憧れの意匠と手仕事を活かした、インテリア好きな若きオーナーの理想の家
建築家ルイス・バラガンの家から発想を得た色づかいやディテール、左官職人の技を活かし、建て替えで夢を叶えた美しい住まい。
Rieko Ozawa
2017年9月18日
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
Houzz contributors, Editor & Writer. I have been interested in the floor plan since I was a child. Then, I became an editor of the INTERIOR & HOUSING magazine. We bought a maisonette dwelling unit built in early 1980s and have been renovating little by little with my partner.
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
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社会に出た頃から「自分の好みの家を建てたい!」という夢を持ち始めたオーナー。夢に向かって貯蓄にいそしみ、夢を実現させた。家づくりのパートナーに選んだのは、金沢市内の〈安田工務店〉。「実はその前に数社に相談したのですが、イメージが伝わらなかったり、伝わっても高くなるからやめたほうがいいと言われたりで、何度もくじけそうになりました」とオーナーは言う。「暮らしのスタイルを住み手と一緒につくること」をモットーに、素材、性能、オリジナリティ、そしてチャレンジ精神にこだわって妥協しない家をつくる、気鋭のハウスビルダーと巡り合えたことで、一気に住まいづくりの道は開けたという。
集めていた雑誌のビジュアルやイメージスケッチをもとに、半年をかけてプランニング。「今だから言えるのですが、正直、打ち合わせ中はどんな家になるのかイメージできなかった(笑)。でも、建ち始めてからは楽しくてしかたなかったです。優柔不断で要所要所悩んでしまったのですが、嫌がらずにつきあってくれたおかげで、納得のいく家ができました」とオーナーは振り返る。
集めていた雑誌のビジュアルやイメージスケッチをもとに、半年をかけてプランニング。「今だから言えるのですが、正直、打ち合わせ中はどんな家になるのかイメージできなかった(笑)。でも、建ち始めてからは楽しくてしかたなかったです。優柔不断で要所要所悩んでしまったのですが、嫌がらずにつきあってくれたおかげで、納得のいく家ができました」とオーナーは振り返る。
「もとの家が北向きで暗く寒かったので、いちばんの課題は明るさでした」。立地の条件から、中央に中庭を設けたコの字型のプランを採用。中庭を囲むようにLDKと居室を配置することで、効率よく各部屋に光と風を取り込んでいる。「みんなで大きなテーブルを囲みたい」という理想を実現させた、ダイニングテーブルを兼ねた270×180cmのカウンターキッチンが圧巻だ。
カウンターテーブルの雰囲気に合わせて選んだ椅子は、オランダのスクールチェア。金沢のヴィンテージ家具店〈フォノ〉で買い揃えた。
どんなHouzz?
概要:新築(建て替え)
住まい手:本人、母
敷地面積:181.19平方メートル
延床面積:130.83平方メートル
構造:木造2階建て
間取り:2LDK
竣工:2014年5月
設計施工:安田工務店
どんなHouzz?
概要:新築(建て替え)
住まい手:本人、母
敷地面積:181.19平方メートル
延床面積:130.83平方メートル
構造:木造2階建て
間取り:2LDK
竣工:2014年5月
設計施工:安田工務店
一見アナログにも見えるアメリカンチェリー材のキッチンには、〈ミーレ〉の食洗機や、使わないときはカウンターに収納できるダウンドラフト(下引き)タイプのレンジフードも内蔵されている。
施主が塗装した黒の木製リビングドアや、オイル仕上げの木の天板の素材の温かみ、照明やキッチン収納にグリーンや水色などの色味を取り入れ、無機質すぎないインダストリアルテイストに仕上げた。
施主が塗装した黒の木製リビングドアや、オイル仕上げの木の天板の素材の温かみ、照明やキッチン収納にグリーンや水色などの色味を取り入れ、無機質すぎないインダストリアルテイストに仕上げた。
テーブルのフレームやバックカウンターは、鉄職人による完全オリジナル。インターフォンのパネルや太陽光発電のスイッチなど、インテリアになじまない設備は、黒板塗料を塗ったボックスで目隠しした。
メキシコ人建築家、ルイス・バラガンの自邸にも憧れていたオーナー。階段には、バラガン邸の意匠を取り入れた。「ソファに座って階段の裏側を見るのが好きなんです。なぜか飽きないんですよね」。
