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Houzzツアー:ボリビアのエコ建築の農園住宅とサステナブルな暮らし
サステナブルな生活と住宅を求めて、ボリビアで実現したエコ建築。オランダから移住した夫妻の、自然と地域コミュニティとともにある暮らしをご紹介します。
Louise Lakier
2016年6月19日
ピーテル・デ・ラードさんと妻のマルガさんが、オランダからボリビアにやって来たのは1981年。でも当初は、サマイパタの町の近くにあるこの美しい農園に落ち着くことになるとは、夢にも思っていませんでした。丘の斜面の土地を購入し、長年かけて手を加え、徐々に建物も増えて現在のようなかたちになりました。ご夫妻の住まい《アカシャ》には、お2人の個性と価値観がよく表れています。
《アカシャ》を手がける前、丘の上にはコテージ《アトマ》があり、日常生活から離れて過ごす休息の空間でした。それ以外の建物は、一般のお客さんにも開かれた施設になっていましたが、その後、風水建築家と協力して、黄金比を取り入れたデザインの《ラ・ルンブレ(「光」や「灯」といった意味)》が完成。農園内ではバイオ園芸プロジェクトも行っており、新鮮食材を谷の集落やサンタクルスの町で販売して好評を得ています。また、地元サマイパタのコミュニティに教育と仕事の機会を提供するクリエイティブセンターも併設しています。
どんなHouzz?
居住者:ピーテル・デ・ラードさん、マルガ・ファント・ホフさん、犬のフリップとパンダ
所在地:ボリビア、サマイパタ、フィンカ・ラ・ビスペラ
規模:延床面積120平方メートル、ベッドルーム×2、バスルーム(トイレ含む)×1
《アカシャ》を手がける前、丘の上にはコテージ《アトマ》があり、日常生活から離れて過ごす休息の空間でした。それ以外の建物は、一般のお客さんにも開かれた施設になっていましたが、その後、風水建築家と協力して、黄金比を取り入れたデザインの《ラ・ルンブレ(「光」や「灯」といった意味)》が完成。農園内ではバイオ園芸プロジェクトも行っており、新鮮食材を谷の集落やサンタクルスの町で販売して好評を得ています。また、地元サマイパタのコミュニティに教育と仕事の機会を提供するクリエイティブセンターも併設しています。
どんなHouzz?
居住者:ピーテル・デ・ラードさん、マルガ・ファント・ホフさん、犬のフリップとパンダ
所在地:ボリビア、サマイパタ、フィンカ・ラ・ビスペラ
規模:延床面積120平方メートル、ベッドルーム×2、バスルーム(トイレ含む)×1
ご夫妻がボリビアへの移住を決めたのは、南アメリカを旅していたときのこと。ここの人々や風景、広々とした大地がすっかり気に入ってしまったのだそうです。母国オランダで心理学者として活躍していた日々から、ご夫妻は新しい世界へと旅立つことを決意。1984年には、リゾート地として知られるサマイパタの村からもほど近い、アンデス山脈のふもとの丘に土地を手に入れ、夢見ていた暮らしの実現に取りかかりました。
デ・ラードさんとファント・ホフさん夫妻は、お互いの興味ある分野が補完し合って、2人合わせるとまさに何でもできてしまうようなカップル。芸術と文化に親しみながら育ったファント・ホフさんはデザインや音楽に造詣が深く、著述、絵画、ガーデニング、裁縫も得意。デ・ラードさんは、大工、ピアニスト、ピアノ調律師としての技術を持ち、犬と自然を愛してやまない多才なクリエイティブで、居酒屋と食料品店を経営する一家に育ったそうです。この家と農園は、2人の情熱と才能を存分に発揮した表現の場所でもあるのです。
デ・ラードさんとファント・ホフさん夫妻は、お互いの興味ある分野が補完し合って、2人合わせるとまさに何でもできてしまうようなカップル。芸術と文化に親しみながら育ったファント・ホフさんはデザインや音楽に造詣が深く、著述、絵画、ガーデニング、裁縫も得意。デ・ラードさんは、大工、ピアニスト、ピアノ調律師としての技術を持ち、犬と自然を愛してやまない多才なクリエイティブで、居酒屋と食料品店を経営する一家に育ったそうです。この家と農園は、2人の情熱と才能を存分に発揮した表現の場所でもあるのです。
