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スタイリストがセルフリノベ―ションで叶えた、“自分にフィットする” 住まい
おしゃれなDIYブームの火付け役、インテリアスタイリスト石井佳苗さんの新居は、築42年のマンションのセルフリノベーション。インテリアの楽しみがぐっと広がる見逃せない工夫が随所に!
Rieko Ozawa
2017年1月26日
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
Houzz contributors, Editor & Writer. I have been interested in the floor plan since I was a child. Then, I became an editor of the INTERIOR & HOUSING magazine. We bought a maisonette dwelling unit built in early 1980s and have been renovating little by little with my partner.
Houzzコントリビューター、編集&ライター。子どもの頃からの間取り好きが高じてインテリア&ハウジング雑誌の編集者に。その後フリーランスとなり、居心地がよくておしゃれな住まいづくりの情報を発信し続ける。築30年のメゾネットマンションを、仲間の協力を得ながら少しずつ改装し、快適で楽しい住まいに構築中。広告会社に勤める夫と二人暮らし。
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インテリアスタイリストとして活躍するかたわら、DIYのWEBマガジン『Love Customizer』を主宰する石井佳苗さん。スタイリストならではのセンスが光るコンテンツが人気を呼び、女性が楽しめるスタイリッシュなDIYブームの火付け役となった。そんな石井さんが、セルフリノベーションした新居に引っ越したと話題だ。
どんなHouzz?
所在地:神奈川県逗子市
住まい手:石井佳苗さんと猫3匹
建物:築42年のマンション
延床面積:69平方メートル
設計:久世拓也(BINX)+石井佳苗
施工:久世拓也(BINX)+石井佳苗
撮影:宮濱祐美子
以前の住まいが手狭になってきた頃、ひょんなことから好物件と出会い、このヴィンテージマンションを購入した石井さん。「自らリノベーションに関わるチャンスと思い、解体から床張りや壁づくり、キッチンや洗面所の造作まで作業に参加することにしました」。
セルフリノベーションといっても、しかるべきところはプロの力を借りた。「だから正確には “かなりセルフなリノベーション” ですね(笑)。セルフだからといって手作り感満載の仕上がりにはしたくなかったし、もちろん技術的に無理なこともある。そもそも、どこまで自分でできるかのジャッジも、プロの判断が必要でした」。
土台と設備はプロにまかせ、内装はプロのアドバイスを受けながら仲間の協力を得てセルフで。資材の手配もほぼすべて自ら行い、フローリングやタイル材はもちろん、コンロやバスタブ、さらには床暖房設備にいたるまで自ら発注したというから驚きだ。
所在地:神奈川県逗子市
住まい手:石井佳苗さんと猫3匹
建物:築42年のマンション
延床面積:69平方メートル
設計:久世拓也(BINX)+石井佳苗
施工:久世拓也(BINX)+石井佳苗
撮影:宮濱祐美子
以前の住まいが手狭になってきた頃、ひょんなことから好物件と出会い、このヴィンテージマンションを購入した石井さん。「自らリノベーションに関わるチャンスと思い、解体から床張りや壁づくり、キッチンや洗面所の造作まで作業に参加することにしました」。
セルフリノベーションといっても、しかるべきところはプロの力を借りた。「だから正確には “かなりセルフなリノベーション” ですね(笑)。セルフだからといって手作り感満載の仕上がりにはしたくなかったし、もちろん技術的に無理なこともある。そもそも、どこまで自分でできるかのジャッジも、プロの判断が必要でした」。
