森瑤子エッセイに学ぶ、素敵な暮らしとインテリア:黄昏時の泡風呂
作家の母が残したエッセイを紐解きながら、娘である筆者が今の暮らしやインテリアに活かすヒントを探します。今回は泡風呂にまつわる一編と、泡をデザインモチーフにした素敵なバスルームをご紹介。
ブラッキン・ヘザー
2017年3月28日
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
著書「ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり(文藝春秋)
Interior decoration and storage space planning in Tokyo, Japan. English/Japanese bilingual, with interior design and decoration experience in Europe and Japan.
Houzz contributor.
Home Life Style インテリア、収納空間デザイン。
「贅沢な時間を過ごせる、あなたらしい心地よい住まいづくり」をモットーに、一人ひとりの個性や「好き」を引き出しながらのインテリアのコーディネーション、
より快適な暮らしのためのライフスタイルに合わせた収納計画のご提案をいたします。
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まだ私が小さな頃、母や妹たちと一緒のバスタイムで思い出すのは、バスタブいっぱいに盛り上がった、ふわふわの泡で遊んだこと。普通の日本式の浴室でしたが、お風呂は必ず泡風呂でした。母が用意してくれた、香りのよいバブルバスをたっぷり注いで泡を立ててお風呂に入るのが、毎晩の楽しみでした。
母はバスルームにはかなりこだわっていました。家のリフォームも、まず手をつけたのは浴室。母が好きなバスルームはエキゾチックで、今思うとちょっとセクシーな雰囲気の空間でした。アジアンリゾートや、モロッコやスペインの屋敷にありそうな色やタイル使い。キャンドルを焚いたらちょっと別世界にいるような気分になる浴室でした。そして、そこに必ずあったのは、バブルバスの瓶。泡風呂のあるバスタイムは、私たち子供が大きくなっても、母にとって欠かせないものだったのです。
今回は、泡風呂についての母のエッセイをご紹介しながら、泡をイメージしたデザインを取り入れた、贅沢な時間を過ごせるバスルームをご紹介したいと思います。
「一日のうちで、どの時間が好きですか? 私は、朝の八時から二時頃まで原稿を書いて、その後テニスで汗をかき、お風呂にゆっくりつかり、それから冷たいビールを一口飲んだ瞬間「ああ生きているってすごいなあ、幸せだな」と思うのだ。仕事だけでは躰が不燃焼だし、テニスだけしかない一日だと、精神的な充実感に欠けるし、ビールだけ一杯飲んでも苦いだけである。
ところが人間というものは贅沢なもので、そういう充実した日が続くと、今度は幸せでも何でもなくなってしまい、無意識に不安定な要素を求めてしまう。泡風呂につかりながら、これから逢いに行く男のことなど想像してしまう。
普段なら夕食の仕度だとか学校から戻って来る子供たちがいたりして、最も華麗とは程遠い時間帯に、男に逢いに行くための泡風呂に入るなんて、考えただけでもドキドキしてくる。しかも外は黄昏時。ああ贅沢。」
森瑤子「黄昏時の泡風呂」(1991年)、『マダム』(鎌倉書房)の連載「レモンの切り口」より
森瑤子「黄昏時の泡風呂」(1991年)、『マダム』(鎌倉書房)の連載「レモンの切り口」より
ひとりになれる貴重で贅沢な時間
皆さんにとって、バスタイムとはどのような時間でしょうか? ひとりで考えごとをする、一日の出来事をいったん忘れ、気持ちをリセットするなど、体と心をリラックスさせる時間でしょうか。あるいは母のように、期待感にドキドキする時間を楽しむ人もいるのでは。デート前に緊張をほぐしつつ、これから会う人のことを考えて心ときめかせながら楽しむバスタイム。それは確かに、贅沢な時間です。
皆さんにとって、バスタイムとはどのような時間でしょうか? ひとりで考えごとをする、一日の出来事をいったん忘れ、気持ちをリセットするなど、体と心をリラックスさせる時間でしょうか。あるいは母のように、期待感にドキドキする時間を楽しむ人もいるのでは。デート前に緊張をほぐしつつ、これから会う人のことを考えて心ときめかせながら楽しむバスタイム。それは確かに、贅沢な時間です。
泡をモチーフにしたバスルームデザイン
