コメント
RC造(鉄筋コンクリート造)一戸建て住宅の特徴
耐震性は? コストは? 冷房効率は? 鉄筋コンクリート造の住宅のメリット・デメリットについて覚えておきたいこと。
大村哲弥
2018年7月30日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo... もっと見る
酷暑がやってきました。外に出ず、自宅でじっと暑さが過ぎるのを待つという方も多いでしょう。さて、RC造(鉄筋コンクリート)の住宅は冷房効率はいいか悪いか、考えてみたことははありますか? コンクリートは、ひんやりと冷たいでしょうか? それとも、熱を持ち続けてしまうでしょうか?
正解は、「どちらもありえる」です。どういうことか、下で解説していきましょう。
「一戸建住宅の構造・工法~その特徴とメリット・デメリット~」では、一戸建住宅の一般的な構造・工法について整理しましたが、今回はRC造の一戸建て住宅に関して詳しくみてみましょう。
正解は、「どちらもありえる」です。どういうことか、下で解説していきましょう。
「一戸建住宅の構造・工法~その特徴とメリット・デメリット~」では、一戸建住宅の一般的な構造・工法について整理しましたが、今回はRC造の一戸建て住宅に関して詳しくみてみましょう。
耐火性、遮音性に優れるRC造
RC(Reinforced Concrete)とは、中に鉄筋を入れたコンクリートのことで、圧縮力には強いが引張力に弱いというコンクリートの弱点を、引張力に強い鉄筋を入れることで補完し、それぞれのメリットを兼ね備えた高い強度の構造体として利用する工法です。
最大のメリットは耐火性の高さです。鉄骨は不燃材ではあっても、火災などの高温の熱で強度が急激に落ちるため、耐火被服を施さなければ耐火材としては使えません。木材は火に弱い可燃材です。鉄筋コンクリートはそのままで耐火構造であり、RC造の耐火性の高さはここに由来します。
遮音性が高いというのもRC造のメリットです。空間を隔てる壁や床の遮音性能はその質量で決まってきます。それ以外の躯体に比べ、比重が大きい(重量が重い)RC造は、最も遮音性に優れる工法といえます。
RC(Reinforced Concrete)とは、中に鉄筋を入れたコンクリートのことで、圧縮力には強いが引張力に弱いというコンクリートの弱点を、引張力に強い鉄筋を入れることで補完し、それぞれのメリットを兼ね備えた高い強度の構造体として利用する工法です。
最大のメリットは耐火性の高さです。鉄骨は不燃材ではあっても、火災などの高温の熱で強度が急激に落ちるため、耐火被服を施さなければ耐火材としては使えません。木材は火に弱い可燃材です。鉄筋コンクリートはそのままで耐火構造であり、RC造の耐火性の高さはここに由来します。
遮音性が高いというのもRC造のメリットです。空間を隔てる壁や床の遮音性能はその質量で決まってきます。それ以外の躯体に比べ、比重が大きい(重量が重い)RC造は、最も遮音性に優れる工法といえます。
設計やデザインの自由度が高いRC造
設計やデザインの自由度が高いのもRC造の特徴です。
現場で鉄筋と型枠を組んで流体のコンクリートを流し込んで躯体を作るという特性から、建物の形状を比較的自由につくることができます。
コンクリートの構造体がそのまま外壁となることから、コンクリートの素材感や表情をストレートに見せた打ち放しや塗装仕上げによってソリッドでモダンな箱型の外観をデザインすることが可能です。また、重量のあるタイルや石を貼った仕上げなども可能です。
RC造は木造と異なり、風雨に強いため、勾配や軒の出のないフラットルーフとすることが可能であることも、モダンなイメージの建物デザインを追求する場合の大きなポイントとなります。
柱のない大スパンを実現することが容易なため、大きな吹き抜けや大きなガラス開口など開放感のある空間設計に有利です。
RC造は、柱・梁で構成されるラーメン構造と壁によって支える壁式構造の大きく2つに分けられます。低層の一戸建ての場合は壁式構造が一般的だと思われます。壁式構造では一定の壁量が必要とされるため、開口の大きさや位置などが制限されることがあります。
設計やデザインの自由度が高いのもRC造の特徴です。
