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住まいと防災(3)~ハザードマップで確かめる住まいの安全~
今日9月1日は防災の日。ハザードマップで住んでいる土地の災害のリスクを確認しておきましょう。
大村哲弥
2018年9月1日
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。http://www.projet-ltd.co.jp/
ブロガー。言葉とモノをめぐるブログ<Tokyo Culture Addiction>http://c-addiction.typepad.jp/blog/と料理ブログ<チキテオ>http://c-addiction.typepad.jp/txikiteo/を主宰。
不動産・建築・住宅に関するコンセプト開発・商品企画・デザインなどを手がける有限会社プロジェ代表。一級建築士。
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同じ住宅でも、その家が立地する場所や建っている土地の地盤によって災害のリスクは大きく異なります。
最近では、行政や専門機関などによる、さまざまな災害のリスクを地図データ化したハザードマップが公開されており、パソコンやスマートフォンなどで手軽に閲覧できるようになっています。
防災週間(8月30日~9月5日)を機に、自分の住まいの場所のリスクをハザードマップで確認してみてはいかがでしょうか。
最近では、行政や専門機関などによる、さまざまな災害のリスクを地図データ化したハザードマップが公開されており、パソコンやスマートフォンなどで手軽に閲覧できるようになっています。
防災週間(8月30日~9月5日)を機に、自分の住まいの場所のリスクをハザードマップで確認してみてはいかがでしょうか。
国土交通省によるハザードマップのポータルサイト
「国土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~」は国土交通省によるサイトです。
〈重ねるハザードマップ〉では洪水、土砂災害、津波による災害リスク情報を地図で確認できます。〈わがまちハザードマップ〉は、後述する区市町村で公開されているハザードマップにリンクしています。
「国土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~」は国土交通省によるサイトです。
〈重ねるハザードマップ〉では洪水、土砂災害、津波による災害リスク情報を地図で確認できます。〈わがまちハザードマップ〉は、後述する区市町村で公開されているハザードマップにリンクしています。
地震、洪水、浸水、高潮、液状化などさまざまな危険度が確認できる東京都の防災サイト
都道府県においてもさまざまなハザードマップが公開されています。東京都の例をみてみましょう。
東京都都市整備局による「地震による地域危険度測定調査(第8回)」(平成29年・2017年)の結果が公表されています。都内の市街化区域に関して、地震の揺れによる危険度を町丁目
別に〈建物倒壊危険度〉〈火災危険度〉〈総合危険度〉の3つの指標で測定しています。
上に掲載したものは〈総合危険度〉マップです。危険度が5ランクで測定されており、色が濃いほど危険度が高いエリアです。地震の際の揺れに大きく影響する地盤に関しては後述で詳しく述べます。
東京都建設局による「浸水予想区域図」は、大雨が降った際に浸水の予想される危険な区域や想定される浸水深などが河川の流域ごとに示されています。これを基に避難路や避難場所などを併せて地図化した「洪水ハザードマップ」が後述する区市町村のサイトで公表されています。
都道府県においてもさまざまなハザードマップが公開されています。東京都の例をみてみましょう。
東京都都市整備局による「地震による地域危険度測定調査(第8回)」(平成29年・2017年)の結果が公表されています。都内の市街化区域に関して、地震の揺れによる危険度を町丁目
別に〈建物倒壊危険度〉〈火災危険度〉〈総合危険度〉の3つの指標で測定しています。
上に掲載したものは〈総合危険度〉マップです。危険度が5ランクで測定されており、色が濃いほど危険度が高いエリアです。地震の際の揺れに大きく影響する地盤に関しては後述で詳しく述べます。
東京都建設局による「浸水予想区域図」は、大雨が降った際に浸水の予想される危険な区域や想定される浸水深などが河川の流域ごとに示されています。これを基に避難路や避難場所などを併せて地図化した「洪水ハザードマップ」が後述する区市町村のサイトで公表されています。
