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Houzzツアー:小さな空間を大きく使うアイデアが詰まったメルボルンの家
リノベーションで部屋と空間を拡張。吊り戸棚と視覚トリックでリビングをさらに大きく見せる工夫がある家です。
Joanna Tovia
2015年4月8日
ピッパ・コックス(Pippa Cocks)さんとベン・ホール(Ben Hall)さんの3年にわたるロンドンでの転勤生活中も、オーストラリアのメルボルンにある家は、ふたりの帰りを待っていた。平屋建ての住宅は、ベッドルーム2室、リビングルーム、小さなキッチンとバスルーム(トイレつき)という間取りだったが、もっとゆったりとした空間にしたいと考えたふたりは、〈ネスト・アーキテクツ〉に改築を依頼した。2階を増築し、そこにベッドルーム2室とバスルームを移し、1階には書斎とユーティリティールーム、明るいキッチンとリビングルームを配置することに。狭小空間に加えて、建築基準も厳しいことから、建築家のエミリオ・フスカルドさんは難題に直面することになった。
撮影:Lauren Bamford
どんなHouzz?
居住者:弁護士のベン・ホールさんと教師のピッパ・コックさん。
所在地:オーストラリア、メルボルン郊外のアルバート・パーク
建築家:ネスト・アーキテクツ(Nest Architects)のエミリオ・フスカルドさんとイモージェン・プラーさん
規模:増改築前は77平方メートル、増改築後は110平方メートル。敷地面積は116平方メートル
予算:400,000オーストラリアドル
メルボルン郊外のアルバート・パークの裏通りにある労働者向けの小さな平屋建ての家は、魅力的な部分はたくさんあったが、スペースと光がまったく足りていなかった。そこで、フスカルドさんは、居住者夫妻が1日のうち大半を過ごす場所、つまりキッチンを、家の背面から、北に面した全面に移動することにした(南半球では北から日光が入る)。そうすると、今までほとんど使われていなかった前庭をキッチンガーデンにして、料理用のハーブや野菜を育てることができるとわかると、居住者夫妻もすぐにそのアイデアに賛同した。撮影:Lauren Bamford
どんなHouzz?
居住者:弁護士のベン・ホールさんと教師のピッパ・コックさん。
所在地:オーストラリア、メルボルン郊外のアルバート・パーク
建築家:ネスト・アーキテクツ(Nest Architects)のエミリオ・フスカルドさんとイモージェン・プラーさん
規模:増改築前は77平方メートル、増改築後は110平方メートル。敷地面積は116平方メートル
予算:400,000オーストラリアドル
メルボルン郊外のアルバート・パークの裏通りにある労働者向けの小さな平屋建ての家は、魅力的な部分はたくさんあったが、スペースと光がまったく足りていなかった。そこで、フスカルドさんは、居住者夫妻が1日のうち大半を過ごす場所、つまりキッチンを、家の背面から、北に面した全面に移動することにした(南半球では北から日光が入る)。そうすると、今までほとんど使われていなかった前庭をキッチンガーデンにして、料理用のハーブや野菜を育てることができるとわかると、居住者夫妻もすぐにそのアイデアに賛同した。撮影:Lauren Bamford
キッチンを通りに面した位置に配置するのはよくあることではないし、フスカルドさんもその点は承知していたが、こうしたことで、居住者夫妻は料理をしながら通りの眺めを楽しめるようになった。「それに、30平方メートル弱しかない裏庭にゆとりをもたせることができました。通りを行き交う近所の人とコミュニケーションをとれることは、住宅地に暮らす楽しみのひとつです。コミュニティに溶け込んでいるという気持ちになれますし」とフルカルドさん。
内部からは、フレンチドアにはめ込まれたプランテーションシャッターで、通りに対する開放性をコントロールしている。フレンチドアは、窓の代わりに設置したものだ。
内部からは、フレンチドアにはめ込まれたプランテーションシャッターで、通りに対する開放性をコントロールしている。フレンチドアは、窓の代わりに設置したものだ。
棚やキャビネットには、最高級にスタイリッシュなものだけを選んで飾るのでなく、細々とした日常的なアイテムを飾るほうがいい、とフスカルドさんは提案した。「ご夫妻の生活に負担をかけるのではなく、生活の背景となるような家をつくりたいと考えました。なにしろ、この家はご夫妻が暮らすための家であって、建築家の作品ではありませんから」
このキャビネットには引き戸がついており、中のものを見せたり隠したりすることができる。キャビネットの後ろ側は、正面の扉を入ったところにあるエントリーホールになっている。
このキャビネットには引き戸がついており、中のものを見せたり隠したりすることができる。キャビネットの後ろ側は、正面の扉を入ったところにあるエントリーホールになっている。
夫妻は、キッチンが家の他の部分とは分離独立した空間になっている点が気に入っている。LDKを一体化する最近のトレンドとは逆を行く設計だ。
「そこは私も気に入っている点です」とフスカルドさんは言う。キッチンが独立しているおかげで、アート作品を飾るコーナーや壁が増えるだけでなく、ここを中心として家全体を二つに分け、両側にコックスさんとホールさんがそれぞれひとりの時間をもてる空間をつくった。
自立型オーブン、レンジフード:Ilve
「そこは私も気に入っている点です」とフスカルドさんは言う。キッチンが独立しているおかげで、アート作品を飾るコーナーや壁が増えるだけでなく、ここを中心として家全体を二つに分け、両側にコックスさんとホールさんがそれぞれひとりの時間をもてる空間をつくった。
自立型オーブン、レンジフード:Ilve
オープンシェルフにはビクトリアンアッシュ(ユーカリノキ)を使い、クリアオイルで仕上げた。カウンタートップにはステンレスを使用。夫妻は、ステンレスの見た目、感触だけでなく、機能性とコストパフォーマンスが気に入っている。造作キャビネットには、コストと耐久性を考えて、積層板を使用した。「この家の控えめな雰囲気によくあると思います」とフスカルドさん。