床材は、チェスナット(栗)材を選んだ。一度オイルで仕上げたが色味が気になり、もう一度塗装。それでもなかなか納得した仕上げにならず、最後にはオーナー自ら一度表面を全部サンディングし、図らずも、うづくり仕上げ(木材の加工方法の一種で、木の表面を丁寧にこすり、年輪を浮き上がらせたもの)になったものを、再塗装して仕上げた。まさに妥協のない、味のある唯一無二の仕上げとなった。
床材は、チェスナット(栗)材を選んだ。一度オイルで仕上げたが色味が気になり、もう一度塗装。それでもなかなか納得した仕上げにならず、最後にはオーナー自ら一度表面を全部サンディングし、図らずも、うづくり仕上げ(木材の加工方法の一種で、木の表面を丁寧にこすり、年輪を浮き上がらせたもの)になったものを、再塗装して仕上げた。まさに妥協のない、味のある唯一無二の仕上げとなった。
階段部の吹き抜けを活かし、1、2階を通じた大容量の本棚に。階段と一体となり、美しいシーンをつくり出している。「本をたくさん置きたくて、壁一面の本棚をつくりたい!と思ったのですが、いざつくってみたら、そんなに本を持っていなかった(笑)。でもこれからは存分に増やせます」。
本棚の下の壁は土壁仕上げに。当初オーナーは無機質なモルタル仕上げを希望していたが、左官職人による「小牧黄土」の土壁サンプルを見て気に入り、取り入れることに。調湿効果とやわらかな空気感が、とても気に入っているという。
本棚の下の壁は土壁仕上げに。当初オーナーは無機質なモルタル仕上げを希望していたが、左官職人による「小牧黄土」の土壁サンプルを見て気に入り、取り入れることに。調湿効果とやわらかな空気感が、とても気に入っているという。
「費用の節約も兼ねて、木部や建具などフローリング以外もできる限り、DIYで仕上げました」とオーナーは語る。
通常、施主がDIYで施工に参加する場合、引き渡し後に行うのが一般的だが、あえて工期に組み込んだという。「引き渡してしまったら、きっとやらないと思ったから(笑)」と〈安田工務店〉の安田竜夫さん。対するオーナーは「お見通しですね。でもそうしてもらってよかったです。そうでなければまだそのままだったかも。終盤は夜な夜な通って、本当に大変でした」と振り返る。
通常、施主がDIYで施工に参加する場合、引き渡し後に行うのが一般的だが、あえて工期に組み込んだという。「引き渡してしまったら、きっとやらないと思ったから(笑)」と〈安田工務店〉の安田竜夫さん。対するオーナーは「お見通しですね。でもそうしてもらってよかったです。そうでなければまだそのままだったかも。終盤は夜な夜な通って、本当に大変でした」と振り返る。
洗面、トイレ、浴室など水回りの扉は、ルイス・バラガン邸を意識して鮮やかな色づかいに。
リビングや廊下の仕上げには石膏を採用。漆喰などの左官仕上げの下地に使われる石膏の無造作な仕上げからインスパイアされ、左官職人と試行錯誤しながら仕上げた。他の左官仕上げより値段が安価だったのも決め手になった。
リビングや廊下の仕上げには石膏を採用。漆喰などの左官仕上げの下地に使われる石膏の無造作な仕上げからインスパイアされ、左官職人と試行錯誤しながら仕上げた。他の左官仕上げより値段が安価だったのも決め手になった。
2階は仕切らず、約25畳のロフトスタイルに。「楽器を置いたり、趣味のものを集めたりして、少しずつ好みの空間につくり上げていこうと思っています」。現在は、週末に遊びにくる甥(小学生)と姪(2歳)の格好の遊び場になっている。
「部屋っぽくしたかった」という玄関は、土間コンクリートで仕上げ、三和土の代わりにジュート製のラグを敷いた。手前が玄関ドア、左手がLDK、奥は母の居室に通じる廊下。
玄関とLDKの壁には室内窓を設け、暗くなりがちな玄関に光を取り込みつつ、帰宅した家族の気配が感じられるつくりに。
光を取り込むために設けた中庭は季節の移ろいを楽しめる空間。夏は縁側に座って夕涼み、冬は枯山水のような風情が楽しめる。「縁側に座って上を見ると、金沢21世紀美術館のタレルの部屋《ブルー・プラネット・スカイ》のようで、気に入っています」。
床には、万里の長城にも使われていたという煉瓦を敷きつめた。
床には、万里の長城にも使われていたという煉瓦を敷きつめた。
外壁は「不自然な鏝(こて)ムラは要らない、小さな小石が見える仕上げにして欲しい」などの希望を伝え、この家のためにつくられた左官のサンプルの中から仕上げを選んだ。金沢ではこの家と同じ外壁を希望する建て主も増えているという。「他の仕上げよりコストがかかり、施工時の季節による仕上げの影響も受けやすいけれど、自然な風合いの左官壁が主流になれば街の風景も変わり、少しでも景色も美しく変わってゆくのでは」と安田さんは話す。
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めちゃくちゃ羨ましい関係ですね。良い住宅建築だと思います。
これなら施主さん満足ですね!