戸建 VS マンション。住むならどっち?
憧れのマイホームは戸建を選ぶかマンションを選ぶか。みなさんはどちら派ですか? 不動産のプロによるアドバイスです。
大村哲弥
2018年5月8日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo... もっと見る
住まい選びの永遠のテーマ、戸建かマンションか。どちらがダメだというわけではありませんが、それぞれのメリット・デメリットを理解した住居選びが必要です。最初は新築の戸建にこだわっていたのに、いい中古マンションと出会ってもろもろの判断をした結果、マンションリノベーションへ切り替えたという話も往々にしてあるものです。
そこで、戸建とマンションの両方に住んだ実感と、両方の商品企画に携わってきた経験をもとに、住み心地と費用負担の両面から掘り下げて比較してみました。
そこで、戸建とマンションの両方に住んだ実感と、両方の商品企画に携わってきた経験をもとに、住み心地と費用負担の両面から掘り下げて比較してみました。
こんなにも違う戸建とマンション
実際の住み心地の面から戸建とマンションを比較してみました(表1)。
木造低層の一戸建とコンクリート造の中高層マンションとでは、実際に住んでみると、身体感覚とそこからくる暮らしの実感の面で住み心地が大きく異なります。
実際の住み心地の面から戸建とマンションを比較してみました(表1)。
木造低層の一戸建とコンクリート造の中高層マンションとでは、実際に住んでみると、身体感覚とそこからくる暮らしの実感の面で住み心地が大きく異なります。
いちばんの違いは接地性の感覚ではないでしょうか。
木造低層の戸建は土地に接して住んでいる実感が得られると思います。毎日の家への出入りや何気なく部屋の窓から見える風景などからも、大地への近さは感じられます。運がよければ窓から木々の緑が眺められる家に住むこともできます。
一方、マンションの場合は、コンクリートで造られた堅固な空間の中に住んでいる感覚が強く、土地に近いという感覚は薄いと思われます。
土地に近い暮らしとはいえ、都市型の戸建の場合は、開放感や眺望の面はあまり期待できません。特に既成の街の中に建てられた戸建の場合は、隣接して建物が建っている場合が多く、前後左右の建物に囲まれて暮らしている感覚が強いのではないでしょうか。
木造低層の戸建は土地に接して住んでいる実感が得られると思います。毎日の家への出入りや何気なく部屋の窓から見える風景などからも、大地への近さは感じられます。運がよければ窓から木々の緑が眺められる家に住むこともできます。
一方、マンションの場合は、コンクリートで造られた堅固な空間の中に住んでいる感覚が強く、土地に近いという感覚は薄いと思われます。
土地に近い暮らしとはいえ、都市型の戸建の場合は、開放感や眺望の面はあまり期待できません。特に既成の街の中に建てられた戸建の場合は、隣接して建物が建っている場合が多く、前後左右の建物に囲まれて暮らしている感覚が強いのではないでしょうか。
逆に眺望や開放感の面で優れるのがマンションです。戸建に比べて隣接する建物との距離が大きく、特に中高層階では、目の前に建物がない開放感や、リビングルームからすばらしい眺望や夜景を楽しめる住まいを手に入れることも可能です。
建物の四方が外部に面する戸建では、お風呂やトイレに窓を設けることができます。廊下や水まわりに通風や採光を確保でき、閉塞感が少ないことも、マンションと比較した場合の戸建の魅力といえます。マンションでも妻側住戸などでは水まわりに窓を設けたプランもあります。
階段の昇り降りが要らない生活やバリアフリーを重視すると、マンションがふさわしいでしょう。戸建の場合は階段利用が必須といえます。
庭付きの住まいや緑を楽しみたいということであれば、戸建が選択のメインとなります。敷地が狭く庭が取れない場合でも、工夫次第でアプローチ周りなどにちょっとしたグリーンを植えたりできるのが戸建の暮らしです。敷地に余裕がある場合は、坪庭やテラスや縁側などオープンエアを満喫できるプランも可能です。マンションで庭や緑を楽しむには、1階の専用使用権の庭付きの住戸や広いルーフバルコニーの住戸などを探す必要があります。
建物の四方が外部に面する戸建では、お風呂やトイレに窓を設けることができます。廊下や水まわりに通風や採光を確保でき、閉塞感が少ないことも、マンションと比較した場合の戸建の魅力といえます。マンションでも妻側住戸などでは水まわりに窓を設けたプランもあります。
階段の昇り降りが要らない生活やバリアフリーを重視すると、マンションがふさわしいでしょう。戸建の場合は階段利用が必須といえます。
