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知ればもっと楽しい、カトラリー:置き方とお手入れ法
食卓の “テリトリー” とカトラリーの関係、セッティングのミニ知識やお手入れなど。カトラリーにまつわるベーシックな知識や使い方について、フランス雑貨のプロが語ります。
Mami Natsui
2016年8月20日
東京・目黒のフランス雑貨&アンティークショップ「M'amour(マムール)」オーナー。アパレルメーカー海外事業部に勤務後、フランスのインテリアブランドの日本立ち上げ、カフェオーナー業に従事。ヨーロッパを中心に、複数の取引先へのオーダーや買付け業務の為、年数回の海外出張をしている。衣食住全般の仕事に関わり、「M'amour」オープン後はとくに物への愛情とこだわりを発揮中。出張の際は必ず一日は安ホテルを抜け出し、話題のインテリアのホテルへ宿泊し、老後の楽しみにアルバム作りに精を出す。
東京・目黒のフランス雑貨&アンティークショップ「M'amour(マムール)」オーナー。アパレルメーカー海外事業部に勤務後、フランスのインテリアブランドの日本立ち上げ、カフェオーナー業に従事... もっと見る
フランスのテーブルウェアやアンティーク雑貨の輸入の仕事を通じて、またお客様からご質問をいただいて調べたりしているうちに、いつの間にか詳しくなったカトラリーのこと。前回の記事「知ればもっと楽しい、カトラリー:歴史と素材」では、カトラリーが伝わった歴史とおもな素材について取り上げましたが、今回はテーブル上の “テリトリー” のお話やカトラリーのミニ知識、一緒に使う小道具やお手入れ方法も交えながら、素敵な使い方例をご紹介します。
テーブル上の “テリトリー”
テーブルの大きさや食事をする人数にもよりますが、お皿の位置を決める際の基本的ルールを知っておくことは大切です。詳しくはHouzzフランス版の記事「世界のHouzzから:8ステップでわかる、フランス式テーブルセッティングの基本」に譲りますが、簡単におさらいすると、テーブル上で1人分とされる “テリトリー” は一般的に幅60~80cmで、お皿を置く位置は、テーブルの端から2.5~5cm入ったところとされています。
テーブルの大きさや食事をする人数にもよりますが、お皿の位置を決める際の基本的ルールを知っておくことは大切です。詳しくはHouzzフランス版の記事「世界のHouzzから:8ステップでわかる、フランス式テーブルセッティングの基本」に譲りますが、簡単におさらいすると、テーブル上で1人分とされる “テリトリー” は一般的に幅60~80cmで、お皿を置く位置は、テーブルの端から2.5~5cm入ったところとされています。
“テリトリー” を決めるための飾り皿
前回の記事で、フランスでフォークが使われたのは、16世紀半ばにイタリアのカトリーヌ・ド・メディチの嫁入り道具として持ち込まれたのが最初というお話をご紹介しましたが、そんなアイテムがもうひとつあります。食卓における “テリトリー” を決めるために、最初に使われた飾り皿(アシエット・ド・プレゾンタスィオン)です。
晩餐会などの大テーブルに横並びで座るスタイルだった時代、観賞用だった飾り皿は、ゲストの位置を決めるお皿として食卓に登場しました。両隣との間隔がわずかなうえ、ボリュームのあるドレスなどを着て乾杯の度に立ったり座ったりをすることで、座る位置がずれないように、位置を定めるためのお皿として定着したのです。
前回の記事で、フランスでフォークが使われたのは、16世紀半ばにイタリアのカトリーヌ・ド・メディチの嫁入り道具として持ち込まれたのが最初というお話をご紹介しましたが、そんなアイテムがもうひとつあります。食卓における “テリトリー” を決めるために、最初に使われた飾り皿(アシエット・ド・プレゾンタスィオン)です。
晩餐会などの大テーブルに横並びで座るスタイルだった時代、観賞用だった飾り皿は、ゲストの位置を決めるお皿として食卓に登場しました。両隣との間隔がわずかなうえ、ボリュームのあるドレスなどを着て乾杯の度に立ったり座ったりをすることで、座る位置がずれないように、位置を定めるためのお皿として定着したのです。
