豊田空間デザイン室 一級建築士事務所
8 件のレビュー

大階段と内路地を彷徨う家(自宅)

「伝統的な懐かしい形をシンプルに表現」
 建築地は広い屋敷を8区画にした分譲地で南北に隣家が迫り、西側のみが道路という立地で、既に他の家は建っていました。風致地区や特別修景地域のため、外観は規制に合わせると奥行の長い40坪弱の敷地のため、配置・形状とも自由度は限られてきます。
そこで自然体で京都の街並に協調するように、伝統的な形のなかに清々しくかつ懐かしさを感じるイメージを表現するということになりました。道路側は2.5mほどセットバックして控え、さらに平屋部分「下屋」の屋根を長く幅広く低くして、ヒューマンスケールで馴染み易いアプローチにして、中へと誘うようにしています。

「生成りの暮らしを形にする家づくり」
 この建物は私達夫婦の住まい兼設計のためのアトリエになります。
長年考えてきたをという思いがあり、これからの私たちの暮らしや仕事に何が必要なのかを形にするように進めました。 例えば訪れる人に対して構えず、敷居を低くして、気楽にカフェにでも立ち寄るような感覚の住まいにしたいと玄関とリビングを無くして、もっと多目的に使えるスペースを目指しました。そしてナチュラルな衣食住、いわば「生成りの暮らし」というのを基本にしました。
目新しいことではありませんが、自然素材は古びても美しく、瓦、無垢の木、塗り壁などは新建材と違った味わいがあり、年月を経るごとに愛着がわきます。特に珪藻土はわらスサを入れてオリジナル色をつくり、ラフに塗ることで土壁風の懐かしい感じにしています。

「日本の住まいのモジュールに合わせて素の形(構造)を表す」
 日本古来のモジュールで造られる構造を出来るだけ目に見えるようにし、上棟した時の構造を残すように意図しました。 プラスしていくのでなく原型を表すようにし、間仕切壁や建具も最小限にとどめました。
1階の天井は910mm間隔で梁が架けられ、下屋と2階の勾配天井は垂木が455mm間隔で連なっていき、フラットな天井とは違いリズム感と深み、陰影が感じられます。

「明と暗のある家―開放的なところと籠るところ」
平面は規則的にしていますが、断面(立体)では変化をつけました。2階とロフトの床材はJパネル(両面杉板張の構造合板)を使うことで、浴室以外の天井は貼らず、階高は低く抑えながらも、天井高を確保。玄関を入ってすぐの大階段は丘を上がるような気分にさせます。さらに中2階、ロフトへと、視覚的にも移動するにもわくわくするような構成となりました。 代わって階段下は洞窟のような暗がりにこもる感覚をと、北側は頭が当たらないぎりぎりの高さにし、収納やアトリエ、DEN(書庫兼書斎)などにしています。均一な天井高でなく高低のメリハリを付けることで、家の中に「明(光)」と「暗(闇)」をつくりました。
「家の中のスキマ」
 プランは南・北のゾーンに分けて、中間が「スキマ」となり、東西を貫く「内路地」となっています。狭い空間に無駄なスペースのようですが、真っ直ぐ歩けて風が抜けていく感じが清々しく、東側隣地の緑が借景になります。土間の床タイルが続き、半外部的で空間を分けつつ、緩やかにつなげる装置としての路地としました。

「建具の無い回遊できる空間」
 家全体が緩やかにつながっていくと、小空間ながら様々なシーンが見え隠れします。内路地の文庫本書棚、大階段の書庫、土間のベンチやダイニングの大テーブル、DENやアトリエ、フリースペース、ロフトの見下ろしながら床座で使うデスク等どこでも読書や音楽を聴いたりスケッチや仕事、昼寝も出来ます。日本家屋のように部屋の用途を限定しない彷徨える家です。

「適材適所の収納と造作家具」
 私たちは非常に多くの生活用品に囲まれて暮らしています。それらの居所を確保し整理整頓するのは快適な生活には最も大切、適材適所で仕舞い、素早く取り出したいものです。大きな荷物やシーズンごとの荷物の置場として階段下を利用し、1階の北側に納戸を設けました。 ロフトは収納になってしまいがちですが、開放的な床座の多目的室になります。置き家具は全て止めて、造作家具ですっきり納めることで大きく心地よい生活が出来るように工夫しました。

「省エネで温度差のない快適な環境」
 断熱材は天井・壁ともセルロースファイバーを吹込み、床下エアコン、土間クールをベースに、冬は大型のペレットストーブの輻射熱でじんわりと家全体が暖まります。化石燃料や電力にあまり頼らない自然な温かみを実現しました。 京都の盆地特有の暑さ・寒さも難なく過ごすことが出来ています。

◆テレビ放映「毎日放送:住人十色」放送内容を紹介! 大階段と内路地を彷徨う家
(自宅兼オフィス)

