知って楽しむ、壁紙のパターン :ヨーロッパの伝統柄
小さな場所や1面だけ貼るアクセントウォールの人気、多彩な輸入壁紙や手軽に貼れるDIY壁紙の普及などによって、好みの柄を壁に取り入れる人が増えてきました。春に向け、壁紙のパターンの数々を解説するシリーズ記事をお届けします。
ブラッキン・ヘザー
2016年1月15日
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
著書「ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり(文藝春秋)
Interior decoration and storage space planning in Tokyo, Japan. English/Japanese bilingual, with interior design and decoration experience in Europe and Japan.
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
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アクセントウォールを楽しむ方法として、日本でもすっかりポピュラーになった、さまざまな模様の壁紙。たくさんの柄や色があって、選ぶときにはつい迷ってしまいますね。これから春に向けて数回にわたり、模様替えに役立つ壁紙のパターンの種類とその使い方をご紹介したいと思います。
私にとってヨーロッパの伝統的デザインの壁紙といえば、最近までまず思い浮かべていたのがイギリスの祖父母の家に貼られていたものです。祖父母が住んでいたのは古いヴィクトリアン様式の家でした。家じゅうのどの壁にも何かの柄がほどこしてあり、バスルームまでが花柄の壁紙。カーテンやソファカバーももちろん花柄、そして床にもアンティークのラグ。本当に柄だらけの家でしたが、少し前までは、それがごく典型的なイギリスの家のスタイルだったように思います。
そんなイメージのあった伝統的な壁紙の、新たな使い方が今また新鮮に映ります。「柄だらけ」の古い時代から変わり、今はもっとシンプルに、その伝統的な柄の美しさを生かすような使い方です。アートのような存在になった、とも言えるかもしれません。アンティーク家具と組み合わせてエレガントに、あるいはモダンな家具と合わせてコントラストを楽しむなど、使い方もより自由に。伝統的なパターンの壁紙でも、想像力を働かせてアレンジした新しい使い方がよく見られるようになりました。
今回はヨーロッパの伝統柄の壁紙を4種類ご紹介しながら、今日的な使い方をしている素敵な実例をご覧いただきたいと思います。
私にとってヨーロッパの伝統的デザインの壁紙といえば、最近までまず思い浮かべていたのがイギリスの祖父母の家に貼られていたものです。祖父母が住んでいたのは古いヴィクトリアン様式の家でした。家じゅうのどの壁にも何かの柄がほどこしてあり、バスルームまでが花柄の壁紙。カーテンやソファカバーももちろん花柄、そして床にもアンティークのラグ。本当に柄だらけの家でしたが、少し前までは、それがごく典型的なイギリスの家のスタイルだったように思います。
そんなイメージのあった伝統的な壁紙の、新たな使い方が今また新鮮に映ります。「柄だらけ」の古い時代から変わり、今はもっとシンプルに、その伝統的な柄の美しさを生かすような使い方です。アートのような存在になった、とも言えるかもしれません。アンティーク家具と組み合わせてエレガントに、あるいはモダンな家具と合わせてコントラストを楽しむなど、使い方もより自由に。伝統的なパターンの壁紙でも、想像力を働かせてアレンジした新しい使い方がよく見られるようになりました。
今回はヨーロッパの伝統柄の壁紙を4種類ご紹介しながら、今日的な使い方をしている素敵な実例をご覧いただきたいと思います。
イギリスらしい伝統の花柄、チンツ(Chintz)
「チンツ」とは、平織りのコットンに花などのデザインがプリントされた光沢のあるファブリックのこと。もともとは生地に光沢を出す加工のことをさしましたが、日本語でインド更紗と訳されることもある、淡い色をバックにした花のモチーフが特徴的で、今ではこのようなデザインそのものもチンツと呼ばれるように。トラディショナルなイギリスの家では、壁紙からカーテン、ソファカバーまでチンツで揃えるのがポピュラーな時代もありましたが、今はもっとシンプルに、ワンポイントとして使われることが多くなってきました。
この子供部屋の壁紙をよく見ると、お花がポニーのモチーフに。パッチワークのベッドカバーにも同じモチーフがところどころ使われていておしゃれですね。色づかいが優しく、女の子が一度は夢みるようなベッドルームです。
「チンツ」とは、平織りのコットンに花などのデザインがプリントされた光沢のあるファブリックのこと。もともとは生地に光沢を出す加工のことをさしましたが、日本語でインド更紗と訳されることもある、淡い色をバックにした花のモチーフが特徴的で、今ではこのようなデザインそのものもチンツと呼ばれるように。トラディショナルなイギリスの家では、壁紙からカーテン、ソファカバーまでチンツで揃えるのがポピュラーな時代もありましたが、今はもっとシンプルに、ワンポイントとして使われることが多くなってきました。
