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【ミラノサローネ2017レポート日本版】世界が注目する日本人トップデザイナー、nendoと吉岡徳仁
ミラノサローネに通い続ける住生活ジャーナリストの藤井繁子さんが今年のサローネで注目したのは? 3回シリーズでお届けする、特別レポートの第1弾です!
藤井繁子|Fujii Vivien Shigeko
2017年5月17日
藤井繁子・住生活ジャーナリスト。
Journalist of House and Life
Consultant for Japanese housing market and industry
I have been working for 30years in Japanese housing industry as the editor in chief 「HOUSING」, the most popular monthly magazine for consumer, the chief researcher of RECRUIT Housing Laboratory and a journalist/consultant.
藤井繁子・住生活ジャーナリスト。
Journalist of House and Life
Consultant for Japanese housing market... もっと見る
今年も世界的なインテリア・デザインの祭典「ミラノサローネ」が開催され、世界の有名ブランドとトップ・デザイナーの競演を見ることができました。この記事では、日本人デザイナーや企業の活躍に注目してレポートします。
まずは、世界的評価の高い日本人デザイナーといえば! の2人、nendo(佐藤オオキ)と吉岡徳仁を追いかけます。
まずは、世界的評価の高い日本人デザイナーといえば! の2人、nendo(佐藤オオキ)と吉岡徳仁を追いかけます。
今年、〈ルイ・ヴィトン〉は12人のトップデザイナーを起用した「オブジェ・ノマド コレクション」に新作を加えて展示。その選ばれし12人の中にいたのが、2人の日本人デザイナー、nendo(佐藤オオキ)と吉岡徳仁です。
「オブジェ・ノマド コレクション」の参加デザイナーは、アトリエ・オイ、マーティン・バース、バーバー&オズガビー、 カンパーナ・ブラザーズ、 ダミアン・ラングロワ=モーリーン、 nendo、グエナエル・ニコラ、 ロウ・エッジズ、パトリシア・ウルキオラ、マルセル・ワンダース、インディア・マダヴィ、吉岡徳仁(マダヴィと吉岡は今年が初参加)。
「オブジェ・ノマド コレクション」の参加デザイナーは、アトリエ・オイ、マーティン・バース、バーバー&オズガビー、 カンパーナ・ブラザーズ、 ダミアン・ラングロワ=モーリーン、 nendo、グエナエル・ニコラ、 ロウ・エッジズ、パトリシア・ウルキオラ、マルセル・ワンダース、インディア・マダヴィ、吉岡徳仁(マダヴィと吉岡は今年が初参加)。
展示会場には、人気フランス人イラストレーター Polly Brotherwoodが描いた「デザイナー名 x 作品」のアートなポスターが飾られていました。
こちらが、nendo とその作品《surface》のポスター。
《surface》は、nendo が〈ルイ・ヴィトン〉のために手がけた照明(2013年)。革のシート状で、立てたり横に置いたりと形の変化が楽しめるアイテム。照らすとダミエ柄が浮かび上がります。
佐藤オオキが同社の工房で目にした「巻かれた一枚の革」がインスピレーションとなっています。
佐藤オオキが同社の工房で目にした「巻かれた一枚の革」がインスピレーションとなっています。
革のシートを巻いて筒状にすれば持ち運びできる、まさに「オブジェ・ノマド」、旅道具となります。
Photo: Takumi Ota
nendo の今年のトピックは大規模な個展を行なったこと。「nendo : invisible outlines(見えない輪郭)」と題したインスタレーション(会場:ジル・サンダー ショールーム)で、新作11作品を含む計16作品を展示。
人が無意識のうちにとらえているモノの「輪郭」を作品に表現し、それが与える効果や作用を考えさせる展示でした。
nendo の今年のトピックは大規模な個展を行なったこと。「nendo : invisible outlines(見えない輪郭)」と題したインスタレーション(会場:ジル・サンダー ショールーム)で、新作11作品を含む計16作品を展示。
人が無意識のうちにとらえているモノの「輪郭」を作品に表現し、それが与える効果や作用を考えさせる展示でした。
Photo: Takumi Ota
「80 sheets of mountains」は、面材をカットして引き伸ばすことで表現した、輪郭線による山並み。
広い空間で、その間を自由に歩ける展示です。真っ白で「輪郭」も錯覚を起こしそうな幻想的インスタレーションでした。
「80 sheets of mountains」は、面材をカットして引き伸ばすことで表現した、輪郭線による山並み。
広い空間で、その間を自由に歩ける展示です。真っ白で「輪郭」も錯覚を起こしそうな幻想的インスタレーションでした。
Photo: Takumi Ota
「objectextile」と題した展示は、〈ジル・サンダー〉とのコラボレーションプロジェクト。立体物の輪郭を投影して抽出し、テキスタイルにした作品です。
「objectextile」と題した展示は、〈ジル・サンダー〉とのコラボレーションプロジェクト。立体物の輪郭を投影して抽出し、テキスタイルにした作品です。
Photo by Akihiro Yoshida
そして、会場でハッと息を呑むほど美しかったのが、上の写真。新作の《jellyfish vase》です。
水槽の中に並んだ花瓶が優しく柔らかく揺れていて、見ていると、気持ちが優しくなる “大人メルヘン” な世界。
そして、会場でハッと息を呑むほど美しかったのが、上の写真。新作の《jellyfish vase》です。
水槽の中に並んだ花瓶が優しく柔らかく揺れていて、見ていると、気持ちが優しくなる “大人メルヘン” な世界。
Photo by Akihiro Yoshida
“jellyfish(クラゲ)”の名が示すように、ゆらゆらと水中で揺れる花瓶(水槽の下から水圧を出すアイデア)。透明の花瓶はシリコン素材でできています。
