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花や緑とともに美しい景観を演出する、庭づくりの名脇役ツール
植物と共存して美しい庭をつくり出すおすすめのツールのいろいろと、使い方のポイントを解説します。
Yoko Ogino
2016年6月14日
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン。英国のインテリアスタイルの中でも特にイングリッシュカントリーに共感し現在は緑豊かな鎌倉山でスローなライフスタイルを提案しています。
インテリアショップオーナー。建築士の資格を持ち住宅及び庭のプラン、デザインまで手掛る。英国での生活体験から奥行のある文化や暮らしに感銘を受け帰国後イギリスのライフスタイルを提案するショップをオープン... もっと見る
もうひとつの部屋として機能する美しい庭には、景観や居心地のよさをアップさせるための多くの脇役ツールが登場します。庭の景色に、高さによる変化をもたらすパーゴラ、植物を自在に誘引し、フォーカルポイントとなるトレリス。ゲートや敷石や照明、そして池などの水場も、屋外の空間で植物と共存して、さらに輝きを増します。今回は庭という舞台で大切な役割を演じる、風格のある名脇役ツールの使い方と注意点をお話ししながら、花と緑のある非日常的空間をさらに楽しむためのアイデアのご提案をいたします。
パーゴラ、アーチ
多くの人がパーゴラに憧れる理由のひとつには、このようなバラのアーチをつくりたいという願いがあるからなのではないでしょうか。バラは四季咲きを除き、たいていは初夏のみ咲きます。それ以外の時期にも順番に花が見られるように、おすすめしたいのはクレマチスやスイカズラのような蔓性の植物とともに植えることです。スイカズラのような常緑植物は、冬場も緑でパーゴラを包んでくれるため、最適です。
多くの人がパーゴラに憧れる理由のひとつには、このようなバラのアーチをつくりたいという願いがあるからなのではないでしょうか。バラは四季咲きを除き、たいていは初夏のみ咲きます。それ以外の時期にも順番に花が見られるように、おすすめしたいのはクレマチスやスイカズラのような蔓性の植物とともに植えることです。スイカズラのような常緑植物は、冬場も緑でパーゴラを包んでくれるため、最適です。
写真のパーゴラはしばしば園芸店などで見られるものですが、植物と一体になると優雅な表情に一変する名脇役です。
アイアンのアーチは木製パーゴラと異なり、細身の素材で作るとエレガントな雰囲気が出ます。植物に覆われなくても、庭のフォーカルポイントとして存在感抜群なアイテムです。ただし、つなぎ部分が腐食しやすいので、市販の鉄製防腐塗料でまめにお手入れすることが必要になります。
ガゼボ
あずまやのような仕立てのガゼボは、植物が屋根を覆うようにデザインされています。密集した植物のおかげで、少しくらいの雨なら中で雨宿りができます。内部にベンチを置けば、花の香りに包まれるロマンティックな癒しの空間になります。
あずまやのような仕立てのガゼボは、植物が屋根を覆うようにデザインされています。密集した植物のおかげで、少しくらいの雨なら中で雨宿りができます。内部にベンチを置けば、花の香りに包まれるロマンティックな癒しの空間になります。
アイアン製のガゼボも庭のフォーカルポイントとして大活躍するアイテムです。スペースが問われますが、庭の奥行きが4~5メートルほどあれば、コーナーに設置することが可能です。リビングやテラスからアプローチでつなげば、庭の休憩場所として活躍しそうです。場所を選べば、このようなガゼボを設置するのも夢ではありません。
トレリス
このような三角錐のトレリスを使用して植物を育てることもおすすめです。トピアリーのように自在に仕立てられるので、こちらも庭の素敵なフォーカルポイントとして利用できます。
このような三角錐のトレリスを使用して植物を育てることもおすすめです。トピアリーのように自在に仕立てられるので、こちらも庭の素敵なフォーカルポイントとして利用できます。
家の外壁を植物で覆うと見た目にも美しく、夏の暑さを軽減する効果もあるいっぽうで、日本の高温多湿の気候では、植物から発する湿気により家を傷めるというデメリットもあります。この写真のように、外壁に沿ってトレリスを設けることで、植物と家の壁の間に空気層ができ、湿度の問題は解決されます。
ゲート、フェンス
英国式庭園でよく見られるアイアンゲート。縦長のスリットのような扉を通して見える庭は奥行き感が出るため、中が広く見えるという効果があります。
英国式庭園でよく見られるアイアンゲート。縦長のスリットのような扉を通して見える庭は奥行き感が出るため、中が広く見えるという効果があります。
日本でも海外のヴィンテージのゲートやフェンスを輸入しているショップや、おしゃれでセンスのよいオリジナルデザインのアイアンワークをつくってくれるメーカーが増えてきました。
重厚で高級感があるけれど、従来のアイアン製品は重たく錆びやすいというデメリットもありました。近頃はデザイン性に優れているうえ、高温多湿な日本の気候に合う、錆びにくい合金を使用して製作しているメーカーもあり、取り付け後のお手入れも簡単になりました。ニーズの高まりとともに価格もこなれてきましたので、庭づくりに取り入れたい一押しアイテムです。
重厚で高級感があるけれど、従来のアイアン製品は重たく錆びやすいというデメリットもありました。近頃はデザイン性に優れているうえ、高温多湿な日本の気候に合う、錆びにくい合金を使用して製作しているメーカーもあり、取り付け後のお手入れも簡単になりました。ニーズの高まりとともに価格もこなれてきましたので、庭づくりに取り入れたい一押しアイテムです。