土台と設備はプロにまかせ、内装はプロのアドバイスを受けながら仲間の協力を得てセルフで。資材の手配もほぼすべて自ら行い、フローリングやタイル材はもちろん、コンロやバスタブ、さらには床暖房設備にいたるまで自ら発注したというから驚きだ。
「リノベーションをするにあたり、せっかくなら今までとは違う雰囲気にしてみたい。年齢を重ねた今の自分に添うインテリアはなんだろう?と、日々自分に問いかけていました」と石井さん。
石井さんのインテリアをつくるもの――それは、長い年月をかけて出会ってきたものだ。高いデザイン性や職人技が生きているもの。そして、それらの雰囲気を壊さないDIYのアイテム。「好みのテイストは変わらないものの、少しずつ上質なものが気になるようになってきて。以前の住まいは、それらを受け止める “箱” の質感が、自分の感覚にフィットしないと感じ始めていました」。
石井さんのインテリアをつくるもの――それは、長い年月をかけて出会ってきたものだ。高いデザイン性や職人技が生きているもの。そして、それらの雰囲気を壊さないDIYのアイテム。「好みのテイストは変わらないものの、少しずつ上質なものが気になるようになってきて。以前の住まいは、それらを受け止める “箱” の質感が、自分の感覚にフィットしないと感じ始めていました」。
リノベーションの基本は壁と床
部屋の雰囲気を決めるのは、広い面積を占める壁と床。石井さんのリノベーションのプランニングも、ここが出発点となった。感性にフィットするのは、上質でモダンな質感。「手持ちのものは古道具っぽいものが多いのですが、それらをモダンな空間におさめることで、ミックス感を楽しんでみたくて」。
ベースにしたのは、凹凸のない白い壁と黒いシックな石タイル。そこに足場板、数種のタイル、サイザルカーペットなどの異素材を組み合わせ、場をゾーニングしながら空間にメリハリをつけた。
一様に見える白い壁も、部分的に質感の異なるペイントを使って表情をつけている。微細なガラスの粒子が混ぜ込まれたペイントは、光を受けると微かにきらめき、天気や時間によって表情を変える。実に情緒的で美しい。
部屋の雰囲気を決めるのは、広い面積を占める壁と床。石井さんのリノベーションのプランニングも、ここが出発点となった。感性にフィットするのは、上質でモダンな質感。「手持ちのものは古道具っぽいものが多いのですが、それらをモダンな空間におさめることで、ミックス感を楽しんでみたくて」。
ベースにしたのは、凹凸のない白い壁と黒いシックな石タイル。そこに足場板、数種のタイル、サイザルカーペットなどの異素材を組み合わせ、場をゾーニングしながら空間にメリハリをつけた。
一様に見える白い壁も、部分的に質感の異なるペイントを使って表情をつけている。微細なガラスの粒子が混ぜ込まれたペイントは、光を受けると微かにきらめき、天気や時間によって表情を変える。実に情緒的で美しい。
好きなところにビスが打てる「自由な壁」
〈ウリヨ・クッカプーロ〉の椅子や、ル・コルビュジエに師事した建築家、前川國男デザインのフロアライトなどのモダンなアイテムと、古道具やフォークロアが心地よく同居するリビング。
一見シンプルに見える内装だが、壁の構造を工夫して、どこにでも棚や照明が取り付けられるようにした。一般的にマンションの壁は、ネジの効きにくい石膏ボードが主流。棚などを取り付けるときは、壁内の柱を狙ってビスを打たなければならない。そこで、石膏ボードの代わりにシナベニヤやラーチ合板を使うことで、どこにでもビスが打てる仕組みにした。「シナベニヤは表面がなめらかで、ペイントがマットに仕上がる。この質感も、私にとっては譲れないものでした」
この、好きなところにビスが打てる「自由な壁」は、キッチンや洗面所、玄関にも採用した。棚はもちろん、フックや壁付の照明、絵や鏡だって好きなところに取り付けられるから、便利なうえにインテリアの楽しみもぐっと広がる。スタイリストならではのすばらしい発想だ。
〈ウリヨ・クッカプーロ〉の椅子や、ル・コルビュジエに師事した建築家、前川國男デザインのフロアライトなどのモダンなアイテムと、古道具やフォークロアが心地よく同居するリビング。