庭付きの住まいや緑を楽しみたいということであれば、戸建が選択のメインとなります。敷地が狭く庭が取れない場合でも、工夫次第でアプローチ周りなどにちょっとしたグリーンを植えたりできるのが戸建の暮らしです。敷地に余裕がある場合は、坪庭やテラスや縁側などオープンエアを満喫できるプランも可能です。マンションで庭や緑を楽しむには、1階の専用使用権の庭付きの住戸や広いルーフバルコニーの住戸などを探す必要があります。
生活音を気を使わなくてもよい戸建。駐車場の負担もない
音の面ではどうでしょうか。躯体がコンクリートでできたマンションは、外部からの音の遮音性は戸建よりも優れています。一方で躯体や排水管などを上下左右の住戸で共有している関係で、それらを通して伝わる生活音や排水音などを完全に遮断することは不可能です。マンションで暮らす場合は、生活音への一定の配慮が必要とされます。
戸建の場合は木造で開口が多く、道路や隣地が近いことも多いため、外部からの音が入ってきやすいと言えます。一方で戸建は独立した建物なので、子供が走り回る音などの普段の生活音に気をつかう必要がないというメリットがあります。
駐車場に関しては、敷地内に車が置ける戸建に軍配が上がります。マンションの場合は、機械式や、敷地外に借りざるを得ない場合も考えられます。また、マンションの場合は別途駐車料金を負担する必要があるというのも大きな違いです。
音の面ではどうでしょうか。躯体がコンクリートでできたマンションは、外部からの音の遮音性は戸建よりも優れています。一方で躯体や排水管などを上下左右の住戸で共有している関係で、それらを通して伝わる生活音や排水音などを完全に遮断することは不可能です。マンションで暮らす場合は、生活音への一定の配慮が必要とされます。
戸建の場合は木造で開口が多く、道路や隣地が近いことも多いため、外部からの音が入ってきやすいと言えます。一方で戸建は独立した建物なので、子供が走り回る音などの普段の生活音に気をつかう必要がないというメリットがあります。
駐車場に関しては、敷地内に車が置ける戸建に軍配が上がります。マンションの場合は、機械式や、敷地外に借りざるを得ない場合も考えられます。また、マンションの場合は別途駐車料金を負担する必要があるというのも大きな違いです。
日々の建物の管理やセキュリティの面で気楽・安心なマンション
セキュリティが優れるのはマンションの大きな特徴です。鍵一本で管理でき、オートロックによる二重三重のチェックがなされ、管理員さんがいるなど、安心な点が多いと思われます。戸建の場合は、低層で窓が多く、防犯の点ではマンションの安心感に比べるとやや劣ることは否めません。戸建で防犯面を万全にしたい場合は、独自にホームセキュリティを委託するなどの選択肢が考えられます。
マンションと戸建の所有形態からくる最大の違いは、建物の維持・管理や修繕に関する点です。
マンションの場合は、所有者で管理組合を結成し、建物の維持・管理を外部の管理会社に委託する方法が一般的です。管理組合運営への参画が求められますが、基本的には、建物の維持・管理に関しては、個人としては何もすることはありません。修繕に関しても、管理会社からの大規模修繕計画案の提案や工事の提案などに基づいて管理組合として決定・実施します。
一方、戸建の場合は、当たり前ながら、建物の日常の維持・管理は、所有者個人が行い、修繕なども、所有者自身の判断で決めることが必要です。
マンションの場合は、所有者は毎月の管理費と修繕積立金を負担することになります。戸建の場合は、管理費はかからず、修繕費はその都度負担することになります。
セキュリティが優れるのはマンションの大きな特徴です。鍵一本で管理でき、オートロックによる二重三重のチェックがなされ、管理員さんがいるなど、安心な点が多いと思われます。戸建の場合は、低層で窓が多く、防犯の点ではマンションの安心感に比べるとやや劣ることは否めません。戸建で防犯面を万全にしたい場合は、独自にホームセキュリティを委託するなどの選択肢が考えられます。
マンションと戸建の所有形態からくる最大の違いは、建物の維持・管理や修繕に関する点です。
マンションの場合は、所有者で管理組合を結成し、建物の維持・管理を外部の管理会社に委託する方法が一般的です。管理組合運営への参画が求められますが、基本的には、建物の維持・管理に関しては、個人としては何もすることはありません。修繕に関しても、管理会社からの大規模修繕計画案の提案や工事の提案などに基づいて管理組合として決定・実施します。
一方、戸建の場合は、当たり前ながら、建物の日常の維持・管理は、所有者個人が行い、修繕なども、所有者自身の判断で決めることが必要です。
