデア銀行の不動産金融アナリスト、リーゼ・バーグマンさんは言う。「1981年には25~29歳の58%が持ち家に住んでいましたが、現在はずっと低下して27.4%となっています。」その理由はたくさんあるが、子どもを産む年齢が上がっていること、郊外に家を買うのではなく子育て環境が整ってきた都市部にとどまる人が増えていること、などが挙げられる。
そんなわけで、引っ越しの多い若い世代は、家具にも移動しやすさを求めている。それに応え、北欧の家具デザイナーやIKEAのようなメーカーは、簡単に梱包して運べるフレキシブルな家具を作り始めているのだ。例えば、折りたたみ式の棚、壁に取り付けるのではなく立て掛けるタイプの鏡、簡単に脚を取り外せるテーブル。安いものを使い捨て、という感覚ではなく、簡単に次の住まいへ運んで使い続けることができる、サステナブルなシステムだ。
今回は、北欧のベテランノマドワーカーにインタビューし、移動の多い生活とは実際にどんなものなのか、詳しくうかがった。そして後半では、どこで暮らすことになっても使い続けられる製品づくりに取り組む、4人の北欧デザイナーをご紹介する。
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グローバル・ノマド
人生のすべてを引っ越し荷物に詰め込んで次の場所へ……という作業を幾度となく繰り返してきた、ブロガーのクリスティーナ・タイセンさん。「引っ越しても使える家具を探すのは、いつも苦労します」と言う。インタビューをしたこの日も、ロンドンでまたもや新しい住まいに引越してからほんの数日後だった。タイセンさんの職業は、ライフスタイルブログ『The Unexpected Compliment(ジ・アンエクスペクテッド・コンプリメント)』の運営だ。
「短期間使うためだけに家具を買うのは好きじゃないんですが、残念ながら、賃貸だとやむをえないこともありますね」と言うタイセンさん。ボーイフレンドといっしょにコペンハーゲンからロンドンに引越してきて以来、これまでふたりの持ち物を荷造りしたのは合計4回になる。もちろん、なかにはお気に入りの家具を次の家に持って行けないということもあった。
「3度目に引越したときに、わりと買ったばかりだったキッチンテーブルを処分しなければなりませんでした。新しい家のキッチンには大きすぎたんです。それからは前にも増して、のちのちまで使えるものを選んで買おう、と思うようになりました。」
人生のすべてを引っ越し荷物に詰め込んで次の場所へ……という作業を幾度となく繰り返してきた、ブロガーのクリスティーナ・タイセンさん。「引っ越しても使える家具を探すのは、いつも苦労します」と言う。インタビューをしたこの日も、ロンドンでまたもや新しい住まいに引越してからほんの数日後だった。タイセンさんの職業は、ライフスタイルブログ『The Unexpected Compliment(ジ・アンエクスペクテッド・コンプリメント)』の運営だ。
「短期間使うためだけに家具を買うのは好きじゃないんですが、残念ながら、賃貸だとやむをえないこともありますね」と言うタイセンさん。ボーイフレンドといっしょにコペンハーゲンからロンドンに引越してきて以来、これまでふたりの持ち物を荷造りしたのは合計4回になる。もちろん、なかにはお気に入りの家具を次の家に持って行けないということもあった。
「3度目に引越したときに、わりと買ったばかりだったキッチンテーブルを処分しなければなりませんでした。新しい家のキッチンには大きすぎたんです。それからは前にも増して、のちのちまで使えるものを選んで買おう、と思うようになりました。」
タイセンさんにとって家具選びの大事なポイントは、時代を感じさせず、同時にフレキシブルで多機能なものであること。「〈ストリング〉の本棚(写真)も、そんなアイテムの1つ。大きな本棚にもなるし、壁のスペースによっては、分割して置くこともできます。それから、ソファはモジュール式なので、置く部屋に合わせて調整できるんです。」
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頻繁に引っ越すけれど、大家さんに迷惑をかけることなく、お金もあまりかけずにインテリアを楽しみたい…という人たちのため、タイセンさんからの3つのアドバイスがこちら。
1. 思い入れのあるアート、クッション、ラグ、小物類を飾る。新しい家も、あなたならではのスタイルになります。
2. 絵は、壁に吊って飾るのではなく、立て掛ける。低いチェストの上に載せてもいいし、じかに床に置いて壁に立て掛けてもいいでしょう。
3. 観葉植物や花、照明をたくさん取り入れる。引越してすぐの場所でも、暮らしている実感がわいて、居心地よい空間になります。