東京都港湾局による「高潮浸水想定区域図」(上図)は、今までの最大規模の台風(室戸台風級:910hPa)を想定し、高潮と同時に河川の洪水や堤防の決壊など最悪の事態を見込んだ場合の浸水予定図です。23区の1/3の面積にあたる範囲で浸水が想定され、最大10mの浸水、水が引くまで最長1週間程度の被害が想定されており、下町、埋め立て地、河川の流域以外にも中央区や港区などの都心部でも浸水被害のリスクがあることが確認できます。
「東京都の液状化予測図」(上図)は関東大震災と同じ揺れを想定した場合の液状化予測です。ピンクは「液状化の可能性が高い地域」、黄色は「液状化の可能性がある地域」、黄緑は「液状化の可能性が低い地域」と分類されています。荒川以東のエリア、埋め立て地、多摩川流域エリアなどが液状化が懸念されるピンクになっているのがわかります。
このサイトでは、液状化予測に用いられたさまざまなデータもデジタルデータ化されて見ることができるようになっています。地形や地盤を示した土地条件図、明治・大正・昭和の過去の水系図、埋め立ての履歴など液状化に影響を与えるさまざまな土地の履歴を調べることが可能です。
東京都の「東京都防災ホームページ」では、避難所や一時滞在施設などをプロットした地図が掲載されており、いざという時の情報源としても利用できます。
このサイトでは、液状化予測に用いられたさまざまなデータもデジタルデータ化されて見ることができるようになっています。地形や地盤を示した土地条件図、明治・大正・昭和の過去の水系図、埋め立ての履歴など液状化に影響を与えるさまざまな土地の履歴を調べることが可能です。
東京都の「東京都防災ホームページ」では、避難所や一時滞在施設などをプロットした地図が掲載されており、いざという時の情報源としても利用できます。
一番身近な防災情報をマップ化した市町村による防災関連サイト
区市町村による防災関連サイトでは、一番身近な情報がマップ化されています。渋谷区の例をみてみましょう。
「渋谷区防災情報」では〈防災地図〉〈帰宅困難者支援マップ〉、東京都のデータに基づいた〈洪水ハザードマップ〉(上図)や東京都建設局のサイトにリンクする〈土砂災害危険個所マップ〉、独自調査に基づいた〈危険度・揺れやすさマップ〉をデジタルマップとして公開されています。
区市町村による防災関連サイトでは、一番身近な情報がマップ化されています。渋谷区の例をみてみましょう。
「渋谷区防災情報」では〈防災地図〉〈帰宅困難者支援マップ〉、東京都のデータに基づいた〈洪水ハザードマップ〉(上図)や東京都建設局のサイトにリンクする〈土砂災害危険個所マップ〉、独自調査に基づいた〈危険度・揺れやすさマップ〉をデジタルマップとして公開されています。
地震の揺れを増幅する軟弱な表層地盤
地震の揺れによる被害は、建物の耐震性に加えて、その建物が建っている地盤によって大きく左右されます。地盤によっては同じ地震でも揺れの大きさが1.5倍や2倍にもなってしまいます。
東京の地盤が場所によって大きく異なっていることが分かったきっかけは、大正12年(1923年)の関東大震災でした。下町と山の手では震度が大きく違い、揺れが大きかった下町では甚大な被害が発生しました。
東京西部の山の手台地(武蔵野台地)は、洪積層と呼ばれる100万年前以降の比較的強固な地盤から成り立っています。一方、東京の東部に広がる下町低地は、もともとは海だったところで、比較的新しい1万年前以降の時代の沖積層と呼ばれる地盤から成り立っています。下町低地でも基底には洪積層が広がっていますが、表層の沖積層は、河川が運ぶ土砂などが堆積した軟弱な地盤です。この表層の弱い地盤が震度を増幅させ、関東大震災の際に下町に大きな被害をもたらす原因となったのでした。
東京の北東を流れる隅田川や荒川沿い、東京の南を流れる多摩川沿い、また、山の手台地でも川が流れている谷部などの表層の地盤は沖積層です。
日本全国の地盤の状況や地震の際の揺れやすやなどを簡単に調べられサイトをいくつかご紹介しましょう。
国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)のサイト「地震ハザードステーション(J-SHIS)」では、表層地盤の種類や地震の際の揺れの増幅度合いなどが掲載されています。先に見たように、土地の比較的浅い箇所の表層地盤と呼ばれている地盤が軟弱だと、同じ地震でも揺れが増幅されることが具体的に示されています。
上記のJ-SHISのサイトの「表層地盤」というタブの「微地形区分」というところに250メートルメッシュごとに表層地盤の微地形区分(上図)が載っています。微地形区分とは、地形を形態、成り立ち、性質などで分類したものです。
東京北部や東部や多摩川沿いに広がっている緑系と寒色系のカラーの部分が沖積層と呼ばれている、谷底、河川、三角州、埋立地など、軟弱な地盤の土地です。
地震の揺れによる被害は、建物の耐震性に加えて、その建物が建っている地盤によって大きく左右されます。地盤によっては同じ地震でも揺れの大きさが1.5倍や2倍にもなってしまいます。
