味わいのある美しいデザインをもっと楽しもう! アンティークドアの種類と選び方
ガラス窓付きや郵便受け付きドア、ステンドグラスやアイアンワークの美しいドア。アンティークドアのデザインのタイプと、取り入れる際のヒントをプロが解説します。
西谷典子|Noriko Nishiya
2017年8月15日
味わいのあるアンティークやヴィンテージのドアを取り入れた家づくり、部屋づくりが人気を集めています。アンティーク買い付けの現場で感じるのは、取り扱う輸入業者も、専門知識のある店舗も、このところ本当に増えてきたということです。
アンティークドアを選ぶ際のヒントとなればと思い、今回は、現在よく出回っているヨーロッパのアンティークドアに見られるデザインの特徴とその歴史背景、日本の住宅に取り入れる際の注意点などをご紹介します。
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分厚く頑丈で重いアンティークドア
中世ゴシック期のヨーロッパでつくられていたドアは、泥棒や暴動などから家を守るため、とても分厚く頑丈なものでした。玄関ドアの素材はオークやピッチ・パイン(北米の寒い環境でゆっくり育ち、木目がぎっしりつまった重厚なパイン材)がメインです。20世紀初頭からは、チークなど一枚板の無垢材が多く見られ、いずれも大変重く質のよい素材です。
中世ゴシック期のヨーロッパでつくられていたドアは、泥棒や暴動などから家を守るため、とても分厚く頑丈なものでした。玄関ドアの素材はオークやピッチ・パイン(北米の寒い環境でゆっくり育ち、木目がぎっしりつまった重厚なパイン材)がメインです。20世紀初頭からは、チークなど一枚板の無垢材が多く見られ、いずれも大変重く質のよい素材です。
良質で希少な素材
アンティークのドアは、良質な材質が使われているうえ、経年して木が乾ききっているので、湿気などで反ったり曲がったりすることが少ないのもよい点です。また、伐採に規制があるチーク材などのドアは、新しく作ることが困難なため、希少で価値の高いものです。現在のアンティークドアの人気にはこういった背景もあります。ヴィンテージのドアも含め、フランスやイギリスのものは特に人気があります。
アンティークのドアは、良質な材質が使われているうえ、経年して木が乾ききっているので、湿気などで反ったり曲がったりすることが少ないのもよい点です。また、伐採に規制があるチーク材などのドアは、新しく作ることが困難なため、希少で価値の高いものです。現在のアンティークドアの人気にはこういった背景もあります。ヴィンテージのドアも含め、フランスやイギリスのものは特に人気があります。
正統派、シックスパネルのドア
人気のデザインのなかでも特に頑丈で、なおかつスマートな雰囲気のドアといえば、英国ジョージアンスタイルの6パネルのドア。黒の「シックスパネル」は、英国首相官邸のドアでよく知られるデザイン。きりりとした正統派の印象です。
人気のデザインのなかでも特に頑丈で、なおかつスマートな雰囲気のドアといえば、英国ジョージアンスタイルの6パネルのドア。黒の「シックスパネル」は、英国首相官邸のドアでよく知られるデザイン。きりりとした正統派の印象です。
光を取り入れる「ファンライト」
日照時間が少ないヨーロッパで、玄関に少しでも多くの光を取り入れるために開発された採光窓「トランザム」も定番のデザインです。なかでも、扇を開いたような半月形の窓「ファンライト」は、ジョージアン時代のタウンハウスで大流行。このスタイルのドアにはトラディショナルなフェンス、モールディングやタイル、外灯などで黒と白のコントラストを強調すると、スマートさがアップします。
日照時間が少ないヨーロッパで、玄関に少しでも多くの光を取り入れるために開発された採光窓「トランザム」も定番のデザインです。なかでも、扇を開いたような半月形の窓「ファンライト」は、ジョージアン時代のタウンハウスで大流行。このスタイルのドアにはトラディショナルなフェンス、モールディングやタイル、外灯などで黒と白のコントラストを強調すると、スマートさがアップします。
トラディショナルな大きいドアやダブルのドアに似合うのは、左右対称のスタイリングです。ドアの両脇に鉢植えのグリーンをシンメトリックに置いて、スペースのバランスをとるといいでしょう。
郵便受け、番号、ドアノッカー付きのドア
19世紀後半から流行した4パネルも人気のスタイルです。すべて木を使ったドアだけでなく、ガラスをはめ込んだタイプも登場。郵便が各家庭に配達されるようになると、ドアにはメールスロット(郵便物の差し入れ口)や家の番号、ドアノッカーなどがつくようになりました。現代の玄関に近い形になったのがこの時代です。
19世紀後半から流行した4パネルも人気のスタイルです。すべて木を使ったドアだけでなく、ガラスをはめ込んだタイプも登場。郵便が各家庭に配達されるようになると、ドアにはメールスロット(郵便物の差し入れ口)や家の番号、ドアノッカーなどがつくようになりました。現代の玄関に近い形になったのがこの時代です。
ロートアイアンの繊細なデザインドア
フランス製のアールヌーボー時代のドアは、とても優雅なデザイン。当時流行したジャポニズムの繊細さを、ロートアイアン(鍛鉄)の技術でここまで表現できたのは、この時代の職人ならではの技。現代ではつくれない、美術品に近いクオリティです。
ヨーロッパのドアは少々丈が高めですが、住まいのサイズに合わせて下の部分をカットし、高さを調整することも可能です。
フランス製のアールヌーボー時代のドアは、とても優雅なデザイン。当時流行したジャポニズムの繊細さを、ロートアイアン(鍛鉄)の技術でここまで表現できたのは、この時代の職人ならではの技。現代ではつくれない、美術品に近いクオリティです。