タイセンさんのようなライフスタイルは、家具メーカーやデザイナーからも注目を集め、家具のデザイン、機能、輸送方法の変化へとつながっているのだ。
1. 思い入れのあるアート、クッション、ラグ、小物類を飾る。新しい家も、あなたならではのスタイルになります。
2. 絵は、壁に吊って飾るのではなく、立て掛ける。低いチェストの上に載せてもいいし、じかに床に置いて壁に立て掛けてもいいでしょう。
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タイセンさんのようなライフスタイルは、家具メーカーやデザイナーからも注目を集め、家具のデザイン、機能、輸送方法の変化へとつながっているのだ。
家具のありかたを見直す、4人の北欧デザイナー
1. 組み合わせるラグ/マルグレーテ・オドゴール
このような家具の必要性をいち早く反映したのが、IKEAの PS 2014 コレクション「オン・ザ・ムーブ」だった。デンマークのデザイナー、マルグレーテ・オドゴールさん(写真)は、このコレクションでコラボレーションした19人のクリエイターのなかの1人だ。「パターン入りのラグをデザインしました。複数枚をつなげて使うことができ、つなげることでラグの模様がどこまでも広がっていくんです」とオドゴールさんは言う。
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このような家具の必要性をいち早く反映したのが、IKEAの PS 2014 コレクション「オン・ザ・ムーブ」だった。デンマークのデザイナー、マルグレーテ・オドゴールさん(写真)は、このコレクションでコラボレーションした19人のクリエイターのなかの1人だ。「パターン入りのラグをデザインしました。複数枚をつなげて使うことができ、つなげることでラグの模様がどこまでも広がっていくんです」とオドゴールさんは言う。
「このラグなら狭い場所でも対応できるし、もし広いところに引っ越したら、ラグを追加すれば大丈夫。今のインテリア雑誌を見ると豪華なアパートメントがたくさん紹介されていますよね。でもIKEA PS 2014 コレクションが素晴らしいのは、部屋の美しさだけでなく、より人間を中心にしたデザインプロセスになっていること。ふつうの人々が抱えている問題に、現実的な予算で対応しようとするコレクションなんです」。
高価なデザイナー家具でも、寝心地や座り心地を実際に確かめることなしにネット通販で購入する人が増えているそうだ。ホルムさんはこの傾向について、輸送コストや環境への負荷についてしっかり見直さなくてはならない、と言う。「デザイン事務所の間でも、フラットパックのコンセプトをデザインに取り入れる動きは広まっていると思いますが、組み立てへの配慮や、サステナブルな製造方法、再利用やリサイクルについても考えることが重要ですね」。
3. 新しいサステナビリティ/ペトルス・パルメール
〈ヘム〉のCEOで、スウェーデンのデザイン事務所〈フォーム・アス・ウィズ・ラブ〉を創設したグループの1人でもあるペトルス・パルメールさんも、引っ越すときに簡単に家具を持って行きたいという消費者の声に応えたデザインを作り出している。
「組み立ての容易さというのは、私たちのデザイン哲学のなかで大きな意味を持つものなんです」とパルメールさんは言う。「利点は複数ありますが、配送費用が抑えられること、購入した人が快適に作れて移動も楽にできること、それから、私たちの優秀な製品開発チームやデザイナーにとってはイノベーティブな新製品を作り出すための刺激にもなっています。それぞれの製品ごとに、組み立ての容易さに注目するだけでなく、それによって製品価値が高まっているか、本来の目的にかなっているか、全体のデザインを乱していないかどうかを吟味する必要があります」。
〈ヘム〉のCEOで、スウェーデンのデザイン事務所〈フォーム・アス・ウィズ・ラブ〉を創設したグループの1人でもあるペトルス・パルメールさんも、引っ越すときに簡単に家具を持って行きたいという消費者の声に応えたデザインを作り出している。
「組み立ての容易さというのは、私たちのデザイン哲学のなかで大きな意味を持つものなんです」とパルメールさんは言う。「利点は複数ありますが、配送費用が抑えられること、購入した人が快適に作れて移動も楽にできること、それから、私たちの優秀な製品開発チームやデザイナーにとってはイノベーティブな新製品を作り出すための刺激にもなっています。それぞれの製品ごとに、組み立ての容易さに注目するだけでなく、それによって製品価値が高まっているか、本来の目的にかなっているか、全体のデザインを乱していないかどうかを吟味する必要があります」。
〈ガムフラテシ〉がデザインし〈ヘム〉が販売する《キー》テーブル。道具を使わず30秒で組み立て・分解ができるようにデザインされている。