マンションの場合は、所有者は毎月の管理費と修繕積立金を負担することになります。戸建の場合は、管理費はかからず、修繕費はその都度負担することになります。
マンションは戸建に比べローン以外の負担が大きいことに留意を
戸建とマンションに関して、ローン返済やランニングコスト(水道光熱費など)以外の主な費用を新築から30年間の期間で試算してみました(表2)。
あくまで仮定での比較ですが、マンションの費用が戸建の費用の倍以上と、マンションの場合の負担が大きいのがわかります。その差は主に管理費と駐車場料金です。
固定資産税は地域や物件によって大きく異なるので、金額の試算はしていませんが、一般的に建物割合が低く、建物の減価が速い、戸建の方が負担は少なくて済みます。
購入を検討する際は、同じ物件価格の場合、大雑把にいって毎月かかる管理費と駐車場料金の分だけ、マンションの方が戸建に比べ、費用負担が大きいと考えて判断するとよいでしょう。
戸建とマンションに関して、ローン返済やランニングコスト(水道光熱費など)以外の主な費用を新築から30年間の期間で試算してみました(表2)。
あくまで仮定での比較ですが、マンションの費用が戸建の費用の倍以上と、マンションの場合の負担が大きいのがわかります。その差は主に管理費と駐車場料金です。
固定資産税は地域や物件によって大きく異なるので、金額の試算はしていませんが、一般的に建物割合が低く、建物の減価が速い、戸建の方が負担は少なくて済みます。
購入を検討する際は、同じ物件価格の場合、大雑把にいって毎月かかる管理費と駐車場料金の分だけ、マンションの方が戸建に比べ、費用負担が大きいと考えて判断するとよいでしょう。
photo by Mark Moz-House/Home inspection
戸建は主な修繕が築20年前後で発生。中古戸建は修繕履歴を確認
以上の試算は新築で購入してから30年間の費用を試算したものです。中古で購入する際は、以下の点が異なってきますので留意してください。
中古マンションの場合、大規模修繕を実施する周期は、一般的に12年目、24年目、30年目といわれています。例えば、築20年のマンションを買った場合は、第1回目の大規模修繕が終わって、第2回目を数年後に控えた時期だと思われます。第1回目の大規模修繕費用やこれまでの修繕費用は、以前の所有者が支払った修繕積立金で賄われて実施されています。中古で購入後にそれ以降、どのくらいの修繕費用を想定したらよいかは、管理組合が保管する大規模修繕計画を確認することで可能になります。
中古戸建の場合は、購入後の思わぬ修繕費用の出費に要注意です。アットホーム(株)の調査によると、各項目の修繕は平均築年数20~25年の間に発生しています。築20年を超える古い中古戸建を購入する際は、これまでの修繕の実施状況などをよく確認して、今後、どの部分の修繕が必要となりそうかをあらかじめ確認しておくと安心です。将来の修繕負担に備えるためにも、中古戸建を購入する場合は、購入前に修繕履歴の確認やインスペクションの実施をおすすめします。
こちらもあわせて
中古住宅を安心して購入するには~インスペクション(住宅状況調査)とは何か~
戸建は主な修繕が築20年前後で発生。中古戸建は修繕履歴を確認
以上の試算は新築で購入してから30年間の費用を試算したものです。中古で購入する際は、以下の点が異なってきますので留意してください。
中古マンションの場合、大規模修繕を実施する周期は、一般的に12年目、24年目、30年目といわれています。例えば、築20年のマンションを買った場合は、第1回目の大規模修繕が終わって、第2回目を数年後に控えた時期だと思われます。第1回目の大規模修繕費用やこれまでの修繕費用は、以前の所有者が支払った修繕積立金で賄われて実施されています。中古で購入後にそれ以降、どのくらいの修繕費用を想定したらよいかは、管理組合が保管する大規模修繕計画を確認することで可能になります。
中古戸建の場合は、購入後の思わぬ修繕費用の出費に要注意です。アットホーム(株)の調査によると、各項目の修繕は平均築年数20~25年の間に発生しています。築20年を超える古い中古戸建を購入する際は、これまでの修繕の実施状況などをよく確認して、今後、どの部分の修繕が必要となりそうかをあらかじめ確認しておくと安心です。将来の修繕負担に備えるためにも、中古戸建を購入する場合は、購入前に修繕履歴の確認やインスペクションの実施をおすすめします。
こちらもあわせて
中古住宅を安心して購入するには~インスペクション(住宅状況調査)とは何か~
中古戸建を購入する場合は耐震診断と耐震改修を
最後に中古戸建を検討する場合の耐震性に関する留意点です。
1981年6月1日以降に建築確認を受けた物件は、新耐震基準と呼ばれ、それ以前の物件は旧耐震基準と呼ばれています。
