My Houzz:暮らしながら手を加え、少しずつ育てた愛着インテリア
Houzzでインテリアやライフスタイルの特集記事を執筆しているヘザー・ブラッキンさんが、海外暮らしやインテリアの仕事の経験も活かしながらつくり上げてきた部屋をご紹介します。
田村敦子|Atsuko Tamura
2016年11月10日
Freelance Editor
インテリア&ライフスタイルプロデューサー、住空間収納プランナーのヘザー・ブラッキンさんがご主人と愛犬とともに暮らすのは、東京の郊外にある集合住宅。中庭を囲んで2階建ての各戸が棟続きに並ぶ、「タウンハウス」と呼ばれる建物だ。半地下階に寝室、1階に仕事部屋とバスルームがあり、2階はひと続きのLDK。キッチンから独立した階段で屋上のルーフバルコニーに上がることができ、一戸建てのような感覚で暮らしを楽しめる、16年間住み慣れた家だ。新築で入居してから今に至るまで、ヘザーさんとご主人はほぼ絶え間なく、既成の居住スペースにコツコツと少しずつ手を加えて、自分たちらしい快適さを追求してきた。
2階のリビングの窓を背に置かれているのは、どっしりと存在感のあるお気に入りのソファ。「イギリスの祖父母の家で使われていたような、アームに厚みのある、ふんわりと包み込まれるような、トラッドな形のものが欲しかった」とヘザーさん。3人掛けを1台置くのではなく、2人掛けと1人掛けを、テーブルを囲むようにレイアウト。どちらも、秋冬はグレーのベルベット、春夏はオフホワイトの厚手コットンと、季節によってカバーを替えられる。
リビングの壁を、一目惚れした英国〈ファロー&ボール〉(日本では〈カラーワークス〉扱い)の美しいグレーでペイントしたのは6年ほど前。これが、入居以来初めてのウォールペイント経験だったという。マットでナチュラルな質感、光によって淡いラベンダー色のニュアンスを感じさせるこのグレーが、穏やかなニュートラルトーンでまとめられたソファコーナーにしっくり似合う背景になっている。
リビングの壁を、一目惚れした英国〈ファロー&ボール〉(日本では〈カラーワークス〉扱い)の美しいグレーでペイントしたのは6年ほど前。これが、入居以来初めてのウォールペイント経験だったという。マットでナチュラルな質感、光によって淡いラベンダー色のニュアンスを感じさせるこのグレーが、穏やかなニュートラルトーンでまとめられたソファコーナーにしっくり似合う背景になっている。
上の写真でソファの隣にある、ウォールナット材のクラシックなライティングビューローは、ドイツ在住時代に手に入れて持ち帰ってきたもの。一見異質な組み合わせのようだが、共通しているのは重厚感や存在感。そのバランスを考えて、ちょっと無骨なつくりのコーヒーテーブルをセレクト。たまたま東南アジア産のものだったが、重みのバランスがトラッドなスタイルのソファやビューローともマッチしている。
どんなHouzz?
住まい手:ヘザー・ブラッキンさん、ご主人の村井英二さん、ビアデッドコリーのボニー(10歳)
所在地:東京都
規模:延床面積102平方メートル
間取り:3LDK
建物の竣工:2000年
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ダイニングにあるアンティークのキャビネットは、ベルギー在住時代、住んでいた家の屋根裏に置き去られていたもの。その古い家は19世紀に薬局を営んでいたそうで、もとは商品陳列棚だったらしく、背面までガラスの凝ったつくり。大切に日本まで運んできた宝物だ。お母さまから受け継いだ食器やグラスを収納し、棚の上は、思い出のある絵や大切なコレクションのディスプレイスペースに。LDKの視線を集める、フォーカルポイントになっている。
食事以外のとき、テーブルには季節の果物を盛った大皿をセンターピースとして飾る。ヘザーさん宅のダイニングの、いつもの風景だ。
食事以外のとき、テーブルには季節の果物を盛った大皿をセンターピースとして飾る。ヘザーさん宅のダイニングの、いつもの風景だ。
1階のホームオフィスは、ヘザーさんが日中のほとんどを過ごす場所だ。この部屋の壁をペイントしたのは2年ほど前。机まわりの2面は、濃いグレーにした。アンティークのデスクや隣のキャビネットの白を引き立てるための選択だったが、ダークカラーの効果で、ものの多い空間がすっきりと引き締まり、落ち着いた印象になって大成功。シンプルな窓辺のシェードも壁色と揃え、背景として溶け込ませている。
仕事部屋ではあるが、のんびり読書をしたり縫い物をしたりすることもあり、くつろげるアームチェアも必需品。ちょっと休憩、というときにはこのチェアに座り、オンとオフをこの部屋でもこまめに切り替えながら、充実した時間を過ごしている。愛犬ボニーもよくここにやってきて、お昼寝をしているのだとか。
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窓前に置いたデスクにはあまり収納が多くないので、左脇の壁にずらりと手作りのオープン棚を並べた。執筆の仕事、インテリアの仕事それぞれに必要な資料や本、ノート、文房具などを分類して収納している。とはいえ、ここも仕事一辺倒のスペースではなく、パーソナルなお気に入りアイテムや思い出の写真が一緒に並ぶ、楽しく温かい雰囲気だ。
