見ても触れても味わえる木の家の風合い。優れた建築材料、木材の話
日本の建築材料として古くから使われている木材の魅力を、改めておさらいしてみましょう。
大志くん
2015年12月8日
Houzz コントリビュータ―
これまで、ハウスメーカーでより快適に安心して暮らせる住宅を確実にお引き渡しできることを目指して参りました。これからは、住まうモノから住み続けるコトにギアチェンジ。いまあるモノを活かすにはどのように考えるコトが必要か。そんなモノコト文化の発想転換を社会に発信することに日々奮闘中。永く使うコト、活かすコトの素晴らしさに共感して頂くよう。まずは住まいから考えていければと思います。
Houzz コントリビュータ―
これまで、ハウスメーカーでより快適に安心して暮らせる住宅を確実にお引き渡しできることを目指して参りました。これからは、住まうモノから住み続けるコトにギアチェンジ... もっと見る
日本の法隆寺は世界最古の木造建築ですが、なかでも五重塔は木材の柔軟性を活かした耐震構造をもつとの観点から、東京スカイツリーにもその工夫が採用されています。温故知新ともいえる技の継承によって、先代の知恵をアレンジしたわけです。
現在では、木造住宅でもそういった価値のある構造材を石膏ボードやビニールクロスで隠すことが主流となりましたが、柱や天井などの木材を現し(あらわし)とし、表側に露出させるのが伝統的な和室の仕上げでした。
1400年以上もの間、日本文化に根づいて親しまれてきた木の能力。今日は木材の特長を整理して、これだけ永く使い続けられているその理由を探ってみることにします。
まず初めに、おもな建築木材の種類を整理してみました。用途は柱・土台の構造材、敷居・鴨居・上がり框などの造作材に分けられます。木材の種類によって特長もさまざまですので、頭に入れておくとよいかもしれません。
現在では、木造住宅でもそういった価値のある構造材を石膏ボードやビニールクロスで隠すことが主流となりましたが、柱や天井などの木材を現し(あらわし)とし、表側に露出させるのが伝統的な和室の仕上げでした。
1400年以上もの間、日本文化に根づいて親しまれてきた木の能力。今日は木材の特長を整理して、これだけ永く使い続けられているその理由を探ってみることにします。
まず初めに、おもな建築木材の種類を整理してみました。用途は柱・土台の構造材、敷居・鴨居・上がり框などの造作材に分けられます。木材の種類によって特長もさまざまですので、頭に入れておくとよいかもしれません。
- ヒノキ(針葉樹)/万能材といわれる。耐水性があり香りがよいので浴室やトイレにも使われる。木曽ヒノキ、東濃ヒノキは、高級材として神社仏閣にも使われる。
- スギ(針葉樹)/重量は軽く、狂いは少ない。赤みのある色をした中心の芯材は強度が高い。桶や樽にも使われ、床材にすると歩くときに心地よい。
- アカマツ(針葉樹)/加工が容易で耐水性、耐久性に富む。梁や床材に使われ樹脂分が多く、経年変化で味わいが出る。
- エゾマツ(針葉樹)/おもに北海道産。木目もまっすぐ通ったものが多く、造作材、内装材として人気がある。
- ツガ(針葉樹)/針葉樹のなかでは材質が堅く、構造材として強度が高い部類となる。
- ケヤキ(広葉樹)/重量があり材質は硬い。大黒柱や装飾材の用途に向いている。京都清水寺の舞台の柱にも使われている。
自然共生素材として
新築当初の木材は、まだ内部に水分が含まれているため、周辺の湿度の変化に応じて、水分を吸ったり、放出したりしています。木に調湿効果があると言われるのはこのためです。これはあたかも我々人間の呼吸のように喩えられることがありますね。
木は、内部の水分量が変化するため、伸縮を繰り返します。伐採されて加工されたあとでも、自然界の規則で生き物のような働きをしてくれます。そんな働き者の材料を上手に活用することで、我々は自然との共生を感じることもできるのです。
新築当初の木材は、まだ内部に水分が含まれているため、周辺の湿度の変化に応じて、水分を吸ったり、放出したりしています。木に調湿効果があると言われるのはこのためです。これはあたかも我々人間の呼吸のように喩えられることがありますね。
木は、内部の水分量が変化するため、伸縮を繰り返します。伐採されて加工されたあとでも、自然界の規則で生き物のような働きをしてくれます。そんな働き者の材料を上手に活用することで、我々は自然との共生を感じることもできるのです。
山林の豊富な日本では、木材を比較的容易に調達することができるため、木造建築はごく当たり前に取り入れられてきました。樹木に囲まれたツリーハウスや、薪を扱う水辺の小屋のある風景には、自然と共存し、周囲の環境と木材が調和していることが象徴的に感じられます。森の樹々がもたらしてくれる、さまざまな恵みを受け入れた木造の空間が、居心地のよさを証明しているようです。
加工方法も進化、幅広い空間に