新耐震基準とは、「震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと、震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」を新たな基準として制定されています。ところがその後の1995年に起こった阪神・淡路大震災では、新耐震基準による戸建が倒壊するなどの事態が起こり、戸建住宅に関しては2000年6月1日に新たな基準が制定されています。
具体的には、地盤調査の義務化、耐力壁のバランス、柱や筋交いの金物の指定などが追加になっています。戸建住宅の場合は、2000年6月1日以降に確認申請を受けた物件が実質上の新耐震基準であることを考えたほうがよいと思われます。
戸建の場合、耐震性に劣る建物は、倒壊・崩壊により、人命にまで被害がおよぶ危険性があります。中古戸建を購入する際、特に2000年6月1日より前の建築確認の物件の場合は、耐震診断を実施して、必要に応じて耐震改修工事を行うことをおすすめします。
参考:
国土交通省「平成25年マンション総合調査」
国土交通省「マンション修繕積立金に関するガイドライン」
アットホーム(株)「新築一戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く『一戸建て修繕の実態』調査」(平成28年)
こちらもあわせて
家を買って暮らすメリット、賃貸で暮らすメリット
六本木に暮らすということ。なぜ夫婦は高層賃貸マンションを選んだのか?
教えてHouzz
みなさんが家を買った決め手、賃貸を選んだ理由を教えてください。
最後に中古戸建を検討する場合の耐震性に関する留意点です。
1981年6月1日以降に建築確認を受けた物件は、新耐震基準と呼ばれ、それ以前の物件は旧耐震基準と呼ばれています。
新耐震基準とは、「震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと、震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」を新たな基準として制定されています。ところがその後の1995年に起こった阪神・淡路大震災では、新耐震基準による戸建が倒壊するなどの事態が起こり、戸建住宅に関しては2000年6月1日に新たな基準が制定されています。
具体的には、地盤調査の義務化、耐力壁のバランス、柱や筋交いの金物の指定などが追加になっています。戸建住宅の場合は、2000年6月1日以降に確認申請を受けた物件が実質上の新耐震基準であることを考えたほうがよいと思われます。
戸建の場合、耐震性に劣る建物は、倒壊・崩壊により、人命にまで被害がおよぶ危険性があります。中古戸建を購入する際、特に2000年6月1日より前の建築確認の物件の場合は、耐震診断を実施して、必要に応じて耐震改修工事を行うことをおすすめします。
参考:
国土交通省「平成25年マンション総合調査」
国土交通省「マンション修繕積立金に関するガイドライン」
アットホーム(株)「新築一戸建て購入後30年以上住んでいる人に聞く『一戸建て修繕の実態』調査」(平成28年)
こちらもあわせて
家を買って暮らすメリット、賃貸で暮らすメリット
六本木に暮らすということ。なぜ夫婦は高層賃貸マンションを選んだのか?
教えてHouzz
みなさんが家を買った決め手、賃貸を選んだ理由を教えてください。
おすすめの記事
家事・掃除
家事からはじめるマインドフルネス
著名なビジネスマンも実践するマインドフルネス。目を閉じるだけが瞑想ではないって知っていましたか? 「今」に意識を向けストレスを減らしましょう。
続きを読む
家事・掃除
計画的に少しずつ、今からできる大掃除ウィークリープラン
今から気負わず始められて、年末には家じゅうきれいになるお掃除プランと進め方のポイントをお届けします。そろそろ大掃除か、気が重いな……という人はぜひ読んでください!
続きを読む
インテリア
テレビのあり方を考えよう。テレビを主役にしないインテリアのススメ
「かっこいいリビングには大きなテレビが必要」と思い込んでいませんか? ライフスタイルが変化している今、テレビのあり方やリビングでの過ごし方について考えてみましょう。
続きを読む
ライフスタイル
中古マンションのリノベーション、いちばん気になる予算の考え方は?
文/大村哲弥
最近人気と注目が集まっている中古マンションのリノベーション。物件の価格やリノベーションの費用についての概要をまとめました。
続きを読む
twinhorse60様
ご指摘ありがとうございます。おっしゃるとおりです。お詫びして訂正いたします。