幅4mの家に光を満たし、めりはりの効いたワイド感を生み出した「7つの工夫」
20坪未満のコンパクトな土地に、家族3人の家を建て替え。光を届け、広々とした開放感を演出する工夫が光る、間口4mの快適な住まい。
takako kawaguchi
2017年7月4日
接道する東側の間口が5m少々と狭く、他三方は隣地に囲まれたいわゆる「ウナギの寝床」。現在は南と西側がまだ空き地だが、将来、3階建てに囲まれることが予想された。そこで設計を担当した〈向山建築設計事務所〉は工夫を凝らし、メイン居室となる2階と3階にたっぷりと光を取り込めるようプランニング。細長い建物内を大きな壁で仕切らず、自然とリズミカルにエリア分けするアイデアによって、広々としたワイド感を創出した。「光」そして「広さ」、日本の住宅オーナーの多くが頭を悩ませる、この2大問題のヒントとなる7つの工夫を挙げながら、この家をご紹介しよう。
築19年の中古住宅に12年住まい、子供の成長と家の老朽化から現地での建て替えを決めたオーナー家族。小さくても愛着のある土地に、家族の希望をぎゅっと詰め込んだ家をつくり上げた。
どんなHouzz?
家族構成:40代夫婦、子供1人
所在地:神奈川県川崎市
構造:木造3階建て
敷地面積:66.49平方メートル
延床面積:105.29平方メートル
設計:向山建築設計事務所
施工:安藤建設
竣工時期:2015年4月
撮影:藤井浩司(ナカサアンドパートナーズ)
写真は東側から見た外観。東南に当たる角を斜めに切り取ったような形になっている。これがリビングに光を取り込む大きなポイントのひとつ(光と広さの工夫その1)。詳しくは、後出のリビング写真を見ながらご紹介したい。
外壁は深みのある濃紺でモダンなテイスト。モルタルにリシン吹付け仕上げ。土間コンクリートを刷毛引きで仕上げた駐車場も確保している。
どんなHouzz?
家族構成:40代夫婦、子供1人
所在地:神奈川県川崎市
構造:木造3階建て
敷地面積:66.49平方メートル
延床面積:105.29平方メートル
設計:向山建築設計事務所
施工:安藤建設
竣工時期:2015年4月
撮影:藤井浩司(ナカサアンドパートナーズ)
写真は東側から見た外観。東南に当たる角を斜めに切り取ったような形になっている。これがリビングに光を取り込む大きなポイントのひとつ(光と広さの工夫その1)。詳しくは、後出のリビング写真を見ながらご紹介したい。
外壁は深みのある濃紺でモダンなテイスト。モルタルにリシン吹付け仕上げ。土間コンクリートを刷毛引きで仕上げた駐車場も確保している。
建物内は、南側を広々としたオープン空間にするため、構造壁を北側に寄せてあるのが特長だ(光と広さの工夫その2)。
写真は北側の構造壁を活用したアルコーブ状スペース。おしゃれな雑貨や絵本などを集めることが好きな奥様の「ディスプレイスペースがほしい」という要望を叶えた場所。「妻と娘はここで過ごすことが多いですね。読書をしたり、飾ってあるものを並べ替えたり眺めたりして、楽しんでいます」とオーナーは語る。オープンな南側スペースの傍らに、ちょっとこもれるような空間があることが、室内全体にめりはりを与え、住み心地のよさをアップしている。広さは1.79平方メートルで、床下には収納スペースも設置。
写真右手はエレクトーンの演奏スペース。細長い空間をリズミカルに見せているのが、エリアごとに色分けをした北側の壁。エレクトーンスペースはイエローグリーン、アルコーブ状空間はブルー、階段部分は薄いインディゴブルーにカラーリング。大きな壁で仕切らずとも、壁色に変化をつけることで自然とエリア分けして見せるテクニックである(光と広さの工夫その3)。
写真は北側の構造壁を活用したアルコーブ状スペース。おしゃれな雑貨や絵本などを集めることが好きな奥様の「ディスプレイスペースがほしい」という要望を叶えた場所。「妻と娘はここで過ごすことが多いですね。読書をしたり、飾ってあるものを並べ替えたり眺めたりして、楽しんでいます」とオーナーは語る。オープンな南側スペースの傍らに、ちょっとこもれるような空間があることが、室内全体にめりはりを与え、住み心地のよさをアップしている。広さは1.79平方メートルで、床下には収納スペースも設置。
写真右手はエレクトーンの演奏スペース。細長い空間をリズミカルに見せているのが、エリアごとに色分けをした北側の壁。エレクトーンスペースはイエローグリーン、アルコーブ状空間はブルー、階段部分は薄いインディゴブルーにカラーリング。大きな壁で仕切らずとも、壁色に変化をつけることで自然とエリア分けして見せるテクニックである(光と広さの工夫その3)。
一日中、明るい陽射しが降り注ぐ東南向きの窓。「通常、公道に面した側(この家の場合は東側)にバルコニーを取ることが多いですが、そうすると東からの光しか期待できません。そこで東南に向けた斜めの窓を設け、南からの採光も可能にしました。細長いスペースのどこからでも窓外の風景を眺められることも、窓を斜めに配置したメリットです」と〈向山建築設計事務所〉の向山博さん。
この窓のそばで、ハンモックに揺られながらひなたぼっこするのは、最高にリラックスできる時間。「外のバルコニーではお茶を飲みながら読書やネットサーフィンを楽しんでいます。さわやかな季節の休日は昼寝をすることも(笑)」とオーナー。
床はゴロゴロと寝ころんでくつろぐのに最適な、コルクフローリングを採用。やわらかな質感と、フローリングにもカーペットにも見える魅力的な模様が気に入っている。2階リビングは濃色の床暖房対応タイプ、アルコーブ風空間と3階は明るい色をチョイスした。
