「段差」をつけて、動線がよく奥行きのある、立体的な空間づくり
限られたスペースを効率よく快適に使うための解決策のひとつが、「段差」で空間を区切るという方法。そのさまざまな例をご紹介します。
黒田美津子
2015年8月6日
インテリアスタイリスト スタイル・ディレクター インテリアデコレーター ライター。
1988年「Hanako」(マガジンハウス)創刊メンバーとして雑誌記者に。
8年間のhanako記者生活の後、フリーランスとして出版各社の女性誌、デザイン誌を中心に各誌で記事制作、執筆、スタイリングを担当。現在は広告、イベント、展示、商業施設、ホテル、住宅、レストランのインテリアディレクション、スタイリング、コンセプトワークまで幅広く手がける。著書「HAPPY STYLE a to z」(ギャップ出版)など。
インテリアスタイリスト スタイル・ディレクター インテリアデコレーター ライター。
1988年「Hanako」(マガジンハウス)創刊メンバーとして雑誌記者に。
8年間のhanako記者生活の後、フリーランスとして出版各社の女性誌、デザイン誌を中心に各誌で記事制作、執筆、スタイリングを担当。現在は広告、イベント、展示、商業施設、ホテル、住宅、レストランのインテリアディレクション、スタイリング、コンセプトワークまで幅広く手がける。著書「HAPPY... もっと見る
現在の暮らしで大事なのは、効率のよい合理的な動き。たくさんの壁やドアで区切られた小さな部屋の集まりではなく、すっきりとした動線のよい、限りなくオープンでワンルーム的な間取りは、そのニーズにとても合っています。でもだからといって、ひとつながりの広い空間があるだけの家では、やはり落ち着きません。
スペースに無駄がなく効率的に動けることと、生活のオン・オフの切り替えがしやすいことの両方をかなえた空間づくりの方法のひとつとして有効なのは、部屋と部屋の間にちょっとした段差をつけること。床のどこかに、ほんの一段でも段差があると、心理的に別の部屋の感覚が生まれます。壁がなくても区切ることができて、ドアも壁も必要なし。部屋をいくつかに分けるよりも、面積以上に広がりのある使い方ができる方法といえるでしょう。
空間が立体的になることで家全体に奥行きが増すので、広い家よりむしろ狭い家に採用したい構造です。
では、段差のあるスペースにはどのような例があるか、段差をつけることの効果、床材の使い方、段差のバリエーションと大きく3つのテーマに分けて、見てみましょう。
スペースに無駄がなく効率的に動けることと、生活のオン・オフの切り替えがしやすいことの両方をかなえた空間づくりの方法のひとつとして有効なのは、部屋と部屋の間にちょっとした段差をつけること。床のどこかに、ほんの一段でも段差があると、心理的に別の部屋の感覚が生まれます。壁がなくても区切ることができて、ドアも壁も必要なし。部屋をいくつかに分けるよりも、面積以上に広がりのある使い方ができる方法といえるでしょう。
空間が立体的になることで家全体に奥行きが増すので、広い家よりむしろ狭い家に採用したい構造です。
では、段差のあるスペースにはどのような例があるか、段差をつけることの効果、床材の使い方、段差のバリエーションと大きく3つのテーマに分けて、見てみましょう。
段差をつけることの効果
段差があることで、壁やドア、廊下がなくてもスペースを区切ることができ、下はラウンジ~キッチン、上はリビングと明確に分けて生活できます。
段差があることで、壁やドア、廊下がなくてもスペースを区切ることができ、下はラウンジ~キッチン、上はリビングと明確に分けて生活できます。
床材を上下で変えると、別の部屋のイメージがさらにはっきりとしてきます。内装全体はすっきりとシンプルな印象で、広さを感じるスペースであるばかりでなく、スムーズに動き回れる、忙しい毎日に適した家に。
リビングダイニングから3段上がった位置にキッチンとバルコニー。屋外スペースも含めて上下をドラマチックに分けたことで、実際の敷地面積以上の奥行きと広がりを感じさせる空間を実現しています。
