Houzzツアー:受け継いだ素材をリノベーションで再生。家族の絆が生きるコンテンポラリーな住まい
祖父が住んでいた空間、祖母の家で使われていた木材、愛用の肘掛け椅子。思い出深い大切なものたちをを新居に取り入れた、家族3世代のあたたかな絆が感じられるマンションリノベーション。
takako kawaguchi
2016年2月10日
家族や親戚ととても仲がよく、友人との交流も多いIさんご夫妻。2人の共通の趣味である料理を楽しみながら、たくさんのゲストとキッチンや食卓を囲めたらと、新婚間もない頃から住まいへの思いがふくらんでいった。そこで奥さまのおじいさまが亡くなって以来空き家になっていた、マンションの部屋をリノベーションすることを検討。おじいさまがマンションオーナーだったため、部屋は広めの特別仕様に作られており、さらに隣の賃貸用だった1室もつなげることで、96平方メートルの空間を確保することができた。‘
どんなHouzz?
家族構成:Iさん夫婦
所在地:東京都杉並区
専有面積:96平方メートル
構造:RC造
設計・施工:空間社
竣工:2014年12月
フルスケルトンにしてのリノベーション後は、もとおじいさま宅だったエリアを、LDKを中心としたオープン空間に。色や素材づかいが目を惹くキッチンは幅284センチと充分なボリュームをもたせ、リノベーションにあたって最も力を注いだ部分である。「皆でワイワイ囲める」ダイニングテーブルは、オーク材とアイアンで造作した、8人くらい座れる大きなサイズ感。広々としたLDKのキーアイテムとなっている。
キッチンの他にもうひとつ、こだわり抜いたのが写真左手のワークスペース。自宅で仕事をすることも多いご主人の専用エリアだ。ここは対面式カウンターを設けることで、うまくスペース分けをしつつも、LDKのオープン感を損なわない設計に。カウンター越しにリビング側を向いて作業する形なので、視界が明るく広がり、仕事にも集中できる、ご主人の希望を実現した一角だ。
実はこのカウンターの木材、青森に住むご主人のおばあさま宅の壁に貼られていた青森ヒバ材を転用したもの。Iさん宅のリノベーションと時を同じくして、祖母宅の建て替えがあったため、ご主人のお父さまや兄弟が壁から丁寧にはがして送ってくださったのだそう。
家族構成:Iさん夫婦
所在地:東京都杉並区
専有面積:96平方メートル
構造:RC造
設計・施工:空間社
竣工:2014年12月
フルスケルトンにしてのリノベーション後は、もとおじいさま宅だったエリアを、LDKを中心としたオープン空間に。色や素材づかいが目を惹くキッチンは幅284センチと充分なボリュームをもたせ、リノベーションにあたって最も力を注いだ部分である。「皆でワイワイ囲める」ダイニングテーブルは、オーク材とアイアンで造作した、8人くらい座れる大きなサイズ感。広々としたLDKのキーアイテムとなっている。
キッチンの他にもうひとつ、こだわり抜いたのが写真左手のワークスペース。自宅で仕事をすることも多いご主人の専用エリアだ。ここは対面式カウンターを設けることで、うまくスペース分けをしつつも、LDKのオープン感を損なわない設計に。カウンター越しにリビング側を向いて作業する形なので、視界が明るく広がり、仕事にも集中できる、ご主人の希望を実現した一角だ。
実はこのカウンターの木材、青森に住むご主人のおばあさま宅の壁に貼られていた青森ヒバ材を転用したもの。Iさん宅のリノベーションと時を同じくして、祖母宅の建て替えがあったため、ご主人のお父さまや兄弟が壁から丁寧にはがして送ってくださったのだそう。