もとは飾り皿だったアシエット・ド・プレゾンタスィオンは、今ではアンダープレートとして、さまざまな素材のものがつくられるようになりました。テーブルセッティングに個性を持たせる、楽しく華やかなアイテムとして、欠かせない存在となっています。
カトラリーのセッティング
食事中に使うすべてのカトラリーを使用順に外側から並べる「バンケット・セッティング」を例にとると、お皿の右側に肉用ナイフ、魚用ナイフ、スープ用スプーンなどを、左側に肉用フォーク、魚用フォークなどをメニューに応じて置きます。お皿とグラスの間にはチーズナイフやデザートフォーク、デザートスプーンなどを水平に置きます。
食事中に使うすべてのカトラリーを使用順に外側から並べる「バンケット・セッティング」を例にとると、お皿の右側に肉用ナイフ、魚用ナイフ、スープ用スプーンなどを、左側に肉用フォーク、魚用フォークなどをメニューに応じて置きます。お皿とグラスの間にはチーズナイフやデザートフォーク、デザートスプーンなどを水平に置きます。
美しいカトラリーは、テーブルセッティングにおいて実用性はもちろんのこと、食卓を彩るために欠かせないアイテムです。従来、カトラリーはスプーン、フォーク、ナイフとすべて同じデザインで揃えるものでしたが、最近では、写真のようにあえてデザインの違うカトラリーをセットするスタイルも人気です。パリの高級レストランが、わざと1本ずつ違うデザインのヴィンテージカトラリーを使ってセッティングしたことなども、人気になったきっかけかもしれません。
フランス式とイギリス式の違い
カトラリーのセッティングにはフランス式とイギリス式、それぞれのスタイルがあることはご存じだと思います。フランス式はフォーク、ナイフの刃部分を下に伏せ、イギリス式は上に向けてセッティングします(写真はフランス式)。
カトラリーのつくりを見ると、フランスのメーカーのものはスプーンなら凹んだ窪みの側にメーカーズマークが刻印されているので、これは裏側とされていることがわかります。カトラリーに限らず、裏側を隠すのはセッティングの際には当然のことなので、こちら側を伏せて置くということになります。
カトラリーのセッティングにはフランス式とイギリス式、それぞれのスタイルがあることはご存じだと思います。フランス式はフォーク、ナイフの刃部分を下に伏せ、イギリス式は上に向けてセッティングします(写真はフランス式)。
カトラリーのつくりを見ると、フランスのメーカーのものはスプーンなら凹んだ窪みの側にメーカーズマークが刻印されているので、これは裏側とされていることがわかります。カトラリーに限らず、裏側を隠すのはセッティングの際には当然のことなので、こちら側を伏せて置くということになります。
では、なぜこのような違いができたのでしょうか。その理由にはいくつかの説があります。1つめは単に、貴族の紋章やイニシャルを彫り模様を刻印する際に、裏に入れたのか表に入れたのかにより生じた違い。2つめは、過去のある時期に流行した置き方が定着し、各国の違いがそのまま残った、という説。
そして大変興味深いのが3つめで、島国であるイギリスと陸続きのフランスの、会食=政治の場であるという意識の強さの違いが表れている、という説です。つまりフランス式では「今宵の宴ではあなたに対して敵対意識を持たず、攻撃することは決してありません」という意思を表すために、もともとは刃物として伝わったカトラリーを伏せ、刃先を下に向けてセッティングしたということです。
そして大変興味深いのが3つめで、島国であるイギリスと陸続きのフランスの、会食=政治の場であるという意識の強さの違いが表れている、という説です。つまりフランス式では「今宵の宴ではあなたに対して敵対意識を持たず、攻撃することは決してありません」という意思を表すために、もともとは刃物として伝わったカトラリーを伏せ、刃先を下に向けてセッティングしたということです。
ナプキンのセッティング
ナプキンはお皿の上に置くのが基本ですが、難しい折り方などを知らなくても、写真のようにセンターピースとコーディネートしたアイテムをあしらったり、素敵なナプキンリングを使うことにより、お皿とのコーディネートを楽しみながらテーブルセッティングの幅を広げることができます。
