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北欧スタイルに個性をプラス。築100年の賃貸物件のリノベーション
さまざまな工夫によって、コストを抑えつつ、築100年の賃貸物件を美しくリノベーションしたスペインの事例をご紹介。「自分流」の北欧スタイルの取り入れ方は、日本の住まいづくりの参考にもなりそうです。
Núria Moreras
2017年7月15日
インテリアデザインショップ〈ノルディックシンク〉のオーナー、ホルディ・マルティンさんと、インテリアデザイナー、クリスティーナ・ポンスさんのカップル。賃貸のアパートメントにあまり多額の予算をかけたくなかったふたりは、リノベーションにあたってデザインを工夫する必要があった。最終的には驚くほどの短期間で家を一新し、娘ふたりをふくめた家族4人にとって理想の家ができあがった。そんなふたりのインテリアデザインの秘訣を見せてもらった。
Photos by Jordi Folch, video Júlia de Balle
どんなHouzz?
住まい手:ホルディ・マルティンさん、クリスティーナ・ポンスさん、娘のロラさん(12歳)、シモーナさん(8歳)
所在地:スペイン、バルセロナ中心地アシャンプラ地区
規模:約140平方メートル
注目ポイント:マルティンさんとポンスさんが自宅とデザインについて語ったHouzzスペインの動画はこちら(スペイン語)
アパートメントとの出会いは一目ぼれ、ではなかった。ポンスさんが部屋を見る前にマルティンさんは賃貸契約をすませていて、初めて部屋を訪れたポンスさんはショックを受けたという。建物は古く、汚れが目につき、床は傷んでいた。でも、リノベーションを終えた今は、パートナーのマルティンさんの選択は間違っていなかったと思っている。
初めに決めていたのは、壁を取り壊したり間取りを変えたりといった大規模なリノベーションはしない、ということ。持ち家ではない家にそこまで費用をかけたくなかったからだ。幸い、間取りは機能的だった。家族が集まって過ごすスペースは外の通りの側にあり、寝室は敷地の中庭に面していたのが強みだった。
インテリアはすみずみまでスカンジナビアスタイルを通した。当然といえば当然だが、家具は99パーセントがマルティンさんのショップ〈ノルディックシンク〉で揃えたものだ。
どんなHouzz?
住まい手:ホルディ・マルティンさん、クリスティーナ・ポンスさん、娘のロラさん(12歳)、シモーナさん(8歳)
所在地:スペイン、バルセロナ中心地アシャンプラ地区
規模:約140平方メートル
注目ポイント:マルティンさんとポンスさんが自宅とデザインについて語ったHouzzスペインの動画はこちら(スペイン語)
アパートメントとの出会いは一目ぼれ、ではなかった。ポンスさんが部屋を見る前にマルティンさんは賃貸契約をすませていて、初めて部屋を訪れたポンスさんはショックを受けたという。建物は古く、汚れが目につき、床は傷んでいた。でも、リノベーションを終えた今は、パートナーのマルティンさんの選択は間違っていなかったと思っている。
初めに決めていたのは、壁を取り壊したり間取りを変えたりといった大規模なリノベーションはしない、ということ。持ち家ではない家にそこまで費用をかけたくなかったからだ。幸い、間取りは機能的だった。家族が集まって過ごすスペースは外の通りの側にあり、寝室は敷地の中庭に面していたのが強みだった。
インテリアはすみずみまでスカンジナビアスタイルを通した。当然といえば当然だが、家具は99パーセントがマルティンさんのショップ〈ノルディックシンク〉で揃えたものだ。
「今回のリノベーションでいちばん大事なポイントは、手元にある素材と想像力を活かして、居心地のいい空間を自分たちの手で作り出せた点です。それぞれの部屋に独自のスタイルがありながら、同時に各エリアがまとまり感があります」とマルティンさんは言う。
ふたりの家は、どんな空間も大がかりなリノベーションをしなくても変えられることを示す良い例だ。たとえばリビングダイニングの壁はライトグレーに塗り、元からあったクラウンモールディングを引き立てている。既存のモールディングを残しているのはここだけだ。また、壁下の幅木もペイントし、天井が高く感じられるようにした。
もうひとつの重要ポイントが、計算して配置された照明。「一般的に照明はデザイン上、よく問題になる点のひとつです。この家に限らず、全般的にそうですね。基本的に明かりが過剰になってしまうのです」とマルティンさんは言う。
テーブルの上のペンダントランプはスロベニアの会社〈ヴァーティゴ・バード〉の《ファンネル》。奥に見えるオーク材の脚のランプは〈ムート〉の《プル》。こちらはスウェーデンのデザインスタジオ〈ワッツワット〉によるデザインで、同社で人気の高い製品のひとつになっている。
ふたりの家は、どんな空間も大がかりなリノベーションをしなくても変えられることを示す良い例だ。たとえばリビングダイニングの壁はライトグレーに塗り、元からあったクラウンモールディングを引き立てている。既存のモールディングを残しているのはここだけだ。また、壁下の幅木もペイントし、天井が高く感じられるようにした。
もうひとつの重要ポイントが、計算して配置された照明。「一般的に照明はデザイン上、よく問題になる点のひとつです。この家に限らず、全般的にそうですね。基本的に明かりが過剰になってしまうのです」とマルティンさんは言う。
テーブルの上のペンダントランプはスロベニアの会社〈ヴァーティゴ・バード〉の《ファンネル》。奥に見えるオーク材の脚のランプは〈ムート〉の《プル》。こちらはスウェーデンのデザインスタジオ〈ワッツワット〉によるデザインで、同社で人気の高い製品のひとつになっている。