カウンターを近くで見ると、経年変化でほどよく飴色になった良材から、遠方に住むおばあさまのあたたかさがほんのりと伝わってくるような心地に。「リノベーションでリユース材を使うことは最近よくありますが、このようにご家族のつながりで得られた再生材というのはめったにありません。何十年かに一度のタイミングがピタリと合った運命的なお宅ですね」とリノベーションを専門に手掛ける空間社・設計担当の大島友香さん。リノベーション オブ ザ イヤー2015 では「リユース賞」を受賞し、古いものを大切に使い継いでいくという、リノベーションならではの魅力を感じる物件として高い評価を受けた。
幅180センチほどのテーブル部分で書類を広げたり、パソコンで仕事をしていても、絶妙な高さのカウンターのおかげでリビング側からは目につかず、急な来客にもあわてず対応できる。約2畳のスペースには仕事関係のものの他、趣味の楽器や書籍類も並べてある。
幅180センチほどのテーブル部分で書類を広げたり、パソコンで仕事をしていても、絶妙な高さのカウンターのおかげでリビング側からは目につかず、急な来客にもあわてず対応できる。約2畳のスペースには仕事関係のものの他、趣味の楽器や書籍類も並べてある。
グリーンのキャビネットが印象的なキッチン。キャビネット本体はイケアで買ったもので、そこに1200色の中から悩みに悩んだ末に選んだ、シックなトーンのグリーンをペイントした。キッチン背面の壁をライトブルーにした個性的な配色は、奥さまがインスタグラムで見つけた写真にインスパイアされたものだとか。
「ペットボトルやスパイス類を置いてもリビング側から見えないように」との要望を叶える形で、ガスレンジまわりの立ち上がりは高めに設定。タイル好きな奥さまが一目惚れしたという幾何学柄タイルを貼り、キッチンにレトロモダンな雰囲気を添えている。
壁面の飾り棚や、キャビネットに合わせたステンレスのカウンタートップは造作したもの。
右写真で書棚の奥にあるのは、大容量のパントリー。おもてなし好きな夫妻らしく、お酒や乾物などをショップのように並べて保存してあり、ゲスト自らがここで好きなものを選ぶことも。掃除機などの生活用品やアウターをちょっと置いておくこともでき、便利なスペースだ。
「ペットボトルやスパイス類を置いてもリビング側から見えないように」との要望を叶える形で、ガスレンジまわりの立ち上がりは高めに設定。タイル好きな奥さまが一目惚れしたという幾何学柄タイルを貼り、キッチンにレトロモダンな雰囲気を添えている。
壁面の飾り棚や、キャビネットに合わせたステンレスのカウンタートップは造作したもの。
右写真で書棚の奥にあるのは、大容量のパントリー。おもてなし好きな夫妻らしく、お酒や乾物などをショップのように並べて保存してあり、ゲスト自らがここで好きなものを選ぶことも。掃除機などの生活用品やアウターをちょっと置いておくこともでき、便利なスペースだ。
入居前に撮ったこちらの写真では、パントリーの入口を囲むようなフルオープン棚にご注目いただきたい。趣味関連などの大切な本がたくさんあるという夫妻のライフスタイルに合わせ造作した、インパクトのある見せる本棚だ。「パッと目につく場所なのでビジュアルの美しさも重視したいと思い、棚板を固定にしてラインが揃うようにしました。本の高さが合わず棚に収まらない、ということがないよう、事前にお持ちの本のサイズを測っていただき、それをもとに高さを分割しています。真ん中はディスプレイに使いたいとか、上段はCD用に、などのご要望も時間をかけてヒアリングしました」と大島さん。空間社のリノベーションは収納計画も徹底しており、オーナーの持ち物量を把握し、住み始めた後に物があふれることのないよう工夫を凝らすことでも定評がある。「キッチンキャビネットのようなクローズ収納やこの本棚のようなオープン収納といった具合に、“見せる”と“隠す”の収納バランスをとるのも空間社の得意技です」。
子孫の世代がこうしてリノベーションすることを予測してか、奥さまのおじいさまはこのマンションを建てる際に、自邸と賃貸用隣室の間の壁を一部分だけ、撤去しやすいコンクリートブロックにしてくれていたというから驚きだ。キッチン背面のドア部分がちょうどその場所にあたり、そこを抜くことで無理なく2室をつなげることができた。
