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DESIGNART TOKYO 2019でみつけた5つのトレンド
日本最大級のデザインイベントDESIGNART TOKYO。今年は、サステナビリティやアジアのクリエイターたちも注目を集めていました。
Mamiko Nakano
2019年10月24日
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アジアのアーティストの作品などが並ぶDesignart Featureの展示。Design Pierのキュレーションによるもの(写真:Nacása&Partners)
日本と世界から注目の作品が東京に集まる日本最大級のデザインとアートのイベント「DESIGNART TOKYO 2019」。3年目を迎える今年は10月27日まで、青山、銀座、新宿など、100以上の展示会場で開催された。
多くの作品に共通してみられたのは「サステナブル」のテーマ。素材を再利用して再構築する、地域の素材を使う、古くからあるものを"持続可能"にしていくなどの行為が、作品づくりの過程で自然に取り込まれていた。
Houzzはインテリアやプロダクトの目線から、5つのテーマで作品や展示をピックアップした。
日本と世界から注目の作品が東京に集まる日本最大級のデザインとアートのイベント「DESIGNART TOKYO 2019」。3年目を迎える今年は10月27日まで、青山、銀座、新宿など、100以上の展示会場で開催された。
多くの作品に共通してみられたのは「サステナブル」のテーマ。素材を再利用して再構築する、地域の素材を使う、古くからあるものを"持続可能"にしていくなどの行為が、作品づくりの過程で自然に取り込まれていた。
Houzzはインテリアやプロダクトの目線から、5つのテーマで作品や展示をピックアップした。
(写真:Google)
テクノロジーを休む
2018年からにミラノデザインウィークに出展し、テクノロジーだけではなく、インテリアやデザインの分野でも注目を集めるGoogle。今回の日本での展示のテーマは「comma」(カンマ)。便利である一方で「繋がり疲れ」もするテクノロジーを一休みする、というような意味が込められているそう。
展示では、Google製品が日常のアイテムとともに取り合わせて置かれている。背景にかけられた一見シンプルに見えるタペストリーは、古いリネンの布を縫い合わせて作ったものだそう。Googleのハードウェアのデザイン責任者であるアイビー・ロス氏は、このタペストリーには、シンプルなデザインを手をかけて作っていることや、サステナビリティへの思いが込められている、と話していた。
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テクノロジーを休む
2018年からにミラノデザインウィークに出展し、テクノロジーだけではなく、インテリアやデザインの分野でも注目を集めるGoogle。今回の日本での展示のテーマは「comma」(カンマ)。便利である一方で「繋がり疲れ」もするテクノロジーを一休みする、というような意味が込められているそう。
展示では、Google製品が日常のアイテムとともに取り合わせて置かれている。背景にかけられた一見シンプルに見えるタペストリーは、古いリネンの布を縫い合わせて作ったものだそう。Googleのハードウェアのデザイン責任者であるアイビー・ロス氏は、このタペストリーには、シンプルなデザインを手をかけて作っていることや、サステナビリティへの思いが込められている、と話していた。
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AXISで展示されている、M&Tの「Imbalanced balance」
こちらは、池田美祐氏と倉島拓人氏によるデザインユニット、M&Tによる照明「Imbalanced balance」も、アナログな手法で新たな表現を試みていたプロジェクト。
パラフィン紙で作ったというふたつの傘は、下にある光源でゆるやかに熱せられると、ゆっくりと上昇し、やがて真ん中にあるスイッチがふりきれることで、今度は反対側の傘が下に降りていく。M&Tの二人は、プログラミングではなく、あえてこのような形で揺らぎを表現したかったと話していた。
照明専門店・デザイナーを探す
こちらは、池田美祐氏と倉島拓人氏によるデザインユニット、M&Tによる照明「Imbalanced balance」も、アナログな手法で新たな表現を試みていたプロジェクト。
パラフィン紙で作ったというふたつの傘は、下にある光源でゆるやかに熱せられると、ゆっくりと上昇し、やがて真ん中にあるスイッチがふりきれることで、今度は反対側の傘が下に降りていく。M&Tの二人は、プログラミングではなく、あえてこのような形で揺らぎを表現したかったと話していた。
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Team Balancoによる「intree table」(写真:Nacása&Partners)