よく考え抜いてセレクトした家具を入れると、インテリアの質がぐっと上がる。「厳選した少数のアイテムを、洗練された背景に合わせる。これを基本的なデザイン上のルールにしました」とマルティンさん。何かを選ぶときは家族全員で決めたという。「娘たちもすべての決定に加わりました。」
色づかいは壁のグレーを基本に、白とライトな木目も取り入れた。ライトな色を使い、きりっとクリーンな白を際立たせるのは、まさしく北欧インテリアの特徴だ。
ダイニングテーブルの椅子は4脚ともすべて違う。それぞれ、〈ヴィトラ〉の《DAW》(マルティンさんのショップ以外で購入した数少ないアイテムの1点)、〈ヘイ〉の《J104》、フィンランド人デザイナー、サーミ・カッリオによる〈&トラディション〉の《イン・ビトウィーン》、そして〈ムート〉の《ヴィス》だ。フォルムに変化をもたせて、ミニマルで統一された色づかいのバランスを崩すのがねらいだった。
色づかいは壁のグレーを基本に、白とライトな木目も取り入れた。ライトな色を使い、きりっとクリーンな白を際立たせるのは、まさしく北欧インテリアの特徴だ。
ダイニングテーブルの椅子は4脚ともすべて違う。それぞれ、〈ヴィトラ〉の《DAW》(マルティンさんのショップ以外で購入した数少ないアイテムの1点)、〈ヘイ〉の《J104》、フィンランド人デザイナー、サーミ・カッリオによる〈&トラディション〉の《イン・ビトウィーン》、そして〈ムート〉の《ヴィス》だ。フォルムに変化をもたせて、ミニマルで統一された色づかいのバランスを崩すのがねらいだった。
唯一ルールを外してあざやかな色を選んだのが、こちらのランプ。マルティンさんの家族に伝わる思い出の品だ。「昔、祖母の家に泊まりに行ったときに使っていた寝室にあったものなので、もう長いつきあいになります。」
リビングの本棚はいろいろなアレンジができる3種類のサイズのキューブを組み合わせた。〈ムート〉の《スタックト》という収納システムで、素材はタモ材と白のMDF。
リビングの本棚はいろいろなアレンジができる3種類のサイズのキューブを組み合わせた。〈ムート〉の《スタックト》という収納システムで、素材はタモ材と白のMDF。
ポンスさんが座っているのは〈カール・ハンセン&サン〉の《キューバチェア》。オークの無垢材フレームと頑丈なウェビングテープを使用した折りたたみ式チェアは、モーテン・グットラーが1997年に生み出した、スカンジナビアデザインのアイコン的な作品だ。マルティンさんが手を添えているチェアは、フィンランドのデザイナー、ミカ・トルバネンが手がけた〈ムート〉の《ヴィス》。
ポンスさんとマルティンさんのオフィス。次女シモーナさんの遊び場でもある。このスペースを使っていいのは妹のシモーナさんだけ。というのは、シモーナさんの部屋の方が条件が悪いからだそう。「姉のロラの部屋の方が広くて明るく、机もあるので、それを埋め合わせるためですね」とポンスさん。シモーナさんはここで遊び、宿題をやり、チェロの練習をする。
《ソフト・ディア》は、アーティストでデザイナーのセルヒオ・ロヘルさんがバルセロナで立ち上げた〈ソフトヘッズ〉の作。〈マリメッコ〉の生地でカスタマイズしたオリジナルだ。
元からあったテーブルと棚は残して仕事場で使っているが、白で塗り替えている。〈ムート〉の《ファイバーチェア》が目を引く。再生プラスチックと木質繊維からなる新素材で仕上げたチェアだ。パイン材でできた印象的な《ウッドランプ》は〈TAFアーキテクツ〉の作品で、ともにマルティンさんのショップで購入した。
キッチンのテーブルは100パーセント再利用した素材からできている。テーブルトップはリサイクルした板を使い、脚は別のテーブルから取ってきたもの。奥には〈ヴィトラ〉の《パントンチェア》、壁には〈ノーマン・コペンハーゲン〉の時計〈ボールド〉が見える。
築100年のアパートメントを費用を抑えて一新するにあたって、よく活用したのがペイントだった。「どの部屋もそれぞれのやり方でペイントを取り入れています。どの色を選ぶかだけでなく、どう塗るかも大事ですね。」
中庭に面したシモーナさんのベッドルームは、イエローであたたかみと明るさを出した。「このイエローの効果はベッドの頭上の部分にだけ使いました。フォーカルポイントになって、ベッドまわりを明るく引き立てています。」
中庭に面したシモーナさんのベッドルームは、イエローであたたかみと明るさを出した。「このイエローの効果はベッドの頭上の部分にだけ使いました。フォーカルポイントになって、ベッドまわりを明るく引き立てています。」
マスターベッドルームには広いバルコニーがついている。「ここでは自然光を活かすため、ダークグリーンでミニマルに羽目板風のペイントをほどこしました」とポンスさん。
北欧スタイルは一般的に左右対称を避けるが、ふたりは特にそれを意識しているという。ここでもフレームをアシンメトリーに配置し、両側のベッドサイドテーブルもあえて違うものにした。こちらの写真に見えるのは〈ムート〉の《アラウンド》。
〈イケア〉のチェストも自分たちでカスタマイズ。壁と同じ色でペイントし、ほとんど隠れるかのように背景に溶けこんでいる。取っ手がついていた部分はドリルで穴を開けた。
ランプは〈フォスカリーニ〉の《ルミエール05》。シェードは琥珀色のガラス。
マスターベッドルームの正面にあるロラさんの部屋は、あえて塗りかけのような遊び心あるペイント。ぴったりくるピンクを探すのに少し苦労したそう。試してみた色の多くが、あまりふたりの好みではないサーモンがかった色味だったからだ。
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