ここでは、奥行き感を出す効果を見せるため、アイアンゲートの中心を庭の正面から少しずらして配置してみました。庭が見えないため、奥行きが出るうえ、どんな庭園が広がっているのだろう、という期待感が高まります。
アイアン以外にも、自然の風合いたっぷりの木製ゲートとフェンスは、オリジナリティやデザインの点で、訪れた人々からの称賛を受けそうです。ゲートやフェンスは素材を問わずお庭の脇役として必要なもの。存在感が大きいので、素材やデザインは建物の雰囲気に合うものを選びましょう。
エクステリアタイル、敷石
エクステリアに使用するタイルの人気も継続しています。ほんの小さなスペースでも、外とつながるアウトドアリビングとして、タイルは機能的かつ美しい仕上がりを見せてくれる小道具です。
エクステリアに使用するタイルの人気も継続しています。ほんの小さなスペースでも、外とつながるアウトドアリビングとして、タイルは機能的かつ美しい仕上がりを見せてくれる小道具です。
磁器タイルは色や大きさにバリエーションがあり、見た目も可愛く汚れを落としやすいため、近年人気のアイテムとなっています。庭の一部をテラスにするとき、このような美しい色づかいにすれば、花の少ない冬季も楽しく庭仕事ができそうです。
テラコッタタイプのレンガは、組み合わせによって表情が変わります。写真のレンガは市販で手に入りやすい素材ですが、ヘリンボーンの形に敷き込んだので、テラスにおしゃれ感が出ました。レンガを敷くときの注意点は、下地を平らにきっちりつくっておくこと。できれば砂利などを入れ、転圧(機械で圧をかけて地盤を締めること)をかけておけば、地盤が固く締まり、レンガを敷いた後もぐらつきが出にくくなります。経年して、レンガの隙間からこぼれ種によるお花の芽が出て来たら、いっそう素敵に見えそうです。
青々とした芝生に、あふれるほどの花が咲く花壇をつくるのは誰しも憧れることですが、お手入れが大変と思う方におすすめしたいのが、このように大きめの擬石を使うテラスガーデンです。市松模様に敷き込むと、それだけで目に楽しく映ります。土の部分だけに植物を配置すれば、お手入れもずっと楽になります。
和風庭園に欠かせない要素に数えたい小物もやはり敷石です。天然石の見せる自然な形や色合いを庭に取り込む手法は、小さな茶庭からも学べます。
シンプルな石の配置は庭から茶室へ向かうアプローチには欠かせません。またこの写真のように、点在させて庭のオブジェとしても活躍させるのは素敵なアイデアです。
シンプルな石の配置は庭から茶室へ向かうアプローチには欠かせません。またこの写真のように、点在させて庭のオブジェとしても活躍させるのは素敵なアイデアです。
池、水場関連
水場は夏場の暑さを軽減し、さわやかな見た目や音によっても心を癒してくれます。池をつくるときのポイントは、大きさを問わず排水路の確保と水が絶えず流れるような循環ポンプをつけること。人工的につくられたものでも、水がある場所には自然の動植物が集まってきます。
またご自分で写真のような市販の水場を利用して設置することもおすすめです。レンガを積んだり水道の配管工事をするのは大変ですが、このようなキットを利用すれば、比較的簡単にDIYできそうです。
水場は夏場の暑さを軽減し、さわやかな見た目や音によっても心を癒してくれます。池をつくるときのポイントは、大きさを問わず排水路の確保と水が絶えず流れるような循環ポンプをつけること。人工的につくられたものでも、水がある場所には自然の動植物が集まってきます。
またご自分で写真のような市販の水場を利用して設置することもおすすめです。レンガを積んだり水道の配管工事をするのは大変ですが、このようなキットを利用すれば、比較的簡単にDIYできそうです。
水場は池だけとは限りません。高さの異なる鉢を利用して水を循環させるだけで、こんな涼やかなフォーカルポイントのでき上がりです。これは3つの鉢の底部に敷き込んだ石の下にポンプを設置し 、順番に水が回るように施工されています。水の流れる音も楽しみのひとつ。大きなスペースがなくても水場を楽しむよい例だと思います。
庭の灯り
庭に灯りは必需品です。夜間に足元から照らす灯りは植物を見上げながら光を発するので、幻想的な空間ができ上がります。また足元が明るいので、夜間の歩行の際にも効果的な助けとなります。
庭に灯りは必需品です。夜間に足元から照らす灯りは植物を見上げながら光を発するので、幻想的な空間ができ上がります。また足元が明るいので、夜間の歩行の際にも効果的な助けとなります。
夜間にアプローチを安全に歩くためのパスライトにも、近年シンプルでスタイリッシュなものが増えてきました。写真のような照明器具は設置場所を選ばず、手軽に施工が可能です。
くつろぐ庭で使用するいちばん素敵な灯りは、何といってもキャンドルです。ゆらゆら揺れる光を眺めながら、庭で過ごす至福の時間になるでしょう。
日本の坪庭は本来、細長い町家の建物内への日照や通風を考慮してつくられていました。写真では、ミニマルな空間で和庭に必要な灯篭や蹲(つくばい)が、機能的かつデザイン的な意味をもって配置されています。庭づくりに広さは問われないことのよい例です。
今回ご紹介した庭で活躍するツールたちは、いずれも植物との共存があってこそ輝く存在です。日本の風土や気候条件を考えながら適材適所に使い、今の庭の姿をいっそう美しく、快適な空間になるように仕上げてみてください。
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