コメント
Houzzツアー:すべての始まりは一家の大英断から。果樹園や川を望む、リゾートライクな「緑抜け」の家と暮らし
カバードテラス、吹き抜けのリビング、大きな窓に伊豆石の風呂。家族会議を重ね、一家4人が移り住んだのは、四季の彩りを室内でも感じ、自然との一体感を持てる、自然素材の美しい家。
takako kawaguchi
2015年6月29日
都会に住んで利便性を追求するか、それとも通勤や買い物の不便さには目をつぶってでも、心が解き放たれる自然の中で暮らすか。永遠の悩みともいえるこの問題に、明らかな答えを見せてくれる一軒の家と家族がある。
温暖な気候で山海の恵み豊かな神奈川県・湯河原。穏やかな海を望み、川やミカン畑と隣り合う地にSさん一家4人の家が昨冬完成した。
温暖な気候で山海の恵み豊かな神奈川県・湯河原。穏やかな海を望み、川やミカン畑と隣り合う地にSさん一家4人の家が昨冬完成した。
どんなHouzz?
建築地:神奈川県湯河原町
居住者:Sさん夫妻、子ども2人
構造:在来木造軸組工法
敷地面積:417平方メートル(126坪)
延床面積:149平方メートル(45.01坪)
設計:ネイチャーデコール
竣工:2014年12月
建築地:神奈川県湯河原町
居住者:Sさん夫妻、子ども2人
構造:在来木造軸組工法
敷地面積:417平方メートル(126坪)
延床面積:149平方メートル(45.01坪)
設計:ネイチャーデコール
竣工:2014年12月
窓のない直線的な壁に包まれ、無表情にも映る外観。だがひとたびアプローチを通り抜けると、そこには全くの別世界が広がっている。周囲の自然に向けて大きく開放された窓やテラス、長く続く幅広のウッドデッキ。すべての部屋の窓から緑と光が室内に満ちあふれ、都会では得がたい自然との一体感を心地よく楽しめる設計だ。Sさんがテーマとした「住まいがリゾート」を見事に具現化している家。ここに引っ越してから、空間的にも精神的にもリラックスして余裕が生まれ、家族みんなが長年の夢ややりたかったことへ向かって動き始めたという。
玄関前に広がるのが約20畳のカバードテラス。バリなどのリゾートホテルのレセプション前に置かれた、半屋外のリラックススペースがイメージソースになっている。外の空気を感じながら、雨の日でもBBQを楽しんだり、突然の大勢のゲストにも対応できる空間だ。
もともとのSさんの希望は「相模原市内の仕事場から10分以内のところに家を建てたい」。海外出張も多く、激務をこなすSさんと共に市内候補地を見て回ったのは、自然素材を活かし、その人らしさにこだわった家づくりで評判の高いネイチャーデコールの大浦比呂志氏。思うような土地がなかなか見つからない中、ふとしたきっかけでSさんの湯河原の実家を訪ね、川と果樹園に囲まれて海も見えるロケーションに立った瞬間「ここだ!」と直感したという。
もともとのSさんの希望は「相模原市内の仕事場から10分以内のところに家を建てたい」。海外出張も多く、激務をこなすSさんと共に市内候補地を見て回ったのは、自然素材を活かし、その人らしさにこだわった家づくりで評判の高いネイチャーデコールの大浦比呂志氏。思うような土地がなかなか見つからない中、ふとしたきっかけでSさんの湯河原の実家を訪ね、川と果樹園に囲まれて海も見えるロケーションに立った瞬間「ここだ!」と直感したという。
ミカン農家を営むご実家の敷地には、川に面した最高の場所に作業場があった。それを移転し、その場所に長男であるSさん宅を新築するというプランに、初めは驚いたご両親もすぐに賛成。Sさん宅でも家族会議が開かれ、子どもの進学、習い事など現実的なことをひとつずつ解決、ついには家族全員で「あの場所に住もう!」と決断するに至った。
同じ敷地内に暮らしながら、ご両親が孫の様子を見に来たり遊んだりする際にもこのオープンスペースはとても役立っている。3世代が気兼ねなくほどよい距離感で住まうための中心的存在、いわば「家のヘソ」の役割を担っているスペースである。