樹種によっては、数年間水分調整を図られることで、耐久性が安定するものもあります。木と木の接合部を補強する「構造金物」という金具も工夫されてきており、木造建築でも強度や耐久性が検証され、広さのある自由な空間を造れるようになりました。
樹種によっては、数年間水分調整を図られることで、耐久性が安定するものもあります。木と木の接合部を補強する「構造金物」という金具も工夫されてきており、木造建築でも強度や耐久性が検証され、広さのある自由な空間を造れるようになりました。
木材の交差するパーゴラの屋根部分では、加工された継ぎ目を金具で留め、柱と梁の一部を鉄骨にして2つの材料で構造を支えています。柱の根元は石材仕上げですが、全体のバランスを整えることで、異なる素材のデザインが調和します。
木造住宅は大工さんが手作業で、すべて接合部分を加工しながら組み立てていた時代もありました。今は加工精度の向上もあり、建てるときの品質が安定するように、あらかじめ工場などで材料の長さや太さ、継ぎ目部分がコンピューター管理され、機械の力も借りてつくるようになっています。
木造住宅は大工さんが手作業で、すべて接合部分を加工しながら組み立てていた時代もありました。今は加工精度の向上もあり、建てるときの品質が安定するように、あらかじめ工場などで材料の長さや太さ、継ぎ目部分がコンピューター管理され、機械の力も借りてつくるようになっています。
五感で楽しめる素材の魅力
木材を家の中で効果的に使った例を紹介します。
木目の規則性と人工的でない佇まいは、我々の日常生活への適度な心地よい刺激となります。これだけの量を仕上げ材として使うことで、木の表情をじかに感じ取ることができ、木材特有のほのかな香りが、家全体へ充填されるでしょう。外気から遮断された内装材が、年とともにどのように熟成・変化していくのか、観察していくことも楽しめます。
木材を家の中で効果的に使った例を紹介します。
木目の規則性と人工的でない佇まいは、我々の日常生活への適度な心地よい刺激となります。これだけの量を仕上げ材として使うことで、木の表情をじかに感じ取ることができ、木材特有のほのかな香りが、家全体へ充填されるでしょう。外気から遮断された内装材が、年とともにどのように熟成・変化していくのか、観察していくことも楽しめます。
縦と横に木目を交互に張り合わせた、印象的なアクセントパネルです。部屋の中で木に触れると温かみを感じますが、これは木は鉄やコンクリートと違い、熱を通しにくい性質があるからですね。
手前側のLDKから見た入口の両側に、手彫りで施した木柱が印象的です。地域に伝わる歴史や文化を、木材による装飾を通して垣間見ることができます。木の色みは暖色系といわれており、年月により落ち着いた色合いに変化することから、気分をゆったりと穏やかにしてくれます。金属系材料よりも光線の反射率が低いため、視覚的にも疲れが残らないといわれています。
木製建具を使った例です。開放的な吹き抜けのリビングを、一層分の高さの建具がTVボードのある面以外の三方向を取り囲んでいます。木のやわらかな素材の風合いを、ゆっくりとリビングのソファで鑑賞することができそうです。格子の間隔を狭くして、垂直方向への広がりから天井面が高く感じられる仕切り戸。この建具のどれを開放するかによって、幾通りもの生活空間を創り出してくれるでしょう。
エコアクションにもつながる
建築材料の中でも、鉄やアルミニウム、ガラスなどは製造時にエネルギーが必要となり、エネルギー消費に伴うCO2も多く排出されてしまいます。いっぽう、木材は加工がしやすいので、金属などに比べて製造過程でエネルギーが必要となりません。
このような木に囲まれた家は、人々に癒し効果を与えてくれるとともに、環境に優しい素材の集積でもあったわけです。
建築材料の中でも、鉄やアルミニウム、ガラスなどは製造時にエネルギーが必要となり、エネルギー消費に伴うCO2も多く排出されてしまいます。いっぽう、木材は加工がしやすいので、金属などに比べて製造過程でエネルギーが必要となりません。
このような木に囲まれた家は、人々に癒し効果を与えてくれるとともに、環境に優しい素材の集積でもあったわけです。
ご存じのとおり、環境配慮の視点でいうと、樹木は光合成で成長するときに大気中のCO2を取り込みます。一度吸収したCO2を貯蔵することも可能です。我々の周りに木材が使われるだけで、地球のCO2が減っていき、温暖化対策にもなるわけです。
エコアクションの手段として、行政も着目しつつあります。政策的な手段が検討され、地場産材を使用した木造住宅には建設費用を補助する制度がありますので、各地域のホームページを参照してみてください。北海道の例を以下にご紹介しておきます。
「日本の木のいえ情報ナビ」
木材の特長を考えて、4つの観点からおさらいしてみました。先人から受け継がれてきた優れた建築材料についてよく知ることで、新築やリノベーションのアイデアがもっと広がるかもしれません。
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