こちらの家《アカシャ》は、3つの点を念頭に置いて設計されています。それは、デ・ラードさんのグランドピアノを置くこと、風水の考え方に沿うこと、そして数学的な考えである黄金比を大切にすることです。
建設期間は10か月。地元の建築家2人が設計して図面を引き、それをもとに、実際の作業現場では、デ・ラードさんと建設業者がかなり変更を加えたそうです。設計図は、家づくりの出発点として、1つの方向性を示すものとして位置づけられていました。
建設期間は10か月。地元の建築家2人が設計して図面を引き、それをもとに、実際の作業現場では、デ・ラードさんと建設業者がかなり変更を加えたそうです。設計図は、家づくりの出発点として、1つの方向性を示すものとして位置づけられていました。
食材のほとんどは庭から調達できる、というのもサステナブルな暮らしのポイントです。今では40もの菜園が、段々畑のような形に広がっています。農園は、地元住民に雇用機会を提供し、サンタクルスのレストランに新鮮な有機食材やハーブを供給するという、サステナブルなビジネスへと成長しました。
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大きな曲線を描く庇が、石づくりのパティオの上に延び、谷の広大な風景へと広がります。敷地内の木を活用した柱と梁の上に竹のさおを乗せ、強い日差しを防ぐ工夫がされています。
シーダー材のドア、窓、スクリーンはすべて地元の大工さんが作りました。玄関のドアは、朝の光を取り込む東向きです。
シーダー材のドア、窓、スクリーンはすべて地元の大工さんが作りました。玄関のドアは、朝の光を取り込む東向きです。
家の中は、黄金比に忠実な設計となっています。全体的にも、部屋ごとに見ても、黄金比の理論である8:13:5の比率に基づいてデザインされています。
曲線を描く壁面と高い天井のおかげで空気の流れがよく、人の動きもスムーズにすむのだとか。ガラス瓶を利用したオリジナルデザインの窓からは、カラフルに色づいた光が入ってきます。「この家では、すこやかに生きられると感じます。ここにいると周囲と調和し、リラックスできるんです。ピアノも毎日弾いていますし、創造性と調和をはぐくむ家ですね」というデ・ラードさん。
曲線を描く壁面と高い天井のおかげで空気の流れがよく、人の動きもスムーズにすむのだとか。ガラス瓶を利用したオリジナルデザインの窓からは、カラフルに色づいた光が入ってきます。「この家では、すこやかに生きられると感じます。ここにいると周囲と調和し、リラックスできるんです。ピアノも毎日弾いていますし、創造性と調和をはぐくむ家ですね」というデ・ラードさん。
デ・ラードさんは、ピアノを調律・修復する仕事もしており、ボリビア各地をまわって古いピアノの再生に取り組んでいます。
「これが私のいちばん好きな活動です。いや、いちばんは妻を愛することかな」と臆面もなく語るデ・ラードさん。こちらのグランドピアノは、30年前にラパスのドイツ人学校で見つけたものを800ドルで購入し、チューニングピンや弦も新しく交換して、完全に修復したそうです。大好きなJ・S・バッハがインスピレーションの源なのだそう。
「これが私のいちばん好きな活動です。いや、いちばんは妻を愛することかな」と臆面もなく語るデ・ラードさん。こちらのグランドピアノは、30年前にラパスのドイツ人学校で見つけたものを800ドルで購入し、チューニングピンや弦も新しく交換して、完全に修復したそうです。大好きなJ・S・バッハがインスピレーションの源なのだそう。
自然な素材と色彩があふれる、温かな手触り感のあるお宅です。「石のタイルは、宇宙の色ですね」と語るデ・ラードさん。壁には、敷地内の土で作った8,000個のアドベれんがを使い、漆喰を塗っています。床は自然石のタイルで、天井は竹、梁はアイアンウッドです。
