美しい景観を見渡せるよう窓を配置した、ファームハウススタイルの家
無駄のないラインで構成したデザインと環境に配慮した工夫でオーストラリアの数々の賞を受賞した家をご紹介します。
Louise Lakier
2017年4月19日
オーストラリア、メルボルンから車で1時間ほど離れたトレンタムにあるこちらの住宅は、環境に配慮した先進的なサステナブル設計を取り入れている。〈グロー・デザイン・グループ〉の建築家ティモシー・エリスさんが施主のケイン・ブラウンさんとリー・ブラウンさん夫妻に初めて会ったのは、2014年3月、メルボルンのフェデレーション・スクエアで開かれたイベント「スピードデート・サステナビリティ・エキスパート」だった。その場で、お互いの理想が美しくサステナブルな住まいであることがわかった。
家の設計にあたって主に目指したのは、地元の素材を使う、景観を考えて方角を決める、自然光を最大限に活かす、パッシブ暖房を取り入れる、そして地域の建物のスタイルになじむことだった。2015年に完成した家はこれらの目標をすべて満たし、地元の景観に溶け込みながら、納屋のようなデザインにはしっかりとコンテンポラリーなスタイルが活かされている。
家の設計にあたって主に目指したのは、地元の素材を使う、景観を考えて方角を決める、自然光を最大限に活かす、パッシブ暖房を取り入れる、そして地域の建物のスタイルになじむことだった。2015年に完成した家はこれらの目標をすべて満たし、地元の景観に溶け込みながら、納屋のようなデザインにはしっかりとコンテンポラリーなスタイルが活かされている。
住まい手:ケイン・ブラウンさんとリー・ブラウンさん夫妻(どちらもマーケティング専門家)、小さな子ども2人
所在地:オーストラリア、ビクトリア州トレンタム
規模:253平方メートル。ベッドルームx3、バスルームx2
エリスさんは施工を請け負ったリック・イーガンさんとともに、夫妻が購入したマウント・マセドニアを望む更地にオフグリッドの家の建設を進めた。施工にあたっては、建材は地元で調達して現場までの輸送を最小限にする、作業スタッフを地元で雇う、低VOC塗料やLED照明、リバースブリックベニア壁(内側をレンガ壁にすることで保温性を高める壁)を使用する、雨水タンクを導入するといった点で環境に配慮した。寒冷な気候も考慮して設計し、ホームオーナーが寒さに耐えることなく、快適な室温を保てるようにした。
色づかいは自然な仕上がりと素材にヒントを得て、ニュートラルカラーに木と石を組み合わせることで、質感が主張しすぎてぶつからないようににした。インスピレーションの元となったのは、エリスさんが写真に収めていたこの地域の納屋と、オーストラリアやアメリカの納屋が掲載されている書籍だった。資料のイメージに合わせて、耐久性の高い〈ブルースコープ〉のスチールを外装パネルに使用した。木材はユーカリの一種である、この地域原産のブラックバット。耐火基準をクリアし、スチールの硬質な印象をやわらげると同時に温かみを加え、質感のコントラストを際立たせている。
所在地:オーストラリア、ビクトリア州トレンタム
規模:253平方メートル。ベッドルームx3、バスルームx2
エリスさんは施工を請け負ったリック・イーガンさんとともに、夫妻が購入したマウント・マセドニアを望む更地にオフグリッドの家の建設を進めた。施工にあたっては、建材は地元で調達して現場までの輸送を最小限にする、作業スタッフを地元で雇う、低VOC塗料やLED照明、リバースブリックベニア壁(内側をレンガ壁にすることで保温性を高める壁)を使用する、雨水タンクを導入するといった点で環境に配慮した。寒冷な気候も考慮して設計し、ホームオーナーが寒さに耐えることなく、快適な室温を保てるようにした。
色づかいは自然な仕上がりと素材にヒントを得て、ニュートラルカラーに木と石を組み合わせることで、質感が主張しすぎてぶつからないようににした。インスピレーションの元となったのは、エリスさんが写真に収めていたこの地域の納屋と、オーストラリアやアメリカの納屋が掲載されている書籍だった。資料のイメージに合わせて、耐久性の高い〈ブルースコープ〉のスチールを外装パネルに使用した。木材はユーカリの一種である、この地域原産のブラックバット。耐火基準をクリアし、スチールの硬質な印象をやわらげると同時に温かみを加え、質感のコントラストを際立たせている。
家は2つの棟を通路で結んだ構造になっている。通路の外側は景観が楽しめる広々としたウッドデッキになっている。
屋内へは、マスターベッドルームの向かいにある車2台が置けるガレージから出入りする。ガレージ横には容量6万リットルのスチール製貯水タンクを設置した。細い廊下はマッドルーム(土間)兼ランドリールームを抜けて、家の中心にある廊下へと続く。
こちらもあわせて
玄関まわりがすっきりと片付く、マッドルームをとりいれよう
屋内へは、マスターベッドルームの向かいにある車2台が置けるガレージから出入りする。ガレージ横には容量6万リットルのスチール製貯水タンクを設置した。細い廊下はマッドルーム(土間)兼ランドリールームを抜けて、家の中心にある廊下へと続く。
こちらもあわせて
玄関まわりがすっきりと片付く、マッドルームをとりいれよう
廊下は外に広がる緑を楽しめるように設計し、〈ビンク〉の大きな二重ガラス扉からデッキへ通じている。廊下のフロアは小割板の上に床板を貼った。通路の奥に目を向けると、リビングルームの窓の一部が景色を切り取った額のように見えるよう計算されている。