同じ敷地内に暮らしながら、ご両親が孫の様子を見に来たり遊んだりする際にもこのオープンスペースはとても役立っている。3世代が気兼ねなくほどよい距離感で住まうための中心的存在、いわば「家のヘソ」の役割を担っているスペースである。
玄関扉はフランスのアンティーク。そのままの風合いを活かすため極力手を加えず、傷んだ部分のみにサンディングを施して使用。海外で多く見られる内開きタイプだが、玄関外に大きな屋根があるため、風雨が屋内に入り込む心配はない。
カバードテラスから玄関、その先の和の空間にいたる「廊下」のラインに敷かれているのは、グレーのテラコッタ。素焼きよりも少しモダンで大人っぽく、引き締まった印象に見える。
吹き抜けのリビング。「インテリアはフレンチテイストにしたい」という夫妻の要望に合わせ、床はオークのヘリンボーンに、シャンデリア、スタンドライト、ソファテーブルもアンティークや海外マーケットで買いつけたものを使うなど、トータルでコーディネート。設計とインテリアに統一感がある空間となっている。
吹き抜けに面した2階の手すりに使われているのはガス管。ジョイント部のハードな表情とあたたかみのあるフレンチテイストのミックス感がおもしろい。
壁際には暖炉を設置し、周りに細いブリックを手作業で高く積み上げた。目地を少し太めにしてニュアンスをつけている。存在感のあるシャンデリアはアンティークショップ「ザ・グローブ」のもの。
目線が集まるリビングの一角のニッチ。アンティーク小物や雑貨が大好きという奥様のためにつくったコーナーだ。古材オークの棚にコレクションが並ぶ様子は、洋雑誌の1ページのような世界。
吹き抜けから一転、ダイニング部分は天井高を少し押さえ、“こもり感”を演出。視野を遮る壁をつくらなくても、高さを変えることで気分的にリビングとダイニング空間を切り替えられる仕掛けだ。抑えたとはいえ2700mm程度はあるので、一般的な高さよりは高めの設定。
壁は珪藻土で、大浦氏が「ネイチャーデコールカラー」と呼ぶ白とアイボリーの中間色。自然光にも映え、夜のあたたかな電球色とも相性がいい。木や石、タイルなどのナチュラルなマテリアルがうまく溶け込む、飽きのこない色と質感である。
壁は珪藻土で、大浦氏が「ネイチャーデコールカラー」と呼ぶ白とアイボリーの中間色。自然光にも映え、夜のあたたかな電球色とも相性がいい。木や石、タイルなどのナチュラルなマテリアルがうまく溶け込む、飽きのこない色と質感である。
ダイニングテーブルはフランスのアンティーク、チューリップチェアはSさんが見つけたユーズド品。エッジの効いたファブリック使いが目を引き、フレンチテイストをほどよくモダンに仕上げるスパイス役になっている。
このリビングダイニングの一番のポイントは、スケールの大きな窓にある。左右に開き切る折れ戸にしたのは大きなフレームいっぱいに広がる緑抜けの景色をダイナミックに楽しむため。「この地のポテンシャルを最大限活かす家にしたい」とSさんと大浦さんを魅了した豊かな自然。濃い緑の木々にミカンがたわわに実っていたり、真っ白な花の咲く木があったりと四季の彩りを室内でも感じ、自然との一体感を持てるのは都会では到底叶えられないこと。
このリビングダイニングの一番のポイントは、スケールの大きな窓にある。左右に開き切る折れ戸にしたのは大きなフレームいっぱいに広がる緑抜けの景色をダイナミックに楽しむため。「この地のポテンシャルを最大限活かす家にしたい」とSさんと大浦さんを魅了した豊かな自然。濃い緑の木々にミカンがたわわに実っていたり、真っ白な花の咲く木があったりと四季の彩りを室内でも感じ、自然との一体感を持てるのは都会では到底叶えられないこと。
大きな窓の外には3メートル幅もある広々としたウッドデッキが張り巡らされている。リビングからダイニング、その先の和室や浴室まで続いているロングデッキだ。すぐ脇を流れる川のせせらぎを聞きながらここでまどろむのは、まさにリゾートを思わせる至福のひととき。
