木と漆喰の心地よさに守られて。匠の技が光る小さな家
日本の伝統的な家づくりの技術でつくられた、都内の一人暮らしの家。自然素材が使われた、ほっとする空間には、風が気持ちよく通り抜けていました。
Mamiko Nakano
2019年3月5日
editor-writer-translator
60歳になったタイミングで、定年後の人生を過ごすための一人暮らしの家をつくることになった施主。昔ながらの技が生かされた、木の家に住みたいと考えていたところ、伝統構法と自然素材を生かした松井郁夫さん設計の「木組みの家」に出会い、すぐに家づくりを依頼した。
どんなHouzz?
住まい手:60代の男性一人
所在地:東京都杉並区
敷地面積: 81.82平方メートル(24.75坪)
建築面積:40.50平方メートル(12.25坪)
延床面積:63.22平方メートル(
(19.12坪)
構造・規模:木造2階建(準耐火建築物)
設計・監理:松井郁夫建築設計事務所
施工:キューブワン・ハウジング
竣工:2012年12月
住まい手:60代の男性一人
所在地:東京都杉並区
敷地面積: 81.82平方メートル(24.75坪)
建築面積:40.50平方メートル(12.25坪)
延床面積:63.22平方メートル(
(19.12坪)
構造・規模:木造2階建(準耐火建築物)
設計・監理:松井郁夫建築設計事務所
施工:キューブワン・ハウジング
竣工:2012年12月
この家は、東京都杉並区の住宅密集地にある。延床面積約19坪の小ぶりな家だが、狭苦しい圧迫感とは無縁だ。
台所の横にある居間スペースは吹き抜けになっており、開放感がある。天井まで届く大きな窓からは、光と中庭の緑が存分に楽しめる。
この窓は西に向いている。松井さんは、最初は南に窓をとることを考えたが、隣接する建物があるため、3Dで陽の射し方を検討した。結果、中庭を向く西向きが一番よいことがわかり、この位置になったという。
台所の横にある居間スペースは吹き抜けになっており、開放感がある。天井まで届く大きな窓からは、光と中庭の緑が存分に楽しめる。
この窓は西に向いている。松井さんは、最初は南に窓をとることを考えたが、隣接する建物があるため、3Dで陽の射し方を検討した。結果、中庭を向く西向きが一番よいことがわかり、この位置になったという。
居間の床材は無垢のヒノキ。地面に近い位置には「地窓」が設けられている。この窓があることによって、夏の暑い日には風が家の中を通り、屋根の上にある「越屋根」の窓から抜けていくため、涼しく過ごせる。
テレビの下には、エアコンが1台設置してある。床下の位置に設置することで、空気だけではなく、基礎や壁部分の温度を調整してくれる。
「エアコンで空気を暖めようとすることが多いけれど、体感温度を一定に保つには、壁とか床を暖めたほうがいい。壁の温度と空気の温度を足して2で割ったのが、体感温度です」(松井さん)
テレビの下には、エアコンが1台設置してある。床下の位置に設置することで、空気だけではなく、基礎や壁部分の温度を調整してくれる。
「エアコンで空気を暖めようとすることが多いけれど、体感温度を一定に保つには、壁とか床を暖めたほうがいい。壁の温度と空気の温度を足して2で割ったのが、体感温度です」(松井さん)
居間から風呂場へと向かう広縁からは、モミジの木などが植えられている和風の中庭の景色が見える。ここの廊下部分にも、床下に設置したエアコンの吹き出し口がある。
風呂場は施主が家づくりに際し唯一、要望を出した場所だ。「浴槽につかりながら、ライトアップした中庭を眺めてみたいと伝えました」(施主)
要望通り、庭の緑を2方向の窓から眺められるようになっている。
お風呂の窓の事例をみる
要望通り、庭の緑を2方向の窓から眺められるようになっている。
お風呂の窓の事例をみる
壁や天井には水に強いヒノキを使用。水切れがよいように、天井にあえて少し隙間を作り、水滴がつたって壁が汚れないよう配慮もしてある。