木と布で作られたつい立てが、キッチンとダイニングエリア、そしてリビングスペースとを分けています。
家じゅうに使われている布地のカーテンは、ファント・ホフさんの手作り。デ・ラードさんもファント・ホフさんも料理が大好きで、訪問者には特製のハーブティーでおもてなしするそうです。ブレンドされた新鮮なハーブと乾燥フルーツは、どちらも農園で採れたもの。
メインベッドルームには、ボリビアで買ったファント・ホフさんのミシンが置かれています。このミシンを使って、カーテン、ベッドリネン、シャツ、プルオーバーなどを作るそうです。
丘の斜面の石が、バスルームの壁を形づくっています。上方の小さなクリアストーリー窓から自然光が入ってきます。石の壁は、そのままシャワーのある小部屋へとつながっています。
スペアルームには、収納スペースとデ・ラードさんの書き物机があります。このベッドはデ・ラードさんの手作り。この部屋の照明と、そのほかの調度はサンタクルスで購入したそうです。
家の後ろ側の壁は、なんと部分的に斜面に埋まっています。自然石の土台や、装飾に使った石、漆喰塗りの腰壁の効果もあり、家が風景に溶け込んでいます。
「家が2.5~3メートルくらい丘の中にめり込んでいるんです。室内の気温は19度を下回ることも、24度を超えることもありません。実に過ごしやすい、快適な室温です」というデ・ラードさん。窓として開けられた小さな開口部からは光が差し込んできます。厚い壁が日中の熱を吸収し、涼しい夜に放熱してくれます。
「家が2.5~3メートルくらい丘の中にめり込んでいるんです。室内の気温は19度を下回ることも、24度を超えることもありません。実に過ごしやすい、快適な室温です」というデ・ラードさん。窓として開けられた小さな開口部からは光が差し込んできます。厚い壁が日中の熱を吸収し、涼しい夜に放熱してくれます。
《アカシャ》の裏手にあるのが、小さなコテージ《アトマ》。ファント・ホフさんの亡くなったお姉さまで、オランダで有名な建築家として活躍していたベル・ファント・ホフさんが設計したものです。農園内に建つ一連のエコ建築のうち最初に作られたもので、のちのデザインの参考にもなっています。もともとは、ご夫妻が瞑想と執筆活動のために作った場所です。
《アトマ》は、丘の斜面に寄り添うような、地中に半ば埋まったアドベれんが造りの建物です。キャビンの後ろの階段を上がると、庭のある屋上から山々の風景を眺めることができます。
外には瞑想ドームもあります。階段で丘の斜面をらせん状に上り、さらに石の擁壁を上り、1枚板でできた通路を渡って中に入るようになっています。下の階は洗濯と収納のためのスペースです。
この農園では、いつも何かしらのイベントが進行中だそうです。地元のアーティストでエコ建築も手掛けるエリサンドロ・サンドサルさんは、ボランティアの人たちのためのロフト付きコテージを建設中。漆喰とガラスを使って、壁と一体になった装飾部分を器用に作り出していきます。農園ではエコ建築のワークショップも行われています。
もう1つ、1997年に作られた「エルボラリア」(ハーブショップ)と呼ばれる建物があります。中はフレッシュな香りに包まれ、一般のお客さん向けにアロマセラピー製品やハーブティーなどが販売されているます。ハーブをブレンドしたり、果物を乾燥させたり、製品をパッケージしてサンタクルスへ送り出すのもこの場所です。
2003年に作られた「ガーデンカフェ」では、外の段々菜園で摘んだ素材をゆっくり料理した、スローフードを食べさせてくれます。
もう1つ、オーナー夫妻にとってもお客さんにとっても注目の屋外建造物が、谷を見下ろす丘の頂上に置かれた「玉座」。これは、農園内の各所に見られるデ・ラードさんが考案・制作した作品群のひとつ。「彫刻にかかった時間は、1日以上、1週間未満というところかな」とデ・ラードさんは話してくれました。
教えてHouzz
ボリビアの家はいかがでしたか?
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