現場で鉄筋と型枠を組んで流体のコンクリートを流し込んで躯体を作るという特性から、建物の形状を比較的自由につくることができます。
コンクリートの構造体がそのまま外壁となることから、コンクリートの素材感や表情をストレートに見せた打ち放しや塗装仕上げによってソリッドでモダンな箱型の外観をデザインすることが可能です。また、重量のあるタイルや石を貼った仕上げなども可能です。
RC造は木造と異なり、風雨に強いため、勾配や軒の出のないフラットルーフとすることが可能であることも、モダンなイメージの建物デザインを追求する場合の大きなポイントとなります。
柱のない大スパンを実現することが容易なため、大きな吹き抜けや大きなガラス開口など開放感のある空間設計に有利です。
RC造は、柱・梁で構成されるラーメン構造と壁によって支える壁式構造の大きく2つに分けられます。低層の一戸建ての場合は壁式構造が一般的だと思われます。壁式構造では一定の壁量が必要とされるため、開口の大きさや位置などが制限されることがあります。
耐久性や耐震性に関してはどうだろうか
堅固で丈夫なイメージのコンクリートは耐久性や耐震性の面でも、そのイメージどおりに木造や鉄骨造に比べて有利なのでしょうか。
雨や風に強く(耐候性)、腐食や錆の心配がなく、シロアリなどの被害もないという点ではRC造は木造や鉄骨造に比べ耐久性が高い工法といえます。
一方で、木造も鉄骨造もRC造も経年で劣化することは免れません。長持ちさせるポイントは、それぞれの材料や工法にふさわしい適切な劣化対策やメンテナンスが行われるかどうかです。法隆寺が築1300年の世界最古の木造建築物であることを見てもわかるように、木造も適切なメンテナンスを施せば長持ちします。
RC造の経年劣化は中性化による強度低下です。
本来アルカリ性のコンクリートは、空気中の二酸化炭素(CO2)の影響で表面から中性化していきます。中性化が鉄筋の深さまで達すると鉄筋が腐食(錆)し膨張し、コンクリートにひびや剥離が生じます。そこから侵入したニ酸化炭素や雨水は、さらなる鉄筋の腐食やコンクリートの劣化を加速させ、耐荷重性能の低下など構造上の問題にいたる事態が引き起こされます。
適正な中性化対策とメンテナンスを施せば、コンクリートの寿命は、100年とも150年とも言われています。
耐震性に関してはどうでしょうか。
現在の建物は、建築基準法により、工法によらずすべての建物において一定の耐震性能を満たすように義務づけられています。
建築基準法で求めれている耐震基準は、住宅性能表示における耐震等級1のレベルです。具体的には、震度5強の地震で損傷を生じない、震度6強~7の大地震でも倒壊・崩壊しないという耐震性能です。留意したいのが、「倒壊・崩壊しない」というのは、建物は損傷を受けるが人命が損なわれるような壊れ方をしない、という意味であり、地震被害後に住宅として機能するかどうか、住み続けるかどうか、あるいは補修できる程度の損傷かどうかは、また別の話であるということです。住宅性能表示では耐震等級は3ランクあり、建築基準法で求められている耐震等級1は最も低いレベルです。
耐震性に関しては工法の違いよりも、住宅性能表示制度における耐震等級のどのランクを実現した建物なのか、という違いが大きいといえます。
堅固で丈夫なイメージのコンクリートは耐久性や耐震性の面でも、そのイメージどおりに木造や鉄骨造に比べて有利なのでしょうか。
雨や風に強く(耐候性)、腐食や錆の心配がなく、シロアリなどの被害もないという点ではRC造は木造や鉄骨造に比べ耐久性が高い工法といえます。
一方で、木造も鉄骨造もRC造も経年で劣化することは免れません。長持ちさせるポイントは、それぞれの材料や工法にふさわしい適切な劣化対策やメンテナンスが行われるかどうかです。法隆寺が築1300年の世界最古の木造建築物であることを見てもわかるように、木造も適切なメンテナンスを施せば長持ちします。
RC造の経年劣化は中性化による強度低下です。
本来アルカリ性のコンクリートは、空気中の二酸化炭素(CO2)の影響で表面から中性化していきます。中性化が鉄筋の深さまで達すると鉄筋が腐食(錆)し膨張し、コンクリートにひびや剥離が生じます。そこから侵入したニ酸化炭素や雨水は、さらなる鉄筋の腐食やコンクリートの劣化を加速させ、耐荷重性能の低下など構造上の問題にいたる事態が引き起こされます。