この子供部屋の壁紙をよく見ると、お花がポニーのモチーフに。パッチワークのベッドカバーにも同じモチーフがところどころ使われていておしゃれですね。色づかいが優しく、女の子が一度は夢みるようなベッドルームです。
こんな大胆な柄や色を使うには、少し勇気がいるかもしれませんね。でもちょっとチャレンジしてみたいような気持ちも。この場合に大切なのは、デザインがもやもやとせずにはっきりと見えるよう、自然光がたっぷり入る場所を選ぶことです。そして全体をまとめ、少し落ち着かせる「アンカー(錨)役」を務める色を取り入れると、かなり落ち着きます。こちらのキッチンキャビネットの赤がそのアンカー役。壁紙の中で使われている1色をメインカラーとして選んで、つながる印象をつくりましょう。赤ばかりでは飽きてしまうかもしれませんが、ちょっとグリーンが入っていることでフレッシュさが加わっています。
ベージュをバックに、ピンクと赤い花が可愛らしい、トラディショナルなチンツの壁紙。腰板やドアの枠を白く塗ったことで全体が暗くなりすぎず、すっきりとしたメリハリが出ます。私の祖父母の家のような、昔のイギリスのインテリアに欠けていたのは、もしかしたらこのメリハリだったのかもしれません。すべてが同系色でまとまりすぎていたかつての時代と違って、最近はメリハリやコントラストが大切な要素になっているような気がします。
テーブルのお花の色が壁紙のお花を反映されているところも、今風のこだわりが感じられますね。
テーブルのお花の色が壁紙のお花を反映されているところも、今風のこだわりが感じられますね。
フランスの牧歌的な単色柄、トワル ド ジュイ (Toile de Jouy)
18世紀のフランスの伝統パターン、トワル ド ジュイ。「トワル」とはファブリックを意味し、「ジュイ」とはこのタイプのパターンの生地を製造している地名、Jouy-en-Josasからの由来。綿やリネン、またはシルクの生地に、風景や人物、動物など、のんびりと牧歌的な田舎のシーンがプリントされたファブリックですが、そのモチーフは壁紙としても人気があります。白やクリーム色のベースに、赤や黒、またはブルーでプリントされたツートーンが基本であり、写実的な細かい柄でありながら色がシンプルなため、想像以上にインテリアにも合わせやすい壁紙です。
18世紀のフランスの伝統パターン、トワル ド ジュイ。「トワル」とはファブリックを意味し、「ジュイ」とはこのタイプのパターンの生地を製造している地名、Jouy-en-Josasからの由来。綿やリネン、またはシルクの生地に、風景や人物、動物など、のんびりと牧歌的な田舎のシーンがプリントされたファブリックですが、そのモチーフは壁紙としても人気があります。白やクリーム色のベースに、赤や黒、またはブルーでプリントされたツートーンが基本であり、写実的な細かい柄でありながら色がシンプルなため、想像以上にインテリアにも合わせやすい壁紙です。
プリンセス気分になれそうな、ロマンチックな部屋。子供の頃、こんなお部屋に憧れていました。
壁紙とカーテンを同じ生地で合わせるのは、やや、ひと昔風のスタイルのイメージがありますが、部屋全体というよりも、どこか1か所をポイント的にマッチングさせるのが今風のやり方。白をたくさん使っているこのお部屋のように、目を休ませる場所をつくることがポイントです。壁紙とファブリックをこのようにマッチングさせるのも、トワル ド ジュイのポピュラーな使い方です。
壁紙とカーテンを同じ生地で合わせるのは、やや、ひと昔風のスタイルのイメージがありますが、部屋全体というよりも、どこか1か所をポイント的にマッチングさせるのが今風のやり方。白をたくさん使っているこのお部屋のように、目を休ませる場所をつくることがポイントです。壁紙とファブリックをこのようにマッチングさせるのも、トワル ド ジュイのポピュラーな使い方です。
ベースカラーである白をメインに、黒をアクセントに使ったクラシックモダンなベッドルーム。壁紙やクッションのデリケートなパターンと対照的な、力強さのある黒いランプスタンドやクッションの組み合わせが素敵です。こちらでも細かい柄が豊富に使われているため、白や黒の無地の部分もバランスよく、分量を多めにして全体を落ち着かせています。
西洋から見た憧れの東洋趣味、シノワズリー(Chinoiserie)
「シノワズリー」とは、18世紀のヨーロッパで流行した、中国からの影響を受けたスタイル。シルクロードから運ばれてきた美しい東洋のものに魅了されたヨーロッパの人々が、インテリアの中にも取り入れるのがトレンドになった時代でした。
中国の陶器や家具のモチーフの影響を受けているのがシノワズリーの壁紙。エレガントで高級感あふれたこのスタイルの壁紙は今でもとても人気があります。
写真のように腰板の上だけシノワズリー柄の壁紙にすると、まるでアートのようですね。シンプルでコンテンポラリーな家具との組み合わせに、どこかタイムレスな魅力が感じられます。
