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小さな空間こそクオリティ重視で。ベルリンの歴史ある24㎡を改装
共有スペースとプライベートエリアを使い分けた、快適に暮らせるアパートメントです。
Eva Zimmermann
2018年6月28日
建築家のヴァルター・グロピウスはかつて、「部屋を小さく、窓を大きくすることをつねに考えるべきだ」と言ったことがある。ドイツ・ベルリンのシャルロッテンブルク地区に2つの物件を持つベティーナ・シュノイヤーさんは、このグロピウスの言葉を心にとめながら、リノベーションに取り組んだ。
このプロジェクトでは、オーナー兼デザイナーであるシュノイヤーさんの「自分の『好き』を追求する原則」が、最良の形で発揮されている。「これまでずっと自分が気に入ったものを購入してきました。計算しずきず、愛せると感じたものを」。こうして、19世紀後半のヴィルヘルム時代の様式建築、高品質な素材、現代的なビルトイン設備といった要素が融合した、24平方メートルの魅力的なアパートメントが完成した。
このプロジェクトでは、オーナー兼デザイナーであるシュノイヤーさんの「自分の『好き』を追求する原則」が、最良の形で発揮されている。「これまでずっと自分が気に入ったものを購入してきました。計算しずきず、愛せると感じたものを」。こうして、19世紀後半のヴィルヘルム時代の様式建築、高品質な素材、現代的なビルトイン設備といった要素が融合した、24平方メートルの魅力的なアパートメントが完成した。
リノベーション直後の写真:ルカ・ギラルディーニ
どんなHouzz?
住まい手:テナントひとり
所在地:ドイツ・ベルリンのシャルロッテンブルク地区、グロルマンシュトラーセ
規模:延床面積24平方メートル
インテリアデザイナー:ベティーナ・シュノイヤー
ハンブルク生まれのシュノイヤーさんがインテリアデザインの仕事をするようになったのは、偶然が重なった結果だった。法律を専攻したシュノイヤーさんは、大学でアシスタントとして働いたのち、ヘンリ・ナンネン・ジャーナリスト専門学校に入学。卒業後はジャーナリスト兼エディターとしてドイツの出版業界で長年活躍していた。インテリアデザイン誌「AD アーキテクチュラル・ダイジェスト」でも働いたことがある。
「やっと、自分が本当に楽しいと感じられるものが見つかったんです」とシュノイヤーさんは言う。現在もその楽しみや喜びが、仕事の礎であり続けている。シュノイヤーさんは、まるでスポンジのように新しい情報を吸収していく。てきぱきしていて頭脳明晰、ベルリンっ子らしい洗練された知識人であり、大好きな仕事にプロとして愛を持って取り組んでいることが伝わってくる。古い建築、美しいデザイン、優秀な仲間――キーワードは、こういったものへの「愛」なのだ。
シュノイヤーさんがインテリアデザインを最初に意識したのは、1999年、ハンブルクからベルリンに引っ越してきたときのことだった。当時の大家さんだった建築家のカロリーネ・ラスペさんが、自分のアパートメントに招いてくれた。そこは、ヴィルヘルム2世の時代の様式の部屋を現代的にリノベーションした、新しいバスルームと開放的なキッチンのあるオープンプランの空間だった。
どんなHouzz?