リビングへ入ると、高い天井と開ける視界の効果で、明るく開放的な空間に感じられる。設計上、エリスさんが気に入っている部分のひとつだ。エリスさんは施主夫妻と一緒に測点から見たデジタル3Dモデルを作って検討し、風を正面から受けず、離れた場所にある隣家が視界に入らない位置と間取りにした。
なだらかな丘の景色が窓枠にうまく収まるよう、ミリ単位まで計算されている。コンピュータ上で綿密に把握し、スラブのコンクリートを打設する前に現地で確認したため、ずっと眺めていたくなる窓の位置を実現した。高窓は電動で開閉し、換気ができる。
なだらかな丘の景色が窓枠にうまく収まるよう、ミリ単位まで計算されている。コンピュータ上で綿密に把握し、スラブのコンクリートを打設する前に現地で確認したため、ずっと眺めていたくなる窓の位置を実現した。高窓は電動で開閉し、換気ができる。
家中の木の梁は地元の学校で使われていたものを再利用した。ブラックバットの木材はキッチンのフレームや、そのほかのスペースの仕上げに使われている。キッチンはほかの空間より天井を低くし、あたたかみとくつろぎを演出した。〈イルベ〉のダブルオーブンは高価だが、夫妻にとっては欠かせないアイテムだった。
カウンタートップなどの作りつけの家具は可能であればニュートラルなデザインにし、明るい色づかいの絵や家具で彩りを添えるのがよいのでは、とエリスさんは提案した。「例えばタイルを貼りかえるなど目新しいデザインを追って流行が去ったら入れ替えるよりも、費用がかかりません」。
インテリアは建物の美しさを邪魔しないよう、シンプルな家具でまとめた。
インテリアは建物の美しさを邪魔しないよう、シンプルな家具でまとめた。
廊下にある納屋風の引き戸を開けるとゲストルームがある。ベッドからは広がる平原の景色をのぞむことができる。引き戸は先のガラス扉と同じ〈ビンク〉。部屋のラグとベッドリネンは〈ウェイラント〉。
ゲストルームの机はブラックバットの合板を使った造作で、木をあしらった家全体の内装に合わせた。ランプはビクトリア州ジロングにある照明スタジオ〈パターン〉の作品で、夫妻への贈りものだ。シェードにはこの家の平面図がプリントされている。
マスターベッドルームは、ベッドのヘッドボードにあたる壁に木の羽目板を貼り、アクセントをつけた。写真正面の3重ガラスの窓は牧羊場を走るヒツジをイメージして配置、窓枠は樹齢100年のブラックバットの木を使用した。
今回のデザインで意外だったのが、バスルームの人気が高かったことだ。Houzzのサイトで多くの人がデザインのインスピレーションを得たようで、数千を超えるユーザーのアイデアブックに保存されている。
バスルームでは天窓から自然光が入り、メークなどにも十分な明るさを確保。上部に取りつけた鏡の奥には電気シェーバーやドライヤー用の電源が隠れている。写真右手の壁に開口部を設け、壁の向こうにある廊下の光を間接的に取り込んでいる。
バスルームでは天窓から自然光が入り、メークなどにも十分な明るさを確保。上部に取りつけた鏡の奥には電気シェーバーやドライヤー用の電源が隠れている。写真右手の壁に開口部を設け、壁の向こうにある廊下の光を間接的に取り込んでいる。
この家はビクトリア州建築デザイナー協会の最優秀サステナブルデザイン賞、全豪建築デザイン賞、インテリアデザイン・エクセレンス賞(IDEA)を受賞し、グリーンインテリア賞では最終選考に残った。
もしこの家にさらにどこか手を加えるとすれば、木の外装を施した建物のくぼみを家の反対側にも作りたい、とエリスさんは言う。「このくぼみの部分、とても気に入っています。反対側にも同じように設けてもいいでしょう。ただ、そうすると室内から今のようなマセドニア山の眺めは望めなくなるかもしれません」。
おすすめの記事
Houzzがきっかけの家(国内)
ジョージア・オキーフ邸をイメージした、4人家族の暮らしにフィットする家
文/永井理恵子
Houzzで見つけた建築家に依頼して、予算内で夢の住まいを実現!通りかかった人に「素敵ですね!」とよく褒められる、シンプルながらスタイリッシュなお宅です。
続きを読む
日本の家
ゲストへの思いやりの心をしつらえた、離れのある家
文/杉田真理子
東京から訪れるゲストのため、母屋のほかにゲストルームの離れをしつらえた住まい。伝統的な日本家屋の美しさが、自然の中で引き立つ家です。
続きを読む
Houzzがきっかけの家(国内)
家族で自然を満喫。極上の浴室と広々としたデッキを備えた軽井沢の別荘
3人の子供たちの成長期に家族で軽井沢ライフを楽しむため、オーナーは時間のかかる土地探し&新築計画を見直し、中古物件を購入。Houzzで見つけた長野県の建築家に改修を依頼して、飛躍的に自然とのつながりが感じられる住まいに変身させました。
続きを読む
リノベーション
建築家がゲストハウスに再考したガレージ
多目的スペースへと作り替えられた空間とカーポートの追加によって、スタイリッシュにアップデートされた、歴史あるニューイングランド様式の住宅をご紹介します。
続きを読む
世界の家
ビルバオのグランビア通りに佇む、1950年代のクラシカルなフラットハウス
既存のモールディングが美しい85平方メートルのリビング、ダイニング、ホームオフィスをもつ、エレガントなフラットをご紹介します。
続きを読む
Tairi Tamakiさん、こんにちは、Houzz 編集部の川上です。コメントをありがとうございます。たしかに、立地、環境、建物の構造などの条件によって窓のとり方はいろいろ変わってくると思います。ハウズには設計のプロもたくさん登録していますので、質問・相談コーナーに投稿されるとプロの意見が聞けるかもしれません。「相談・情報交換をする」から投稿することができますので、ぜひこちらでも質問してみてください。