一見シンプルに見える内装だが、壁の構造を工夫して、どこにでも棚や照明が取り付けられるようにした。一般的にマンションの壁は、ネジの効きにくい石膏ボードが主流。棚などを取り付けるときは、壁内の柱を狙ってビスを打たなければならない。そこで、石膏ボードの代わりにシナベニヤやラーチ合板を使うことで、どこにでもビスが打てる仕組みにした。「シナベニヤは表面がなめらかで、ペイントがマットに仕上がる。この質感も、私にとっては譲れないものでした」
この、好きなところにビスが打てる「自由な壁」は、キッチンや洗面所、玄関にも採用した。棚はもちろん、フックや壁付の照明、絵や鏡だって好きなところに取り付けられるから、便利なうえにインテリアの楽しみもぐっと広がる。スタイリストならではのすばらしい発想だ。
キッチンはリビングの一部
「私にとってキッチンはリビングの一部。機能だけでなく、インテリアのひとつとしてとらえています。機能としては、「火」と「水」と冷蔵庫を置く場所があればいい。だからコンロと水まわりの設備はしっかりとつくり、そこに小さな家具を組み合わせていってはどうかと考えました」と石井さん。
ルックスに惹かれたというアメリカ〈アマナ〉社のコンロを中心に、〈イケア〉のワゴン、DIYの小家具や棚を組み合わせたキッチン。床の石タイルと、壁のタイル、質感と表情の異なる黒が効果的に、空間を引き締めている。小家具を組み合わせたキッチンは、使い勝手に合わせて、自由にカスタマイズできることも魅力だ。
「私にとってキッチンはリビングの一部。機能だけでなく、インテリアのひとつとしてとらえています。機能としては、「火」と「水」と冷蔵庫を置く場所があればいい。だからコンロと水まわりの設備はしっかりとつくり、そこに小さな家具を組み合わせていってはどうかと考えました」と石井さん。
ルックスに惹かれたというアメリカ〈アマナ〉社のコンロを中心に、〈イケア〉のワゴン、DIYの小家具や棚を組み合わせたキッチン。床の石タイルと、壁のタイル、質感と表情の異なる黒が効果的に、空間を引き締めている。小家具を組み合わせたキッチンは、使い勝手に合わせて、自由にカスタマイズできることも魅力だ。
シンクまわりのイメージはコルビュジエの《サヴォア邸》
シンクまわりはル・コルビュジエの《サヴォア邸》をイメージソースに、シンプルで繊細なカウンターをDIY。鉄を溶接して脚と枠をつくり、合板の天板にシンクと水栓を取り付けた、完全なるオリジナル。鉄の溶接や木の扱い方は、プロのアドバイスを受けて仕上げている。
水栓金具はアルネ・ヤコブセンがデザインした〈ヴォラ〉社のもの。「似たようなものはたくさん出回っているけれど、これはやっぱり全然違って、圧倒的に美しい。換気扇は、デザインとコストのバランスがよかった〈イケア〉のものをセレクトしました」。コンロ、換気扇、水栓金具、シンクなどの設備と資材は、すべて自ら調達した。パーツのひとつひとつにこだわりながら、コストをコントロールできるのも、セルフリノベーションの魅力だ。
絶対に知っておきたいモダニズムの傑作住宅:サヴォア邸
シンクまわりはル・コルビュジエの《サヴォア邸》をイメージソースに、シンプルで繊細なカウンターをDIY。鉄を溶接して脚と枠をつくり、合板の天板にシンクと水栓を取り付けた、完全なるオリジナル。鉄の溶接や木の扱い方は、プロのアドバイスを受けて仕上げている。
水栓金具はアルネ・ヤコブセンがデザインした〈ヴォラ〉社のもの。「似たようなものはたくさん出回っているけれど、これはやっぱり全然違って、圧倒的に美しい。換気扇は、デザインとコストのバランスがよかった〈イケア〉のものをセレクトしました」。コンロ、換気扇、水栓金具、シンクなどの設備と資材は、すべて自ら調達した。パーツのひとつひとつにこだわりながら、コストをコントロールできるのも、セルフリノベーションの魅力だ。
絶対に知っておきたいモダニズムの傑作住宅:サヴォア邸
洗面所も自由な発想で
床の幾何学模様のタイルが効いた、ノスタルジックな雰囲気の洗面所。ここにもキッチン同様、「小家具」のフィロソフィーが生きている。洗面台にしたのはアンティークのテーブル。小ぶりなサイズ感と、タオルハンガーにした木製の万力がしゃれている。
そして、右側の穴の開いた謎の箱は――。「これは猫のトイレです。市販の猫トイレは機能性こそ優れているけれど、プラスチックの質感はやっぱり許せない(笑)。出入り口を丸く開けたカバーをDIYでつくりました」と石井さん。