住まい手:テナントひとり
所在地:ドイツ・ベルリンのシャルロッテンブルク地区、グロルマンシュトラーセ
規模:延床面積24平方メートル
インテリアデザイナー:ベティーナ・シュノイヤー
ハンブルク生まれのシュノイヤーさんがインテリアデザインの仕事をするようになったのは、偶然が重なった結果だった。法律を専攻したシュノイヤーさんは、大学でアシスタントとして働いたのち、ヘンリ・ナンネン・ジャーナリスト専門学校に入学。卒業後はジャーナリスト兼エディターとしてドイツの出版業界で長年活躍していた。インテリアデザイン誌「AD アーキテクチュラル・ダイジェスト」でも働いたことがある。
「やっと、自分が本当に楽しいと感じられるものが見つかったんです」とシュノイヤーさんは言う。現在もその楽しみや喜びが、仕事の礎であり続けている。シュノイヤーさんは、まるでスポンジのように新しい情報を吸収していく。てきぱきしていて頭脳明晰、ベルリンっ子らしい洗練された知識人であり、大好きな仕事にプロとして愛を持って取り組んでいることが伝わってくる。古い建築、美しいデザイン、優秀な仲間――キーワードは、こういったものへの「愛」なのだ。
シュノイヤーさんがインテリアデザインを最初に意識したのは、1999年、ハンブルクからベルリンに引っ越してきたときのことだった。当時の大家さんだった建築家のカロリーネ・ラスペさんが、自分のアパートメントに招いてくれた。そこは、ヴィルヘルム2世の時代の様式の部屋を現代的にリノベーションした、新しいバスルームと開放的なキッチンのあるオープンプランの空間だった。
シュノイヤーさんがシャルロッテンブルクのリノベーションを手掛けたのは昨年のことだが、それ以前にも、自宅を含む6つの物件でリノベーションプロジェクトをおこなっている。「魅力的な立地にあって、ボロボロだけど可能性を感じる物件を購入して、好きなようにリノベーションする、というのが基本パターンです」
ラスペさんと仕事をするのはいつも楽しいと、シュノイヤーさんは言う。「最初は大家とテナントという関係で、それがオーナーと建築家という関係になりました。いまでは友人でもあります」
こちらは、シュノイヤーさんが所有する2つの物件が入っているシャルロッテンブルクの建物のエントランスホール。共用エリア、エントランス、廊下のリノベーションは、シュノイヤーさんの友人で、当時は同じ建物内に物件1つと店舗を所有していたアーティストのクラウス&ズザンネ・ロッテンバッハ夫妻が担当した。「ふたりがすごく頑張ってリノベーションを進め、中庭まで手を加えてくれました。素晴らしいですよね。ここまでしてくれる管理組合を最近あまりみかけないのは残念です」とシュノイヤーさんは言う。
ラスペさんと仕事をするのはいつも楽しいと、シュノイヤーさんは言う。「最初は大家とテナントという関係で、それがオーナーと建築家という関係になりました。いまでは友人でもあります」
こちらは、シュノイヤーさんが所有する2つの物件が入っているシャルロッテンブルクの建物のエントランスホール。共用エリア、エントランス、廊下のリノベーションは、シュノイヤーさんの友人で、当時は同じ建物内に物件1つと店舗を所有していたアーティストのクラウス&ズザンネ・ロッテンバッハ夫妻が担当した。「ふたりがすごく頑張ってリノベーションを進め、中庭まで手を加えてくれました。素晴らしいですよね。ここまでしてくれる管理組合を最近あまりみかけないのは残念です」とシュノイヤーさんは言う。
アフター:1階ホールの、かつて共用トイレがあった場所に、1.5平方メートルのランドリールームをつくり、タテ型の洗濯乾燥機を設置した。ふたつの物件の入居者たちと、友人でもある上階のアパートメントのオーナーが利用できるようにするためだ。「物件の中は1センチでも広く使いたいので、こうした共用スペースはとても助かります」とシュノイヤーさん。
1階と2階のあいだにあったもうひとつのトイレは、掃除道具を入れる納戸に改造した。掃除機のほか、アイロン台や、焼き型、ブレンダー、フォンデュ用グッズといったキッチン用品も収納されている。階段の下には、スーツケースをしまう場所もある。「それぞれの室内に小さな窓をつくり、床には黒いタイルを貼りました」
1階と2階のあいだにあったもうひとつのトイレは、掃除道具を入れる納戸に改造した。掃除機のほか、アイロン台や、焼き型、ブレンダー、フォンデュ用グッズといったキッチン用品も収納されている。階段の下には、スーツケースをしまう場所もある。「それぞれの室内に小さな窓をつくり、床には黒いタイルを貼りました」