“jellyfish(クラゲ)”の名が示すように、ゆらゆらと水中で揺れる花瓶(水槽の下から水圧を出すアイデア)。透明の花瓶はシリコン素材でできています。
Photo by Akihiro Yoshida
家具・照明ブランド8社から商品化された、新作プロダクトも展示されていました。
〈アリアス Alias〉のためにデザインした《flow》は、テーブルの天板が溶けて流れ落ち、そのまま容れ物になっています。nendoらしい、ふと笑みがこぼれるデザインです。
家具・照明ブランド8社から商品化された、新作プロダクトも展示されていました。
〈アリアス Alias〉のためにデザインした《flow》は、テーブルの天板が溶けて流れ落ち、そのまま容れ物になっています。nendoらしい、ふと笑みがこぼれるデザインです。
Photo by Akihiro Yoshida
雑誌を収納したり、あるいはこんな風にグリーンを飾ることもできたり、意外と実用的なアイテムです。
雑誌を収納したり、あるいはこんな風にグリーンを飾ることもできたり、意外と実用的なアイテムです。
Photo by Akihiro Yoshida
〈フロス Flos〉のためにデザインした 《gaku》は、フレームの中に、複数用意されたパーツをセットして使う照明。nendoいわく「雑貨以上、家具未満」なプロダクトです。
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ミラノサローネ2017最新報告:実験的デザインが花開いた、照明の6つのトレンド
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Photo by Akihiro Yoshida
非接触充電型の照明パーツもあり、枠から取り外して好きなところへ持ち運びできるのも魅力。また、パーツには、ボウルや花瓶、トレイ、ミラー、ブックエンドなどがあり、オリジナルの《gaku》を作ることができます。壁に掛けるも、机に置くもユーザー次第。そんな、使い手のアイデアが問われるデザインもnendoらしさではないでしょうか。
今年は、若手デザイナーの登竜門的イベントである「サローネサテライト」が 20周年を迎え、特別会場での展示やトークショーが催されました。サローネサテライトから世界に羽ばたいたデザイナーの1人として、nendo も取り上げられていました。
さらに、日本を代表するデザイナーとしての活動をもう1つ紹介したいと思います。
非接触充電型の照明パーツもあり、枠から取り外して好きなところへ持ち運びできるのも魅力。また、パーツには、ボウルや花瓶、トレイ、ミラー、ブックエンドなどがあり、オリジナルの《gaku》を作ることができます。壁に掛けるも、机に置くもユーザー次第。そんな、使い手のアイデアが問われるデザインもnendoらしさではないでしょうか。
今年は、若手デザイナーの登竜門的イベントである「サローネサテライト」が 20周年を迎え、特別会場での展示やトークショーが催されました。サローネサテライトから世界に羽ばたいたデザイナーの1人として、nendo も取り上げられていました。
さらに、日本を代表するデザイナーとしての活動をもう1つ紹介したいと思います。
プラスティックでアートなモダン家具を創り出す人気ブランド〈カルテル Kartell〉。そのアイコン商品の1つ《コンポニビリ Componibili》(アンナ・カステッリ・フェリエーリ
Anna Castelli Ferrieri のデザイン)が 50周年を迎えるにあたり、現代のトップデザイナーたちにトリビュート・デザインを託したのです。
15人のデザイナーが競演するこの企画にも、フィリップ・スタルクやパトリシア・ウルキオラ、マリオ・ベリーニ、ロン・アラッドらと並んでnendoと吉岡徳仁が参加していました。〈カルテル〉のクラウディオ・ルティ社長を囲み、デザイナーとそれぞれの《コンポニビリ》との記念写真。
Anna Castelli Ferrieri のデザイン)が 50周年を迎えるにあたり、現代のトップデザイナーたちにトリビュート・デザインを託したのです。
15人のデザイナーが競演するこの企画にも、フィリップ・スタルクやパトリシア・ウルキオラ、マリオ・ベリーニ、ロン・アラッドらと並んでnendoと吉岡徳仁が参加していました。〈カルテル〉のクラウディオ・ルティ社長を囲み、デザイナーとそれぞれの《コンポニビリ》との記念写真。
Photo by Akihiro Yoshida
nendoがデザインしたのは《Componibili-Family》。照明やグラスなど小物を同じデザインで揃えて「家族写真のように」見せています。
そして、ここからはもう1人の日本を代表するデザイナー吉岡徳仁の活躍について、ご紹介しましょう。まずは、《コンポニビリ》トリビュート作品から。
nendoがデザインしたのは《Componibili-Family》。照明やグラスなど小物を同じデザインで揃えて「家族写真のように」見せています。
そして、ここからはもう1人の日本を代表するデザイナー吉岡徳仁の活躍について、ご紹介しましょう。まずは、《コンポニビリ》トリビュート作品から。
吉岡徳仁デザインは、この収納アイテムを花に見立て、蝶がその周りを舞うさまを表現。
50年前にこれをデザインした女性デザイナーである「アンナに捧げる」作品にしてくれました。
50年前にこれをデザインした女性デザイナーである「アンナに捧げる」作品にしてくれました。
さて、同じ〈カルテル〉では、吉岡のプロトタイプの椅子《MATRIX chair》が展示されていました。
「構造からデザインを始めた」という、3D構造の網目でつくられた椅子。確かにマトリックスのように、見れば見るほど「どうなってるの?」と思わせる造り。
一方、冒頭で紹介したルイ・ヴィトンの展示においても、今年デザイナーに起用された吉岡は、スツールを発表しました。
ルイ・ヴィトンのモノグラムにある花をモチーフにデザインを進め……
ルイ・ヴィトンのモノグラムにある花をモチーフにデザインを進め……
花びらが重なるように咲いた座面が美しい作品になりました。
《Blossom Stool》(その名も「花のスツール」)は、白、黒、ゴールドが展示されていました。
座面を支える茎の曲線が見事!
