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家族と、友人と、豊かな時間をともに過ごせる「3つの集える場」をもつ家
広々とした土間ホールとLDK、そしてライブラリー。スキップフロアでつながった奥行きと広がりのある空間を、家のどこにいても家族で共有できる住まいです。
takako kawaguchi
2018年12月8日
家の中で家族や友人が語り合い、時を過ごす場として、一般的に思い浮かべるのはLDKだ。プランニングでもLDK+家族分の個室、と間取りを決めていくことがほとんどなのではないだろうか。その既成概念を覆して柔軟な発想で見直し、周辺環境とオーナー家族の生活スタイルにもフィットさせた家が誕生した。
デザインのポイントは「3つの集える場」。1つめは、通常の玄関とはスケールを変え、12畳の広さと4mの高さをもたせて近隣や友人との交流の場とした1階「土間ホール」。2つめは、家族がにぎやかに過ごせる20畳のLDK。3つめは、皆が思い思いの趣味を静かに楽しむライブラリー。これら3つの場は、仕切りを開放することで相互につながり、さらに多様で奥行きのある生活空間を生み出す。人が集まる空間=LDK、という考えを広げ、心理的にも実質的にもオープンな家作りに成功した好例だ。
もともとこの近くに住んでいたオーナー家族は、新築予定地の目の前に広がる緑豊かな公園と、地域住民に対して開かれた家作りを希望。公園には知人や子どもの友達が頻繁に遊びに来る。そんな気のおけない人々や近隣と、少し踏み込んだコミュニケーションを気軽にとれる場とは? さまざまなプランを検討した末、当初は1階で予定していたLDKを2階にしたところから、家作りは大きく前へ動き出した。
デザインのポイントは「3つの集える場」。1つめは、通常の玄関とはスケールを変え、12畳の広さと4mの高さをもたせて近隣や友人との交流の場とした1階「土間ホール」。2つめは、家族がにぎやかに過ごせる20畳のLDK。3つめは、皆が思い思いの趣味を静かに楽しむライブラリー。これら3つの場は、仕切りを開放することで相互につながり、さらに多様で奥行きのある生活空間を生み出す。人が集まる空間=LDK、という考えを広げ、心理的にも実質的にもオープンな家作りに成功した好例だ。
もともとこの近くに住んでいたオーナー家族は、新築予定地の目の前に広がる緑豊かな公園と、地域住民に対して開かれた家作りを希望。公園には知人や子どもの友達が頻繁に遊びに来る。そんな気のおけない人々や近隣と、少し踏み込んだコミュニケーションを気軽にとれる場とは? さまざまなプランを検討した末、当初は1階で予定していたLDKを2階にしたところから、家作りは大きく前へ動き出した。
設計を任されたのは、角倉剛建築設計事務所の角倉剛さん。オーナーの希望だった1階LDK案を見直し、代わりに提案したのが、玄関に大きな土間ホールを作り、セカンドリビングとするプランだった。広さ12畳、天井高は4.1mあり、公園で遊んで帰ってきた元気な子どもたちも受け入れられる大空間。靴のままなら大人たちも気軽に立ち寄りやすいだろうと、床はモルタルの土間とした。「半屋外的な大空間があると、リビングとは違う集まり方ができるので、生活が豊かになると考えました」。
どんなHouzz?
家族構成:50代夫婦、子ども2人
所在地:千葉県松戸市
構造:木造在来工法
敷地面積:159平方メートル
建築面積:58平方メートル
延床面積:114平方メートル
設計・監理:角倉剛建築設計事務所
構造設計:山田構造設計事務所
空調設計:Lapin建築設備工房
照明設計:ソノベデザインオフィス
竣工時期:2017年7月
どんなHouzz?