ビフォー:シュノイヤーさんは。この物件のバランスのとれたコンパクトさに魅力を感じたのだと話す。「小さな部屋が好きなんです。タイニーハウスの流行は、すごく面白いと思います。これからの大都市では、スモールスペースの暮らしがもっと重要になっていくでしょう。共用空間の使い方など、斬新なアイデアがたくさん出てきています。グロピウスが1929年のドイツ工作連盟の展覧会で言った、『窓を大きく、部屋を小さく』という言葉を思い出します」
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「部屋が小さければ小さいほど、前もって入念に考えなくてはなりません。入ってすぐの部屋は、キッチン・玄関・クロークルームの3つの役割を兼ねています」とシュノイヤーさん。
キッチンキャビネットを3つ並べられるように、壁をリビングルーム側に8センチ移動させている。古い木の床は水もれで傷んでおり、新しいオーク材で矢羽張りにした。「小さい部屋だからこそ、とくに高品質な素材を使うべきです」
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キッチンキャビネットを3つ並べられるように、壁をリビングルーム側に8センチ移動させている。古い木の床は水もれで傷んでおり、新しいオーク材で矢羽張りにした。「小さい部屋だからこそ、とくに高品質な素材を使うべきです」
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モノクロームのキッチンユニットは、コンパクトではあるが、ひと通りの設備をすべて揃えている。カウンタートップは奥行きが通常よりも深い72センチで、収納スペースをたっぷり確保できた。ビルトイン式のIHコンロが2つあるほか、棚の中にもうひとつ予備のクッキングヒーターがある。
キッチンキャビネット:〈IKEA〉《ティングスリード》、ソルト・アンド・ペッパー・シェーカー:〈ジョナサン・アドラー〉《モーホーク》
キッチンキャビネット:〈IKEA〉《ティングスリード》、ソルト・アンド・ペッパー・シェーカー:〈ジョナサン・アドラー〉《モーホーク》
テナントは入居する前にアンケートを記入して、食器洗浄機やテレビなど、希望する設備を指定することができた。これまでのテナントのひとりで、ベルリンのシャリテー大学病院に勤める生物学者は、写真のように〈ボーマン〉のミニ食洗機をシンクの下に設置してもらった。「この製品を選んだ大きな理由は、操作パネルが上のほうに付いていて使いやすかったことです」とシュノイヤーさん。
置き型食洗機:〈ボーマン〉TSG707
置き型食洗機:〈ボーマン〉TSG707
内装の作業に入るまえに、シュノイヤーさんはデザインに詳しい友人たちを何人か招いて、カラースキームや家具、絵を飾るための壁の場所などを相談した。照明アーティストのスザンネ・ロッテンバッハさん(夫婦で共用エリアの改装を担当してくれた友人)のアイデアで、壁に飾るアートは、eBayやマーケットで購入して集めることにした。
ベッド:〈IKEA〉、スロー:北アフリカの市松模様のニットで、近所の老婦人がアフリカ産ウールで手編みしてくれたもの(女性はすでに亡くなってしまったが、彼女の夫は北アフリカの国で大使を務めていた)
ベッド:〈IKEA〉、スロー:北アフリカの市松模様のニットで、近所の老婦人がアフリカ産ウールで手編みしてくれたもの(女性はすでに亡くなってしまったが、彼女の夫は北アフリカの国で大使を務めていた)
周囲の人たちと意見交換をするほか、本や雑誌「AD」、Houzzもインスピレーションの源になったとシュノイヤーさんは言う。「Houzzは重要な記事のテーマのツボを押さえて取り上げていると思います。素晴らしいアイデアがいっぱいのタイニーハウスプロジェクトがたくさん見つかるのは嬉しいですね」
イルマリ・タピオヴァーラ風の椅子は、ハンブルクのガレージセールで入手して塗りなおしたもの。
ビフォー:シュノイヤーさんがこの物件に惹かれた理由は、ショッピングに便利なクーアフュルステンダム通りとトレンディなザヴィニープラッツに挟まれた、最高の立地に加え、中庭に面した大きな窓がある点だ。
グロピウスの考えに従えば、小さな部屋のなかに空間の広がりを感じさせるために窓は欠かせない。リノベーション以前から、この窓は大きな可能性が感じられる部分だった。ここから、5月半ばに新たに整えられた中庭の景色が見える。「中庭の整備が終わったら、2004年にあった学生の庭のデザインコンクールで受賞したデザインが再現される予定」なのだそうだ。
