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同居の親を優しく見守る、マリンテイストをちりばめた海辺のファクトリーのような家
自身の好きなテイストと開放的な空間、美しい街並み、そして高齢の親御さんも快適に暮らすための工夫。海を愛するオーナーが、建築家とともにすべてを叶えた家。
takako kawaguchi
2019年2月14日
高台にあり、大きな邸宅が連なる閑静な住宅街に、モダンな2棟が並び建つ一角がある。オーナーは、所有していた敷地を一部売却し、親のための終の棲家と賃貸棟を建てることを検討。このプランを任された腰越耕太建築設計事務所の腰越耕太さんは、海を愛するオーナーのために、海辺のファクトリー風の家を提案。でき上がったのは、マリンテイストがちりばめられたスタイリッシュなインテリアに、親子がお互いの気配を感じ、安心感に包まれながら過ごせる同居空間。内部のみならず外観にも注力し、2棟が美しい街並みを形成するよう配慮した点も、このプランの特長となっている。
まずはその外観から見てみよう。手前が同居する親御さんの終の棲家として作った家、奥が相続対策も念頭に建てた賃貸棟。2棟の同時建築にあたり、腰越さんは「街並みの形成に配慮した」と語る。2つの建物は屋根のラインを揃え、別棟でありながら一体的な建物のように配置。シンプルにまとまった2棟は、周辺の落ち着いた街並みともしっくりなじんでいる。
どんなHouzz?
住まい手:50代男性と母親
所在地:神奈川県横浜市
構造:木造軸組工法
規模:地上2階
延床面積:94.40平方メートル
設計:腰越耕太建築設計事務所
施工:有限会社松沢建築
監理:腰越耕太
竣工:2014年3月
どんなHouzz?
住まい手:50代男性と母親
所在地:神奈川県横浜市
構造:木造軸組工法
規模:地上2階
延床面積:94.40平方メートル
設計:腰越耕太建築設計事務所
施工:有限会社松沢建築
監理:腰越耕太
竣工:2014年3月
外壁は黒いガルバリウム鋼板の角波を使用し、クールな表情に仕上げた。見た目のインパクトに加え、メンテナンスが容易である点も、この色と素材をチョイスした理由だ。こうした外観にもファクトリー風の要素がうかがえる。玄関へはスロープを設け、車椅子でも無理なく移動できるように配慮した。
手前のスペースは駐車場。海から帰った際、すぐに砂などを洗い流せるよう、建物右手にシャワーを設置。ウィンドサーフィンのシーズンは沖縄の島に滞在することも多いという、海好きなオーナーならではのこだわりポイントだ。
手前のスペースは駐車場。海から帰った際、すぐに砂などを洗い流せるよう、建物右手にシャワーを設置。ウィンドサーフィンのシーズンは沖縄の島に滞在することも多いという、海好きなオーナーならではのこだわりポイントだ。
こちらが海辺のファクトリーをイメージした室内空間。リビングダイニングは、奥のキッチン、ウッドデッキ、吹き抜けを介した2階の空間まで、連続的につながる構成。高齢のお母様とどこにいても話ができ、気配を感じとれるようにする工夫である。ガルバリウム鋼板の波板を使った天井は高さ2.2m。あえてこの部分は低く設定することで、その先の吹き抜けの大空間がより広く、高く見えるように計算している。
床はオーナーが個性的な素材を希望したこともあり、パイン材のスプーンカット塗装仕上げに。足触りが心地よく、豊かな表情も魅力だ。
玄関を入った右手すぐには階段を設置。さまざまな角度で見通しのきく家にしたいと考え、蹴込みを設けず開放的なデザインとしている。ささらと段板は、木材を床と同色で塗装した。左に見える壁は、お母様の寝室やクローゼットとの境界壁。
床はオーナーが個性的な素材を希望したこともあり、パイン材のスプーンカット塗装仕上げに。足触りが心地よく、豊かな表情も魅力だ。
玄関を入った右手すぐには階段を設置。さまざまな角度で見通しのきく家にしたいと考え、蹴込みを設けず開放的なデザインとしている。ささらと段板は、木材を床と同色で塗装した。左に見える壁は、お母様の寝室やクローゼットとの境界壁。
吹き抜けにして空間的な広がりをもたせた約11畳のダイニングスペース。天井の高さはファクトリーらしさの演出にも一役買っている。
ダイニングの椅子とカーテンは、夕暮れをイメージしたオレンジ色を選定。写真では見られないが、2階窓のブラインドと目隠しはブルーにし、家全体が海をイメージしたコーディネートで統一されている。
写真右手のキッチンには、業務用ステンレスキッチンを採用。壁面の棚などもすべてステンレス製でまとめ、クールなファクトリー風の空間に。窓の外にはウッドデッキがあり、友人や知人を呼んでバーベキューを楽しむこともあるそう。
ダイニングの椅子とカーテンは、夕暮れをイメージしたオレンジ色を選定。写真では見られないが、2階窓のブラインドと目隠しはブルーにし、家全体が海をイメージしたコーディネートで統一されている。
写真右手のキッチンには、業務用ステンレスキッチンを採用。壁面の棚などもすべてステンレス製でまとめ、クールなファクトリー風の空間に。窓の外にはウッドデッキがあり、友人や知人を呼んでバーベキューを楽しむこともあるそう。
エントランス部分には段差を作らず、リビングダイニングと同じレベルでフローリングを敷き込み、フラットにしてある。車椅子での生活を考え、必要な部分にはマットを敷いて対応している。
左下の扉の先はトイレ、バスルームなどの水回りにつながっている。
左下の扉の先はトイレ、バスルームなどの水回りにつながっている。
階段を上がったところにあるのが、家族共用のフリースペース。オーナーが仕事をしたり、お母様がアイロンがけをしたりと、さまざまな用途に気楽に使える場所だ。カウンターはタモ集成材を、ダーク色の自然塗料で拭き取り仕上げしたもの。サイズは幅約3.6m。
突き当たりに見えるのはオーナーの寝室。左手に開いた小窓によって、リビングダイニングにいるお母様とも自然に会話ができる設計になっている。窓には何か面白い素材の扉をつけようと腰越さんが考え、ビル用の分電盤に使われるスチールドアを購入し、一部加工して設置したのだそう。
突き当たりに見えるのはオーナーの寝室。左手に開いた小窓によって、リビングダイニングにいるお母様とも自然に会話ができる設計になっている。窓には何か面白い素材の扉をつけようと腰越さんが考え、ビル用の分電盤に使われるスチールドアを購入し、一部加工して設置したのだそう。
オーナーの寝室をはじめ、他のスペースの扉もすべて、ラワンベニヤをダーク色の自然塗料で仕上げた引き戸(ハンガードア)になっている。引き戸金物は、天井のガルバリウム鋼板と同色のアルミ製を選び、さりげないアクセントに。建具の枠は設けず、壁の構造板に直接取り付けることで、シャープなイメージを演出した。
寝室の広さは約9畳。先述のフリースペースと同材のカウンターテーブルを作り付け、パソコンなどの作業に活用している。
寝室の広さは約9畳。先述のフリースペースと同材のカウンターテーブルを作り付け、パソコンなどの作業に活用している。
こちらはゲストルーム。オーナーの寝室と同様、テーブルが作り付けてあり、テーブル下にはぴたりと入る既製品の袖机も設置した。
吹き抜けのリビングダイニングが、同居する親子を安心感とほどよい距離感でつなぐ家。愛する海がいつも身近に感じられる、工夫を凝らしたこだわりのインテリアは、家族のリラックスした時間をこれからも紡ぎ続けてくれるだろう。
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