家族構成:50代夫婦、子ども2人
所在地:千葉県松戸市
構造:木造在来工法
敷地面積:159平方メートル
建築面積:58平方メートル
延床面積:114平方メートル
設計・監理:角倉剛建築設計事務所
構造設計:山田構造設計事務所
空調設計:Lapin建築設備工房
照明設計:ソノベデザインオフィス
竣工時期:2017年7月
土間の周りは縁側のようなスペースになっており、どこからでも室内に上がることができる。角倉さん自身が広い玄関のある旅館が好みで、そうした旅館からインスパイアされた形だ。人を快適に迎え入れる空間を作ることで、オーナーの望む開かれた家を実現している。
このスペースは、小学生のお子さんがジム代わりにもしており、新体操の練習や縄跳び、トランポリンのトレーニングにと大活躍している。
土間はモルタルの上に表面硬化剤を塗布。天井は梁と野地板現し。土間の突き当たりは洗面所とバスルーム、トイレ。汗をかいて帰ってきた場合も、バスルームや洗濯機がすぐに使える便利なレイアウトだ。
このスペースは、小学生のお子さんがジム代わりにもしており、新体操の練習や縄跳び、トランポリンのトレーニングにと大活躍している。
土間はモルタルの上に表面硬化剤を塗布。天井は梁と野地板現し。土間の突き当たりは洗面所とバスルーム、トイレ。汗をかいて帰ってきた場合も、バスルームや洗濯機がすぐに使える便利なレイアウトだ。
土間ホールに面して、子ども室が2部屋並ぶ。部屋の引き戸をオープンにすると、土間ホールと一体になった大スペースに。子ども室だけでなく、土間ホールにつながる開口部はすべて2枚引き戸、3枚引き戸を使った開放的な作り。どれもが出入り用だけの建具ではなく、空間をつなげる建具として考えられているためだ。
2階の折れ戸は、土間に対する動きのあるアクセントとして、あえて大きめにデザイン。間接照明を組み込んだ壁沿いの下足箱とともに、この大空間のポイントとなる設えである。玄関扉脇のガラスと高窓を通し、向かいの公園の緑が見えるのが清々しい。
2階の折れ戸は、土間に対する動きのあるアクセントとして、あえて大きめにデザイン。間接照明を組み込んだ壁沿いの下足箱とともに、この大空間のポイントとなる設えである。玄関扉脇のガラスと高窓を通し、向かいの公園の緑が見えるのが清々しい。
螺旋階段を2階へ上がり、1階土間ホール、左手のLDK、2階上部にあるライブラリーを見たところ。この位置からは玄関高窓と、ライブラリーの窓の両方から公園の緑を望むことができる。
オーナーは、日本を代表する建築家・前川國男の自邸が好みであり、骨太でオーソドックスな、奇をてらわない家を要望していた。1階をピロティ風ともとれる軽快な土間とし、連続窓を設けたデザインは、前川國男が展開した日本のモダニズム建築を彷彿とさせる。木材の直線で構成された室内に、美しい曲線を描く螺旋階段が動感を与えているのも絶妙なバランスだ。
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日本固有の建築要素を生かした、モダニズムの建築家、前川國男の自邸
暮らす人をインスパイアする都会のサンクチュアリ《新・前川國男自邸》
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2階のLDKは20畳。写真右側は1階土間や2階上部のライブラリーなどととつながり、左側には陽射しがたっぷりと入る窓があるため、とにかく明るくて開放的だ。天井の高さは2.2mから高いところでは3.8mあり、2階上部へと斜めに続く形で実際以上に広さを感じさせる。
左に配置した窓は、庭がよく眺められるようにと低めの位置に。窓外には布団干し用のバーが取り付けてあり、転落防止柵も兼ねている。工事中に現場を訪れた角倉さんは、この低めの窓の枠を「腰掛けるのにちょうどいいのでは」と見てとり、奥行きをやや大きめに変更。ベンチのように腰かけてひなたぼっこができる仕掛けにした。
奥のリビングに掛けたカーテンとソファのファブリックは、夫妻が大ファンである「ミナ・ペルホネン」のもの。カーテンは奥様自らが縫製して仕上げている。冒頭でご紹介した玄関写真にあるモビールも同ブランド。ダイニングのテーブルは、この家のテイストに合わせて京都のショップで購入した。