「シノワズリー」とは、18世紀のヨーロッパで流行した、中国からの影響を受けたスタイル。シルクロードから運ばれてきた美しい東洋のものに魅了されたヨーロッパの人々が、インテリアの中にも取り入れるのがトレンドになった時代でした。
中国の陶器や家具のモチーフの影響を受けているのがシノワズリーの壁紙。エレガントで高級感あふれたこのスタイルの壁紙は今でもとても人気があります。
写真のように腰板の上だけシノワズリー柄の壁紙にすると、まるでアートのようですね。シンプルでコンテンポラリーな家具との組み合わせに、どこかタイムレスな魅力が感じられます。
まるで中国や香港の高級ホテルのようなベッドルーム。壁紙には確かに、オリエンタルな風合いが感じらます。家具やクッションのモチーフにもチャイニーズ的なモチーフが。こちらでもやはり、白が豊富に使われていることで、こてこての異国趣味になりすぎず、程よくオリエンタルの香りが漂っています。
まるで絵画のような美しい壁紙は、このようにパネルにしてアートのように楽しむこともできます。シノワズリーの多くの壁紙は、明るくハッピーな色が特徴です。
シノワズリーの壁紙でよく使われているのが、自然界の風物のモチーフ。特によく登場するのは、小鳥や蝶です。
こちらは、食器棚や本棚の奥の面に貼るといった、自分でもできそうな簡単で手軽なアイデア。鮮やかな黄色がパッと目を惹きますね。そして小鳥や蝶たちの位置が、ちょうどグラスや食器の上にのっているように見えるところも、たまらなく可愛らしいです。
こちらは、食器棚や本棚の奥の面に貼るといった、自分でもできそうな簡単で手軽なアイデア。鮮やかな黄色がパッと目を惹きますね。そして小鳥や蝶たちの位置が、ちょうどグラスや食器の上にのっているように見えるところも、たまらなく可愛らしいです。
織物からヒントを得た、エレガントでハンサムなダマスク(Damask)
「ダマスク」とはもともと中近東の、裏地がある絹や綿、リネンなどを使った織物の一種。植物をモチーフとした大柄の連なりと、独特の光沢を出す織り方が、ダマスクの特徴。その独特な柄を使ったのがダマスクの壁紙です。
花や植物のモチーフとなると女性的なイメージのものが多いかもしれませんが、私にとってダマスクとは、なんとなく「ハンサム」な壁紙といったイメージがあり、男性の部屋にもよく似合うと思っています。繊細ながら大きめで力強さが感じられる柄がきっとそう思わせてくれるのでしょう。ベージュをベースに、シルバーのパターンのこちらの壁紙からも、そんな印象を受けました。マットのベージュからシルバーのパターンが浮き出ているような立体感があって、とても素敵です。
「ダマスク」とはもともと中近東の、裏地がある絹や綿、リネンなどを使った織物の一種。植物をモチーフとした大柄の連なりと、独特の光沢を出す織り方が、ダマスクの特徴。その独特な柄を使ったのがダマスクの壁紙です。
花や植物のモチーフとなると女性的なイメージのものが多いかもしれませんが、私にとってダマスクとは、なんとなく「ハンサム」な壁紙といったイメージがあり、男性の部屋にもよく似合うと思っています。繊細ながら大きめで力強さが感じられる柄がきっとそう思わせてくれるのでしょう。ベージュをベースに、シルバーのパターンのこちらの壁紙からも、そんな印象を受けました。マットのベージュからシルバーのパターンが浮き出ているような立体感があって、とても素敵です。
最近、白x白のダマスクも人気があります。光のさす角度によって見え方が変わり、「あら、ここに柄が?」と思うくらいさりげなく目に映る、デリケートなモチーフが素敵ですね。真っ白がベースの部屋に、奥深さをプラスする効果も感じられます。
黒の背景から白いパターンがまるで飛び出してくるように見える、インパクトのある壁紙。ストライプやジオメトリックで直線的な柄のクッションは、ダマスクの曲線パターンとはまったく対照的ですが、シンプルなグレーのヘッドボードがその2つの異なる要素をまとめています。トラディショナルテイストとコンテンポラリーテイストが、いい感じに溶け合っていますね。
ダマスクはどことなく大人っぽいイメージがありますが、色や柄によっては、こんな明るく楽しい雰囲気を出すこともできます。
トラディショナルな柄の素晴らしさは、伝統や歴史、そして物語が感じられ、どこか独特な奥深さがあることだと思います。お部屋の1か所に取り入れるだけでも深みが出て、全体の表情もガラリと変わります。トラッドなインテリアに限らず、モダンな空間、または和のテイストのお部屋でも素敵なアクセントになりますよ。
次回は多くの人に親しまれている、ストライプの壁紙のさまざまな使い方をご紹介したいと思います。
ダマスク柄の写真をもっと見る
おしゃれな壁紙を使った空間の写真をもっと見る
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トラディショナルな柄の素晴らしさは、伝統や歴史、そして物語が感じられ、どこか独特な奥深さがあることだと思います。お部屋の1か所に取り入れるだけでも深みが出て、全体の表情もガラリと変わります。トラッドなインテリアに限らず、モダンな空間、または和のテイストのお部屋でも素敵なアクセントになりますよ。
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