適正な中性化対策とメンテナンスを施せば、コンクリートの寿命は、100年とも150年とも言われています。
耐震性に関してはどうでしょうか。
現在の建物は、建築基準法により、工法によらずすべての建物において一定の耐震性能を満たすように義務づけられています。
建築基準法で求めれている耐震基準は、住宅性能表示における耐震等級1のレベルです。具体的には、震度5強の地震で損傷を生じない、震度6強~7の大地震でも倒壊・崩壊しないという耐震性能です。留意したいのが、「倒壊・崩壊しない」というのは、建物は損傷を受けるが人命が損なわれるような壊れ方をしない、という意味であり、地震被害後に住宅として機能するかどうか、住み続けるかどうか、あるいは補修できる程度の損傷かどうかは、また別の話であるということです。住宅性能表示では耐震等級は3ランクあり、建築基準法で求められている耐震等級1は最も低いレベルです。
耐震性に関しては工法の違いよりも、住宅性能表示制度における耐震等級のどのランクを実現した建物なのか、という違いが大きいといえます。
熱容量が大きく、気密性が高いコンクリート。冷暖房効率は高い
熱容量とは、壁などの温度を1K(ケルビン)上昇させるのに必要な熱量のことで、熱容量が大きい物質は、暖まりにくく、冷めにくいという特性を持つことになります。この特性は、室内温度の変動幅を抑える効果があります。
この室内の温度の変動幅が小さいことと、気密性が高くすき間から熱が逃げにくいことは、エアコンの負荷を下げることにつながり、結果的に冷暖房効率が上がることにつながります。
具体的には、夏場はエアコンのピーク時の設定温度をさほど低くしなくても定常運転を続ければ快適に過ごせる、冬場では暖房が効くまでの立ち上がりに時間がかかるが、一旦室内の温度が上がってしまえば室温が下がりにくいということになります。
エアコンの性能表示が、同じ畳数の部屋の場合、木造に比べるとRC造の方が少ないパワーで対応できるようになっているのはこうした理由からです。
熱容量が大きいことによる築熱効果を活用するには、適切な断熱(できれば外断熱)がなされていることが前提です。
また、気密性が高いということは、室内の空気が逃げにくく、温度が上がり水蒸気を含んだ室内の空気が、外気に近く温度が下がった壁面などで冷やされて、室内側で結露してしまうというリスクが高くなります。結露の発生を防ぐためには、熱が通りやすい躯体の隅角部などに適切に断熱を施すことが求められます。
熱容量とは、壁などの温度を1K(ケルビン)上昇させるのに必要な熱量のことで、熱容量が大きい物質は、暖まりにくく、冷めにくいという特性を持つことになります。この特性は、室内温度の変動幅を抑える効果があります。
この室内の温度の変動幅が小さいことと、気密性が高くすき間から熱が逃げにくいことは、エアコンの負荷を下げることにつながり、結果的に冷暖房効率が上がることにつながります。
具体的には、夏場はエアコンのピーク時の設定温度をさほど低くしなくても定常運転を続ければ快適に過ごせる、冬場では暖房が効くまでの立ち上がりに時間がかかるが、一旦室内の温度が上がってしまえば室温が下がりにくいということになります。
エアコンの性能表示が、同じ畳数の部屋の場合、木造に比べるとRC造の方が少ないパワーで対応できるようになっているのはこうした理由からです。
熱容量が大きいことによる築熱効果を活用するには、適切な断熱(できれば外断熱)がなされていることが前提です。
また、気密性が高いということは、室内の空気が逃げにくく、温度が上がり水蒸気を含んだ室内の空気が、外気に近く温度が下がった壁面などで冷やされて、室内側で結露してしまうというリスクが高くなります。結露の発生を防ぐためには、熱が通りやすい躯体の隅角部などに適切に断熱を施すことが求められます。
RC造の建築費は木造の1.5倍~2倍の水準
一般にRC造は木造の1.5倍~2倍の建築費がかかると言われています。実際の建築単価に関しては、規模・仕様・建築の時期などによって異なり一概に言えませんが、平均的な木造の建築費単価が50~70万円/坪程度だとすると、RC造の場合は、80~100万円/坪の水準でしょうか。