私も泡風呂が大好きです。泡に触れて気持ちが落ち着き、頭の中が空っぽになり、すーっと疲れが抜けていくあの瞬間。母のように特に男性と会う約束はなく、残念ながらドキドキもしませんが、ふわふわした泡に包まれるような感触と優しい香りは、心身をリラックスさせてくれます。
バブルバスでくつろぐ貴重で贅沢な時間は、たとえばこんな素敵な空間で過ごしたいもの。キラキラと輝く白とシルバーのモザイクタイルの壁が、お風呂から静かに湧き上がる泡のようです。泡をモチーフにしたデザインのバスルームが、ほかにもたくさん見つかりました。
私も泡風呂が大好きです。泡に触れて気持ちが落ち着き、頭の中が空っぽになり、すーっと疲れが抜けていくあの瞬間。母のように特に男性と会う約束はなく、残念ながらドキドキもしませんが、ふわふわした泡に包まれるような感触と優しい香りは、心身をリラックスさせてくれます。
バブルバスでくつろぐ貴重で贅沢な時間は、たとえばこんな素敵な空間で過ごしたいもの。キラキラと輝く白とシルバーのモザイクタイルの壁が、お風呂から静かに湧き上がる泡のようです。泡をモチーフにしたデザインのバスルームが、ほかにもたくさん見つかりました。
こちらは、ソフトグリーンの丸いタイル。ガラスのドアノブやキャビネットの取っ手も、まるで優しいシャボンの泡のようです。
バスルームのアクセントカラーとして、ブルーはポピュラーな色。淡い水色からネイビーブルーのような濃い色まで、白と合わせるとさらに清潔感が際立ちます。このバスルームでは、帯状に貼られたブルーの丸いタイルが涼しげなアクセントに。タイルの大きさもトーンもさまざまで、まるで弾ける音が聞こえてきそうな元気な泡のイメージです。丸い窓も泡を思わせます。
エッセイの続きを紹介しましょう。
エッセイの続きを紹介しましょう。
「心ときめくのは、少しずつ自分が女に変身していく過程を、できるだけ引き伸ばしてゆっくりゆっくりと味わう時。となると、男に逢うということ自体、もうどうでも良くなってしまう。泡風呂の中で膨らませたた空想の夜が、あまりにも華麗なので、現実が嫌でも色あせてしまうからだ。
そんな時、信じられますか? 私は急に男との約束が嫌になって、発作的に女友達に電話をしてデートの相手を変えてしまったりする。すっぽかされる男はとんだ迷惑。全て泡風呂がなせる技なのだ。黄昏時の泡風呂は、だから危険でもある。」
浴室のフォーカルポイントも泡をテーマに
湯船に浸かってくつろぎながら空想に耽るとき、自然と目線が行く天井に近い場所は、バスルームのフォーカルポイントに適した場所です。
換気用の窓も、個性のない曇りガラスよりずっと素敵なデザインにできます。ステンドグラスの丸いモチーフは、やはりバスルームの泡風呂をイメージしたものでしょう。質感や色の異なる丸型のガラスが、シンプルでモダンな浴室のシックなアクセントになっています。
湯船に浸かってくつろぎながら空想に耽るとき、自然と目線が行く天井に近い場所は、バスルームのフォーカルポイントに適した場所です。
換気用の窓も、個性のない曇りガラスよりずっと素敵なデザインにできます。ステンドグラスの丸いモチーフは、やはりバスルームの泡風呂をイメージしたものでしょう。質感や色の異なる丸型のガラスが、シンプルでモダンな浴室のシックなアクセントになっています。
高い位置のフォーカルポイントなら、照明器具のデザインに凝るのもいいでしょう。上と左はどちらも、泡を思わせるデザインのペンダント照明。まるでバスタブから泡が立ちのぼって空中に浮かんでいるかのようです。
エッセイはこんなふうに結ばれています。
エッセイはこんなふうに結ばれています。
「大体結婚している女が、男に逢いにいくということが、あまりステキなことではない。私の場合は仕事の延長だったり、単なるおつきあいだったりすることが多いのだが、そういう相手ならなおのこと、泡風呂の後では気が進まなくなる。
やっぱり泡の立つお風呂に入った後に逢うのなら、リチャード・ギアとかトム・ベレンジャーみたいな男でないとねえ……
そんな男は滅多にいないから、私の夜のデートも泡と消えてしまうのです。」
そんな男は滅多にいないから、私の夜のデートも泡と消えてしまうのです。」
最後はちょっと肩透かし?の母らしいユーモアで笑わせつつ、泡風呂を日常の中の贅沢なひとときとして楽しんでいた姿が思い浮かぶ、ごく短いエッセイ。今回は全編をご紹介しました。
バスルームに取り入れるとしたらどんな「泡」のモチーフがいいかな、などと考えながら、今夜は久しぶりに泡いっぱいのお風呂に入ってみようかと思います。
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