建ってからすでに6年になるが、元々の設計と施主の日々の手入れのおかげで、汚れている感じはない。床面にはゼオライトという、匂いなどを吸着してくれる伊豆石を使用。機能性の高い贅沢な素材使いは、温泉旅館のお風呂場のような雰囲気を醸し出している。
建ってからすでに6年になるが、元々の設計と施主の日々の手入れのおかげで、汚れている感じはない。床面にはゼオライトという、匂いなどを吸着してくれる伊豆石を使用。機能性の高い贅沢な素材使いは、温泉旅館のお風呂場のような雰囲気を醸し出している。
洗面所の壁は杉を使用している。トイレ前の階段下スペースを利用し、洗濯機を収納している。
2階へと続く階段エリア。小ぶりな一人暮らしの家だから、居室を広く取るために通路や階段は狭くしがちだが、あえてたっぷりと階段スペースをとった設計だ。このほうが豊かだから、と松井さんはいう。
住宅密集地に木の家を建てるためには、火災の場合を考慮し、燃えにくいつくりをしなければならない。そのため、この家は通常よりも3センチほど直径が大きい直径15センチの柱を採用していて、準耐火建築物となっている。
とはいえ、太いはずの柱の存在感を家の中ではそれほど感じない。松井さんはスペースが広く感じられるよう、柱を壁の中に隠してしまう設計にし、梁だけ見せるようにしている。
住宅密集地に木の家を建てるためには、火災の場合を考慮し、燃えにくいつくりをしなければならない。そのため、この家は通常よりも3センチほど直径が大きい直径15センチの柱を採用していて、準耐火建築物となっている。
とはいえ、太いはずの柱の存在感を家の中ではそれほど感じない。松井さんはスペースが広く感じられるよう、柱を壁の中に隠してしまう設計にし、梁だけ見せるようにしている。
「木組の家」は名前通り、木と木を組んで作っている。木は、松井さんが山から直接買い付け、天然乾燥させたものを用いているのだそうだ。
ベランダ部分は芝生になっている。施主は夏場には週1回ペースで芝刈りをするのだという。
ベランダ部分は芝生になっている。施主は夏場には週1回ペースで芝刈りをするのだという。
こちらは、2階の廊下の先にある寝室だ。天井部分に、1階の「地窓」と対になる「越屋根」の窓がある。「越屋根の窓を閉めていておけばここに熱だまりができて、下にいる人はその放射熱で暖かくなる。室温はあがらないけれど、体感温度だけがあがります」と松井さん。
右手に見えるクローゼットの下は床から浮いている作りになっていて、スペースを広く見せる効果がある。
右手に見えるクローゼットの下は床から浮いている作りになっていて、スペースを広く見せる効果がある。
松井郁夫さん(左)と施主。
「木組の家は空気が綺麗なんです」と施主は話す。「家が建ってすぐ、空気清浄機が必要だ、と思って買ったのですが、全然集塵しなかった。不思議に思って松井先生に聞いたら、木は湿気を持っていてホコリを吸着してくれるため、空気中に舞わないのだそうです」
木と漆喰の素材によって、湿度もいつも適度に保たれているとのこと。「40〜60%が快適湿度らしいです。測ってみると、うちはずっとそれくらい」。空気、湿度、温度、どれもが程よく保たれるので「家に守られている」と感じているそう。
「木組の家は空気が綺麗なんです」と施主は話す。「家が建ってすぐ、空気清浄機が必要だ、と思って買ったのですが、全然集塵しなかった。不思議に思って松井先生に聞いたら、木は湿気を持っていてホコリを吸着してくれるため、空気中に舞わないのだそうです」
木と漆喰の素材によって、湿度もいつも適度に保たれているとのこと。「40〜60%が快適湿度らしいです。測ってみると、うちはずっとそれくらい」。空気、湿度、温度、どれもが程よく保たれるので「家に守られている」と感じているそう。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
”木組み”というのは、柔構造なのでしょうか?