アフター:メインの部屋の窓はきれいに直した。
ソファベッドの向かいに新しくつくった壁には、壁面と一体化したような、同じ大きさのドアが2つある。「以前はドアのサイズがばらばらという、私の大嫌いなデザインだったんです」とシュノイヤーさん。
金属とマンゴーウッドでできたコンソールテーブル。ふたり並んで座る幅は、タイトながらある。
コンソールテーブル:〈メゾン・ドュ・モンド〉《メトロポリス》
金属とマンゴーウッドでできたコンソールテーブル。ふたり並んで座る幅は、タイトながらある。
コンソールテーブル:〈メゾン・ドュ・モンド〉《メトロポリス》
上の写真のようにテーブルの短辺を壁につけて、ダイニングコーナーとして使えばさらに快適だ。写真、部屋の奥に見えているウォールクローゼットシステムは〈IKEA〉で、本来は寝室向けにデザインされたものだ。シュノイヤーさんは部屋に溶け込む多機能収納に活用した。「クローゼットを高い位置に浮かせて設置したのがいちばんのポイントです。床のスペースを残すことで広く感じます」
クローゼットシステム:〈イケア〉《パックス》約35cmの奥行きがある
クローゼットシステム:〈イケア〉《パックス》約35cmの奥行きがある
レザーの取っ手はEtsyで見つけた。
入念に選んだ小物類で、より居心地のいい空間を演出している。かなりの花瓶収集癖があるというシュノイヤーさんは、デコレーションするのがとても楽しかったそうだ。「私の家は花瓶でいっぱいなんです。この部屋では欲求を少し抑えましたが、そのうち間違いなくヴィンテージの花瓶のお店を開くと思います」。ふたつの白い花瓶は、シュノイヤーさんの母親と友人から受け継いだもの。ヴィンテージのプレキシグラスのラックはeBayで購入。
アフター:幅1.4メートルのウォークインタイプのシャワーエリアをつくり、ミントカラーのガラスタイルを貼って明るく仕上げた。さらに、トイレを窓の下に配置して、バスルームに入ってすぐにトイレが目に入らないように工夫している。シュノイヤーさんにとって重要なポイントだ。
シュノイヤーさんは、バスルームに窓があるのは大きなプラスだと言う。「ワンルームアパートメントで、自然光が入るバスルームは珍しいんです」。オリジナルの窓は長すぎて下にトイレのタンクが入らなかったため、窓を新しくしている。
トイレ:〈ギーベリッツ〉《オメガ》
シュノイヤーさんは、バスルームに窓があるのは大きなプラスだと言う。「ワンルームアパートメントで、自然光が入るバスルームは珍しいんです」。オリジナルの窓は長すぎて下にトイレのタンクが入らなかったため、窓を新しくしている。
トイレ:〈ギーベリッツ〉《オメガ》
ひとつひとつ決断を下す前に、シュノイヤーさんはまず、もし自分が住むならどうしたいだろうか、と考える。「ビルトインの設備は、すべて高品質で耐久性に優れたものを選んでいます。安いものは逆に高くつくと思います。好きではありません」とシュノイヤーさんは言う。安い製品はダメになるのも早く、しょっちゅう交換が必要なため、長期的にみて高価になってしまうためだ。「小さなアパートメントは、良い素材を使えば魅力的になります。そんな空間でこそ、〈IKEA〉や〈H&M ホーム〉のアイテムも上手に使うことができるんです」
新しいヒーターは超スリムタイプで場所をとらない。
シンク:〈アラぺ〉, ヒーター:〈コーソー・バイ・セバスチャン〉
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シンク:〈アラぺ〉, ヒーター:〈コーソー・バイ・セバスチャン〉
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このプロジェクトに取り組みながら、シュノイヤーさんの頭の片隅にあったのはふたりの息子たちのことだった。「上の子が16歳で、下が13歳。もう何年かすれば、ふたりとも家を出たいと言い出す年ごろです」とシュノイヤーさん。長男はスケーター仲間が集まるクロイツベルク地区のほうがいいそうだが、「下の子はいまも、2階の物件がかなり気に入っているんです。すでに友達とふたりで、上下のアパートメントに引っ越して共同生活をしようと計画しているようです」。趣味の良さは受け継がれているようだ。
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