この窓のそばで、ハンモックに揺られながらひなたぼっこするのは、最高にリラックスできる時間。「外のバルコニーではお茶を飲みながら読書やネットサーフィンを楽しんでいます。さわやかな季節の休日は昼寝をすることも(笑)」とオーナー。
床はゴロゴロと寝ころんでくつろぐのに最適な、コルクフローリングを採用。やわらかな質感と、フローリングにもカーペットにも見える魅力的な模様が気に入っている。2階リビングは濃色の床暖房対応タイプ、アルコーブ風空間と3階は明るい色をチョイスした。
リビングからダイニングキッチンを眺めた写真。前述の通り、南北方向の耐震壁は北(写真右)に寄せ、南(写真左)は壁や仕切りのない広々したワンルームになっていることがわかる。
さらにダイニングキッチンには2.6×0.76メートルの吹き抜けも。東南からの光だけでなく、3階のテラス窓からも吹き抜けを介してダイニングキッチンに光が差し込む設計(光と広さの工夫その4)。これなら隣地に住宅が建っても、採光を確保できるというわけだ。
キッチンはLDに向かう対面式 のL字型。キッチンの腰壁には窯変のタイルを貼り、意匠を凝らした仕上げに。食器収納などはキッチン奥に集約。右手奥の北側は洗面室とトイレ。ちなみにトイレの壁面はオレンジ色になっている。
さらにダイニングキッチンには2.6×0.76メートルの吹き抜けも。東南からの光だけでなく、3階のテラス窓からも吹き抜けを介してダイニングキッチンに光が差し込む設計(光と広さの工夫その4)。これなら隣地に住宅が建っても、採光を確保できるというわけだ。
キッチンはLDに向かう対面式 のL字型。キッチンの腰壁には窯変のタイルを貼り、意匠を凝らした仕上げに。食器収納などはキッチン奥に集約。右手奥の北側は洗面室とトイレ。ちなみにトイレの壁面はオレンジ色になっている。
「我が家では、寝る、風呂、トイレ以外のすべての時間を全員でLDKで過ごしています」という仲良しのオーナー家族。なかでも過ごす時間が多いのがキッチンだ。料理が趣味というご主人が腕を振るったり、料理に興味を持ち始めたお嬢さんも交えてにぎやかにクッキングを楽しむことも。「建て替え前よりもゆったりしたスペースに」との希望が叶い、家族のコミュニケーションになくてはならない場となっている。
ダイニング照明は、世界中で愛されている不朽の名作、〈ルイスポールセン〉 の《PH5》。視線を惹きつけるインテリアのアクセントだ。また、LDKに渡した一本の間接照明によって、空間の長さと奥行が強く印象づけられている(光と広さの工夫その5)。
ダイニング照明は、世界中で愛されている不朽の名作、〈ルイスポールセン〉 の《PH5》。視線を惹きつけるインテリアのアクセントだ。また、LDKに渡した一本の間接照明によって、空間の長さと奥行が強く印象づけられている(光と広さの工夫その5)。
北側にレイアウトした階段。スケルトンにした理由は、3階テラスから階段を通して1階まで光を届けるため(光と広さの工夫その6)。
壁面は、圧迫感がなく軽やかに見える薄いインディゴブルー。階段幅は76.5cm、段板と手すりにはタモ集成材を使用。
壁面は、圧迫感がなく軽やかに見える薄いインディゴブルー。階段幅は76.5cm、段板と手すりにはタモ集成材を使用。
手すりには、手軽なテープタイプのLED照明を組み込んである。夜間に足元を照らす機能性に加え、間接照明のやわらかい光も楽しめて一石二鳥。
3階は南面にテラスがあり、明るさがすみずみまで満ちている。吹き抜けから階下のダイニングキッチンを眺めながら、ブリッジ状の廊下を進むと子供部屋に至る。
子供部屋は変型の6.9畳。子供の希望により、ピンクとライトブルーでコントラストをつけた壁面にも面白味がある。子供部屋の開口から吹き抜けを見下ろすと、ちょうどキッチンに立つ両親と目が合う。家族がさりげなくつながる、やさしい気配りを感じる設計だ。
ブリッジ廊下の手すりは光を遮らないよう、間隔が広めの柵状に。これにより階段への採光をより多く確保した(光と広さの工夫その7)。ロープ付きのかごを使って、2階と3階で物の受け渡しをすることもあるとか。子供部屋と反対側には6.5畳の寝室がある。
子供部屋は変型の6.9畳。子供の希望により、ピンクとライトブルーでコントラストをつけた壁面にも面白味がある。子供部屋の開口から吹き抜けを見下ろすと、ちょうどキッチンに立つ両親と目が合う。家族がさりげなくつながる、やさしい気配りを感じる設計だ。
ブリッジ廊下の手すりは光を遮らないよう、間隔が広めの柵状に。これにより階段への採光をより多く確保した(光と広さの工夫その7)。ロープ付きのかごを使って、2階と3階で物の受け渡しをすることもあるとか。子供部屋と反対側には6.5畳の寝室がある。
玄関前には小さいながらも植栽スペースを設け、家族の記念樹や季節の花が、ゲストをあたたかく出迎えてくれる。
20坪に満たない土地に建てた小さな家。その中は明るい光で満ちあふれ、数えきれないほどの家族のリクエストが叶えられている。
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階段の視線の抜けもいい。真似したいところが多くありました。
ベトナム在住ですが、ベトナムの間口が4~5mくらいなんですよね。
家族もできましたし、後々家を建てる可能性があるので参考にしたいです。