Houzzツアー:日本を愛するロシア人一家がつくった、和風の感性が光る家
床の間、行灯のような照明、手すきの壁紙……かつて日本に暮らし、日本文化を愛するロシア人一家がモスクワにつくりあげた、「和風の美」が光る家をご紹介します。
Екатерина Перминова
2016年11月5日
モスクワ大学が窓から見えるアパートメントに暮らすのは、元外交官の夫、東洋史学者の妻、13歳と15歳の子どもの4人家族。世界各地で暮らしてきたが、とりわけ気に入ったのが、4年を過ごした日本だ。だから、リフォームが決まったときにも、住まい手一家は、建築家のアリアナ・アーマドさんとデザイナーのタチアナ・カリヤキナさんに「日本の美をとりいれた家をつくってほしい」と強く要望した。
日本の伝統的住宅といえば、ミニマリストなスタイルだ。すっきりとしたライン、簡潔なフォルムと無駄のない配色で構成された空間をつくってほしいというのが、住まい手のリクエストだった。
日本の伝統的住宅といえば、ミニマリストなスタイルだ。すっきりとしたライン、簡潔なフォルムと無駄のない配色で構成された空間をつくってほしいというのが、住まい手のリクエストだった。
どんなHouzz?
住まい手:夫婦と子ども2人
規模:約156平方メートル
所在地:モスクワ
設計:アリアナ・アーマドとタチアナ・カリヤキーナ
まずアパートメントの間取りを変更することになった。リビング、キッチン、ダイニングを1つの空間とし、掃出窓から出られるバルコニーを設置すると、窓から降り注ぐ光が、空間全体を明るく照らすようになった。窓の外の喧騒をシャットダウンしたいときには、リモコンで窓ガラスを曇らせるシステムも導入している。
新設されたLDKの他に、マスターベッドルーム、2人の子どもたちのそれぞれの個室、ランドリールーム、2つのウォークインクローゼット、3つのバス・トイレがある。
住まい手:夫婦と子ども2人
規模:約156平方メートル
所在地:モスクワ
設計:アリアナ・アーマドとタチアナ・カリヤキーナ
まずアパートメントの間取りを変更することになった。リビング、キッチン、ダイニングを1つの空間とし、掃出窓から出られるバルコニーを設置すると、窓から降り注ぐ光が、空間全体を明るく照らすようになった。窓の外の喧騒をシャットダウンしたいときには、リモコンで窓ガラスを曇らせるシステムも導入している。
新設されたLDKの他に、マスターベッドルーム、2人の子どもたちのそれぞれの個室、ランドリールーム、2つのウォークインクローゼット、3つのバス・トイレがある。
人間工学に基づき、ハイテクを駆使したインテリアにしたいという要望もあったため、これらの要素も設計に導入した。また、インテリアには、手すきの壁紙など、日本のものや仕上げをとりいれている。和室の重要な建築要素である床の間にならったコーナーもつくり、ここに飾る掛け軸も日本に行ったときに購入した。
日本家屋の主要な材料といえば木材だ。木は自然の象徴であるだけでなく、生命力を象徴する芸術作品ともなる。日本文化において、木は非常に重要で、生命の美しさを示す存在である。住まい手一家は、日本滞在時代に手に入れた盆栽を今も大切に育てている。
家具はすべてロシアで注文制作したものだが、デザインは日本風だ。「ロシア人の職人と一緒に家具制作に取り組みました。時間をかけてスケッチを描いたり展示会をまわったりしましたね。最終的には、自然な風合いのある、とても機能的でエレガントな家具をつくることができました。天然のワックス仕上げがほこりや傷から家具を守ってくれます」とアーマドさん。
明るい布張りのアームチェアはフィンランド製のエルゴノミックデザイン。空間に、さわやかな趣とコンテンポラリーな北欧風の雰囲気をつくりだしている。
明るい布張りのアームチェアはフィンランド製のエルゴノミックデザイン。空間に、さわやかな趣とコンテンポラリーな北欧風の雰囲気をつくりだしている。
この家には、もう1つ、めずらしい特徴がある。ロシアの住宅には必ずあるベースボード(巾木)がないのだ。床と壁のつきあわせ部分は、床板とタイルを少し短くし、クロームで縁取りして仕上げている。壁と天井のつきあわせ部分にも溝をつくり、ところどころにアクセントライトを設置した。こうすることで、家のゾーニングをはっきりと意識させるだけでなく、空間の非対称性な面白さが明確になったという。
配色について、住まい手からはニュートラルな色(中間色)を使って欲しいというリクエストがあった。もちろん、明るい差し色は使っても構わないという。そこで、キッチンはオパール色でまとめ、家具にもなじむ色を選んだ。バックスプラッシュは白いガラス製だが、正面から見ないかぎりガラスの質感は目立たない。キャビネットの扉はMDFの塗装仕上げで、こちらも全体になじむ色を選んだ。
廊下の大きなミラーは、大工さんに造作してもらったもの。この廊下は、この家のさまざまな空間をつなぐ役割を果たしている。家族全員で過ごすLDK、それぞれの個室、ウォークインクローゼットやバストイレへは、この廊下を通って行き来する。
リビングルーム同様、マスターベッドルームにもハンドメイドの壁紙を使用。和風を旨とするという全体の設計コンセプトに沿って、柄のほとんどないものを選んだ。日本人は、無駄なものがなく広々と感じられる空間でこそ、自己の内面に集中できると考えるからだ。
「光の役割についても深く配慮しました。光は空間の力学を左右するものですから。光の表情については、さまざまな検討を行いました」とアーマドさん。照明器具についても、機能性だけでなく見た目も重視。和紙を張った行灯を思わせるボトルのような形のウォールライトは、住まい手夫妻が日本で購入し、持って帰ってきたものだ。
「光の役割についても深く配慮しました。光は空間の力学を左右するものですから。光の表情については、さまざまな検討を行いました」とアーマドさん。照明器具についても、機能性だけでなく見た目も重視。和紙を張った行灯を思わせるボトルのような形のウォールライトは、住まい手夫妻が日本で購入し、持って帰ってきたものだ。
リノベーションに際して、住まい手からは、バスタブはいらないのでシャワーだけを設置してほしいという希望があった。これも、「無駄なものは排する」という夫妻のモットーに沿ったもの。メインバスルームでは、トイレはガラス張りの個室で、バスルームとは別となっている。他の部屋では、ダウンライトとコーニス照明がアクセントになっている。
「住まい手が住みこなしていくうちに、もっと居心地のいい家になっていくと思います。お気に入りのものや写真や旅の思い出の品が増えていくうちに、一家の個性がもっとにじみでる家になっていくでしょう」とアーマドさんは話す。
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