東京の地盤が場所によって大きく異なっていることが分かったきっかけは、大正12年(1923年)の関東大震災でした。下町と山の手では震度が大きく違い、揺れが大きかった下町では甚大な被害が発生しました。
東京西部の山の手台地(武蔵野台地)は、洪積層と呼ばれる100万年前以降の比較的強固な地盤から成り立っています。一方、東京の東部に広がる下町低地は、もともとは海だったところで、比較的新しい1万年前以降の時代の沖積層と呼ばれる地盤から成り立っています。下町低地でも基底には洪積層が広がっていますが、表層の沖積層は、河川が運ぶ土砂などが堆積した軟弱な地盤です。この表層の弱い地盤が震度を増幅させ、関東大震災の際に下町に大きな被害をもたらす原因となったのでした。
東京の北東を流れる隅田川や荒川沿い、東京の南を流れる多摩川沿い、また、山の手台地でも川が流れている谷部などの表層の地盤は沖積層です。
日本全国の地盤の状況や地震の際の揺れやすやなどを簡単に調べられサイトをいくつかご紹介しましょう。
国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)のサイト「地震ハザードステーション(J-SHIS)」では、表層地盤の種類や地震の際の揺れの増幅度合いなどが掲載されています。先に見たように、土地の比較的浅い箇所の表層地盤と呼ばれている地盤が軟弱だと、同じ地震でも揺れが増幅されることが具体的に示されています。
上記のJ-SHISのサイトの「表層地盤」というタブの「微地形区分」というところに250メートルメッシュごとに表層地盤の微地形区分(上図)が載っています。微地形区分とは、地形を形態、成り立ち、性質などで分類したものです。
東京北部や東部や多摩川沿いに広がっている緑系と寒色系のカラーの部分が沖積層と呼ばれている、谷底、河川、三角州、埋立地など、軟弱な地盤の土地です。
同じ「表層地盤」のタブの「地盤増幅率(Vs=400m/sから地表)」というマップ(上図)は、表層地盤で増幅される揺れの幅の最大倍率を示したものです。
J-SHISでは、この数値が1.6以上2.0未満(オレンジ系の色)で地震ハザード(地震の危険度)が「やや高め」、2.0以上(赤系の色)で同「高め」と分類しています。例えば、数値が2.4の箇所は数値が1.2の箇所よりも最大で2倍揺れる可能性があることを表しています。
東京東部、湾岸、河川沿いの土地が赤系の色になっていることが分かります。
「J-SHISの地震ハザードカルテ」のページでは調べたい箇所をマップ上でクリックすると、その土地(250メートルメッシュ単位)の地震ハザードのカルテを見ることができます。
朝日新聞デジタル版の「揺れやすい地盤」のページには、住所を入力するとJ-SHISによる表層地盤増幅率の数値が検索できる便利な機能が載っています。
J-SHISでは、この数値が1.6以上2.0未満(オレンジ系の色)で地震ハザード(地震の危険度)が「やや高め」、2.0以上(赤系の色)で同「高め」と分類しています。例えば、数値が2.4の箇所は数値が1.2の箇所よりも最大で2倍揺れる可能性があることを表しています。
東京東部、湾岸、河川沿いの土地が赤系の色になっていることが分かります。
「J-SHISの地震ハザードカルテ」のページでは調べたい箇所をマップ上でクリックすると、その土地(250メートルメッシュ単位)の地震ハザードのカルテを見ることができます。
朝日新聞デジタル版の「揺れやすい地盤」のページには、住所を入力するとJ-SHISによる表層地盤増幅率の数値が検索できる便利な機能が載っています。
先に見た東京都都市整備局のウェブの「地震に関する地域危険度測定調査のページ」では、町丁目名別の地盤の分類図(上図)が掲載されています。最も地盤が良いとされる「山地」「丘陵」から最も地盤が悪いとされる「沖積低地4」「沖積低地5」まで、12分類が示されています(地図は「調査報告書 2. 建物倒壊危険度」の25ページに掲載されています)。
また、「地域危険度一覧表」のページでは町丁目名で検索できるようになっています。
こうしたハザードマップを使えば、自分の住まいや検討中の土地について、ほぼピンポイントでさまざまな災害のリスクや土地の履歴、地盤の種類などを確認することができます。
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住まいと防災(1)〜地震に強い住まいづくり〜
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また、「地域危険度一覧表」のページでは町丁目名で検索できるようになっています。
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