もとおじいさま宅だった空間はLDK+ワークスペース+フリースペースのオープンエリアに、賃貸用だった空間は寝室やバスルームなどのプライベートエリアにと、区分けも自然とまとまった。
もとおじいさま宅だった空間はLDK+ワークスペース+フリースペースのオープンエリアに、賃貸用だった空間は寝室やバスルームなどのプライベートエリアにと、区分けも自然とまとまった。
南に面し、いつも明るくあたたかな陽射しがいっぱいのリビング。ここも収納はオープンにし、おしゃれな小物を飾りながらすっきりと片づけられるスタイルに。
手前のアームチェアは、奥さまがおじいさまから譲り受けたもの。古きよきものを愛する夫妻が選りすぐったインテリアに溶け込み、時代を経たものが持つ魅力を漂わせながら、今も現役で活躍している。
LDKの床材は比較的フシが多めで味わいがあるラスティックオーク。実(さね=板側面にある凸部分のこと)が黒いタイプを使い、仕上げたときに目地のような黒いラインが楽しめるようにした。「LDKがとても広いうえ、幅広の床材をご希望でしたので、プレーンなタイプよりはラインを効かせてアクセントにしたほうが引き締まって見えるのではと思いました」(大島さん)。アイアン使いのダイニングテーブルやキッチンのタイルともぴったりな雰囲気。
手前のアームチェアは、奥さまがおじいさまから譲り受けたもの。古きよきものを愛する夫妻が選りすぐったインテリアに溶け込み、時代を経たものが持つ魅力を漂わせながら、今も現役で活躍している。
LDKの床材は比較的フシが多めで味わいがあるラスティックオーク。実(さね=板側面にある凸部分のこと)が黒いタイプを使い、仕上げたときに目地のような黒いラインが楽しめるようにした。「LDKがとても広いうえ、幅広の床材をご希望でしたので、プレーンなタイプよりはラインを効かせてアクセントにしたほうが引き締まって見えるのではと思いました」(大島さん)。アイアン使いのダイニングテーブルやキッチンのタイルともぴったりな雰囲気。
玄関脇にあるフリースペースは2方向をオープンにできる仕様で、LDKとそのままつながっている感覚。ゲストの寝室として使ったり、将来的には子供部屋にする可能性も。
もと賃貸住居だった、現在のプライベートエリア。
左写真の廊下や洗面所の天井に使われているのは、先述した青森ヒバ材。水に強いという性質と、量に限りがあることからこのスペースに使うことが決定した。傷んだ部分を少し削った際には、青森ヒバ特有の澄んだ香りが漂ったという。
右写真は寝室。右側の壁は淡いグリーンにペイントしてある。左の壁面は全面をクローゼットにし、こちらも収納計画はばっちり。
左写真の廊下や洗面所の天井に使われているのは、先述した青森ヒバ材。水に強いという性質と、量に限りがあることからこのスペースに使うことが決定した。傷んだ部分を少し削った際には、青森ヒバ特有の澄んだ香りが漂ったという。
右写真は寝室。右側の壁は淡いグリーンにペイントしてある。左の壁面は全面をクローゼットにし、こちらも収納計画はばっちり。
タイルの質感や雰囲気が好きで、インテリアのポイントとして取り入れたいと考えていた奥さま。トイレの手洗い壁面には、ゲストが楽しい気分になるようなバティックモチーフを貼り込み、洗面所には優しいベージュをセレクト。
夫妻両家、3世代のつながりがあちこちに息づいているIさん邸。壁や天井の木材を目にしては、青森の祖母を身近に感じ、思いを馳せるのも幸せな瞬間。お正月には奥さまの親戚一同が集まり、思い出の多い祖父宅が孫の手によって見事に再生したことを喜びあったとも。家や素材を通じて2人に託された家族の思いは、これからも大切に受け継がれ、アップデートされていくことだろう。
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