自然を再構築する
「テクノロジーを休む」のテーマとも関連するが、都会の中に"作り込んだ自然"を建築物や家具として持ち込む作品も目立っていた。
東京ミッドタウンの前庭に設置されたTeam Balancoによる「intree table」。木立とテーブル、スツールが一体となったようなこの作品に座ると、隣や向かいに座る人との程よい距離感ができる。
カフェのテーブルよりは椅子とテーブルが高めに設定されている上、まわりに木立もあるため、適度なプライバシーが保たれる。その中で、自然環境を楽しめる仕掛けになっている作品だ。
自然を再構築する
「テクノロジーを休む」のテーマとも関連するが、都会の中に"作り込んだ自然"を建築物や家具として持ち込む作品も目立っていた。
東京ミッドタウンの前庭に設置されたTeam Balancoによる「intree table」。木立とテーブル、スツールが一体となったようなこの作品に座ると、隣や向かいに座る人との程よい距離感ができる。
カフェのテーブルよりは椅子とテーブルが高めに設定されている上、まわりに木立もあるため、適度なプライバシーが保たれる。その中で、自然環境を楽しめる仕掛けになっている作品だ。
チャーリン・チャンの「Floating Pattern」
台湾のデザイナー、チャーリン・チャン氏も、自然を再構築する家具やオブジェを発表。合板の外側に廃棄された木の皮をはり、まるで一本の木のように再構築した写真の作品は「Floating Pattern」と名付けられたもの。棚としても使えるようになっているこのアイテムは、丸みを抑え、まっすぐなラインになるように作った、とチャン氏。
台湾のデザイナー、チャーリン・チャン氏も、自然を再構築する家具やオブジェを発表。合板の外側に廃棄された木の皮をはり、まるで一本の木のように再構築した写真の作品は「Floating Pattern」と名付けられたもの。棚としても使えるようになっているこのアイテムは、丸みを抑え、まっすぐなラインになるように作った、とチャン氏。
AXISで展示されている、ハミッド・シャヒの「Pulse」
素材の新たな可能性
素材の可能性を感じさせる作品も注目を集めていた。
イラン出身のカナダ人デザイナーであるハミッド・シャヒ氏が披露していたのは、ステンレススチールワイヤーに折り紙のように折り目をつけ、ワイヤーの伸縮する特性を生かした照明の作品。
日本の建築事務所で経験を積んだシャヒ氏は、日本の自然に対する感性に惹かれているそう。くしゅくしゅさせた素材から優しく光が溢れ出る今回の照明は、日本語の「木漏れ日」という言葉にインスピレーションを得たとのこと。
素材の新たな可能性
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イラン出身のカナダ人デザイナーであるハミッド・シャヒ氏が披露していたのは、ステンレススチールワイヤーに折り紙のように折り目をつけ、ワイヤーの伸縮する特性を生かした照明の作品。
日本の建築事務所で経験を積んだシャヒ氏は、日本の自然に対する感性に惹かれているそう。くしゅくしゅさせた素材から優しく光が溢れ出る今回の照明は、日本語の「木漏れ日」という言葉にインスピレーションを得たとのこと。
月星アート工業と辰野しずかによる「Mist、Cloudy」 (写真:Kenji Kagawa)
素材メーカーとクリエイターをつなぐ活動をしているMaterial ConneXion Tokyoでは、ステンレスの表面加工の会社である月星アート工業が、プロダクトデザイナーの辰野しずか氏と組んで作った作品が展示されている。
月星アート工業は普段、エレベーターの内装材などを作っている会社。辰野によるシンプルな箱型のステンレススツールは、間近に見ると、青の色合いなどがとても美しい。
ステンレスが100%リサイクル可能なサステナブルな素材であることを考えると、今後もっと用途がひろがる可能性はありそうだ。
インテリアデザイナー・コーディネーターを探す
素材メーカーとクリエイターをつなぐ活動をしているMaterial ConneXion Tokyoでは、ステンレスの表面加工の会社である月星アート工業が、プロダクトデザイナーの辰野しずか氏と組んで作った作品が展示されている。
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ステンレスが100%リサイクル可能なサステナブルな素材であることを考えると、今後もっと用途がひろがる可能性はありそうだ。
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板坂諭デザインによる、亡くなった方が遺したデータ類を格納する機能が付加された仏壇
伝統をみなおす
伝統が現代のクリエイターの解釈で新しく刷新されたり、作品に新たな視点で伝統が取り込まれているプロジェクトも注目を集めていた。
展示を主催する若林佛具製作所は、190年の歴史をもつ京都の仏壇・仏具メーカー。家に仏壇を持たない生活をする人が増える中で、伝統技術を継承してきた職人たちの技術を活かすための新たな道を模索している。