将来的にこの物件を貸したり売却したときに、次のオーナーが猫トイレを必要としなければ、キャビネットを置いて好みの空間にしてほしいとも。洗面台が小ぶりなのは、そのための配慮だ。
床の幾何学模様のタイルが効いた、ノスタルジックな雰囲気の洗面所。ここにもキッチン同様、「小家具」のフィロソフィーが生きている。洗面台にしたのはアンティークのテーブル。小ぶりなサイズ感と、タオルハンガーにした木製の万力がしゃれている。
そして、右側の穴の開いた謎の箱は――。「これは猫のトイレです。市販の猫トイレは機能性こそ優れているけれど、プラスチックの質感はやっぱり許せない(笑)。出入り口を丸く開けたカバーをDIYでつくりました」と石井さん。
将来的にこの物件を貸したり売却したときに、次のオーナーが猫トイレを必要としなければ、キャビネットを置いて好みの空間にしてほしいとも。洗面台が小ぶりなのは、そのための配慮だ。
マンションを快適な場所にするには
やわらかな日差しが注ぐ、心地よさそうな寝室。鳥のさえずりが聞こえてきそうな雰囲気だが、実はこの窓は室内窓。窓の向こうにはリビングがある。「マンションは、角部屋でなければ、一面にしか窓がない物件がほとんど。この一方向からの貴重な光と風を、できるだけ全体にまわすために、さまざまな工夫をしました」。
廊下や玄関に光を回すため、ドアにはガラスを組み込み、浴室は高い位置にガラスブロックをはめ込んだ。もれる光が心地よさにつながり、普通のマンションがぐっと快適な場所になる。
やわらかな日差しが注ぐ、心地よさそうな寝室。鳥のさえずりが聞こえてきそうな雰囲気だが、実はこの窓は室内窓。窓の向こうにはリビングがある。「マンションは、角部屋でなければ、一面にしか窓がない物件がほとんど。この一方向からの貴重な光と風を、できるだけ全体にまわすために、さまざまな工夫をしました」。
廊下や玄関に光を回すため、ドアにはガラスを組み込み、浴室は高い位置にガラスブロックをはめ込んだ。もれる光が心地よさにつながり、普通のマンションがぐっと快適な場所になる。
マンションで猫と暮らすこと
ポポ、メグ、ハナオ。石井さんの家には3匹の猫がいる。3匹は、夫婦+息子の家族であり、また、この猫一家は、石井さんにとってかけがえのない家族でもある。だから、猫たちが安全に暮らせる場所であるかどうかは常に考えているという。「以前は玄関を出入りするたびに、部屋に追い込んだり押さえたり大変だったので、新居では玄関内に内扉をつけて、二重扉にしました」。
採光、通風を遮らず、インテリア性にもこだわって、鉄のフェンスをDIY。猫にとって安全で、出入りもラク。海外のインテリアを思わせるクールな玄関に仕上がった。「玄関のたたきにココヤシマットを敷いてあるので、ときどき出してあげると大喜び。猫たちにとって特別な場所になりました」。
ポポ、メグ、ハナオ。石井さんの家には3匹の猫がいる。3匹は、夫婦+息子の家族であり、また、この猫一家は、石井さんにとってかけがえのない家族でもある。だから、猫たちが安全に暮らせる場所であるかどうかは常に考えているという。「以前は玄関を出入りするたびに、部屋に追い込んだり押さえたり大変だったので、新居では玄関内に内扉をつけて、二重扉にしました」。
採光、通風を遮らず、インテリア性にもこだわって、鉄のフェンスをDIY。猫にとって安全で、出入りもラク。海外のインテリアを思わせるクールな玄関に仕上がった。「玄関のたたきにココヤシマットを敷いてあるので、ときどき出してあげると大喜び。猫たちにとって特別な場所になりました」。
石井さんが自ら体験した、そんなセルフリノベーションの極意を綴った本が発売中だ。『Love Customizer 2 DIY×セルフリノベーションでつくる家』(エクスナレッジ)だ。「セルフリノベって実際どこまで自分でできるの?」の本音や「プロとのパートナーシップの築き方」から、「自由な壁のつくり方」「鉄の溶接の方法」「こだわりの資材の調達先」まで、気になる情報が満載。家具や小物など単品のDIYも20アイテム以上紹介されているので、リノベーションの計画がない人も、十分に楽しめて役に立つ一冊に仕上がっている。
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