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森の中にありながら、できるだけ木を切らずに建てたモダンハウス
ニュージランドの海岸沿いに立つ、自然の森を縫うように設計された家をご紹介します。
Emily Hutchinson
2022年10月28日
ニュージーランド、オークランドから車で40分の町ピハ。ニュージーランド原産の木、ポフツカワの森のなかに、ゲイリー・バトラーさんとシェリー・バトラーさん夫妻が休日を過ごす家があります。
セミリタイアした夫妻はオークランドで暮らしていますが、街を離れた海岸沿いの静かな場所にもう1軒家を持ち、年に数ヵ月、とくに夏を過ごしたいと考えていました。そこで、それまでたびたび夏に訪れていた別の家から遠くないこの森の一角に、新しい家を建てることに。豊かな自然に囲まれているだけに、まわりの自然を尊重した住まいにしたいと考え、相談したのが、ハーブスト・アーキテクツの建築家、ランス・ハーブストさんでした。
セミリタイアした夫妻はオークランドで暮らしていますが、街を離れた海岸沿いの静かな場所にもう1軒家を持ち、年に数ヵ月、とくに夏を過ごしたいと考えていました。そこで、それまでたびたび夏に訪れていた別の家から遠くないこの森の一角に、新しい家を建てることに。豊かな自然に囲まれているだけに、まわりの自然を尊重した住まいにしたいと考え、相談したのが、ハーブスト・アーキテクツの建築家、ランス・ハーブストさんでした。
どんなHouzz?
住まい手:セミリタイアしたゲイリー・バトラーさんとシェリー・バトラーさん夫妻
所在地:ニュージーランド北島、ピハ
規模:160平方メートル。ベッドルームx3、バスルームx2
設計:ランス・ハーブスト
ゲイリーさんとシェリーさんが土地の図面を持ってやってきたとき、ハーブストさんはすぐに、家を建てるのはかなり難しい敷地だと気づいたそうです。敷地はひたすら続く森の一部で、境界の一部は海岸沿いの道路に接していました。成熟したポフツカワの木立が敷地の9割を占めていて、木を切らずに家を建てるには工夫が必要でした。
住まい手:セミリタイアしたゲイリー・バトラーさんとシェリー・バトラーさん夫妻
所在地:ニュージーランド北島、ピハ
規模:160平方メートル。ベッドルームx3、バスルームx2
設計:ランス・ハーブスト
ゲイリーさんとシェリーさんが土地の図面を持ってやってきたとき、ハーブストさんはすぐに、家を建てるのはかなり難しい敷地だと気づいたそうです。敷地はひたすら続く森の一部で、境界の一部は海岸沿いの道路に接していました。成熟したポフツカワの木立が敷地の9割を占めていて、木を切らずに家を建てるには工夫が必要でした。
この地域の海岸に育つ常緑樹、ポフツカワの木立は厳しく保護されている植物であるため、家の個性として活かしたそうです。
「この家にとっての象徴的な意味においても、建築的な意味においても、この木の重要性を認め、それに敬意を示した建物にする必要がありました。地域の人たちは木の伐採には強く反対していますし、木の根や枝の広がりに手を加えることも許されていません。かなり難度の高い設計となりました」とハーブストさんは振り返ります。
Houzzで建築家を探す
「この家にとっての象徴的な意味においても、建築的な意味においても、この木の重要性を認め、それに敬意を示した建物にする必要がありました。地域の人たちは木の伐採には強く反対していますし、木の根や枝の広がりに手を加えることも許されていません。かなり難度の高い設計となりました」とハーブストさんは振り返ります。
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さらに大きな難題もありました。「軽やかな外観と防水性を実現しつつ、オークランドの厳しい耐震基準を満たす構造にする必要があったんです」とハーブストさん。
オークランド周辺はオーストラリアプレートの上に位置し、活動プレートの北西部の断層が北島の中心を通っています。つまり、地震の危険にさらされている地域のため、建物には強い衝撃に負けない耐震性が求められるのです。したがって、美しいデザイン性を保ちながらも、耐震関連の規制を確実に遵守することが重要でした。これをかなえるのに大きな役割を果たしたのが、屋根の高さの見えない位置に鉄骨を入れて躯体を補強する手法でした。
オークランド周辺はオーストラリアプレートの上に位置し、活動プレートの北西部の断層が北島の中心を通っています。つまり、地震の危険にさらされている地域のため、建物には強い衝撃に負けない耐震性が求められるのです。したがって、美しいデザイン性を保ちながらも、耐震関連の規制を確実に遵守することが重要でした。これをかなえるのに大きな役割を果たしたのが、屋根の高さの見えない位置に鉄骨を入れて躯体を補強する手法でした。
「屋根を支える主要構造は木材で、木の幹と枝をイメージしています」とハーブストさんは話します。小屋組はまわりの木々を模しており、室内に光が降りそそぐさまは木立のなかの木洩れ日のようです。「細部まで精密に、幾何学的に配置しています。自然の秩序を取り入れて建物を形づくっているのです」(ハーブストさん)。
夜はアップライトで下からポフツカワの木を照らし、日が暮れたあとも豊かな自然を目で楽しめます。
大きな窓が室内空間と周囲の環境をつないでいます。窓は床から天井、屋根面まで続くため、「家をおおうように広がる木々の存在を存分に感じられます」とハーブストさん。
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木立にある敷地という制限のなかでも家を建てることはできたのですが、スペースを空けるために、多少は木を伐採しなければならなかったそうです。ただ、その木の歴史は新しい家の構造にちゃんと生かされているのです。このお宅には2つの棟があり、中心に設けたパブリックスペースでつながっています。両方の棟には、建築プロセスのなかで切り倒すことになった木の幹を素材として使っています。
1つ目の棟は2階が主寝室とバスルーム、1階がガレージとランドリースペースになっています。2つ目の棟は、2階に2つ目のリビングエリア、1階にゲスト用の寝室とバスルームがあります。
1つ目の棟は2階が主寝室とバスルーム、1階がガレージとランドリースペースになっています。2つ目の棟は、2階に2つ目のリビングエリア、1階にゲスト用の寝室とバスルームがあります。
どちらの棟も、外壁にポフツカワの樹皮を思わせるこげ茶色をした粗挽き仕上げの小割板を不規則に貼っています。一方、室内は壁、天井、キャビネット類を木の香りが立つようなポプラ材の合板を用いています。
1階のゲスト用寝室には、森の地面の高さに近い低い位置にコーナー窓があります。窓は2方向から開けられ、戸袋に隠れるよう設計。閉めたときには、ダークカラーの外壁とシームレスに一体化します。
1階のゲスト用寝室には、森の地面の高さに近い低い位置にコーナー窓があります。窓は2方向から開けられ、戸袋に隠れるよう設計。閉めたときには、ダークカラーの外壁とシームレスに一体化します。
室内には造作家具がたくさん設えてあります。
1つ目の棟の1階
主寝室とバスルームがひと続きになり、家全体の内装と同じく明るい色の木材を基調としています。
主寝室とバスルームがひと続きになり、家全体の内装と同じく明るい色の木材を基調としています。
2階には渡り廊下風の通路があり、2つの棟は上階でもつながっています。造りつけのシートを設けたセンスのよいエリアからは、オーナー夫妻とゲストがまわりの景観と広々した階下のパブリックスペースを見わたせます。
1階平面図
パブリックスペースを間にはさんで2つの棟があります。
パブリックスペースを間にはさんで2つの棟があります。
2階平面図
寝室、通路、もうひとつのリビングがあります。
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