夏には川辺にホタルが飛び交い、2階にあるデッキからは花火を眺めたり、海の彼方に初島を望むことも。子どもを育てるには絶好の場所、とSさんが引っ越しを決断したのもうなずける。
夏には川辺にホタルが飛び交い、2階にあるデッキからは花火を眺めたり、海の彼方に初島を望むことも。子どもを育てるには絶好の場所、とSさんが引っ越しを決断したのもうなずける。
キッチンはオーク古材の面材とシャープなスチールフレームの絶妙なコンビネーション。特有の木目やノコ目もナチュラルな味わいとなっている。「古材×古材で作ってしまうと全体がまったりしてしまうので、硬い素材を合わせたり、黒を配色することでモダンな印象に」と大浦氏。夫妻の「キッチン脇に大きなパントリーを」との要望を反映し、左手の黒板塗装した壁の中には大型パントリーをつくった。これなら週末にまとめ買いをしても安心。
設計前にSさんへのヒアリングを重ねた大浦氏。「インテリアの流行に左右されるのではなく、オーナーがずっと好きでいる物や事、暮らし方、それを理解し映し出したインテリア提案をすることが、長く愛される家づくりにつながると思います」と語る。今回の場合も、要望のあったフレンチテイストに、モダンテイストやインダストリアルテイストをほどよくミックスすることで、Sさんらしい独自性のある家を実現した。
設計前にSさんへのヒアリングを重ねた大浦氏。「インテリアの流行に左右されるのではなく、オーナーがずっと好きでいる物や事、暮らし方、それを理解し映し出したインテリア提案をすることが、長く愛される家づくりにつながると思います」と語る。今回の場合も、要望のあったフレンチテイストに、モダンテイストやインダストリアルテイストをほどよくミックスすることで、Sさんらしい独自性のある家を実現した。
コの字型のキッチンの壁側は食器収納。引き出しとオープン収納を組み合わせ、使い勝手は抜群。
ダイニングキッチンの先は和のゾーン。階段を少し上がった離れ部屋のような趣きの和室は、湯河原という土地柄によるのか、温泉旅館を訪れたような気分に誘う。
この部屋の窓からも緑を一望。間口は床に座った高さに合わせてある。ワラを練り込んだ珪藻土の壁と天井、琉球畳の自然の風合いが、室内と外の景色とのつながりをさらに強く感じさせる。和室外のデッキは縁側風に腰かけられるよう段差をつけた設計に。
洗面室は木と黒をポイントにしたシックな空間。床はバスルームと同じ伊豆石を使用。伊豆石はやや青みがかったクリーンな色合いで、足触りがよく、濡れても滑りにくいのが特徴。メディスンキャビネットは造作したもの。
「仕事から帰ると、まずこの風呂に入るんですよ」と、Sさんが家の中で一番気に入っているのが、伊豆石でつくられたこちらのお風呂。職場まで10分以内という当初の希望に反し、通勤時間は約2時間にもなってしまったが、それを補って余りある魅力がこの家にはある。家の前で始めた家庭菜園で土に触れ、採れたての野菜を味わうことはここにきて初めて知った楽しみだ。畑に出た後、このお風呂につかってゆったりと体を伸ばし、壁の檜の香りに癒されるとき、心がリセットされていくのがわかる。「土日、家にいることは今、とてもいい時間です」とSさん。
バスルームの広さは約3畳、バスタブサイズは1350×1250mm。
バスルームの広さは約3畳、バスタブサイズは1350×1250mm。
この家に来て、新たなことを始めたのは奥様も同じ。冒頭で紹介したカバードテラス脇には実は6.8畳の離れ部屋があり、そこで念願のピアノ教室をスタート。グランドピアノの上に奥様お気に入りのアンティークシャンデリアを飾り、生徒さんと日々楽しくレッスンをしている。窓を開け放ち、カバードテラス部分を客席にした発表会を開くのが次なる夢だとか。
家族の部屋はそれぞれが決めたテーマカラーを壁の一面&扉にペイント。お母さんと同じくフレンチテイストが好きという女の子の部屋は、洗練度の高いグレイッシュなパープルに。バレエを習っているためか、カーテンを「バレエの衣装のようなデザインで」とオーダー、レースカーテンをあえて手前にしたエレガントなスタイリングを楽しんでいる。