座面を支える茎の曲線が見事!
これこそが、フランス語で “Savoir-faire” と呼ばれる「匠の技」。デザイナーとルイ・ヴィトン職人の融合により生み出される美しさ。木の基盤に革張りで、曲線を造り出しています。
吉岡は、今年3月ミラノにオープンした〈イッセイミヤケ ISSEY MIYAKE〉の旗艦店の空間デザインも手がけており、サローネ期間には〈グラス イタリア Glas Italia〉のプロダクトでインスタレーションを行いました。
「TOKUJIN YOSHIOKA_Glass Fountain」と題し、店舗の中庭に並んだ、美しいガラスの泉。
花瓶? 水盤? いや、よく見ると、テーブルなのです!
「TOKUJIN YOSHIOKA_Glass Fountain」と題し、店舗の中庭に並んだ、美しいガラスの泉。
花瓶? 水盤? いや、よく見ると、テーブルなのです!
吉岡徳仁が〈グラスイタリア〉のためにデザインした《FOUNTAIN - Glass Table》。
上部にかぶせたガラスの天板が、水面のように綺麗。これをソファサイドに置くだけで、空間に輝きが増しそうなテーブルです。
上部にかぶせたガラスの天板が、水面のように綺麗。これをソファサイドに置くだけで、空間に輝きが増しそうなテーブルです。
写真は〈グラスイタリア〉のヴェネチア・ムラーノ島の工房で、ガラスを型へ伸ばし立体成形する工程。ここでも、見事な作品を実現するのは、職人の技なのです。
そして、今年最も注目を集めたのが、インスタレーション「TOKUJIN YOSHIOKA LG: S.F_Senses of the Future」。〈LG〉が、ミラノ・トルトナ地区の中心的な展示会場Surperstudioの中でも最大のスペースを使った展覧会です。
ここは過去には〈キヤノン〉など日本の大手メーカーも出展した会場で、入口には長い列ができていました。
ここは過去には〈キヤノン〉など日本の大手メーカーも出展した会場で、入口には長い列ができていました。
〈LG〉の製品である 有機発光ダイオード (OLED) を使い、未来的な椅子&空間を構成。
《S.F chair》は、OLED が七色に変化し、自ら光を放つ椅子。〈グラスイタリア〉のために吉岡がデザインした《PRISM glass chair》(2014年)が進化したかのような、いわゆるSF的な世界を感じました。
こちらは《Wall of the Sun》と題した作品。光のタペストリーが、空間を変幻自在に照らしています。
クローズアップすると、OLEDの平板が凹凸に、また不規則に並んでいるのが分かります。
なお、このインスタレーションは、その年のミラノサローネの最高の賞である「ミラノ・デザイン・アワード 2017」を受賞。ミラノの街なかで開催されているフオリサローネのイベント約1400件以上の中で、最も注目されたイベントとなりました。
なお、このインスタレーションは、その年のミラノサローネの最高の賞である「ミラノ・デザイン・アワード 2017」を受賞。ミラノの街なかで開催されているフオリサローネのイベント約1400件以上の中で、最も注目されたイベントとなりました。
「ミラノデザインウィークを通じて数々の検証や研究を行い、未来というテーマに対し、新しい試みにチャレンジすることができました」と、吉岡さんは語ってくれました。
一方、nendoは、5月20日からベルギーのグラン・オルニュ美術館に個展を移し、ミラノでの「nendo: : invisible outlines」を開催。さらにに拡大した内容で、半年間に渡って展示するとのことです。
おふたりを筆頭に、日本人デザイナーの作品・展示をあちこちで発見、次世代の活躍も感じることができた今年のミラノサローネでした。
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