左に配置した窓は、庭がよく眺められるようにと低めの位置に。窓外には布団干し用のバーが取り付けてあり、転落防止柵も兼ねている。工事中に現場を訪れた角倉さんは、この低めの窓の枠を「腰掛けるのにちょうどいいのでは」と見てとり、奥行きをやや大きめに変更。ベンチのように腰かけてひなたぼっこができる仕掛けにした。
奥のリビングに掛けたカーテンとソファのファブリックは、夫妻が大ファンである「ミナ・ペルホネン」のもの。カーテンは奥様自らが縫製して仕上げている。冒頭でご紹介した玄関写真にあるモビールも同ブランド。ダイニングのテーブルは、この家のテイストに合わせて京都のショップで購入した。
土間やライブラリーに向かって大きな開口があるため、どのフロアにいても家族と同じ空間を共有している気持ちになれる。
この家では各スペースに充分な窓が設けてあり、つながった隣の空間からもその光や景色を楽しめる。「家の中にいても多方向から差し込む光に外の気配を感じられ、空や緑の眺めに癒されています」とオーナーは語る。
この家では各スペースに充分な窓が設けてあり、つながった隣の空間からもその光や景色を楽しめる。「家の中にいても多方向から差し込む光に外の気配を感じられ、空や緑の眺めに癒されています」とオーナーは語る。
手前のアイランドキッチンは、リビングのオブジェとして考えたいとのオーナーの意向から計画したもの。ダイニング側に手元を隠す立ち上げを作るか迷ったそうだ。最終的には子どもたちが調理に参加できるように、オープンスタイルを選択した。サイズは奥行き90cm、幅2mあり、天板はステンレスの曲げ板で、見つけを10mmの薄さにしてシャープな印象にした。収納部分はラワン材を使用した。アイランドキッチン足元の巾木部分を大きめにすることで、床から浮いたような、存在感が際立つデザインとなっている。
キッチンやダイニングからも、正面の窓を通して四季折々の公園の借景が楽しめる。ここはあえて大窓にせず、フレーミングされた絵を味わうごとく、腰高窓から緑を楽しむ趣向に。角倉さんが2階LDK案を提案したのは、この方がより公園の眺めを楽しめると考えたためでもある。
キッチンやダイニングからも、正面の窓を通して四季折々の公園の借景が楽しめる。ここはあえて大窓にせず、フレーミングされた絵を味わうごとく、腰高窓から緑を楽しむ趣向に。角倉さんが2階LDK案を提案したのは、この方がより公園の眺めを楽しめると考えたためでもある。
右上の開口は収納スペースのロフト。4つの開口が、平坦になりがちな壁面におもしろみを加えている。あまり冷房を使わない生活スタイルなので、どの開口部も基本的にはオープンな状態で過ごしている。
床は赤身の南波カラマツ材。素材感にこだわりがあるオーナーのために、角倉さんが選んだ床材だ。小さめの節に表情があり、いい味わいを出している。無塗装品を施工した後、家族皆で桐油を塗って仕上げたそう。手仕上げして愛着が湧いたためか、カラマツの固すぎず柔らかすぎずの程よい肌触りが気に入ったためか、子どもたちはゴロゴロと寝そべって心地よく過ごしているという。この素材は乾燥状況がよく、床暖房にも対応可能だ。
壁は、3厘ほどの砂を混ぜてニュアンスを出した砂漆喰の左官仕上げ。「それ以上大きな砂を入れると逆に野暮ったくなるので、このバランスとしました」。
床は赤身の南波カラマツ材。素材感にこだわりがあるオーナーのために、角倉さんが選んだ床材だ。小さめの節に表情があり、いい味わいを出している。無塗装品を施工した後、家族皆で桐油を塗って仕上げたそう。手仕上げして愛着が湧いたためか、カラマツの固すぎず柔らかすぎずの程よい肌触りが気に入ったためか、子どもたちはゴロゴロと寝そべって心地よく過ごしているという。この素材は乾燥状況がよく、床暖房にも対応可能だ。
壁は、3厘ほどの砂を混ぜてニュアンスを出した砂漆喰の左官仕上げ。「それ以上大きな砂を入れると逆に野暮ったくなるので、このバランスとしました」。
2階上部のライブラリー。芸術、インテリア、建築が好きな夫妻や子どもたちが、趣味や調べ物などをしながら集う図書館のようなスペース。窓際の机と壁一面の本棚を造り付けた。リビングとはまた違った形でくつろげる空気があり、皆が気に入っている場所だ。