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仕事中のヘザーさんを見守る、小説家の母、森瑤子さんの写真。数多くのポートレートの中で、この写真が「私の知っている母の表情がそのまま写っていて、いちばん好き」だという。モンブランのインク瓶や香水瓶、執筆中に握っていると安心するの、と語っていたというアンモナイトの化石など、お母さまが仕事机に置いていた思い出の品が、今そのまま、ヘザーさんの仕事部屋にある。
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キャビネットに立てかけたのは、三姉妹の末の妹さんの住むイタリア・フィレンツェのミュージアムショップで見つけた、ドゥオモのデッサン画。その前にある写真は、神奈川に住む上の妹さんと、ヘザーさんの幼少の頃の写真と、3年前まで一緒に過ごした愛犬ベイリーの写真だ。大切な思い出とストーリーのあるパーソナルなディスプレイが、目にするたびにいつも心を温めてくれる。
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思い出の写真ディスプレイはLDKにも。この棚の上の写真は、最近思い立って、モノクロでプリントしてみたものをフォトフレームに入れて並べた。「ちょっとノスタルジックなテイストが加わり、インテリアにもよくなじむ、おすすめの方法です」とヘザーさん。
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思い出のあるアイテムや手作りの家具以外にも、ヘザーさん流インテリアに欠かせないものはまだある。そのひとつが、グレーという色へのこだわりだ。ベッドルームの壁を塗ることになったときは、〈ファロー&ボール〉のグレー系の色6種類のサンプルを取り寄せ、ペイントした紙を壁に貼って、朝、昼、夜それぞれの時間帯でどう見えるかをじっくり検討したという。「結局、リビングと同じ大好きなグレーを選ぶことになりました」。
洗いざらしのリネンや河原で拾った石などのもつ、グレイッシュなトーン。ブルーもグリーンもピンクも、そして白でも、グレーのニュアンスのあるものが好き、というヘザーさん。「自分がしっくりくるトーンを意識すると、居心地のよいインテリアづくりに必ず役立ちますよ」。インテリアに使う色も身に着ける色も、昔から自然とグレイッシュなトーンを選んでいて、それがとても気分に沿うのだという。
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ゾウのモチーフと大きなかごも、大好きなアイテム。かごは目につく場所に置いてあるものだけでも、ざっと10個以上あるという。リビングと寝室の壁を塗った、一目惚れの〈ファロー&ボール〉の美しいグレーの名前も偶然、「エレファンツ・ブレス」(ゾウの息)という名前だった。
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インテリアに興味をもったのは幼少期からだそうだが、手作りが好きなのはお父さまの影響。「既存の居住スペースに少しずつ手を加えて住むのは、父の故郷イギリスの一般家庭では当たり前のことでした。父は器用で、いつも家の中のどこかしらを修繕したり、手作りしたりしていましたね」。暮らしながら手を加えて、家を育てていくことが、自然に身についている。
最近のプロジェクトは、キッチンの吊戸棚の扉のリフレッシュ。ヘザーさんのDIYは、「気楽に、手に入りやすいもので、無理なく」が信条だ。戸棚の下に見えるのも、もとから持っていたミニチェストに合わせて、上半分を組み立てた食材用の棚。「既製品にサイズを合わせて足すだけなので、気楽だし簡単ですよ」とヘザーさん。
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家具のペイントも気軽に。シンプルなシェルフを白くペイントして、引き出し代わりのかごと大きなミラーを組み合わせ、玄関収納として生まれ変わらせた。引き出しには外出時に必要なサングラスや手袋などの小物を。季節の花を飾ることも忘れない。
玄関の靴箱の上のミニチェストは、ご主人専用の収納。もとはナチュラルな木の色だったが、黒板塗料でペイントして、チョークで中身を書いたら断然使いやすくなった。引き出しをあえて1つはずして文庫本を入れたアイデア、チョークの置き方や花の飾り方もさりげなく小粋だ。隣の壁にはハートの形に黒板塗料を塗ってメッセージボードに。
イギリスの大学でインテリアを学び、卒業後はベルギーのインテリアデザイン事務所で働いていたヘザーさん。その経験を活かし、現在はインテリアデコレーターや住空間収納プランナーとしても活躍している。そして、以前から興味のあった「書く」という仕事も加わり、インテリアの本や記事の執筆にも忙しい。Houzzでほぼ毎週掲載しているヘザーさん執筆の特集記事は、インテリアのプロと暮らしを楽しむ生活者、両方の視点があり、とても好評だ。
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