RC造がコスト高になる主な要因として、一定のボリュームの躯体(柱・梁の太さや床・壁の厚さ)が求められるため材料費がかかること、その結果、建物の重量が重くなり、地盤工事や基礎工事などの費用がかかること、コンクリート打設など現場施工が基本であり、工期も長く、現場の経費や人件費がかさむこと、などが挙げられます。
耐火性、遮音性、自由度、耐候性、耐久性、気密性など先にみたRC造の優れた点は、すべてこの鉄筋コンクリートという部材自体に由来しています。RC造の建築費が高いのは、こうした高い性能と表裏一体であり、他の工法との比較に際しては、求める性能と許容できるコストとのバランスの視点からの判断がポイントになります。
建築士・建築家を探す
建築の記事をもっと読む
コンクリート打ちっぱなしインテリアの写真を探す
一戸建住宅の構造・工法、その特徴とメリット・デメリット
一般にRC造は木造の1.5倍~2倍の建築費がかかると言われています。実際の建築単価に関しては、規模・仕様・建築の時期などによって異なり一概に言えませんが、平均的な木造の建築費単価が50~70万円/坪程度だとすると、RC造の場合は、80~100万円/坪の水準でしょうか。
RC造がコスト高になる主な要因として、一定のボリュームの躯体(柱・梁の太さや床・壁の厚さ)が求められるため材料費がかかること、その結果、建物の重量が重くなり、地盤工事や基礎工事などの費用がかかること、コンクリート打設など現場施工が基本であり、工期も長く、現場の経費や人件費がかさむこと、などが挙げられます。
耐火性、遮音性、自由度、耐候性、耐久性、気密性など先にみたRC造の優れた点は、すべてこの鉄筋コンクリートという部材自体に由来しています。RC造の建築費が高いのは、こうした高い性能と表裏一体であり、他の工法との比較に際しては、求める性能と許容できるコストとのバランスの視点からの判断がポイントになります。
建築士・建築家を探す
建築の記事をもっと読む
コンクリート打ちっぱなしインテリアの写真を探す
一戸建住宅の構造・工法、その特徴とメリット・デメリット
おすすめの記事
地域別特集
美しい伝統を守りながら、現代的技術で暮らしを快適に。京都に建つ14の住まい
文/藤間紗花
Houzzでみつけた、京都市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
写真特集
Houzzでみつけた日本の都市に建つ家まとめ
文/藤間紗花
国内12エリアに建つ住まいの特徴を、各地域の専門家の解説とともにご紹介してきたシリーズ。これまでご紹介した記事を、専門家から伺った各都市の住まいの特徴とともに、まとめてお届けします。
続きを読む
地域別特集
地域の自然と眺望を活かした、明るく気持ちのいい空間。仙台に建つ13の住まい
文/藤間紗花
宮城県中部に位置する仙台市。Houzzでみつけた仙台市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
少ない日照時間でも明るさを取り込む。新潟市の家11選
文/藤間紗花
新潟県北東部に位置する新潟市。Houzzでみつけた新潟市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
唯一無二の眺めと自分らしいデザインを楽しむ。広島市に建つ14の住まい
文/藤間紗花
広島県西部に位置する広島市。Houzzでみつけた広島市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
地域別特集
風と光を気持ちよく届けるデザインを都市部で実現。大阪に建つ12の住まい
文/藤間紗花
近畿地方の中心都市である、大阪府・大阪市。Houzzでみつけた大阪市内に建つ住まいの事例を、手がけた専門家の解説とともにご紹介します。
続きを読む
建築・デザイン
日本的感性を象徴する「茶室」の伝統と革新性
茶道とともに成立し500年にわたり発展してきた茶室。茶聖・千利休が伝統建築を革新して生まれた茶室は、今も「利休の精神」により革新され続け、新しい表現を生み出し続けている建築形式です。
続きを読む