ナプキンはお皿の上に置くのが基本ですが、難しい折り方などを知らなくても、写真のようにセンターピースとコーディネートしたアイテムをあしらったり、素敵なナプキンリングを使うことにより、お皿とのコーディネートを楽しみながらテーブルセッティングの幅を広げることができます。
白いテーブルクロスが好まれる理由
フランスの伝統的なテーブルセッティングでは、テーブルクロスやキャンドルは白、グラスはカットグラスが好まれました。キャンドルの炎がカットグラスを通るとき、ワインの色が真っ白なクロスの上に映し出される様子を楽しむためだといわれています。グラスもキャンドルスタンドの高さに合わせて選ばれました。
フランスの伝統的なテーブルセッティングでは、テーブルクロスやキャンドルは白、グラスはカットグラスが好まれました。キャンドルの炎がカットグラスを通るとき、ワインの色が真っ白なクロスの上に映し出される様子を楽しむためだといわれています。グラスもキャンドルスタンドの高さに合わせて選ばれました。
シルバーカトラリーのお手入れ法
さて、カトラリーをはじめとするシルバー製品でよくお客様から聞く言葉は「シルバーはすぐに黒くなるから……」です。有名ブランドのカトラリーをフルセットで購入したのに、大事にしすぎて使わずにしまっておいたら真っ黒になり、その後一度も使わなくなったという、残念なお話も聞きます。
さて、カトラリーをはじめとするシルバー製品でよくお客様から聞く言葉は「シルバーはすぐに黒くなるから……」です。有名ブランドのカトラリーをフルセットで購入したのに、大事にしすぎて使わずにしまっておいたら真っ黒になり、その後一度も使わなくなったという、残念なお話も聞きます。
いちばん簡単で有効なお手入れ方法は、惜しまずに使うことです。特にシルバーのカトラリーは、使う→洗う→拭くを繰り返すと、黒くなるどころか、美しく光り輝くようになってきます。試しに、同じカトラリーを使って実験してみてください。1本は毎日使う、もう1本は引き出しにしまい込む。数ヶ月の後には、その驚くべき違いを発見できるでしょう。
万が一、うっかり黒くなってしまったら、フェルトなどの柔らかい布で拭いてください。少し茶色くなったぐらいであれば、布で拭くだけでも十分きれいにになります。また、シルバーポリッシュを布につけて磨けば、あっという間にピカピカになり見違えるようになります。カトラリー専用の、浸して落とすタイプのディップクリーナーもあります。数本まとめて液体につけて、後は軽く洗い流せばOKです。私は、雨の日などにお店の商品であるシルバー製品磨きをするのが大好きです。外は薄暗くても、シルバーの効果で室内がワントーン明るくなり、気持ちもすっきりしますから。
カジュアルな使い方も楽しんで
テーブルセッティングの基本を知り、きちんとしたおもてなしをするいっぽうで、普段使いのカトラリーは、見せながら収納するのもひとつの方法です。カジュアルなパーティーなどでは、たとえばこんなヴィンテージのマスタードボトルなどを上手に使ってカトラリースタンドにするのも素敵です。そのままテーブルに置けば、個性的なプレゼンテーションになります。
テーブルセッティングの基本を知り、きちんとしたおもてなしをするいっぽうで、普段使いのカトラリーは、見せながら収納するのもひとつの方法です。カジュアルなパーティーなどでは、たとえばこんなヴィンテージのマスタードボトルなどを上手に使ってカトラリースタンドにするのも素敵です。そのままテーブルに置けば、個性的なプレゼンテーションになります。
普段のお食事やティータイムでお気に入りのカトラリーを使うときに、今回のお話をちょっと思い出して、セッティングの参考にしたり、お食事の席での話題にしたりしてみてください。おもてなしの席や普段の食卓で、きらりと輝く名脇役であるカトラリーを、さらに愛着をもって使っていただく一助になればうれしく思います。
教えてHouzz
みなさんは、どんなカトラリーでどんなテーブルセッティングを楽しんでいますか?
カトラリーの商品一覧を見る
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