「デザインを通じて、サステナビリティはさまざまな方法で実現することが可能です」とパルメールさんは言う。「私たちが目指すのは、長い間いっしょに暮らしたい、引越しても持って行きたいと思えるようなデザインのものを作ること。だからこそ、古くならないデザインが重要になるんです。私たちの家具を購入するのは、すでにひととおりの生活用品は持っている人たちですが、それでも何かを買う大きな理由は、その製品が本当に気に入ったから。ただ生活に必要なものを揃えるのではなく、自分らしい住まいを作り上げようとしているんです」。
「デザインを通じて、サステナビリティはさまざまな方法で実現することが可能です」とパルメールさんは言う。「私たちが目指すのは、長い間いっしょに暮らしたい、引越しても持って行きたいと思えるようなデザインのものを作ること。だからこそ、古くならないデザインが重要になるんです。私たちの家具を購入するのは、すでにひととおりの生活用品は持っている人たちですが、それでも何かを買う大きな理由は、その製品が本当に気に入ったから。ただ生活に必要なものを揃えるのではなく、自分らしい住まいを作り上げようとしているんです」。
〈フォーム・アス・ウィズ・ラブ〉がデザインし〈ヘム〉が販売するペンダントライト「レベルズ」。吊り下げていないときにはメタルシェードが3つに分かれて入れ子式に収納され、持ち運びが簡単だ。配送は北米とヨーロッパのみ可。
足と座面をたった1つのボルトで固定し、背もたれはスライド式に装着する、〈ヘム〉の《ベントー》チェア。組み立てにかかる時間は合計で1分以下だ。必要に応じて、何度でも分解して組み立てられる。
デザイナーの間でも、素材や梱包材の重さについて考える動きが出ていることは間違いない、とパルメールさんは言う。しかし、組み立て段階にまで配慮したデザインというのは、まだ新しい考え方だ。
「重さや素材、配送コストというのは全体のコストに直接的に影響するものなので、それを考えに入れるのは、単にトレンドというだけでなく、必要不可欠でしょう」とパルメールさんは説明する。「しかし、配送や設置するときの製品体験までデザインの視野に入れて、デザイン面からこういった問題に対応するというのは、新しいトレンドと言えるでしょうね」。
デザイナーの間でも、素材や梱包材の重さについて考える動きが出ていることは間違いない、とパルメールさんは言う。しかし、組み立て段階にまで配慮したデザインというのは、まだ新しい考え方だ。
「重さや素材、配送コストというのは全体のコストに直接的に影響するものなので、それを考えに入れるのは、単にトレンドというだけでなく、必要不可欠でしょう」とパルメールさんは説明する。「しかし、配送や設置するときの製品体験までデザインの視野に入れて、デザイン面からこういった問題に対応するというのは、新しいトレンドと言えるでしょうね」。
「狭い家で持ち運びできる照明が必要だった、という個人的な経験がインスピレーションの1つです。それから、インテリア作りをよりシンプルにしてくれる製品をデザインしたい、という思いが強くあったので、それもこのランプを作るきっかけになりましたね」。ペルソンさんはスウェーデンのリンシェーピングにあるカール・マルムステン校の家具制作科をまもなく卒業予定だ。
「移動しやすい家具には、大きな需要があると思います。特に、実用的で移動に便利なだけでなく、使っていないときにも見た目に美しいという多機能なものはなおさらですね」とペルソンさん。しかし、インテリアには住む人それぞれの持つパーソナルなテイストもぜひ表現してほしい、とペルソンさんは言う。「なにもかも新しくする必要はありません。たとえば私の家で使っている家具だって、両親の家から持ってきたものなんです」。
最初に登場したタイセンさんも、同じ意見のようだ。引っ越しのカオスな状態のなかで、自分にとって意味のある大切なものを手放さないことは重要だと言う。「うちには、祖父母から受け継いだものもあるんですよ。そういったものを使って自分たちだけのスタイルを作り出すことで、場所がどこであろうと、ここが私たちの家だ、と感じられるからなんです」。
教えてHouzz
いかがでしたか? ご感想をお聞かせください。
最初に登場したタイセンさんも、同じ意見のようだ。引っ越しのカオスな状態のなかで、自分にとって意味のある大切なものを手放さないことは重要だと言う。「うちには、祖父母から受け継いだものもあるんですよ。そういったものを使って自分たちだけのスタイルを作り出すことで、場所がどこであろうと、ここが私たちの家だ、と感じられるからなんです」。
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