1段の段差が深ければ、別のスペースであると感じさせる心理的な効果はより大きくなります。ステージのようなパブリックスペースを上に設置し、プライベートスペースとゾーンを明確に分けています。
床材の使い方にも注目
上段には石材を、下段にオーク材のフローリングを合わせた、和の雰囲気のある潔い空間。クールななかに、どこかほっとする印象が生まれています。
上段には石材を、下段にオーク材のフローリングを合わせた、和の雰囲気のある潔い空間。クールななかに、どこかほっとする印象が生まれています。
もちろん、同じ床材でつながり感を感じさせる内装もあり。チェリーなど赤みの強い床材の場合は陰影の効果で段差が目立つので、石や鉄などと組み合わせて引き締めるインテリアを採用すると素敵です。
靴を脱ぐ日本の室内の暮らしにも、コンクリートや石の床材が浸透してきました。むしろこうした硬質な素材の方が掃除や手入れがしやすい場合もあります。写真では上のキッチンに機能性を重視したコンクリート材、下のリビングにはリラックス感のある木のフローリングを採用。さらに部分的にカーペットを敷いて雰囲気を変えています。
こちらは上段のダイニングスペースが硬質なタイル、下のリビングスペースがふかふかのカーペットになっています。実際に歩いてみれば、別の機能をもった部屋に入ったイメージを足元から体感し、自然と意識できるはず。
もともと縁側のあった日本の家は、段差を上手に使った住まいといえます。畳と板の間、そして土間と素材も変えた、開放的でコミュニケーションの取りやすいスペースです。
段差のバリエーション
スキップフロアの例ですが、中2階の前に階段の踊り場をつくり、その下に収納スペースを。踊り場がすべての空間をつなぎ、全体を立体的に見せています。この中2階はちょっとしたステージのような感覚で、子どもの遊び場にしたり、ヨガなどのトレーニングスペースに使ったり、さまざまな用途が工夫できそうです。
スキップフロアの例ですが、中2階の前に階段の踊り場をつくり、その下に収納スペースを。踊り場がすべての空間をつなぎ、全体を立体的に見せています。この中2階はちょっとしたステージのような感覚で、子どもの遊び場にしたり、ヨガなどのトレーニングスペースに使ったり、さまざまな用途が工夫できそうです。
ここでも段差をつけた部分の奥行きを使って壁をつくり、収納として使っています。部屋をゆるやかに分けるだけでなく、キャビネットが増えるイメージです。
子ども部屋の室内に段差を設け、潜り戸つきの壁をつくって、部屋自体がアスレチック的な魅力のある楽しい部屋に。
段差に沿って、暖炉を囲むようにソファを設置した、コージーなスペース。火のまわりにぐるりとすわって暖をとる、日本人の感覚だと掘り炬燵みたいな例ですね。
ビーチハウスのようなホワイトとネイビーの色づかいが楽しい家。それほど広くない室内ですが、段差で上手にゾーニングすることで狭さを解消。段差を駆使した立体的なスキップフロアのつくり方が参考になります。
段差をつくることで、空間を効率的に区切り、広がりや奥行きも感じさせるドラマチックな部屋になる例を、リビングを中心にいろいろ見てきました。暮らし方にめりはりができ、スペースを最大限に使いながらリラックスできる空間づくりのヒントになればと思います。
段差をつくることで、空間を効率的に区切り、広がりや奥行きも感じさせるドラマチックな部屋になる例を、リビングを中心にいろいろ見てきました。暮らし方にめりはりができ、スペースを最大限に使いながらリラックスできる空間づくりのヒントになればと思います。
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段差と言うキーワードが空間の広がりを保ちながらも、用途としての差別化・区別化と言う役割を見事に果たしています。
これは人間の視覚による錯覚を上手く利用した古来より使われる手法ですね!