カスタム設計のシンクはカウンターと一体になっている。テーブルはカントリー風だ。フスカルドさんは当初、キッチンにアイランドを設置することを提案した(当時の間取り図は末尾にある)が、夫妻は今まで使っていたテーブルとチェアを使いたいとのことだった。その通りにしてよかった、とフスカルドさんも言っている。
キッチンとリビングの間にには、広めのランドリールームを配置した。「ホールさんはスキューバダイビングが大好きなので、海でひと泳ぎした後、水びたしで砂まみれのダイビング器材をきれいに洗い、ウェットスーツを干せるように設計しました」
Seima社製セラミックシンク、Posh Solus社製の蛇口:Reece
Seima社製セラミックシンク、Posh Solus社製の蛇口:Reece
リビングルームは視覚のトリックで実際よりも広く見せている。天井を黒く塗り、その下に白い帯状の板をはめこんだ。「こうすると、板がつくる視覚効果によって、実際の天井高がわからなくなります。背後になにかが見えると、さらに奥があるように感じるものなんです」とフスカドさん。部屋の端にある天窓と、裏庭に面する開口部に新たに設置されたガラスの折戸から、自然光がたっぷりと入る。
Gray Wikkelso社製ソファー:Angelucci 20th Century;グリーン・ビンテージ Hans Wegner ソファー:twenty21
Gray Wikkelso社製ソファー:Angelucci 20th Century;グリーン・ビンテージ Hans Wegner ソファー:twenty21
吊り棚は小さなバスルームでよく使われるトリックで、空間を実際より広く見せる効果がある。ミッドセンチュリー・モダンの家具を選んで、空間を明るく開放的に見せている。
「この家に前からあったディテールを持ち味を活用しました。ハードで重い雰囲気や気取った感じにはしたくなかったんです。この家の持ち味に合いませんから」とフスカルドさん。
「この家に前からあったディテールを持ち味を活用しました。ハードで重い雰囲気や気取った感じにはしたくなかったんです。この家の持ち味に合いませんから」とフスカルドさん。
リビングダイニングの上方にあたる部分の白い板を抜いて照明を設置し、また空間の区分けを示すようにしている。雄牛のポスターは、夫妻がパリで購入したオリジナルの作品で、広告美術館(Musée de la Publicité)での展覧会用の広告だ。
Dining Table One: Luke; chairs: Hal, Space
Dining Table One: Luke; chairs: Hal, Space
階段下のスペースを利用してつくったホームオフィスは、フスカルドさんのお気に入りのひとつだ。「この書斎はよくできたと思っています。家にとてもなじんでいますよね。もう一室別につくるのではなく、ここにある幅を利用して、共用のオフィスにしたらいいじゃないか、とひらめいたんです。階段下を活用しない手はありませんでした。デスクの上を歩いて2階に昇る形になっています」とフスカルドさん。
フスカルドさんが手がける家では、たいていの場合、デスクを家の中央に配置することを考える。「家で仕事をしたり勉強したりする場合は、自分が家の一部だと思えること、家の他の場所で起こっていることを観察できることが大事だと思うんです」とフスカルドさん。
フスカルドさんが手がける家では、たいていの場合、デスクを家の中央に配置することを考える。「家で仕事をしたり勉強したりする場合は、自分が家の一部だと思えること、家の他の場所で起こっていることを観察できることが大事だと思うんです」とフスカルドさん。
右の隣家との1.5メートルの隙間があったので、リノベーション中も施工者が動き回ることができた。
この家のシンプルな形状を見たとき、フスカルド氏は小さな子供が描く典型的な家を思い出したと言う。「道路から眺めると、非常にフラットな石造りのファサードは、スペインの修道院のような風情があったので、家の背面のデザインにその雰囲気を活かしました」
この家のシンプルな形状を見たとき、フスカルド氏は小さな子供が描く典型的な家を思い出したと言う。「道路から眺めると、非常にフラットな石造りのファサードは、スペインの修道院のような風情があったので、家の背面のデザインにその雰囲気を活かしました」
全面は子供が描く家のようにシンプルにして、背面のデザインにひねりを加えている。「前面のデザインを解釈して、背面のデザインに活かし、前面と背面の間に一つの対話を生みだすことにしました。もちろん、ちょっとした遊び心を加えたい、という気持ちもありました」とフスカルドさん。
2階のベッドルームには色付きの丸窓と、木製の板でスクリーニングしたドアが設置され、隣家の庭が丸見えにならないようにしている。 密集した住宅地なので、プライバシー保護に関して厳しい規制があるためだ。
スツール:Tolix; Scout Iron Bed:Scout House
スツール:Tolix; Scout Iron Bed:Scout House
カラフルな丸窓は、隣家のプライバシーを侵害することなく光を取り入れることができる。「背面の壁について、前面の壁のデザインを取り入れつつ遊び心のあるデザインを考案するのは、なかなか大変でした。よい感じにしあがってよかったです」とフスカルドさん。
メインのベッドルームは南向き、ゲスト用ベッドルームは北向きに配置した。
メインのベッドルームは南向き、ゲスト用ベッドルームは北向きに配置した。
家のその他の部分の色使いや材質はシンプルだが(家の全体を明るく、開放感のあるものにするため)、スキューバダイビング好きのホールさんの人柄を反映して、バスルームは水中のような雰囲気に仕上げた。天窓から入る光にタイルの色が映え、光あふれるバスルームになっている。
タイル: Bisazza; シンク、トイレ; シンク設備: Reece
タイル: Bisazza; シンク、トイレ; シンク設備: Reece
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