ヨーロッパのドアは少々丈が高めですが、住まいのサイズに合わせて下の部分をカットし、高さを調整することも可能です。
大きな「引っ張るノブ」付きのドア
バロック時代のフランスで流行した、アイアンワークがはめ込まれたドア。フランスやベルギーに多いデザインです。写真のドアもそうですが、重量のあるドアには、ドアノブやレバーを回すのではなく、大きなノブを引っ張ってドアを開閉するタイプが多く見られます。このノブ自体は回らず、鍵はサイドや中央など別の場所についています。
バロック時代のフランスで流行した、アイアンワークがはめ込まれたドア。フランスやベルギーに多いデザインです。写真のドアもそうですが、重量のあるドアには、ドアノブやレバーを回すのではなく、大きなノブを引っ張ってドアを開閉するタイプが多く見られます。このノブ自体は回らず、鍵はサイドや中央など別の場所についています。
おしゃれに使えるオフィスのドア
オフィスや銀行で使われていたヴィンテージのドアは、頑丈でシンプルなデザインが多く、モダンなインテリアに合わせやすいのでおすすめです。ドアにつけられたオフィスのサインや番号がいっそうヴィンテージの味わいを醸し出します。サインや番号などのレタリングはもちろん、シンプルなドアに自分で自由につけることもできます。
オフィスや銀行で使われていたヴィンテージのドアは、頑丈でシンプルなデザインが多く、モダンなインテリアに合わせやすいのでおすすめです。ドアにつけられたオフィスのサインや番号がいっそうヴィンテージの味わいを醸し出します。サインや番号などのレタリングはもちろん、シンプルなドアに自分で自由につけることもできます。
オフィス仕様のしっかりしたドアは、一般の家庭用のドアに比べて数が少ないのも事実。思い通りのデザインがなければ、すべて木のパネルドアの上部を切り取ってすりガラスなどをはめ込み、オフィス風のスタイルに変えることも可能です。
ステンドグラス付きのドア
アンティークのドアらしいデザインといえば、ステンドグラスのドアもはずせません。ヴィクトリア時代に流行した、イギリス特有のスタイルです。産業革命で裕福になった英国北部の大きな家には、いまだに写真のようなドアが使われています。実際はこのように複数がセットになった大きいものですが、日本にはステンドグラスの部分とドアの部分を分けて輸入されていることが多いです。
アンティークのドアらしいデザインといえば、ステンドグラスのドアもはずせません。ヴィクトリア時代に流行した、イギリス特有のスタイルです。産業革命で裕福になった英国北部の大きな家には、いまだに写真のようなドアが使われています。実際はこのように複数がセットになった大きいものですが、日本にはステンドグラスの部分とドアの部分を分けて輸入されていることが多いです。
親しみやすいパイン材のドア
ヴィクトリア時代、人口増大に伴い各地に新興住宅街がつくられましたが、そこに住む一般家庭の室内のドアは、ペイントを施したパイン材が主流でした。現在、比較的多く出回っているこのタイプのアンティークドアは、もとのペイントを薬剤で丁寧に剥離し、パインの木肌を出したもの。新しいパイン材ではこのやわらかい風合いがなかなか出ません。用途は玄関ドア以外にも、キッチンやバスルームなどいろいろ。ナチュラルテイストの可愛らしいインテリアと相性がいいようです。
ヴィクトリア時代、人口増大に伴い各地に新興住宅街がつくられましたが、そこに住む一般家庭の室内のドアは、ペイントを施したパイン材が主流でした。現在、比較的多く出回っているこのタイプのアンティークドアは、もとのペイントを薬剤で丁寧に剥離し、パインの木肌を出したもの。新しいパイン材ではこのやわらかい風合いがなかなか出ません。用途は玄関ドア以外にも、キッチンやバスルームなどいろいろ。ナチュラルテイストの可愛らしいインテリアと相性がいいようです。
ペイントを剥離したパイン材のドアは、日本の気候では一部、反りが出てしまうケースもあるようですが、透明タイプのウレタン塗装などで表面をコーティングすれば防げます。アンティークの無垢材でも、なかには湿気や乾燥などでドアが反ってしまうケースは残念ながらあり得るのですが、専門のプロに頼めば、立て付けを直すことも問題なくできます。
取り付けの際はプロにまかせて
実際に家にアンティークドアの取り付ける際は少しだけ注意が必要です。日本のドアとヨーロッパの規格が違うので、パーツもドアと同じ国のものを使う必要があるケースが多いです。これらのパーツも実は、アンティークとなると探すのが大変。でも最近ではアンティークのパーツも総合的に扱い、あらゆるケースに対処できるよう買い付けをする会社が増えています。施工や反りなどの問題のアフターケアもしっかり対応してくれるプロにまかせれば、安心してお好みのドアを選べるでしょう。
実際に家にアンティークドアの取り付ける際は少しだけ注意が必要です。日本のドアとヨーロッパの規格が違うので、パーツもドアと同じ国のものを使う必要があるケースが多いです。これらのパーツも実は、アンティークとなると探すのが大変。でも最近ではアンティークのパーツも総合的に扱い、あらゆるケースに対処できるよう買い付けをする会社が増えています。施工や反りなどの問題のアフターケアもしっかり対応してくれるプロにまかせれば、安心してお好みのドアを選べるでしょう。
以前はドアだけ用意して施工はおまかせ、というケースが多く、実際に取り付けるにはハードルが高かったアンティークドア。安心して取り付けをお願いできるアンティークドア専門店を探すことが、いちばんの近道かもしれません。美しいデザインの、物語のあるドアを、ぜひみなさんの家にも取り入れてみてください。
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