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窓が切り取る風景と光が奥行きをもたらす、白い箱のような住まい
シンプルな箱型でコストを抑え、吹き抜けやスキップフロア、多様な窓を組み合わせて、のびやかな空間と豊かな採光を実現。変形敷地で快適な都会住まいをかなえた30代夫婦の家です。
Taeko Ishii
2017年3月3日
フリーランスのエディター・ライター。大学で住まいについて学んだのち、コピーライター、住宅雑誌編集者を経てフリーランスに。暮らしまわりに関すること、地方での暮らしについてが主なテーマです。
フリーランスのエディター・ライター。大学で住まいについて学んだのち、コピーライター、住宅雑誌編集者を経てフリーランスに。暮らしまわりに関すること、地方での暮らしについてが主なテーマです... もっと見る
ここは都内にある、閑静な住宅街。車が入らないほど細い道の先にあるため、静かで落ち着いた環境が保たれたそのエリアの一角に、端正な佇まいの白い箱のような住まいが現れた。外から見ると、多めにとった壁部分で閉じたような外観だが、室内に入ると、大きな窓から光が差し込むのびやかな空間が広がっている。
敷地は約70平方メートルの変形地。周囲を住宅に近接しているが、「大きな窓のあるリビングがほしい」と考えたオーナー夫妻は〈石川淳建築設計事務所〉による住宅シリーズ《ハコノオウチ》をウェブサイトで知り、依頼を決めた。
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:30代の夫妻
構造:木造 地上3階建て
設計:石川淳建築設計事務所
建築面積:35.86平方メートル(10.87坪)
延床面積:103.63平方メートル(31.40坪)
敷地面積:69.71平方メートル(21.12坪)
竣工:2016年
どんなHouzz?
所在地:東京都
住まい手:30代の夫妻
構造:木造 地上3階建て
設計:石川淳建築設計事務所
建築面積:35.86平方メートル(10.87坪)
延床面積:103.63平方メートル(31.40坪)
敷地面積:69.71平方メートル(21.12坪)
竣工:2016年
《ハコノオウチ》は、木造軸組在来工法で作る箱型の住宅シリーズ。施工しやすいシンプルな形状でコストを抑えつつ、吹き抜けやスキップフロア、多様な窓を組み合わせられるため、個性豊かなデザインをかなえることができる。
特に夫妻が魅きつけられたのは、都市に適したそのつくりだ。その名の通り箱型で壁量が多いため、外部の視線を遮りつつ、位置関係や方角を考慮した窓で光と眺望を得られる。壁量が多いことで、耐震性に優れる点も安心だ。
特に夫妻が魅きつけられたのは、都市に適したそのつくりだ。その名の通り箱型で壁量が多いため、外部の視線を遮りつつ、位置関係や方角を考慮した窓で光と眺望を得られる。壁量が多いことで、耐震性に優れる点も安心だ。
地上3階建ての1階に収納とバスルーム、2階にLDK、3階に寝室と子供部屋を配置。建物の高さ制限が厳しいことから、3層を得るために1階の床を地面より少し下げていることが、玄関を見るとわかる。
玄関のドアを開けた正面には、緑を切り取るアートのように美しいピクチャーウィンドウが。真っ白に統一した壁と天井が窓外の風景を引き立て、ウォールナット材のフローリングをはじめとする豊かな素材感のインテリアを、キャンバスのようにおおらかに受け止める。
地面を掘り下げた1階は光を絞った落ち着いた空間だが、2階に上がると、大きな窓から光が差し込む開放的な空間が広がっている。
リビングの大きな窓は、日当たりのよい南東向きだ。窓の向こうの隣家の外壁面には幸運にも窓がなかったため、視線も気にならない。窓の外にはコンパクトな庭を作り、眺めて楽しめる植物を植えている。
窓に面して設けた伸びやかな吹き抜けが3階まで光を取り込むため、家の中は明るく、住まいに一体感が生まれている。吹き抜けを介して、LDKから子供部屋の気配を感じられる設計だ。
窓に面して設けた伸びやかな吹き抜けが3階まで光を取り込むため、家の中は明るく、住まいに一体感が生まれている。吹き抜けを介して、LDKから子供部屋の気配を感じられる設計だ。
一見シンプルだが、変形敷地を最大限に生かす、ゆるやかなL字の平面計画にしたことで、空間にリズムが生まれている。
2階はワンフロアに間仕切りなくLDKをレイアウトしているが、写真手前のリビングと写真奥のダイニングに角度をつけてL字につないでいる。ひとつながりの空間ながらゆるやかに区切られ、エリアを移動すると気分や過ごし方が自然に変わる。窓越しに互いの空間を眺められるプランは、「外部を挟んで、窓から住まいの室内が見える配置にしたい」という夫妻の希望を形にしたものだ。
2階はワンフロアに間仕切りなくLDKをレイアウトしているが、写真手前のリビングと写真奥のダイニングに角度をつけてL字につないでいる。ひとつながりの空間ながらゆるやかに区切られ、エリアを移動すると気分や過ごし方が自然に変わる。窓越しに互いの空間を眺められるプランは、「外部を挟んで、窓から住まいの室内が見える配置にしたい」という夫妻の希望を形にしたものだ。
ダイニングを、階段などから見えにくい奥まった位置にしたのも夫妻の希望。ダイニングからキッチンでの作業風景や動線が目に入りにくいため、ゲストが訪れたときでも落ち着いて過ごせる。リビングへの来客時、ダイニングテーブルが少々片付いていなくても安心、という利点も。日常的に長い時間を過ごすリビングと食事を楽しむダイニング、過ごし方に合わせて、空間にメリハリを持たせた。
リビングの大きな窓は防火規定上、一般的な既製アルミサッシは使えず、スチールサッシの使用が条件となった。スチールサッシは基本的に既製品がなく、すべて特注製作となる。ゆえに幅2.5m×高さ4.7mという大きなサイズが可能になり、スチール独特の重厚感も、インテリアにアクセントを添えた。さらに本来なら網入りガラスを入れるところ、耐熱強化ガラスを採用することで、網なしガラスの窓を実現。遮るもののないクリアな眺めを得ることができた。
夫妻がイメージしたのは、ウォールナットの木目を生かしたミニマルなインテリア。住まい全体を通してウォールナットのフローリングと白い壁を組み合わせた空間はシンプルながら落ち着きと温もりを感じさせ、夫妻が好きな北欧の家具の、モダンでいて実直な雰囲気にも調和する。
オーダーしたキッチンもミニマルなデザイン。空間を有効に使えるよう、壁付けのI型カウンターを選んだ。高さを抑えて水平に連続させた窓は視線が気になりにくく、北からの穏やかな光を届けてくれる。カウンタートップは無垢のウォールナット材、リビングからも見える扉材はシンプルな白でフラットに。レンジフードも、空間に合わせて選んだスタイリッシュなデザインだ。またオープンキッチンゆえ、隣に大容量のパントリーを用意し、キッチン空間をすっきりと保っている。
リビングには、キッチンカウンターからL字に連続するカウンターを造作した。壁面には、窓と水平に連続したデザインのニッチを設け、お気に入りの食器や花器のディスプレイコーナーに。背面を黒く塗装しているため、色やフォルムが映え、ギャラリーのような一角になっている。
シンプルながら風景をインテリアに取り込んだ住まいは、想像以上に心地よい。窓の外に移ろう景色が、気持ちを豊かにしてくれた。
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