今回は「レゾンデートル」というプロジェクトで、6人の建築家やデザイナーたちに職人と組んでもらい、新しい仏壇のありかたを提示する作品を作り上げた。
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今回は「レゾンデートル」というプロジェクトで、6人の建築家やデザイナーたちに職人と組んでもらい、新しい仏壇のありかたを提示する作品を作り上げた。
キウルベンチが展示されたアルテック 東京ストア
フィンランドと日本の国交100周年にあたる今年、アルテックは日本のデザイナーとコラボした製品を発表している。そのプロジェクトの一つがデザイナーの二俣公一氏による「キウル ベンチ」だ。
二俣氏によると、日本とフィンランドにはどちらにも公衆浴場文化があり、両国とも似たようなデザインの「桶」(フィンランド語で「キウル」)を使っているという。これを元に、二俣氏は左右に桶を半分に切ったような収納のあるベンチをデザインした。
アルテックの家具に使われ続けているフィンランド産のバーチ材を使いながら、鮮やかなレッドやブラックのカラーバリエーションも加えた。ブランドの伝統と、日本とフィンランドの文化的な伝統を取り込んだ、どこか楽しい作品だ。
行ってみよう!青山周辺の気になるインテリアショップ
フィンランドと日本の国交100周年にあたる今年、アルテックは日本のデザイナーとコラボした製品を発表している。そのプロジェクトの一つがデザイナーの二俣公一氏による「キウル ベンチ」だ。
二俣氏によると、日本とフィンランドにはどちらにも公衆浴場文化があり、両国とも似たようなデザインの「桶」(フィンランド語で「キウル」)を使っているという。これを元に、二俣氏は左右に桶を半分に切ったような収納のあるベンチをデザインした。
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「IKIMONO」のリードディフーザー
技術力で革新する
高い技術力を誇るものづくり企業が、クリエイターと組んで、さらなる技術革新を遂げているプロジェクトも、底力を感じさせた。
横浜に工場を構える金属加工会社が集まり、世界に向けた「ものづくり」を行っているのがYokohama Makers Villageだ。2017年から、気鋭のクリエイターたちとコラボしてミラノデザインウィークに出展してきたが、今回、3年間の作品を凱旋展示している。
2019年の展示は、西村ひろあき氏のデザインを堀川淳一郎氏がアルゴリズムで表現した、葉脈のようなデザインの「IKIMONO」。写真のリードディフーザー(写真)は、金属をスポンジのような状態に仕上げてあり、アロマオイルが染み込んでも、何度でも洗って使い続けられるという、何気に実用性も高いアイテムだ。
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2019年の展示は、西村ひろあき氏のデザインを堀川淳一郎氏がアルゴリズムで表現した、葉脈のようなデザインの「IKIMONO」。写真のリードディフーザー(写真)は、金属をスポンジのような状態に仕上げてあり、アロマオイルが染み込んでも、何度でも洗って使い続けられるという、何気に実用性も高いアイテムだ。
倉本仁がデザインしたカンディハウスの「EIGHT」と「ONE」
北海道の家具の老舗ブランドであるカンディハウスも、老舗でありながら常に技術革新を続けている企業だ。
倉本仁氏をデザイナーに迎えた新作は、横から見ると8の字になっているデザインの椅子「EIGHT」と、シンプルでおおらかな姿の北海道産ナラ材のテーブル「ONE」。
倉本氏は今回「最初にデザインではなく、技術の提案をした」と話す。「EIGHT」は座面をささえる構造体がない形状など、高度な技術があった上でのデザイン表現となっているそうだ。カンディハウスの技術力へのデザイナーの信頼感が伺えた。
【DESIGNART TOKYO 2019】
会期は終了。2019年10月18日(金)~27日(日)。詳細はこちらから。
(DESIGNART TOKYO の会場で展示されるものは、一部を除いて購入可能/会期・休館日・開始時間は会場によって異なる/一部入場料が必要な会場あり)
ロボティクスから環境問題まで。感性を刺激するインスタレーション【ミラノデザインウィーク2019】
北海道の家具の老舗ブランドであるカンディハウスも、老舗でありながら常に技術革新を続けている企業だ。
倉本仁氏をデザイナーに迎えた新作は、横から見ると8の字になっているデザインの椅子「EIGHT」と、シンプルでおおらかな姿の北海道産ナラ材のテーブル「ONE」。
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【DESIGNART TOKYO 2019】
会期は終了。2019年10月18日(金)~27日(日)。詳細はこちらから。
(DESIGNART TOKYO の会場で展示されるものは、一部を除いて購入可能/会期・休館日・開始時間は会場によって異なる/一部入場料が必要な会場あり)
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