木製の梯子を上ってハッチを開けると、眺望抜群の屋上へ出る。ハッチからの採光と2.5mある天井高のおかげで、6畳とは思えないゆとりを感じる空間だ。
木製の梯子を上ってハッチを開けると、眺望抜群の屋上へ出る。ハッチからの採光と2.5mある天井高のおかげで、6畳とは思えないゆとりを感じる空間だ。
お子さんが演奏する電子ピアノや電子パーカッションも置かれ、練習部屋としても活用。
土間ホール、LDK、ライブラリーの3つの集いの場は、スキップフロアによって少しずつ変化のある高さ関係にある。建具を開放することで3つの場はつながり、集い方の幅を広げてくれている。
土間ホール、LDK、ライブラリーの3つの集いの場は、スキップフロアによって少しずつ変化のある高さ関係にある。建具を開放することで3つの場はつながり、集い方の幅を広げてくれている。
縁なし畳を敷き込んだ2階の和室。壁紙は薄い青色の土佐和紙で、風合いとモダンさをプラスしている。西側には障子窓があり、採光は充分だ。広い空間だけでなく、静かな小空間があることも、居心地がよく落ち着ける家の条件である。
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収納スペースとして作った6畳のロフト。左手開口の下にはダイニングがある。見せる収納をするため、あえてオープンな作りとした。
1階、2階、2階上部、ロフト階とこの家の床レベルは4つ。その全てのフロアを貫くように作られているのが黒い鉄製の螺旋階段。螺旋状にすることで、4つのレベルをコンパクトかつ軽快につなぐことができた。階段の最上部横に設けたトップライトからは、1階の土間ホールまで明るい光が降り注ぐ。
「トイレや水回りも、明るく眺めのよい空間にしたい」というオーナーの希望をくんだ、1階のオープンな水回り。子どもの友だちが訪れた際など、洗面所やトイレがすぐ使えると重宝することも多い。
それぞれ4.5畳の子ども部屋には机と本棚、収納を造作。机の前の壁はマグネットペイントを施し、チョークで文字を書いたり、マグネットでプリントを貼ったりできる。壁は2階と同じ砂漆喰で、色は隣接した土間と呼応するよう、ほんの少しグレーを混ぜた色味に調合した。
隣にある主寝室は8畳。どの部屋も引き戸を全開にすると土間と一体化した空間となり、開放感は抜群である。
隣にある主寝室は8畳。どの部屋も引き戸を全開にすると土間と一体化した空間となり、開放感は抜群である。
窓の配置が印象的な外観。庭側は横に規則的に配置している。
家族が特に気に入っているのが、ベランダの機能が各所に分散しているところ。1階は洗濯物、2階は布団干し、公園側の窓際には花台があり、屋上ではのんびりと眺望を楽しめるというわけだ。
家族が特に気に入っているのが、ベランダの機能が各所に分散しているところ。1階は洗濯物、2階は布団干し、公園側の窓際には花台があり、屋上ではのんびりと眺望を楽しめるというわけだ。
外から見ると、家の右半分が2層、左半分が3層になったリズミカルなスキップフロアであることがよくわかる。
外壁は黒のガルバリウム鋼板で、中波板の平葺き。1階の一部と軒裏にはベイマツ材を貼り、アクセントとした。建物は道路から5mセットバックして、その分を駐車場に。敷地は幅10.4m、奥行き12.9m。
外壁は黒のガルバリウム鋼板で、中波板の平葺き。1階の一部と軒裏にはベイマツ材を貼り、アクセントとした。建物は道路から5mセットバックして、その分を駐車場に。敷地は幅10.4m、奥行き12.9m。
オーナーは新しく手に入れた庭で、庭いじりをすることが楽しみの一つになった。窓の花台に飾られた花やグリーンは、道行く人の心にも潤いを与えてくれている。
この家に引っ越してからたくさんの人が訪れるようになり、多いときは40人もの人々で賑わったという。開放感と緑にあふれ、自由な集いの形を楽しめる家は、家族と周辺の人々に多くの喜びをもたらしている。
住まいの専門家を探す
この家に引っ越してからたくさんの人が訪れるようになり、多いときは40人もの人々で賑わったという。開放感と緑にあふれ、自由な集いの形を楽しめる家は、家族と周辺の人々に多くの喜びをもたらしている。
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