男の子の部屋はブルーがテーマ。「この色がいい!」と即決したブルーは空の色を想起する清々しいトーン。家具や床の優しい木の質感ともぴったり。
家族会議を重ね、環境が大きく変わる地への引っ越しを決断したSさん家族。その結果、子どもたちは大自然の中でのびのび育ち、実家のご両親にも喜ばれ、Sさん夫妻はそれぞれのやりたいことを楽しめる環境ができた。この家と自然がもたらす心地のいい解放感はこれからもずっと家族を癒し、エネルギーを与えてくれるだろう。
家族会議を重ね、環境が大きく変わる地への引っ越しを決断したSさん家族。その結果、子どもたちは大自然の中でのびのび育ち、実家のご両親にも喜ばれ、Sさん夫妻はそれぞれのやりたいことを楽しめる環境ができた。この家と自然がもたらす心地のいい解放感はこれからもずっと家族を癒し、エネルギーを与えてくれるだろう。
おすすめの記事
Houzzツアー (お宅紹介)
軽井沢の究極の隠れ家。地元の土と木でつくった心地のよい別荘
長野と近隣の木や素材をふんだんに使った、地産地消の住まい。まるで森のような空気感を醸し出しています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
親子の暮らしを穏やかに包み込む、自然素材が心地よい住まい
文/田中祥子
生活に必要な機能が緩やかにつながる間取りを、一つの大きな屋根の下に。建築材料と設備の面がしっかり考えられたデザインは、親子2人の穏やかな暮らしを支えています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
自分たちの「好き」を詰め込んだ、大阪の建築家の自邸
文/杉田真理子
旅先で集めたアートや小物、ワインなど、夫婦の「好き」が詰まった建築家の自邸。光が差し込む内部の土間の吹き抜けには高さ4mの木もあり、家にいながら自然を感じられる空間となっています。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
個室を作らず余白を楽しむ。住まい手とともに成長する家
文/杉田真理子
京都・岩倉の豊かな景観を満喫しながら、将来のライフスタイルや家族構成の変化にも対応してくれる、可変性のある住まいです。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
杉と漆喰に包まれた健康的な家。回遊空間に愛猫も大喜び!
Houzzで見つけた建築家に設計を依頼。アイデアを出し合いながら、想像以上に満足のいく家ができました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
複数世代が生活し、この地で年齢を重ねていくために裏庭に建てられた「付属居住ユニット」
娘の住宅の敷地内に建てられた新しい建物。ミニマリスト風でありつつ温かみのある空間と、美しいプライベートな庭を母親に提供します。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(海外)
広々と暮らせるカリフォルニアの家
1組の夫婦と1人の建築家がHouzzを通じてつながり、「大きいことが常に良いわけではない」ことを証明するような、無駄のない、緑にあふれた家を建てました。
続きを読む
Houzzツアー (お宅紹介)
美しい木立と海の眺めを見渡す、自然と調和したキューブの家
地形から導き出された、自然に抱かれた建築。大胆でモダンなフォルムでありながら、周囲の木立や海の眺めを存分に楽しめる、自然と調和した極上の住宅です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
崖の上のショーケースのよう! 驚きと感動が広がる南葉山のシーサイドハウス
文/小川のぞみ
東京在住のオーナー夫妻が、週末の別荘として建てた「非日常」がテーマの家。若くて伸び盛りだと感じた建築家にHouzzで出会い、期待以上の住まいが完成しました。
続きを読む