プロジェクトの竣工年/制作年: 2015
プロジェクトの費用: 1,000万円以上3,000万円未満
国: 日本
大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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1Fラフスケッチ
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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2Fラフスケッチ
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「外観」 風致地区、修景地区のため、屋根勾配は3~4.5寸で軒を出し屋根は日本瓦葺き、道路に対して下屋を設けること、外壁やサッシの色なども規制がありました。 その制限のなかで考え、屋根はフラットな瓦でシンプルにし、下屋は長くし外壁は厚さ18mmの杉荒板を黒く塗り、懐かしさもが感じられます。 さらにグレーの縦格子で、モダンな京町家風の外観イメージを表現しました。をもっと見る
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「外観(夕景)」 夕方になると、格子から漏れる明かりと控えめにした外部の照明で、懐かしさとともに中へといざなう感じになります。
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「大階段&土間ギャラリー(1)」 この家には玄関がないですが、土間と長いベンチがあります。土間の床は黒い艶消しのタイル貼り、正面の壁は珪藻土で藁スサ入りの土壁風で10色ほど色見本を作って選定し、塗り方もこだわりました。 正面にある大型のペレットストーブの輻射熱で、真冬でも家中が心地良く暖かくなります。左側は全面に大きくガラスを嵌め込み、筋交も表しのデザインにしてます。をもっと見る
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「大階段&土間ギャラリー(2)」 小さな家ですが、あえて幅270cmの大階段。2階リビングというよりは、家の中に丘を造るという感覚で高さは165cmの9段です。 壁側は本棚にして、階段を昇降しながらふと本を手に取り、段に座って読書をしたり、時にはギャラリーのようにも使えます。また、向かいのベンチに座った人と会話がはずんだりと、色々なことが出来ます。 さらに階段下は大きな収納にもなっています。をもっと見る
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「内路地」 西の土間から東へ抜ける内路地。南北のスペースを分けながらも緩衝ゾーンとなっていて、スノコのブリッジが架かっています。 写真の左手には納戸(1)、書庫・書斎、納戸(2)、アトリエの4カ所の躙り口のような開口が続きます。家の広さでなく内路地の長さ、抜け感によってゆとりが生じます。をもっと見る
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「ダイニング」 大階段を上がるとダイニングと奥にキッチンが広がります。1Fの階高を下げた分、吹抜の開放感あるスペースで、屋根勾配に合わせた天井面には垂木が連なります。床は36mm厚保のJパネルで床面と裏面が無垢の杉板で構造合板を挟んでいて、1枚で3つの役割があり、1Fとの界床はこれだけで済みます。天井には2個のトップライトを設け、ベンチに横になると空が見えます。をもっと見る
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「キッチンよりダイニングを見る」
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「ダイニングテーブル&ベンチ」 テーブルはタモの無垢板で長さ3,500mm、左側は文房具やスプーンなどを入れるアルミのトレーが12個納まります。 ベンチは長さ4,450mmの杉板を浮造り仕上げしていて、下部にはバルコロール(樹脂製の入れ物)がやはり12個入って収納量もたっぷりです。テーブル・ベンチとも標準より30mm下げることで落ち着けます。椅子も合わせて8~12座れ、また、多目的なワーキングデスクにもなり、ここで過ごす時間が長いです。をもっと見る
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「ブリッジと横格子」 南北を分けるゾーンの内路地上にはスノコのブリッジが架かっていて、両サイドは吹抜。 正面は南側のフリースペースの目隠しと通風・採光のため格子を設けてます。左側はロフトへの階段で、暮らしの中に多様な動線とシーンを表現。
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「階段兼TVボード」 ダイニングと南のフリースペースは750mmの段差があり、2段分は長く伸ばして、TV・電話台にもなっています。
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「キッチン」 奥行の長い敷地に合わせて、ダイニングテーブルの延長上にあるアイランド型の造作キッチン。 対面キッチンに比べ動線は横へと同じ流れで行き来出来ます。北面からの大きな開口部から明るい自然光が入ってきます。
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アイランドキッチンを見下ろす
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「DEN(書庫&書斎)」 1Fの書斎兼書庫は天井が低い分、こもる感じで落ちついて読書が出来ます。床は縁無しのグレーの畳で長さが1.5mなので、約2.5畳のスペース。手を伸ばせば、両脇の本棚に直ぐ届きます。正面は床材のJパネルで作ったデスクがあり、掘り炬燵風になっていて、床暖房と脇の吹き出し口からの温風と合わせて足元は暖かいです。 北面の窓からの自然光は読書には向いてます。をもっと見る
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「大階段と土間を見下ろす」
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「内路地見返し」 和室側から見返すと、玄関土間まで抜ける目線が清々しく、この長さで小さい家を伸びやかに感じさせます。左側は壁厚を利用した文庫本棚で、収納量はかなりあります。
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「内路地見返し(夕景)」 25mm厚の杉板を目透しで貼り、薄いグレーに塗装して横の流れを強調。4ヶ所の各室への躙り口と板のスキマからの明かりが非日常的なシーンを演出。2Fの開放的な空間に対して、ダーク(アンダーな)で迷宮的なイメージを意図しました。
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「和室」
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大階段と内路地を彷徨う家(自宅)
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「フリースペース」 窓側はワークデスクと両脇がクロゼット。 右側には目隠し格子の支持壁を兼ねたパイプを5ヶ所設け、奥行は狭いが衣類や掃除用具を吊っています。 正面はトイレで高さを抑えてボックス状にして、目立たなくしてます。
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「フリースペース」 土間まで見下ろすと、実際以上の長く深い距離が、不思議なスケール感と情景を醸し出します。
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「ロフトからダイニング上部を見る」
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